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元カノがめんどくさい  作者: よつば猫
アディショナルタイム
16/18

 バカだよな……

あんな天使を差し置いて、悪魔を手に入れようと奮走してるんだから。


 けど本当にバカなのは……

今日までただ、指をくわえてチャンスを待ってただけって事だ。


 こんな平行線なら悪くない、なんてのも。

そう思い込む事で心に防御線を張ってただけで。


 自分にいいパスが回って来るのを待ってた僕は……

取りに行こうと攻めてなかった!


 なのに、ようやく攻め始めたところで。

「え、早番っ!?」


 仕事が終わったら話す時間をもらおうと、そのアポ取りに来たつもりが……

さっき帰ったとゆう肩透かしを食らう。

まさしく、試合さながらの展開。


 それならと、再度電話をかけたけど……

やっぱり繋がらない。


 もしかしてシカトしてる!?

それとも僕の番号なんかとっくに消去してて、誰だかわかんないからスルーしてるとか……


 とりあえず。

電話をかけ直してくれるよう、留守電を入れてみたものの……

待ってる間、落ち着かない。


 かといって、アパートはとっくに引き払ってるだろうし。

僕がそうこうしてる内にも……

アディショナルタイムは、どんどん減ってるワケで。

結婚話はどんどん進んでるワケで。


 まさか、もう籍入れたって事はないよねぇ!?

ああどうしようっ。

こうなったら避けては通れない……

1対1の真っ向勝負だ!


 相手は僕なんか足下にも及ばない、最強のフォワード。

だからってもう、自分の気持ちから逃げるワケにはいかないんだ!


 そうして僕は……

元カノが住む、遥さんの家に向かって車を走らせた。


 覚悟を決めて、チャイムを鳴らすと。

出て来たその人は、キョトンとした顔を覗かせる。


「あれ、蓮斗君……

どうした?」


「あのっ、本庄さん居ますかっ?

彼女と話がしたいんですっ」


「……悪いけど、それは無理だな」


 えええっ!遥さんっ……

ーこれからも司沙と仲良くしてやってくれな?ー

ってゆってたよね!?


 もしかして、必死さを醸し出してる僕の気持ちに気づいたとかっ?

だったらここが勝負どころ!


「っ、お願いします!

今さら勝手なのはわかってます、だけどっ……

僕も本庄さんが好きなんです!

彼女が必要なんですっ。

彼女じゃなきゃダメなんですっ!」


 カッコ悪くたって、情けなくたって……

死にものぐるいで足掻いてやる!!


「そうじゃなくて……

あのさぁ、蓮斗君。

住所教えるから、それは直接司沙に言って来な?

俺はもう司沙とは関係ない……

とっくにフラれてるんだから」


 え、なにそのフェイント……

って、ええっ!?


「え、本庄さんにプロポーズしたんじゃ…?」


「したよ?

だけど断られた。

心に居座ってる人がいて、きっと一生出て行かないからって」


 途端。

なんでか心が、どうしょうもなく打ち付けられる。


「その様子じゃ、そっちも奈々ちゃんと別れたんだな」


 その言葉に、気まずく視線を流すと……

遥さんは「待ってな」と、いったんリビングに消えて。


「まっ、これ以上被害を増やさないためにも、検討を祈るよ。

じゃあな、蓮斗君。頑張れよっ」


 そう言って、元カノの新しい住所が記載されたメモをくれた。


 こんな僕を応援してくれるなんて……

遥さんみたいないい人をフるなんてバカだよキミは!


 もちろん僕的には助かるし、人の事言えないんだけど。

第一、心に居座ってる人は僕じゃないかもしれないけど。


 それでも僕は、キミのそばにいたい。



 遥さんに心からのお礼を告げると。

今度はキミの新しいアパートに向かって車を走らせた。


 なんだか、こうもあちこち奮走してると。

ドライブならず、ドリブル3人抜きでもしてる気分だ。


 てゆうか。

なんでキミは、プロポーズをOKしたなんて嘘ついたんだろう……

そんな事を考えてたら、すぐに目的地へとたどり着いた。


 ヤバい、緊張して来た……

焦らされ続けたせいで、勢いは緊張感に変化を遂げる。


 車を近くのコイパに停めて。

深呼吸の後、チャイムを鳴らすも……

何度鳴らしても無反応。


 え、留守?居留守!?

一応電話もかけてみたけど……

相変わらず繋がらない。


 なんなワケ?一体……

キミってこんなに手の届かない人だった!?


 ああ、もうっ!

早く声が聞きたいのに……

いいかげん会いたくてたまらないのにっ。


 はあぁ、と深いため息を吐き出したのと同時。

階段から現れたその人と、バチっと目が合う。


「え、本っ……」

心臓をドキリとさせて、その名前を口にしかけた途端。


 踵を返して逃げだす彼女。


 え、ええっ!?

なんでそーなるワケ?

いや、意味がわからないんだけど!

なんて思いながらも、とりあえず追いかけるしかない。


「ちょっと待ってよ!

なんで逃げるのっ!?」


「だって!

蓮斗が追っかけて来るからっ!」


 いや、追っかける前から逃げてたよねぇ!?

ああもっ……

キミってほんとに、どこまでもめんどくさい!


 だけど実は。

そのめんどくさい所が、ほっとけなくて可愛くて……

楽しくて!


 それに本当は……

めんどくさいのは僕なんだ。


 キミの声が聞きたかったから、どんな深夜でも電話を掛け直してたし。

キミに会えるのならと、どんな時でも駆け付けた。

キミに頼られたくて、どんな話でも真剣に聞いたし。

だけどあまりにも脈ナシで、諦めて忘れようと他の恋を受け入れた。


 それでもやっぱり、僕の心はキミばかりで……


 そんな自分を打ち砕くように。

事実めんどくさいキミをもっとめんどくさい存在に扱って、内心毒づく事で……

キミにこびり付いたこの心を、無理やり引っ剥がそうとしてたんだ。


 つくづく天邪鬼で、最低で……

なんてめんどくさい。

自分でも呆れるよ。

こんなんじゃ取り戻せるはずもない。


 だけど、そんな自分はもうやめた!



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