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弊社の太陽☀️  作者: 睦月いつか
弊社の新卒社員
1/1

01

 時は3月末。


 朝8:15、1度目のアラームが鳴る。


(今日は、なんだっけ、社外の打ち合わせはなかったような。じゃあ、眉毛だけ書けばいいから……)


 ……


 ……


「……やっべ!!」


 3度目のスヌーズでようやく起き、顔を洗って歯磨き。前髪を濡らし、適当に髪をまとめ、その辺にあった臭わない(だろう)服を着る。もう眉毛を描く時間はない。


(いつもの電車まであと9分、2分走れば間に合う。眉毛は乗り換えのホームで描けばいいや。)


 ここ5年くらい、朝ごはんを食べていない。ていうかそんな時間があるならギリギリまで寝てたい。


 そう、ここ5年はずっとギリギリの生活。ギリギリの起床、ギリギリの電車、ギリギリの出勤。ギリギリの身だしなみ。精神状態もギリギリ。


 仕事って何が楽しいの?終わらない仕事、上がれない定時、上がらない給料。仕事してんだかよくわかんない上司、仕事が遅くて私の2番の1も働かない同僚。


 毎日同じことの繰り返し。


 心の支えだった友達も、続々結婚、出産。違う人生を歩み始めている。仕事をバリバリしている友達とも、話が合わなくなってきた。


 5年前の恋人に浮気されて以来、彼氏もいない。


 週5日も働けば、あとの2日は寝て終わり。


 家族としかしないLINE。通勤時のスマホもインスタのストーリーをざっと見て終了。


(あー、今日のランチ何食べようかな。)



-----



 9:58、間に合った。タイムカードを押す。


 このクソ会社は、女性が朝、部内でコーヒーを配るしきたりがある。この部の女性は、ふたまわり歳上のお局と私しかいない。必然的に、やるのは私。


(今どきありえん。)


 安い食器用洗剤で手はぼろぼろ。29歳の手じゃねえ。まずいコーヒー淹れてやりたい気持ちをおさえながら、今日も8つ、普通のコーヒーを配る。


「篠原の淹れるコーヒーはうめーなー」

 適当部長が適当に言う。私も適当に笑い流しながら、やっと席につく。いつものようにこの先の案件のスケジュールを整えて、気が向いたら企画書を作り、気が向いたら売り込みの電話でもしてみようかな。


 私の関心は、自分の数字を達成して少しでも給料を上げること。仕事の「やりがい」なんて微塵も感じない。


「今日も張り切っていくぞお」

 なんて言っている部長は、10分ただコーヒーを啜っている。眠そうにスマホをいじっている後輩と、毎日体調不良で遅刻する先輩。お局はパソコンに齧り付いて忙しそうに独り言を言っている。それが毎日。


 なんてつまらない世界。


 部内で力を合わせて、目標を達成しましょう!……なんてのは口だけで、実際はみんなやる気がないのだ。


 悲しいことに私もその一員で、でも何も動けない自分に嫌気がさしている。


(私も流行りの異世界転生したい……)


 ボーッとしながら書類を作っていると、適当部長から招集がかかった。


 

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