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異世界カクゲーSPIRIT'sサイキョー伝説[↓↘→+s] ~知ってる?異世界って格ゲー無いんだぜ(絶望)……ハッ!無いなら作ればいいんじゃね(閃き)~  作者: 宮間
Round 4:城壁ステージ

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73:6日目の夜

!作者注釈!


うわぁ、昨日予定の更新予告をブッチしちゃった……。

更新時間に待ってた人、超すまん、反省。

俺、前世はニッポン人、名前はロック!(転生者あいさつ)




街道脇に荷車を止めて、お昼の準備中。


調理の分担作業している女僧侶(シスター)のルーナさんが、なんだか妙な事を()いてきた。



「── え、リュートって人?

 いや、知らない」


「えぇ……本当に?

 こう、ポロロン!って、いつも弦を鳴らしてる男の人だよ?」



ルーナさんが、ヴァイオリン弾いてるみたいな身振り(ジェスチャー)

なんでも、数年前に『本村』にやって来て、そのまま居着(いつ)いた人らしい。



「いや、本当に知らん。

 何でまた、俺の知り合いと思ったの?」


「あー……うん。

 ロック君によく似てるのよ、その人。

 その、不思議な(・・・・)魔力の(・・・)使い方(・・・)が」



また、よく分からん事を言われる。



「不思議な、魔力の使い方?」



なんの話だ、それ?



「……お兄様以外に、こんな魔力の使い方をする人がいますの?」


「それはまた、珍しいのう」



俺としては自覚がないのだが、妹弟子(アゼリア)剣帝(ジジイ)が反応する。



「こんな魔力の使い方って……

 別に、普通だろ?」


「いや、絶対普通じゃないでしょう?」

「いや、絶対普通じゃないですわっ」

「いや、絶対普通ではないじゃろ」



ルーナさん、リアちゃん、ジジイ、3人から口を揃えて否定された。



最初はルーナさん。



「そもそも、何で魔力を細い糸みたいにしてるの?」



え、青い魔力(なぞパワー)使う練習の事?

糸をグルグル巻きにする、前世ニッポンの釣りの巻き軸(リール)のイメージ鍛えてる感じ?

あと、俺の魔力量がザコだから、省エネのため魔力消費を極小化していったらこうなった的な?



次はリアちゃん。



「お兄様、その糸状の魔力を、あちこち繋いでますよね?」



え、有線制御の接続の事?

この世界の魔法って、遠隔操作とか無線制御とかが苦手な仕様みたいだし。

遠隔発動(トリガー)させるだけならともかく、発動中の魔法の術式内容(プログラム)を書き換えるには、有線接続しておかないと。



最後はジジイ。



「前から疑問だったんじゃが、その妙な魔導文字の配列はなんなんじゃ?」



え、魔力文字を縦4×横4の碁盤目に配列している事?

前世ニッポンの表意文字(カンジ)みたいに、文字を図形化してんだよ。


あと、種類ごとに特徴つけて、パッと見た目で解るようにして。

『ワ型文字』で始まる構文は、最上段に拡大して付けて『かんむり』みたいに。

『L型文字』で終わる構文は、最下段に拡大して付けて『しんにょう』みたいに。

あと、『V偏』だと何の属性とか、『セ囲い』はこういう効果、『C囲い』はこういう効果、とか。


共通点から規則化した図形にしておくと、構文(スペル)ミスを見付けやすいし、判別しやすいし、多分、脳ミソの処理も軽くなってるし。

良い事づくめなんで、みんなオススメ。



── そういう事を、軽く説明する。


「うわぁ……」

「はぁ……」

「うう~ん……」



みんな揃って、感心半分呆れ半分みたいな、微妙な吐息。



「……リュートさんも、かなりだったけど。

 この子も、負けず劣らず変わってるわぁ……」



ルーナさんには、そんな事まで言われてしまう。



いや、だからさ。

俺、魔力量がザコ過ぎるんだから、MP節約を頑張らないと仕方ないじゃん、って?



(まあ、魔力の糸形状化については、アレだ。

 昔、今生の兄(アニキ)がこんな訓練してたのを、見よう見マネでやってたらクセになっただけなんだけどな!)



