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元カノがめんどくさい  作者: よつば猫
天使と悪魔
6/18

 僕がフリーになると元カノは、ターゲットを深夜じゃない時間帯に変えて、頻繁に電話を掛けてくる。


 しかも毎度毎度の事だけど……

もっと単刀直入に話そうよ!

てゆうか先に結末から話そうよ?

前置きがあまりにも長すぎて……


「ってワケなの、ウケるでしょ~」


 え、どこがオチだった!?

真剣に聞いてたのに、長すぎて内容がつかめない。

かと思えば、何か応えを返さなきゃと思った矢先。


「あっ、ウケるといえばさぁっ!

今日職場でねぇっ?」

もう次の話に変わってる。


「ちっちゃい子が迷子になったみたいで、泣きそうな顔でキョロキョロしてたからさあっ。

心配でレジしながらチラチラ見てたんだけど。

そしたらさぁ!目の前のお客さんが、

"こいつ挙動不審じゃね?ちょーウケる"

って酷くなぁい!?」


 それは酷い!

てゆうか、かなり許せないんだけど!

なにそいつ、と意見を述べようとしたとこで。


「そりゃあさっ?そのお客さんにとっては、よそ見しないで早くレジしろよって感じなんだろーけどさぁ。

でも手はちゃんとテキパキ動かしてたしっ!

ねっ、こーゆう時って知らんぷりしてレジに集中するのが正解なのっ?」


 そんな事ないよ!

とは思いつつも、どうなんだろう?

でも人間は機械じゃないし、目を離した隙にその子が店外にでも出ちゃったら……


「まっ、正解なんてないよね~?

私は私らしく行くしかないかっ!

てか蓮斗さっきから聞いてるっ!?」


「聞いてるよ!

むしろ、すっごく真剣に聞いてるんですけどっ」


「だったらなんで無反応なワケぇ?」


「キミの会話テンポについて行けなくて、返事が追いつかないんだよ!」


 そんな僕を、キミはケラケラと楽しそうに笑い飛ばす。


「そんなトロくて、よくサッカー出来たよねぇ!」


 あのさ!

頭の回転と体の俊敏性は関係ないからっ。


「ねぇねっ、蓮斗と遥さんってどっちが上手いかなぁっ!?」


「……遥さんじゃない?

僕は大学卒業してからプレーしてないし」


「でも蓮斗、もともとはいつも……

なんだっけ?

あ、トニセンってのに選ばれるほどの実力だったんでしょっ?」


「いや、トレセンね。

どっかのアイドルグループじゃないから」


「っ、どっちでもいーじゃん伝われば!

ほんっと細かっ!」


 それはすいませんね……


「あっ、こんな時間!

もぉっ、10分で切ろうと思ったのに40分も話しちゃったじゃん!」


 いや、キミのせいでね……


「じゃあおやすみっ」


 って、相変わらず引きぎわ早っ!

いつもの事だけど、キミ旋風を巻き起こすだけ巻き起こして、後片付けもせずに帰っちゃう感じ!?


 いや後片付けされると、それはそれでまた長くなってめんどくさいけどさ……


 忙しげな声で言い捨てられた、悪魔のおやすみで締め括られて。

今日も僕の1日が終わる。





 そんな日々が繰り返されて。


「えっ、蓮斗さんオムライスが大好物なんですかっ?

私もなんです!なんか嬉しいっ」


 最近やっと、僕の事を下の名前で呼んでくれるようになった奈々ちゃん。


「そうなんだっ?

じゃあ今度、美味しいオムライスでも食べ行く?」


「ほんとですかっ!?

じゃあ早速、明日とかはっ……

って急すぎますよねっ」


「や、いいよ?明日休みだし。

何時にする?」


 喜ぶ奈々ちゃんの声を聞きながら。

天使とデートもどきな状況に、僕まで胸が踊る。


「じゃあ蓮斗さん、また明日。

少し早いけど、おやすみなさい」


「ん、また明日。おやすみ奈々ちゃん」

約束を取り付けて、恋人同士のような雰囲気で電話を終える。


 てゆうか"蓮斗さん"って……

その呼び方がくすぐったい。

"蓮斗ぉ?"

