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異世界カクゲーSPIRIT'sサイキョー伝説[↓↘→+s] ~知ってる?異世界って格ゲー無いんだぜ(絶望)……ハッ!無いなら作ればいいんじゃね(閃き)~  作者: 宮間
Round 4:城壁ステージ

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71:弱者の村

月のない夜の<翡翠領>(グリンストン)


兵舎の更衣室で、力のない悪態が響く。



「…………くそぉ……っ」


「おいおい、生きてるのか?

 なんか死人みたいな格好になってるぞ、<魄剣(はくけん)流>?」



更衣室のベンチで放心している男に、シャワーを浴びたばかりの同僚が声をかけた。



「うるせえぞ、<玉剣(ぎょくけん)流>……っ」



若い<魄剣(はくけん)流>小隊長は、顔に被せていた濡れタオル外し、力のない声で怒鳴り返す。



「それだけ元気があれば十分だ。

 ウチの小隊の新入りなんて、ぶっ倒れそうな顔色だったからな。

 ありゃ多分、今夜はうなされるな」


「俺だって、悪夢を見そうな気分だよ……っ

 あの、クソ虫どもの忌々しいツラが目に焼き付いてるぅっ」


「なんだ……

 お前のところも、部下が食われたのか?」


「いや、ウチはまだ(・・)だ……っ

 中等傷(ちゅうとうしょう)2人が、治療院のベッドでウンウン言ってる。

 だが、明日はどうなるか解んねえ……」


「なら、早く帰れ。

 明日は早朝、夜明け前に集合だぞ?」


「チ……ッ、解ってるよ!

 歳が一つ上だからって、いつまでも先輩(づら)すんな<玉剣(ぎょくけん)流>……っ」



魄剣(はくけん)流>の小隊長は、悪態をつきながらノロノロと身を起こす。



「あの鬱陶(うっとう)しい『<羊型魔物(サクリフィサー)>の大群』が、ようやく居なくなったらと思ったら。

 今度は『虫型魔物の大群』とはな……っ」


「でも、夜に寝れるだけでもマシだろ?

 夜行性で、暗闇で城壁を登ってくる<樹上爪狼(ロングクロー)>を相手するより」


「そりゃ、そうだが……」


「虫型魔物の方は、夜目(よるめ)()かなくて助かったぜ」



虫型魔物は、夜目(よるめ)()かないため、夜は寝静まる ──

── だが、『魔力の光』に反応する習性もあった。


一昨日(おととい)の夜は、その情報共有が徹底されてなかったせいで、夜間照明の魔法が点けられたままになり、一部の兵は夜戦を余儀(よぎ)なくされた。


おかげで昨夜(さくや)からは、城壁の上では『松明(たいまつ)』なんて時代遅れの物が、数百年ぶりに(とも)されている。



「くそっ 『虫型魔物ごとき(・・・)』がこんなに厄介だったなんて、聞いてねーぞ」



虫型魔物。

大きくとも犬か人間の子供くらいの大きさで、魔法も身体能力も弱い。

空を飛ぶのと、100近い個体が群れるのが厄介なくらい。


(そう)じてザコの部類だ。

帝国では、『騎士』(エリート)がわざわざ相手する魔物ではない、『冒険者』(はみだしもの)()扶持(ぶち)(かせ)ぎだ。


<翡翠領>(グリンストン)の騎士団には、退治する事も年に数度あるかどうかという程度。

それも、よほどの大群が、街道や街の近くに巣作りした時だけ。

魔剣士にとっては『弱敵(ザコ)の群れ』とはいえ一般人には『十分な脅威』。

街と街を往来(おうらい)する行商人や配達業者に被害を及ばさないように、素早く処理してきた。


広範囲の攻撃魔術で、遠くから一方的に攻撃 ──

弱った敵を、接近戦闘で(とど)めを差していく ──

── そんな、いつもの流れ作業。



「今までの任務じゃ、楽勝の相手だったからな……」



だから、騎士団員の誰もが、数日前の会議の席で失笑していた。

『西方の英雄』とか持ち上げられた若者が、たかだか(・・・・)『虫型魔物の大群』が城壁に押し寄せたくらいの事(・・・・・)を、いかにも『脅威だ(・・・)』と重々しい口調で語るから。


しかし、『攻略側(オフェンス)』と『防衛側(ディフェンス)』が入れ替わると、難易度が激変。



「あの本家の『神童コンビ(お坊ちゃんども)』が! 何が『虫型魔物の大群』だ!

