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元カノがめんどくさい  作者: よつば猫
平行線
11/18

 そして、その日がやって来た。



「わざわざすみませんっ」


「いやいやっ、俺が誘ったんだし!

それに、どのみち家まで案内しないとなっ」


 待ち合わせした場所まで迎えに来てくれた遥さんと、挨拶を交わす。


「あ、彼女の奈々です」


「初めましてっ、清松奈々です。

今日は誘って下さって、ありがとうございますっ」


「こちらこそっ、来てくれてありがとう!

俺は須藤遥、気軽に遥って〜」とまた、お互いの名前呼びが提案される。



 車中の会話では……

遥さんが大手一流企業の主任をしてると知って、さっそく敗北感とゆう痛手をくらう。

そりゃあ僕の会社もそこそこだけど、立場はしがない営業マン。


 この先起こるであろう、さらなる痛手に不安を抱えつつ……

鍋パ会場こと、立派なマンションの1人暮らしには広そうな遥さんの家へ到着。


 はい、第2の痛手。

どーせ僕は大学時代から住んでるしがないアパートだもんねっ!

なんてヤケクソ……



「ただいま~!戻ったよ~」


「おかえり~!」


 遥さんの声掛けに対して、奥から聞こえた元カノの声に……

けっこーな痛手をくらう。

いや、ここでその4文字は聞きたくなかった。


 僕がそのダメージにやられてる隙に。

「いらっしゃ~い!」と出て来たその人に、奈々が率先して挨拶をすると。


「初めましてっ、本庄司沙ですっ!

ぜんぜん気とか使わなくっていーから、仲良く司沙って呼んでっ?」から始まって。

遥さん同様、お互いの名前呼びが提案される。


 キミら似たものカップルなの?



 リビングに入ると。


「これ、司沙さんがひとりでっ?」


 完璧なまでに準備された具材やテーブルセッティングを映して、奈々が申し訳なさそうに尋ねる。


「まぁ途中まで遥も手伝ってくれたし?

それにこの人鍋好きだからさぁ!

最近じゃいつもの事ってゆーか?」


 ふーん。

鍋とはいえ、遥さんには手料理作ってあげてるんだ?

ふーん……

や、別に全然いんだけどさ!



「え~、それじゃあ!

親睦を図って、愛すべき鍋を楽しもうっ。

乾杯~!」

会の始めに、そう音頭をとった遥さん。


 もうひとつの目的だったはずの、看病のお礼については触れられず。

奈々に今回のいきさつを話してなかった僕としては、ありがたかった。


 きっとそれは遥さんなりの配慮で……

鉢合わせしたあの時、もしかしたら今も不安だから。

同じ立ち位置の奈々もそうならないように、気遣ってくれたんじゃないかと思った。


 だとしたら、なんていい人なんだろう。

しかも、「しっかりフォローする」の宣言通り……


「奈々ちゃん、ホタテ食えるっ?」


「はいっ、大好きですっ」


「よっしゃ!たーんと食いなっ?

あとほらっ、塩バター鍋と言ったらポテト!

あっ、椎茸も旨いぞ~」


「ああっ、入れすぎですっ。

でも、ありがとうございますっ!」

山盛り状態を前に、笑い出す奈々。


 どって事ない気遣いだとしても。

遥さん特有の気さくな雰囲気と、そのフレンドリーさが功を奏して……

奈々は楽しそうだ。


 やっぱりこの鍋パは、山口さんの胸を痛めつけるパーティーだ。

いっそ嫌な人だったらよかったのに……



「それにしてもイケメンだな~!

いや改めてっ」

そう僕に視線を向ける遥さん。


 いきなりな誉め殺しに、鍋から取ってるアスパラを思わず落としそうになる。


「奈々ちゃんもめっちゃくちゃ可愛いし!

ほんと、お似合いのカップルだよなぁ~。

それに引きかえ……

司沙ぁ、俺なんかで良かったのか~?」


「な~に言ってんのっ、遥も十分男前だって。

それに蓮斗の場合は……残念なイケメン?

もぉっ、奈々ちゃんみたいなステキなコ、蓮斗にはもったいないって!」


 言ってくれるね本庄さん!

てゆうか失笑してるその人は論外として、奈々までそこ笑っちゃう!?


 思わず不満のオーラが込み上げると。

ふと目が合ったその人は、とたん言いすぎたと言わんばかりに、しゅんとした顔を覗かせる。


 ああもう、なんてめんどくさい!


「でもそんな所もっ」

そこで奈々が、笑いを収めて話し出す。


「ダメな所も嫌な所も。

好きな人の事は、全部含めて受け止めたいです」


 それは、僕の胸を射抜くには十分すぎる言葉で……


 そっか。

奈々が笑ったのはきっと、本庄さんへの配慮で。

そんな事も含めて、なんていいコなんだろう……

改めて、このコを大事にしたいと思った。


「わかるっ!」

すると今度は遥さんが、溜め込んで放つように口開いた。


「俺もそう!俺なんかのめり込んじゃう方だから尚更っ。

なにがあったって愛し抜くしっ。

もう浮気する奴とかの気がしれないよ!」


 すいません、それは僕です……

最後のセリフに、なによりも痛手をくらう。


 そもそもそれは、敗北感以前の問題で……

僕が致命的に論外な所。

もう情けなくて、申し訳なくて……

元カノのキミを視界に入れるのも怖くなる。


 いや飲もう!

とりあえず今は、飲んで忘れてせっかくだから楽しもう!

そうなんとか無理やり切り替える。


 いいタイミングで話題も他へ切り替わって。

しばらく鍋を堪能しながら、飲み進めてると……

ビールが進まなくなった奈々に気づく。


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