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元カノがめんどくさい  作者: よつば猫
事の発端は……
2/18

 元カノは、ショピングモールに隣接するスポーツ用品店で働いてて。

営業職の僕と違って、土日祝日は基本仕事だ。

恐らく今日は遅番なんだろう。


 僕の家と、一人暮らしの元カノの家は近いけど。

その職場まではちょっと遠くて……

送ってたら、映画の上映時間に間に合わない。


 公開終了間近のその映画は、昼に1度の上映しかしてなくて。

延期するより他はない。


 とはいえ、今カノの沈んだ声のトーンに……

罪悪感がのしかかる。


 ああなんだか色々と、自業自得だけどめんどくさい……




 元カノは無事に、職場まで送り届けたものの。


「ごめん……

やっぱり、怒ってる?」


 後で合流した今カノは、さっきの声と同様沈んでる。


「……ううん。

ただ、ね?

あの映画、明日までだから……

けど明日は私も用事があるし」


「あぁ、ごめん!

うわ、どーしよう……

じゃあさっ、他の映画じゃダメかなっ?

今日の映画はDVDで見るとして、第二候補でも見に行かないっ?

お詫びに、帰りに買い物でもして、欲しい物があればプレゼントするよっ」


「……ありがとう。

けどその前にさ……

携帯、見せてくれるかな?」


「っ携帯!?」

思わず大きな声が出てしまった。


「えっ…と、なんで?」


「見たいから。

それとも、やましい事があって見せられない?」


「いや……

やましい事は、ないよ。

ちょっと待って」


 運転中だった僕は、信号で止まるまで待たせて。

打開策を考える……


 なんて間もなく、訪れたそのタイミング。

覚悟を決めて、ロック解除した携帯を差し出した。


 画面を見つめる彼女は、なんだか怖く見えて……

不安を募らせながら、青信号を迎えて走り出すと。


「嘘つき」

冷やかなひと言が突き刺さる。


 やましい事はなくても、嘘を吐いたのは事実で……


「呼び出したのは上司じゃなくて、元カノさんじゃない!」

そう責められても仕方ない。


 いつもは念のため、履歴とかは消すんだけど。

元カノに振り回されてバタバタしてたから、そのままになってた。


「ごめん……

ちょっとトラブってたから、助けざるを得なくて。

嘘をついたのも、余計な心配をかけたくなかったからなんだ」


「……もういいよ」


 え、そんなアッサリ許してくれるんだっ?

そう思ったのも束の間。


「私達、別れよう?」


「えっ、ええっ!?

ちょっと待ってよっ、そんなアッサリ」


「だって普通!

彼女との約束より元カノの呼び出しを優先するっ!?」


「だからそれはっ」


「言い訳はいいよ!

そんなに元カノさんが大事なら、一生振り回されてばっ?」


「っ、だから!

そんなんじゃないんだって……」


「だったら、元カノさんと縁切れる?」


 ドキリとした追究に、返す言葉を失くした。


「……ほら、ね?

おかしいと思ったんだぁ。

出会った時、こんなカッコいい人が何でフリーなんだろうって。

しかもそれを鼻に掛ける事もなく、それどころかめちゃくちゃ優しいし。

でもね?どんなにカッコよくても優しくても。

他の女の子を優先するような人、嫌だよ!

それが元カノだったりしたら尚更っ」


「……ごめん」


 こんな状況、今に始まった事じゃない。

いつもそうだけど……

当然の事すぎて、覆す事なんて出来なかった。



 それから、彼女に言われるまま……

Uターンして、来た道を戻ると。

到着したその家の前で。


「私の事なんて、遊びだったんでしょ?」


「っ、違うよ!」


「じゃあ本気だったって言える?」


 そう訊かれてまた、言葉に詰まる。


 ふう、と呆れたようにため息を吐いて、車から降りる彼女。


「そんなんじゃ、みんな蓮斗の側から離れて行っちゃうよ?

蓮斗には、空しい人生しか残らないよ。

さよなら」


 胸を切りつける言葉を残して、閉められた車のドア。


 確かに、本気だったとは言えない。

けど僕なりに、本気になろうとしてたんだ。


 でもいつも……

こうやって悲劇は繰り返される。


 もう女の子と付き合うの、やめよっかな……

結局僕は、その存在を傷つける事しか出来ないんだ。


 あの、めんどくさい元カノを筆頭に。



 そう、事の発端は……

僕が浮気をして、元カノを傷つけてしまったからなんだ。


 それは後悔してもしきれない、まさに抹殺したい黒歴史で……


 この際めんどくさい所はさて置き。

いつも明るくてパワフルで、あっけらかんとした元カノが……

その時は、ものすごく悲しそうに泣きじゃくってて。

僕は胸を、これ以上ないくらいエグられた。


 そして今度は怒り出した彼女に、別れを突き付けられて。

さらにその後日、これからは友人として付き合うように命じられた。


 当然僕は、好きな子とそんな関係でいるなんて耐えられなくて。

じゃあ浮気するなよってトコは置いといて、拒んだんだけど。

悪いと思ってるなら罪滅ぼしをしろと、ごもっともな意見で押し切られる羽目に。


 その切り替えの早さは、一見サバサバしてるようで……

僕にとっては、実にめんどくさい。


 とはいえ、その負い目があるから逆らえない。

つまりはその負い目こそが、元カノに握られてる弱味なんだ。


 だからって。

この関係は他の誰かを傷つけて、新たな負い目を増やしてく。


 いや、僕が彼女を作らなきゃいい話なんだけど……

でも好みの女の子から告られたら嬉しいし。

1人じゃ寂しいし。


 しかも元カノだけ、次から次へと恋愛を重ねてるなんてズルい!

それに……

って、ズルくはないか。

あれだけ可愛いけりゃ、男がほっとかないだろうし。


 って、いや!

みんなあの、めんどくさい中身を知らないからだ!



 とにかく僕は、当分恋愛はいいや。


ー「蓮斗には空しい人生しか残らないよ」ー

そうだね……

そして、傷つけてごめん。


 だから……

どうせ空しい人生なら、もう誰も傷つけないようにしたい。



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[一言] だ、ダメ人間だぁ でもスキかも...
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