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元カノがめんどくさい  作者: よつば猫
アディショナルタイム
17/18

「本庄さんっ!」


 ガシッとその腕を掴んで引き止めると同時、こっちを向かせると。


「えっ……」

泣いてるキミに、面喰らう。


「っ、ええっ!?

なんで泣いてんのっ?」


「っ、うっさい!

そっちこそなんで追っかけてくんのよっ!

もう2度と、蓮斗の前で泣きたくなかったのにっ……」


 や、そんな事言われても……

と狼狽える。


「てかなんでいんのっ?

縁切ったイミないじゃん!

こんなとこ来てるヒマあったら、もっと奈々ちゃんとの時間大事にしなよっ」


「っ、奈々とはさっき別れたよ!」


「え……

え、別れたって、蓮斗がフったのっ?

なにそれイミわかんないんだけどっ。

てかバカなんじゃない!?あんないいコいないよっ?

だいたいっ、別れてすぐ他の女んトコに来るとか、アタマおかしんじゃない!?

なんかもっ、最っ低ぇ!」


「っ、最低だよ!

わかってるけどっ……

キミのせいでっ、もう自分が保てなくなったんだよっ!」


「はあっ!?

なに人のせーにしてるワケぇ!?」


「や、そーじゃなくてっ……

てゆうかキミこそなんでプロポーズ断ったんだよ!?

遥さんみたいないい人、そうそういないよっ?

しかもなんでOKしたなんて嘘つくんだよ!」


「も、いっぺんに聞かないでよっ!」


 ああぁ、どーしてこうなるんだろう!

こんなケンカ腰になんかなりたくなかったのにっ……

そう思った矢先。


「……だって。

そーでも言わなきゃ、この関係に終止符打てないじゃんっ。

そーでも言わなきゃ!蓮斗を解放してあげられないでしょお!?」


 感極まった様子で、嗚咽まじりに嘘の理由を吐露する元カノ。


「蓮斗は優しいからっ!

遥と別れたら心配して、縁切るなんて拒否するかなって思ったし。

蓮斗のせいで別れた事にしたって、責任感じて苦しむでしょお?

幸せなフリして、蓮斗を罪悪感から解放してあげるしかないじゃん!」


「別に解放なんかしなくていいよっ!

てゆうか、なんで今さらそーしようと思ったワケっ?」


「っ……

だって蓮斗っ、今回はかなり本気みたいだったしっ?

そんな蓮斗の邪魔しちゃうワケにはいかないじゃん!

しかも奈々ちゃん、すごくいいコだし……

あんないいコにヤな思いさせるワケにはいかないじゃん!


もともと蓮斗はさぁ?私の事めんどくさそーなカンジだったしっ?

プロポーズされても、どーでもよさそーに突き放されただけだったし。

もう身を引くしか……

いーかげん諦めるしかないじゃん!」


 そう吐き出して、余計泣き出すキミを前に……

胸がドクンと騒ぎだす。


「めんどくさそーな態度とか、突き放した態度しちゃったのは、ごめん。

けど、諦めるの意味がわかんないんだけど……

キミは僕を許せないんだよね?

第一、先に他の人と付き合い始めたのは、キミだよね?」


「そーだよっ、許せなかったんだもん!

蓮斗のコト、すごくすごく、ほんとに大好きだったのにっ……

蓮斗といると楽しくて、めちゃくちゃ居ごこちよかったし。

心を思いっきり許してたから!甘えられたしっ……

完っ全に信じてたのにっ!」


 胸が、キミの涙とその言葉で……

当時の、例えようもない激しい痛みをぶり返す。


「だからなおさら許せなかった!

なのにそれでも大好きでっ……

好きで好きで、離れらんなくて!

せめて友達として、縛り付けておきたかった……

だけど苦しくてっ!

私も違う人と関係を持てば、許せるかなって思ったし。

もういっそ、蓮斗の事なんか忘れてしまいたかったっ……」


 わかるよ、その気持ち……

そしてほんとはキミが誰よりも、この未練感情に振り回されて。

辛くて、きっとめんどくさい思いをしてたんだね……


「っっ、ごめん……

本当に、ごめんっ」


「っ、ごめんじゃすまないって!

おかげでこっちは、誰と付き合っても忘れらんなかったってゆーのに」


 え、それって……

ー「心に居座ってる人がいて、きっと一生出て行かないからって」ー

遥さんから聞いた言葉が頭をよぎる。


「けど遥と出会って、やっと蓮斗のコト忘れられると思ったの」


 再び騒ぎ始めた胸が、いったんそれで沈められる。

じゃあなんで断ったの!?


「なのに、いざプロポーズされるとさっ?

OKしたら、蓮斗との未来はなくなるんだなって。

そんなのヤだ!って思っちゃって……


結局私はさぁっ?

蓮斗を忘れる事なんか、出来ないんだって思い知らされてっ……

蓮斗じゃなきゃ幸せじゃないって、わかっちゃったんだもんっ」


 そう言ってまた、わんわん泣き出す姿を前に……


 ちょっと待って!

さっきから胸を締め付ける言動があふれまくってて……

切なさで息が詰まる。


 もう、抱きしめずにはいられなかった。


「ちょっ……

っ、なに蓮斗っ、離してよっ!」


「今度は僕の番!

ちゃんと聞いて?」

腕の中で抵抗するキミをなだめると。


「……ヤだ、聞きたくない。

聞かなくてもわかってるしっ」


 えええっ、そーくる!?

てゆうか、なにがわかってるゆーの!?


「頼むから聞いてよ!」

腕を解いて肩を掴むと、仕切り直してキミを見つめた。


「改めて、傷つけてごめん。

それから……

ずっとそんな思いをさせて、ごめん。

本当に悪いと思ってたから……

キミが許してくれるまでは、やり直そうなんて都合のいい事言えなかったし、そんなアプローチも出来なかった。


 けど、それじゃダメだって気づいたんだ。

本当に悪いと思ってるから、そのぶん何倍も幸せにする。

だから……

もう一回やり直そう!」


「っっ、ほらやっぱり……

そんな優しさいらないからっ!」


「ええっ!?

なんでそーなるワケっ?」

渾身の告白だったのに!


 キミはなかなか、一筋縄にはいかないキーパーだね……

いや、わかってた事だけど。


「あーもなんでゆっちゃったんだろ!

ごめん、涙も気持ちもあふれて、止めらんなかった……


蓮斗はさっ?ちょっとしたトラブルとか相談ならともかく、私が泣いたらどんなに嫌でもその内容を断んないじゃん?

さんざん泣きじゃくった後で頼んだから、あんな不毛な関係続けてくれたワケだし」


「いやそーゆうワケじゃ」

てゆうか頼んだってゆうより、命令だったような……


「今までフラれて来たのだって、私のせいじゃないかって事くらい気づいてる。

なのにそれでもムリして……

だからもう2度と、蓮斗の前で泣きたくなんかなかったのに!

もう切なくてたまんなくてっ……

そしたらやっぱり、また私の気持ちを優先して……」


 そんなふうに思ってたんだ……

まったくキミは、なんて不器用にいじらしいんだろう。


ー「肝心な時だと、嫌でも断れないじゃん?」ー

インフルで寝込んでた時の言葉が頭に浮かぶ。


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