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元カノがめんどくさい  作者: よつば猫
平行線
9/18

 そして後日。

なんだかだんだん不安、とゆうか心配になって来た僕は……

仕事を終えるとすぐに、元カノへと電話を掛けた。


 出ないな……

まだ仕事中かな?

そう思った矢先。


「もぉ、しつこーい」

ガラガラ声が応答する。


「え、本庄さん?

え、なにその声、どーしたのっ!?」


「インフルエンザ拗らせちゃってさぁ。

もう5日も寝込んでんの、ウケるでしょ~」


 いや全っ然ウケないよねえ!


「今熱はっ!?

遥さんには来てもらってんのっ?」


「それがさぁ、タイミング悪いと思わなぁい?

遥ってば1週間出張でさぁ、明日帰ってくるんだよね。

もう熱も7度8分くらいだし?

明日には治ってると思うけどね~」


「だったらなんで僕に連絡しないの!?

いつも小さなピンチは頼ってくるクセに、なんで肝心な時は頼って来ないかなぁ!」


「だって……

天使ちゃんとの事、協力しろってゆってたじゃん。

それって邪魔するなって事でしょー」


 あ、ちゃんと伝わってたんだ……


「それに……

肝心な時だと、嫌でも断れないじゃん?」


 キミって人は……

あぁもう、つくづくめんどくさいっ!


「あのさ!

肝心な時に頼ってもらえないと、いつも助けてる意味ないでしょ!」


「っ、はあっ?

いつも助けてるって、なにその上から目線!」


 はいはい、すみませんね!


「とにかく!

ピンチの時は遠慮しなくていーから!

とりあえず、そっち行くからなんかいるもんはっ?」


「っ……

……あり、がと。

じゃあ遠慮なく感染す」


「いやそれは勘弁して下さい」

なんて言いながらも。


 キミが治るならそれでもいいよ……

会話の合間に咳込んでる彼女が、いたたまれない。


 けどやっぱりマスクは買って行こう。

キミの部屋にそんな気の利いた物があるワケないのはわかってる。


 そんな調子で……

今度は僕が、栄養ドリンクやら元カノが大好きなゼリーなんかを持って行く事に。


 それと、まともに食べてないらしい彼女のために雑炊の材料も買って。

1人暮らしのその部屋へと向かった。




 そしてそこは、久しぶりに入ったけど……

相変わらずなんて散らかった部屋なんだ!


 病気だから仕方ないとはいえ、輪をかけて。

まぁ本人曰く、使い勝手がいいように配置してるらしいけど。


「なに作ってくれるの?」


「ん?卵と長芋の雑炊。

ググったら、卵は鼻とか喉の粘膜にいいビタミンAと、熱で失われるビタミンBが豊富らしくてさっ。

長芋はもっとすごくて、抗インフルエンザウイルスを活性化させるタンパク質が入ってて、」


「いーから早く作って。

食欲出てきてヤバいんだけど」


 はいはい、患者様……


 出来るだけテキパキと下ごしらえをして、グツグツとそれを煮込むこと15分。




「お待たせ、出来たよ?」


 ベッドに横たわる彼女にそう声掛けるも……

無反応。


「……本庄さん?」

傍に行って様子を伺うと。


 え、寝ちゃってる!?

どーしよう……

かなりお腹空いてたみたいだし、起こした方がいいのかな?

や、でも体がキツくて寝ちゃったのかも。


 ふう、と困惑の息をもらすと……

とりあえずその場に座って、寝顔を眺めた。


ー「肝心な時だと、嫌でも断れないじゃん?」ー


 まったくキミは、変なトコでいじらしいんだから。


 あ、手が勝手に……

思わず頭を撫でてしまった!

しかもなんだか止められないっ。

いや、どんな引力!?


「ん、んんっ……」

そこで本庄さんが、目覚めた気配。


 とっさに僕は、熱いものでも触ったかのようにその手を跳ね除けた。


「お、おはよっ、雑炊出来てるよっ?」


 いや、夜だけどね!

焦った自分に自らつっこむ。


「……おそーい。

いただきまぁす……」

と、鼻水をズビズビすすりながら。


 病気のせいか寝ぼけてるのか、いまいちローテンションで雑炊を口にする。


 あったかいそれは、ますます鼻水を誘ってて……

見てるこっちがやきもきする。


「はい、鼻かんでっ?」


 すすったタイミングを狙って。

片手で後頭部を支えて、もう片手で鼻にティッシュを当てると。


「っ、いーってば!

そんなの自分でするしっ」

僕の手を押しのけて、照れくさそうに顔を背けた。


 今さらこーゆうのは恥ずかしがるのが可愛い……


 って誰がっ!?

いや普通だよ、普通っ。

女子なら大抵そーだって!


「あー、食べにく……」


 うん、結果ティッシュを鼻に突っ込んでるからね……

てゆうかそれはアリなんだ?

まぁ、そーゆう飾らないトコも好きだよ。


 いや、その好きじゃなくて!

ヤバい、おかしくなってる……



「あぁ~、おいしかった!

ありがと蓮斗、ごちそうさまぁ~」


 やけに素直……

だからそんな可愛く来られると困るんですけど。



 それから、薬を飲んだ元カノを再びベッドに寝かしつけて。


「じゃあ僕は……

だいぶ回復してるみたいだから、帰るよ」

これ以上おかしくなる前に、さっさと撤収。


「蓮斗っ」

ふいに、引き止めるかのように手を掴まれて。


「……眠るまで、待って」


 驚く僕から視線を外して、呟くキミの……

その手にぎゅっと、力がこもる。


 僕は心臓まで掴まれて。

だんだんそこが苦しくなって来て。

痛って、イタタっ……

ヤバい、耐えられない!


 ごまかすように思考を巡らせて、この現状を無理やり読み解く……

そうか、病気だから心細くなってるんだ!

うん、それしかないっ。

そうやって、ギリギリ自分を抑え込む。


 まだ?まだかな……

もう寝たよねっ?寝付くの早い人だし……

いやもう寝た事にしよう!

締めくくるようにぎゅっとして、その手をほどいた。


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