 事実は、もっとはっきりと! 簡潔に! わかりやすく伝えやがれ!」



今度は、人間達が虫型魔物に悲鳴を上げさせられる番となった。





▲ ▽ ▲ ▽



羊魔物が押し寄せて、4日目の朝だったろうか。


急に『あの鬱陶しい羊型魔物の大群』が潮が引くように失せていた。

身代鞭羊(サクリファサー)>の子1匹すら見当たらない。


また、やけに静かになっていた。

周囲の森から鳥の声すら、消え失せていた。

雲一つない空のジリジリと()らす陽気が、何か不吉だった。


連中(ムシ共)がやってきたのは、その日の昼下がり。

最初は、旋風に巻き上げられた砂埃(すなぼこり)のようにも見えた。



『虫型魔物の大群』──

── それも『大量の頭数の群れ』ではなく、『多数の群れが合流した、巨大群』となっていた。



異常だ。

異常事態だ。

そして、異常個体の群れだった。


当日は誰も知りうる事では無かったが、『虫型魔物』は飢餓(きが)状態になると装甲を硬化させて、体色が変化するらしい。


巣作りの泥加工や、強敵をやり過ごすための擬態など、いくつもの生体機能を制限して、活力(エネルギー)をすべて戦闘能力に注ぎ込む ──

── いわば、背水の陣。


そんな死兵(しへい)の群れが、命知らずに突撃してくる。



── ブンブンと(うな)る羽音。

── ガチガチと喉笛(のどぶえ)(せま)牙顎(あぎと)

── 斬り捨てても斬り捨てても、押し寄せてくる無限の大群。



その脅威の光景が、目に焼き付いて離れない。



「いくら魔法を撃っても撃っても撃っても、まるで減りもしねえっ」



若い<魄剣(はくけん)流>小隊長が、目を血走らせて呻きをあげた。



「もはや、『大群』というより『暴風雨』か『雪崩』という感じだったな」


「まさに『災害』って事かよっ

 くそっ、代行も上の連中も、いつまで周辺の村なんかに構ってるんだっ」


「……当初の予定通りなら、あと2日か」



年上の小隊長の言葉に、若く血気盛んな小隊長は暗い表情。



「援軍まで、そんなにか……?

 保つのか、今の調子で……

 爆雷障壁の戦術級魔法だって、そろそろマズいんじゃないのか?」


「おい、やめろよ、不吉な事を言うの」


「俺ら<魄剣流>は魔法剣を重視する分、お前らより魔導技術に詳しい。

 だから解るんだ、都市防御用だとしても戦術級魔法なんてもんは、あんなにポンポン乱発するもんじゃない。

 効果が破格な分、機巧(ギミック)にかかる負荷だって大きいんだ。すぐにイカれるぞ」


「…………結局、代行様だけが頼りか」



もはや誰も『魔物の大侵攻(モンスター・パレード)』という、世紀の大危機を疑う者はいなかった。





▲ ▽ ▲ ▽



俺、前世はニッポン人、名前はロック!(転生者あいさつ)




「フワァ~~……ようやく朝か……」



朝日が登るのを見て、ちょっとため息。

寝ずの夜警が終わった。



(これでようやく、6日目か?)



荷車で村を巡りを始めて、1週間の予定の、その6日目だ。

そろそろ、ジジイの言い出した『魔物の大侵攻(モンスターパレード)から周囲の村を助けようツアー』も終盤だろう。


ようやく見えてきた終わり(ゴール)に、上機嫌で出発準備。


しかし、なんだか、年配女性のヒステリックな叫び声が聞こえてきた。



「──はぁ! もう『次の村へ向かう』だって!

