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元カノがめんどくさい  作者: よつば猫
平行線
8/18

 奈々ちゃんの事は傷付けたくない。

こんな天使、傷付けるワケにはいかない。

だからって、元カノへの罪滅ぼしを投げ出す事は出来なくて。

せめて、少しでも改善しようと試みた。


「なに蓮斗?

てか蓮斗から呼び出すのってめずらしーよね」


「ん、実はさ。

僕も彼女が出来たんだけど……」


「……そっ。

え、それってこの前の天使とか言っちゃってた電話のコっ?」


「そう、そのコ」


「え、まさかその報告で呼び出したワケっ?

電話でよくなぁい!?私そんなにヒマじゃないんですけどっ」


 まぁそーなんだけどさ……

てゆうかキミは、いつもそんな事で僕の時間を奪ってるよね?


「ごめん。

けどその事で頼みがあってさ……」


「頼みぃ?

ヤだ。めんどくさい」


 輪をかけてめんどくさいキミから言われたくないんですけど!


「いや、大した事じゃないって!

ただ……

そのコの事は、特別ってゆうか真剣に考えてて。

だから……」


 キミには遥さんもいる事だし、僕に頼るのはもう少し遠慮してほしいんだ!

とは、口に出来ず。


「本庄さんも、協力してくれる?」

代わりにそう、恐る恐る問いかけた。


 途端、その人から殺気がみなぎって!


"人傷付けといて、のんきに彼女作るだけじゃ飽き足らず!

なんで傷付けられた私が協力しないといけないワケぇ!?"

なんて浴びせられると思ったのに……


「……ふぅん、そ。

ま、覚えてたらね」


 それ、忘れる気マンマンだよね……

殺気は気のせいか、意外とアッサリした反応に拍子抜けする。


 と同時、意図が伝わってない様子と跳ね除けられた様子に脱力する。


 とはいえ。

根気強く、このめんどくさい状況の改善を図って行くしかない。

だって僕らはもう、とっくに違う道を進んでて……

その道が交わる事は、きっとない。


 それはまるで、どこまで延長しても交わらない平行線で。

行き着く先には、それぞれ人とそれぞれの未来が待ってるんだから……




 だけど予想外に、元カノからの連絡がパタリと止まった。


 たまたまかな?

協力してくれる?なんて曖昧な頼みの意図を、キミが理解したとは思えないし。

こんなにもアッサリ応じるとは思えない。


 いや、ひどい解釈してごめん!

って誰に謝ってるんだよ……

元カノから怒られ慣れてるせいで、条件反射に反省してしまう。


「蓮斗さん?

なにか考え事ですか?」


 僕の部屋でくつろいでた天使が、クスクス笑って……

プチ思考旅行に出掛けてた僕を連れ戻す。


 付き合ってからも相変わらず、さん呼びで敬語だ。

そんなとこも愛らしいけど……

僕だけ次のステージ、呼び捨てへ。


「いや、明日のデートプランどーしようかなって。

奈々はどこ行きたい?」


「私はどこでも……

蓮斗さんと一緒なら、コンビニでも楽しいですっ」


 か、可愛い!

まぁ、何はともあれ。

おかげで順調に奈々との恋人ライフを送れてるからいんだけどね。




 そしてどうやら、元カノから連絡がなくなったのは、たまたまなんかじゃないようで……


 もう1ヶ月も音信不通だ。



 遥さんとラブラブなんだろうな……

なんだか寂しく感じる。


 って、いやいやそんなの錯覚だからっ!

この自由な日々を満喫しないでどーする!


 そこで、迎えに行った僕の車に駆け寄って来た奈々。


「お待たせしてすみませんっ!

お弁当に手間取っちゃって……」


 今日のデートはドライブだ。


 てゆうかお弁当!?

なんて感激的なサプライズっ……

やっぱりいいなぁ、女の子の手料理って。


 思えば元カノの手料理なんて、1度しか食べた事ない。

その貴重な1度は、味はともかく見た目がグロテスクで。

私は作るより食べる派!なんて、それ以来僕が作る羽目になったんだけど……


 その1度切りの手料理が、今までのどんな料理よりも好きだったよ。



「……あの、蓮斗さん?

