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「あのさ、なんで優先してると思ってる?
キミの事が好きだからでしょ。
そもそもちょっとした事でも、僕が今までキミの要求を断った事がある?
僕はどんな小さな要求でも肝心な時でも、泣いてても泣いてなくても、キミの要求なら最終的には断らないし。
それはキミと関われるだけで嬉しかったからなんだけど、全然気づかなかった?
だからさ……
ずっとそばにいてよ。
僕はキミがいなきゃ、人生楽しくないんだよっ!」
「ウソっ!
めんどくさいってゆってたクセにっ」
あ、鍋パの時の事根にもってる……
てゆうかキミは僕の渾身の告白シュートと甘い流れを、何回防げば気がすむの?
やっぱりキミは、こんな時でも例外なくめんどくさい。
「自分でもめんどくさいってわかってるし!」
え、心の声キャッチしちゃった!?
てゆうか自覚はあったんだ……
じゃなくて!
「っ、だからそんなとこも楽しいしっ。
そんなキミが好きなんだよ!」
「っっ……
じゃあなんで浮気なんかしたのよっ!」
「それはっ……
出来心ってゆうか……
キミが取り合ってくれなかったから……」
「はあっ!?バカじゃないのっ!?」
「バカだよっ!
どーしょうもないバカだよっ……
だけどこんなバカ、キミじゃなきゃ面倒見切れないよ!
それにっ……
キミみたいなめんどくさくて不器用なコだって、誰にも任せられないよっ!
だからっ……
今度こそずっと、僕に面倒見させてよっ」
なんかもう抑え切れなくなって、再びキミをぎゅっと抱きしめた。
「っっ……
もおっ、2度と浮気しないっ?」
「しないよ、誓う。
もうこんな思い懲り懲りだっ……」
「だったら……
幸せ百倍だからねっ?」
おっと、いきなり前の話に戻っちゃう?
しかも2桁上を行っちゃいますか!
だけど……
「っ、司沙っ!!
ありがとうっ……
もう何万倍だって頑張るよっ」
またキミといられるなら、なんだってこなせそうな気がするんだ。
「っ、名前……
やっと呼んでくれた」
僕だって、ほんとはずっとそう呼びたかった。
そしてキミは、あからさまに線引きし始めた僕を。
わざとらしいとか、バカじゃないの?とかってけなしてたっけ。
けどそれは線引きだけじゃなく。
キミを取り戻せるまで呼ばない、って願掛けみたいにもしてたんだ。
「……うん。
好きだよ、司沙……」
この現実を確かめるように、愛しさをぶつけるように……
その名前を口にして、頬をすり寄せた。
「バカ蓮斗っ……」
「うん」
「クソ蓮斗……」
「うん……」
「大好き、蓮斗っ」
「んっ……
僕も司沙が大好きだよっ」
しがみついて来たキミを……
ぎゅっとぎゅうっと、もう離すもんかと抱きしめた。
キミの心のネットを揺らして。
さんざん拗れた僕らの想いが、今やっと……
ほんとにやっと繋がった。
「司沙、顔上げて?」
「え?」っと僕を見上げたその顔を、両手で捕まえるようにして。
その唇にキスを落とした。
うわヤバい、壊れるかも……
ようやく取り戻した唇は、今までキスだと思ってたものはなんだったのかと思うほど別格で。
そのまま2人、溶けていく……
つもりだったのに、キミが僕の胸を押し退ける。
「え、なんのまね?」
「っ、人目があるじゃん!」
いや暗いし、キミがそれゆう?
「僕はもう、誰も目に入らないよ。
今もこの先もずっと、司沙しか映らない」
気持ちと現状をリンクさせて、続きを促すと。
「っ、その目ふし穴なんじゃなぁい!?」
「いや喩えだからねっ!?」
そんな調子で妨害される。
なのに、途端しおらしく。
「てか、さっ……
久しぶりすぎて、これ以上やると心臓が壊れそーなんだけど……」
なんて。
悩ましげな表情を浮かべて、そう視線を泳がせる……
なにその下げて上げる巧妙プレイ!
相変わらずキミは、ツンデレ小悪魔で。
僕はいっそうあおられる。
「僕だってそうだよ。
けど……
たとえ壊れたって、キスしたい」
そう囁いて、再び唇を奪いかけたその時。
「ねっ、その前にお腹すいたんだけどっ」
またしても妨害する恐るべきキーパー。
いや、ちょっとは甘い流れに身をまかそうよ!
でも結局、僕がキミに流される。
「……じゃあ今日は、司沙の手料理が食べたい。
だって僕のためには1度しか作ってくれなかったから」
「なにそれヤキモチ?
う~っざ!」
なんてケラケラ笑って……
酷くない!?
だけど拗ねると、キミは照れくさそうにカミングアウト。
「まぁ、ぶっちゃけさっ?
1回目で失敗しちゃったから恥ずかしかったんだよね。
だから猛特訓したんだけど、それがバレるのも恥ずかしくてさっ」
そうだったんだ……
てゆうか猛特訓したんだ?
確かにあの塩バター鍋は絶品だったし、下ごしらえもキレイで完璧だった。
そんなキミは、やっぱり不器用にいじらしい。
「それに、蓮斗が作ってくれるのが嬉しくてさっ。
その姿眺めて幸せ感じちゃってたんだよね~」
そんなふうに思ってくれてたなんて……
「またいくらでも作るよ。
あと僕はさ……
あの時からずっと、司沙の料理がどんな料理よりも1番好きだよ」
キミは一瞬、言葉を失くして。
「はあっ?バカにしてんのぉ!?」
「いやどこもしてないよねぇ!?」
だからちょっとは甘い雰囲気に流されようよ!
「じゃあ作ってあげるからさっ?
今日はとことん、今までの気持ちを語らせてね!」
「えっ……」
それはあんまり、詳しくは語らなくていいかな……
うん、ざっくりでいいよざっくりで!
なんて言えないから。
「うん……
なるべくコンパクトにまとめてくれると、解りやすいかなっ」
だって今キミは隣に居る。
それだけで胸がいっぱいなんだよ。
「はぁあっ!?なにそれ最低!
私の話がダラダラしててわかりにくいって言いたいワケっ?」
「いや、そーじゃなくてっ……」
「だいたい蓮斗はさぁ!」
ああ、これからも。
めんどくさくて……
楽しい日々が続いてく。
ギャアギャアとはしゃいでるような彼女と戯れ合いながら、そうニヤける僕だった。
time's up