 何を勝手な事言ってんだい!」



なんかBBA(ババア)が、ムダに荒ぶっとる。

村長か村長夫人か知らんが、ハデな格好したBBA(ババア)だ。


出発の挨拶をしに行ったウチの剣帝(ジジイ)妹弟子(アゼリア)に、ネチネチネチネチ(から)んでる。



「そうだそうだ、俺たちを見殺しにするつもりかっ」

「なんて連中だ、感謝して損したぜ」

「俺たちは、魔物の被害者なんだぞ!」

「カネ返せ、バカヤロー」



ハデBBA(ババア)追従(ついじゅう)して、不満の声を上げる村人の集団。



(── フィ~……空笑い(ワロタ)



俺の胸に、(むな)しさがよぎる。



「お前らなんて、こんな時しか役にたたないんだ」

「ロクでなしの、冒険者くずれが」

「今までの恩を返せ、社会のゴミが」

「人殺ししか能の無いクズの分際で!」



(── ハハハッ……疲れて空笑い(くそワロタ)



ちょっとだけ芽生えた『達成感』が(しぼ)んで、『徒労(とろう)感』が(にじ)み出てくる。

これまで6~7カ所、色々な村を回ってきた。



── 自警団が弱いからもっと居てくれと、引き留められる事もあった。


── なんでもっと早くきてくれないんだ、と責められる事もあった。



(まあ、あの村は、仕方ねえよなぁ。

 俺らが着いた時点で、ほぼ壊滅のボロボロで、教会に逃げ込んだ生き残りが『子供と老人だけの10人ちょっと』だったし……)



しかし、それ(・・)に比べてもヒドイ(・・・)な、この村は特に。


昨日の夕方着いた時も、『感謝の言葉(ありがとう)』より『罵倒と叱責(おそいぞクズ)』だったし。

その時は、自警団が大分やられて、気が滅入ってるのかと気を遣っていたが。


どうも、住民の『性質(タチ)』が、すごく悪い(ヒドイ)っぽい。

ケガした自警団の連中も、ムダ飯食らいとか、足蹴にされてたっぽい。



(う~わ~……なんかトラブル(しゅう)が……

 さっさと出発できるように、村の外に荷車移動させておくかね?)



俺が、街道近くまで<(こま)>に荷車を引っ張らせると、騒ぎはいよいよエスカレート。



義援金(ぎえんきん)くらいよこせっ」

「せめて食料くらい置いていけっ」



目が血走ってる青年2人が駆け寄ってきて、俺の荷車を勝手に物色し始める。


数日前の『本村(ほんむら)』から着いてきている、女僧侶(シスター)で魔剣士のルーナさんが悲鳴じみた、非難の声。



「な、なにやってるんですか、貴男たち!

 強盗ですよ、それ!」


「うるせー、『本村(ほんむら)』のメス坊主(ぼうず)が、口出すんじゃねえ!」

「いつもいつも、『周辺の村々のまとめ役(リーダー)』だの『始まりの村』だの、偉そうに言ってるくせに、加勢に来たの女1人だけかよ!」



若い女性(ルーナさん)以外には、荷車の御者席(うんてんせき)(チビ)しか居ないからって、調子のってんなぁ。


こういう時、この体格とか、この女顔とか、マジで損。

俺がもっと上背で、厳ついマッチョだったら、多分こんなにナメられはしてない。



(あ~……、せっかくだから、もうちょっと(・・・・・・)動かして(・・・・)おこう。

 もうちょっと、村の外に(・・・・)、なー)



アホ2人が気付かない程度に、ソロリソロリと。

街道側へ荷車を進めていく。



「止めなさいって言ってるでしょ!

 助けに来てもらった相手から、物を盗むなんて、恥ずかしくないんですかっ」


「助けてくれなんて、誰が頼んだよ!」

「頼んでもないのに勝手に、お前らが来ただけじゃないかっ」


「な、なんですってぇ~~!!」



ルーナさん、ブチ切れ。

オレンジの髪を、猫みたいに立てそうな勢い。



「お、暴力か? 暴力ふるうのか!? 魔剣士のくせに!

 一般人に手を挙げたらどうなるか、わかってるんだろうな!」

「ほほう~、魔剣士って一般人に手が出せないのか?」

「当たり前だろ、流派から破門だ! その上、すぐにおたずね者だ!」

「そりゃ良い事聞いたぜっ、ヒャッヒャッヒャッ」



クズ2人が大盛り上がり。



「ほらほら、魔剣士の女僧侶(シスター)さん、俺たちに手を出してみろよっ」

「そんな事できねえよな、破門が怖くてさぁっ」


「くっ あ、貴男たち!