この異世界での実兄(アニキ)って、剣術の基礎も知ってたし、魔力量もかなりデカかったし、魔剣士の才能あったのかもなぁ。


まあ、本人は、生まれ故郷で幼なじみ(割と美人!)と結婚して子供まで出来てるし。

常にポーカーフェイスな実兄(アニキ)だが、嫁と子供には優しいし、まさに絵に描いたような家庭円満で幸せそうだから、今さら魔剣士なんて興味ないだろうけど。





▲ ▽ ▲ ▽



「それで、その『リュートさん』って人。

 具体的には、どんな魔法を使うんだ?」


「え、えぇ……っと」



ルーナさんに聞き返すと、何か言いにくそうにゴニョゴニョ。



「えっと、冗談じゃないから、笑わないでね?」



そんな前置きすら、してくる。

どんなヤツなんだよ、その『リュート』とか言う楽士……



「魔力を繊細に制御して、弦の音を変えるんだって……」


「うん、それで?」


「……本人が言うには、それだけ」


「ん?

 そのリュートって人、魔力操作で楽器の音が変えられるだけの人なの?」



何の役に立つんだ、それ。



「本人が、よ。

 本人が言うには、それだけらしいのよ。

 ── でも違うの!

 絶対それだけじゃないのよ!

 そんなので、魔物だらけの<ラピス山地>までひとり旅できる訳ないし!」



そりゃまあ、そうだろう。

ポロロンポロロン鳴らしてたら、魔物が催眠状態になるとかなら、まだしも。


ってか、そんな便利能力なんて、このファンタジーな異世界でも聞いた事もない。



「なんかね、弦を指に巻いて、バーって広げるのっ

 すると、鉄製の弦が伸びて、魔物に巻き付けて引っ張ったり、投げ飛ばしたり、スゴい事するのよ!」


「な、なにぃ……い、糸使い……だとぉ……?」



しかも、鋼鉄製の弦だと!

つまり、本物の(リアル)鋼糸(こうし)使い』!?


なんてこった、中二病(ちゅうにびょう)権化(ごんげ)じゃねえか!

さすがは異世界、マジ半端(ッパ)ねえな!



(や、ヤバイ……っ

 ちょっとだけ俺、ソイツに弟子入りしたくなってきたぞ!)



── いや、いかんいかん!


いくら落ちこぼれでも、俺はジジイの一番弟子!

魔剣士失格のナマクラ剣士だとしても、その恩義だけは忘れねえ!



「それ、どうやって操ってるんですか?って()いても、『楽士に出来るのは、良い音を鳴らす事だけ』とかしか言わないし……

 なんか、すごい変な人なのよぉ~っ」



ルーナさん、思い出しただけで、ジタバタ。

多分、その人の事、すごい苦手なんだろうな。

カエルやヘビ見た女子みたいな反応だし。



しかし、『音』か。

音って、つまり空気の振動。

んじゃ、楽器を鳴らす振動を利用して、弦を操ってるのか?



(うぅ~ん、新しい『必殺技』作るヒントになりそう……

 マジで一度会ってみたいな、その『糸使い』さん)



そんな推測をしてると、ルーナさんが何かグチグチ言い続けてる。



「盗賊とかに会わなかったんですか?ってこっちは心配しているのに、『音楽は多くの人の心を揺り動かす術なのであ~る』とか、変な事ばっかり言うし」



ああ、なるほど。

楽器演奏で説得(物理)って事か。


鉄製の弦とか言ってるから、それでグルグル巻きにして盗賊退治してんのか。



「ひとりで魔物だらけの森とか、平気で入っていっちゃうし。

 すごい変な人なのよ、もうっ」


「……なんか、その『リュート』って人。

 盗賊退治とかで、旅費稼いだりしてそうだな……」



この辺りの魔物相手でも平気なら、対人戦は無敵だろ。



「もー、ロック君も、そういう事いわないっ

 盗賊退治の報奨金でお金儲けとか、そんな危ない事ダメだからね?

 ウチの妹みたいな事、いわないでよ!」



それからしばらく、ルーナさんの妹さんのグチを延々と聞かされ続けた。


俺だけ。


ジジイとリアちゃんは、そそくさと離れて、荷車で仮眠中。

俺も、まだ徹夜の疲れが抜けてなくて、眠いのに。



<聖都>(センダード)で魔導師の勉強している、とか。

ルーナさんの女僧侶(シスター)修行時代に下宿先に乗り込んできてそのまま居着いた、とか。

ドラゴンでも一撃粉砕する攻撃魔法を開発するのが夢、とか。

強くなったら盗賊狩りの報奨金ガッポガッポ、わたしお金持ち~!とか言ってる、とか。



「もう、あの子バカなんだから!

 ねー、本当にどう思います、ウチの妹!?

 お父さんもお母さんも、あの子には甘いし、もう最悪なのよぉ!!」



妹さんも、お姉さんに負けず劣らず、やたら濃いな!