遅くなった事、怒ってます?」


「あ、ごめんっ!

いやちょっと、お弁当に感激しててっ」


 良かったぁ!って微笑む奈々を前に、トリップしないように心がける。


「そういえば、蓮斗さんってサッカーしてたんですか?」


「まぁ、中高メインに。

大学じゃ、サークル程度だったけど」


「やっぱり!

部屋を見て何となくそうかなって」


「サッカー詳しんだ?」


「詳しいって程じゃ……

ただ、高校が第一高だったので」


「あ〜!第一高っ。

何年前からか、強豪校の仲間入りしたよね」


「はい。私が高3の時、選手権の地区大会で優勝してからです。

その時の試合、全校で応援に行ってたんですけど。

すごく感動して……

それ以来、サッカーが好きになったんですっ」


 思わぬ共通の話題に、会話が弾む。



「え、ボランチだったんですかっ?

すごい!チームの心臓じゃないですかっ」


 そうそう、この反応!

こんな反応されると嬉しいよね。

どっかの誰かさんとは、って……

もう皮肉センサーも働かないんだ。




 それから、紅葉が見頃の公園を訪れて。

そこで、奈々が作ってくれたお弁当を広げた。


「ちょっと寒いですねっ?

すぐあったかいお茶を入れますね。

……ああっ!」


 急に驚きの声をあげて、固まる奈々の手元には……

何も出ない水筒。


 思わず吹き出してしまった!

そういえばこのコはドジっ子だった。

その指先にはカットバンが2か所貼られてて、このお弁当作りに奮闘してた事も伺える。


「すみませんっ、入れたつもりだったのにっ……

すぐ自販機で買って来ますっ」


 慌てる奈々の……

その手を掴んで、抱き寄せる。


「お弁当、ありがとう。

飲み物くらいは僕に買わせてよ」


 耳元で囁くと、奈々が僕をぎゅっとした。


 ああ、愛らしくてたまらない。



 そのあと食べたお弁当も、文句なしに美味しくて。

そこに綺麗な紅葉と、天使の笑顔。

極上のシチュエーションなのに……


 なのになんで、切ないんだろう。




 心なしか沈んだ僕を……

奈々が明るい話題で盛り上げる。

しっかりしなきゃ、と思った矢先。


「そうそうっ、この前。

走ってる車の助手席で、カップ麺を食べてる人がいて……

すごくないですかっ?

私だったら絶対こぼしそう!

男の人にしか出来ない荒技ですよねっ」


「っ……

僕の友達にもいるよ、そんな人」


 カップ麺なんて日常茶飯事で、どれだけヒヤヒヤした事か。

それどころか……




 司沙をバイト先に送る最中。


「時間ないから車で食べよっ」

コンビニで買った夕食を、ガサガサと膝に広げる姿が視界に入る。


「蓮斗っ?

揺らさないよーに急いでっ!」


 またムチャな注文を……

何を買ったんだかと、その夕食を横目に映して。

驚愕する!


「ええっ!そーめん!?

え、そーめんっ!?

それ車で食べるのっ!?」


「別にカップ麺と変わんないじゃん。

あ、でもっ、つゆこぼれそ~っ!」

なんてキャッキャと笑う。


 頼むからこぼさないでよっ!?


「てゆうか走行中の車でそーめん食べてる人、初めて見たよ……」


「貴重なもん拝めてよかったじゃん」


 そーゆう問題っ!?


「うわ、今!

すれ違った車の人、2度見して驚いてたよっ」


「アハハっ!ウケる~」


 え、なにが!?


「まったく……

司沙といると飽きないよっ」


「そっ?

逆に蓮斗といると飽きそーだけどねっ」


「っ、ええっ!

え、それ本気っ!?

本気で言ってんのっ!?」


「キャハハっ!

わかった、わかった!

じゃあ飽きないねっ?」


「いや、じゃあってなんだよっ。

しかもなにその取って付けたような言い方わっ!」




 そうやって笑い合ってた、楽しい日々。


 会わなくなるだけ、元カノの事ばかり思い出すのはなんでだろう……





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