 聖教の神がいくら慈悲深いとはいえ、このような人道に外れた行い、許されませんよ」


「なんだ、結局お前、偉そうに説教するだけかぁ?」

「何が聖教の村司祭だ、何の役にも立たねえじゃねえかっ」



ウンザリするほど調子に乗ってる。

食料くらいなら、まだともかく(支援物資を含め多めに持ってきた)。

他人様の手荷物まで勝手に漁るなよ、コイツらガチ泥棒じゃねえか。



「あ~ん、何だこりゃ……、あぁ、あの(メス)ガキの下着か。

 チッ、色気もねえし、こんなのカネにもならねえなっ」

「── あっ! 俺、良い事考えたっ

 『本村(ほんむら)』の女僧侶(シスター)あわせて、女3人も居るんだっ

 俺ら、コイツらがいつまでも助けに来ないから、(ひど)()()ったんだ。

 その(・・)()びに、女共に『慰労(いろう)』してもらおうぜ!」

「そりゃ、良い考えだ! どうせジジイとふぬけヤローの2人と一緒じゃ、女共も満足できてねえんだろうから、村の男総出(そうで)で相手してやろうぜっ?」


「あ、貴男たちぃっ!

 どれだけ品性に欠けてるんですか!」



ルーナさん、怒りすぎて、ちょっと目尻に涙すら浮かんでる。



(おいおい、クズ2人、女の人とか泣かすなよ……っ)



俺も見ていて、イラッとするが。


コイツら2人の言動とか、もし身内だったら目も当てられないくらい。

人の良心を信じる女僧侶(シスター)さんとしては、他人事としてもツラい光景なんだろうな。





▲ ▽ ▲ ▽



俺は、ちょっと笑顔で近寄る。



「あー、そっちのヒゲの男の人?

 ちょっと、手ぇ出して?」


「ヒャーハハハッ

 なんだ、こっちの(メス)ガキは、随分物分かりが良いじゃねえかっ」



チャリンチャリン小銭を見せると、クズの片方が嬉々として片手を出してくる。



「ロ、ロック君、こんな連中に、お金なんて渡す必要はありませんよ!」



すると、ルーナさんが慌てて止めに来るが、もう遅い(・・・・)


辺境の村で、ナマクラ剣士と握手!

そのまま、オリジナル魔法【序の二段目:()し】を発動(『チリン!』)



「オラァ!!」



握手した腕(・・・・・)へ、愛剣の模造剣(ラセツ丸)全力一撃(あいさつ)


── ボギボキッ!と、小枝が折れるような軽快な音で、ヒゲの二の腕が複雑骨折。

つまり、変な方向に曲がった腕から、折れた骨が『こんにちわ』。



「── ごぉッ……おぉッ……ぐ、ひぃッ」



ヒゲのクズが、もんどり打って、胸が詰まったみたいな重い呼吸。

人間、急に骨とか折られたら、悲鳴すら上げられないワケで。

これ、豆知識(マメ)な?



「おい、テメー。

 何、その汚え手で、妹弟子(アゼリア)の下着とか触ってんだよ?」



言いながら、思いっ切り蹴飛ばす。

【序の二段目:圧し】で身体強化(パワーアップ)した脚力で、サッカーボールみたに高々と。



(フィ~~……ちょっと気が晴れた。

 やっぱり、悪党を(・・・)殴ると(・・・)スカッ(・・・)とする(・・・)な?)



あ、さっき手渡した小銭は、この治療費ね。

遠慮なく取っといて良いよ。


この異世界、このくらいの重傷でも<回復薬(ポーション)>でサクッと治るし。

まあ、でも、肋骨(ろっこつ)もやったし、どうせ赤字(マイナス)だろうし。



「ヒ、ヒィイ!

 この(メス)ガキぃ! 破門だぞぉ! 魔剣士の流派からぁ!

 お前ぇ、一生おたずね者だぞぉっ!」



真っ青な顔の、もう一人のクズが、何か言ってくる。


バカじゃね、コイツ?

俺が ── こんな魔力量ザコなこの俺が ── 『魔剣士に見える』のか?



「ざんね~~ん! 俺、ノット魔剣士、ただの一般人(いっぱんじ~ん)

 残念っ(オレサマ)交渉は失敗(オマエ・マルカジリ)!」


「う、うわぁあぁあ……っ」



ガンバって『ぜんりょくしっそう』するバカな悪大人(クッズ)を、【序の二段目(スピード)推し(アップ)】を発動(『チリン!』)して、追い回す。



(── ヒャッヒャッヒャッ、抱腹絶倒(ワロティッシモ)ッ)



「おらおら遅えぞ! 早く逃げろ逃げろ逃げろっ」


「ロック君!!」



ちょっと遊んでいると、真面目(ルーナ)さんに怒られる。



(やーね、『学級委員長(イインチョ)』気質の女の人って、冗談(ノリ)が通じなくて。

 ── チッ、うっせーよ、反省してま~す!)