寝不足でこんな話きかされ続けたら、胃もたれしそう(精神的に)。





▲ ▽ ▲ ▽



夜更けの<翡翠領>(グリンストン)

魔物の大侵攻(モンスター・パレード)』の(きざ)しから、6日目の夜。



「フワァ……ッ

 夜に魔物が襲ってこないのだけは、ありがたいな」


「そうだな、フゥ……ン!」



城壁の上で、夜警の若い騎士2人が、あくびを噛み殺した。


そして1人が面白そうに、周囲を見渡す。

照明の<魔導具>(マジックアイテム)に代わり、数百年ぶり並べられた篝火(かがりび)


その炎の周りには、小さな蛾のような小虫が飛び回り、時々炎に焼かれていた。



「見ろよ、不思議なもんだな。

 こういう普通の虫は、炎にたかるってのに。

 虫型魔物は、魔法の光じゃないと反応しないんだぜ?」


「なんだ、お前。

 本当は騎士じゃなくて、学者でも目指してたのか?」


「いや、そうじゃないけどな。

 もし才能があれば、魔導師になりたかった、ってのはあるな。

 まあ、うちが軍人家系って言っても、下っ端の貧乏貴族だ。

 魔導師の学校に通うのは、ちょっとムリだったからな ──」



そんな身の上話をして ── ようやく若い騎士は気付く。

見張り番の相方の、反応がまるでない。


── いや、それどころか、呼吸の音(・・・・)すらも(・・・)



「── お、おい……!?」



炎に見とれていた、若い騎士は、慌てて振り返る。

そして、周囲を見渡す。



人間1人が、まるで幻のように消えてしまった。



「やめろ、バカ!

 こんな時に、タチの悪い冗談はよせ!」



そんな必死の呼びかけに答えるように ──

── ガン、ガラン!と、背後で上がる金属音。


首ひもが切れて、血まみれになった鉄兜が、無造作に転がっていた。



「ひ、ひぃ……っ」



跳び上がりそうな恐怖を押し殺し、勇敢にも先を見上げると、ランランとした金色の瞳が闇に浮かび上がる。


漆黒の毛並みをした巨大な獣が、相棒の首を折ってぶら下げ、城壁の尖塔に着地していた。



── フシャァッ ニャァ~~!!



まるで、苛立つネコのような声が響く。



「こ、このぉっ

 そいつを離せ、化け物がぁ!」



仲間を救おうと、<正剣>(フォーマル)を構えて、内蔵型<魔導器>(マジックアイテム)を起動しようとする。


しかし、彼もまた、同じ運命を辿る事になる。

つまり ── 漆黒の暗天から高速滑空してくる魔物に、死角から(さら)われて、空中で噛み殺されてしまった。





▲ ▽ ▲ ▽




「ルカ! ネコだ! 黒ネコが出た!

 ── つまりは、緊急事態!」


「ああ、相棒。

 ワイも、今ちょうど聞いたとこや」



部屋に駆け込んできた巨漢に、2人の男が目を向ける。


その一方、武装した騎士は巨漢の方に振り返ると、慌てて姿勢を正した。

そしてすぐさま、右拳で左胸を叩くような独特の敬礼を行った。



「これは、神童カルタ殿!

 も、申し遅れましたっ

 わたくし、<翡翠領(グリンストン)>防衛隊でレンジャー中隊を任されています ──」


「── いやいや、伝令さんって。

 そんなん、今はええから、緊急事態やろ?

 それより、早く、おたくの大将の所に戻って伝えてや」



その騎士に、もう1人の男・神童ルカが声をかける。

つとめて、軽い声で。



「神童ルカがこう言うとったってて。

 『空飛ぶ黒猫は、先触(さきぶれ)れや』、と。

 『魔物の大侵攻(モンスター・パレード)』の本隊(ほんたい)が到着するという、先触(さきぶれ)れや」



そして、緊張し、切迫し、鋭く細めた眼光で。



「まさか、またこのような日が来るとは……っ

 ── つまりは、悪夢の再来!」



神童カルタは、忌々しいと、床を踏みしめる。

巨漢の体重をかけた、板張りを踏み抜かんばかりの力で。



「── す、すぐに報告してきます……っ!」



『西方の英雄』神童コンビの ── 『魔物の大侵攻(モンスター・パレード)』という特級の災厄を生き抜いた2人の様子に、伝令の騎士は表情を引きつらせた。


そして、理解した。

帝国の東北部最果ての都市<翡翠領>(グリンストン)で、これから本当の地獄(・・・・・)が始まるのだと。



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