あの横暴な呼び方と比較してしまってなおさら。


 と、そこで。

玄関チャイムが騒がしく鳴り響く。


 そんな鳴らし方をするのは、僕の知り合いに1人しかいなくて……

キミはなんか皮肉センサーでもついてんの!?



「おつかれ蓮斗!

DVD借りて来たんだけどさぁ、一緒に見よっ?

この映画見たかったんだけど、コメディ系だから1人じゃつまんなくてさっ」


 あの、本庄さん。

僕にもプライベートとゆうものがあって……

いくらフリーだからって、最近関わり過ぎじゃないですか?


 そんな軽はずみな行動を取られると、困るんだけど……


「遥さんと見ればいいのに」


「いーじゃん!どーせヒマでしょお?

だいたい遥さんと見たらバカ笑い出来ないじゃん」


 はいはい、僕ならいいワケね。



「飲む?」

あれこれケチを付けられる前に、お酒やらつまみやらを用意しながら尋ねると。


「飲むっ!」って、とびっきりの笑顔が返って来るもんだから……

まぁいいか、なんてつい絆されてしまう。



 そうして、見始めようとしたそのタイミング。

僕の携帯が鳴り響く。


 え、奈々ちゃん?

なんだろ……


 若干気まずく思いながらも、応答ボタンを押すと……

話の内容は、明日の時間変更だった。


「全然いいよ、じゃあ明日」


「はいっ、今度こそおやすみなさい」


「ん、おやすみ」

そうやって、電話を切るや否や。


「え、だれだれっ!?」

ニヤけながら弾んだ声で擦り寄って来た本庄さん。


 いや、近い近い!

そんなくっつかれてもっ……


「明日デートっ?

もう新しい彼女出来たんだっ?」


「……彼女じゃないよ」

てゆうか、なんでそんな楽しそうなワケ?


「え、そーなのぉ?

のわりには、あーんな優しい声でおやすみ~とか言っちゃって!」


「そりゃ優しくもなるよ。

そのコは汚れのない天使だからね」


「天使ぃ!?

なにそれっ!なに女に妄想抱いてんのっ?

蓮斗きもっ!」


 キモくて悪かったね。

それに妄想抱いてるワケじゃなくて……

チラリとキミを横目に映すと、至近距離でバチっと目が合う。


 要は、現実逃避させて下さい!!

視線を外してうなだれた。



 とはいえ、コメディ映画で盛り上がって……


「ここだよねっ!こっから出てくるのがヤバいんだって!」


「も、蓮斗っ、言わないでっ!

ちょっ、ほんともうっ……

笑いすぎてお腹イタっ」


「しかも真顔だしっ!

やたらと姿勢いいしっ」


「だからもっ、やめてっ、てばっ!」


 そんなふうに、2人してひとしきり笑って……

鑑賞を終えると。



「ねぇ蓮斗……

まだ居てい?」だなんて。


 なんで急に、レアなしおらしい態度でくるかな!


「いいけど……

この前みたいに寝ないでよ?」


「寝ない寝ないっ!

よかったぁ~!

聞いてほしい事が山ほどあるんだよね~」


 やられたっ!

今のしおらしい態度は演技だったか!

僕とした事が……


「ちょっとは遥さんに聞いてもらったら?」


「なんかそればっかでウザいんだけど……

てかいーじゃん!

蓮斗、聞き上手なんだしさぁ」


 そりゃあね。

状況にはよるけど、ちゃんと聞いて的確な応えを出さなきゃ……

恐ろしくめんどくさいクレームが続くんだから。

むしろ、キミの周りがどうやってそれを回避してるのか不思議なくらいだ。


「それに、蓮斗と話すの楽しんだもーん」


 キミって女わっ……!

ああもうっ、ほんとにめんどくさい!


 こんなふうにいつだって、言葉ひとつで僕を惑わす……

なんてタチの悪い悪魔なんだ!





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