仕方ないので、【序の三段目(コマンド:):払い(→+[K] )】を発動(『チリン!』)して、吹っ飛ばし(バァーン)


村の出入り口の、門の丸太柱に、激突(ババーン)



途端に『ヒィ…………ッ!?』 とか言って、村人がまとめて黙る。


被害者心情をおもんばかって大人しく『怒りのはけ口』やってた善良な剣帝(ジジイ)妹弟子(アゼリア)を囲んで怒鳴ってた、村代表BBA(ババア)を含む『クズな(モンスター・)大人ども(クレーマーども)』が、一斉にこっちを見た。



── つまり、『バカをバァーンして、ババアの横にババーンで、(ほか)はポカーン!』



(ププッ このギャグ傑作じゃね!? みんな使っていいよ!)



徹夜で異常なテンションの俺は、ひとりキャッキャッキャッキャッしてた。





▲ ▽ ▲ ▽



またもBBA(ババア)が、ムダに荒ぶっとる。

()でタコみたいに真っ赤な件について。



「なんて事をしてくれたんだい……!?」



俺はヘラヘラ笑いながら、マイペースに反論。



「いや、アイツら盗賊じゃん?」


「ふざけんじゃないよ、この小娘がっ

 村の人間を襲ったって、領主の騎士団に通報するからね!

 どうなるか、覚えておきな!」


「いや、村の外だったじゃん? 街道じゃん?

 帝国(くに)の法律じゃあ、街道での盗賊行為は生死不問だし、むしろ俺が報奨金もらう方じゃん?」


「そんな言い逃れが通じるとでも!?」


BBA(ババア)、お前がな?

 村ぐるみで強盗とか、どっちが騎士団にしょっ引かれるか解ってんのか?」


「誰が信じるもんかい、そんな言い掛かりっ」


「まさかBBA、お前、隠し通せてるつもりか……?

 俺たち、昨日の夜警で、その辺りの森をウロウロしてんだぞ?」


「だからなんだい!」


「なんで村の周りの森、荷車の部品(ガラクタ)があちこち捨ててあるんだろうな?

 しかも、どれも、商人の荷車ばかり?」


「い、言い掛かりだよ!」


「あ、どもった」



今の『商人の』って部分は、ハッタリ(ブラフ)だったんだけな?


そもそも、この異世界の連中って、環境意識とかゼロだし。

ガラクタ森に捨てまくり、<回復薬(ポーション)>工房のヤバイ溶液も川に垂れ流し。

<翡翠領>(グリンストン)のドブ川が、ピンク色の刺激臭してたのは、最初見た時ドン引きしたわ、さすがに。


それはともかく。



「ああ、やっぱり。

 お前らって、村に寄った商人とか襲ってんのか?

 最悪だな、この村、ただの盗賊のアジトじゃん?」


「── ちょっと、村の代表さん、貴女まさか!?」



ルーナさんが割り込み(カットイン)してくると、BBAは急に態度を変える。

野良犬を追い払うような手つきで、シッシッと追い出しにかかる。



「── うるさいガキどもだねぇっ!

 こっちは村の復旧にいそがしいんだ、他所の村でもどこにでも、さっさと行きなっ!」



さっきまで、『勝手に出て行くな』とか言ってたの、オメーだぞ?

そう思うが、身勝手な輩をマトモに相手しても仕方ない。



「はいは~い。

 でも、ここに居る『本村(ほんむら)』の女僧侶(シスター)さんとか、社会的信用のある人の証言があるからねー。

 その内、騎士団とかが調査に来ると思うよぉ~? バイバ~イ!」



── ユウッ、ウィン!

── ♪てれって~てれててん!

── ふっ すべてのあくとうたちは せいぎのまえに ひざまづくのよ!



そんなワケで、助けた7番目だか8番目だかの村と、ケンカ別れみたいな感じでおさらばした。



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― 新着の感想 ―
[一言] 反省してま~す発言したクズ、確かヤクに手を出してガチの犯罪者になってたなぁ確か…。この村のカス共はあのクズと同類か(侮蔑の視線
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