表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/223

07:そんなこんなで15歳

俺、前世はニッポン人、名前はロック!(転生者あいさつ)




そんなこんなで、妹弟子が出来て、5年ほど経った。


可憐かわいい天才少女リアちゃんは、ジジイの流派をほぼ免許皆伝。



(ヤッター、妹ちゃん!

 15歳で免許皆伝なんてスゴイね!

 将来は、世界を救う勇者さんかな?

 兄ちゃん、鼻がたかいよ!)



そんな、絶対強者な妹者なのに、兄者な俺と剣の組み手すると、どうにも勝率が振るわない。

対人戦は妹の唯一の欠点で、ポンコツかわいいなのか。

大好きお兄様には、うっかり手加減してしまうのか。

どっちなのか、非常に微妙なラインだが。


まあ、ちょっと過保護な兄弟子としては、妹弟子にはあまり血なまぐさい事をして欲しくない。

だから対人技術とか、正直どうでもいい。

兄ちゃんが、陰からフォローすればいいからね。


なので、その辺りにはあんまりツッコまないことにした。


ジジイもよく言ってるし。



『本来、剣とは殺人のための道具。

 だが魔剣士の強化魔法は、人のために魔物と戦う、守護の力』



つまり、ジジイの流派のみならず、魔剣士とは『人を守り魔物を倒す』ことが存在意義。

人類守護の剣、つまり人を()かす(=()かす)ための剣 ── 活人剣(かつじんけん)こそが魔剣士の本分。



(だったら俺は、魔剣士の妹ちゃんを守るために、対人剣術でも磨くかな?)



近い将来に、女勇者とか聖女とか選ばれるかもしれない妹弟子アゼリアが、その純真さゆえに悪い人間につけ込まれるかもしれない。



俺の愛剣は、素振(すぶ)り用の模造剣(もぞうけん)

魔物どころか人っ子ひとり斬れない、ナマクラだ。

しかし、人間を殺さずボコボコにするだけなら、この上ない得物。

妹弟子のふた親(どっちもクズ!)を物理的に(ショ)するのにも丁度良い。



(我が愛剣の無刃(ナマクラ)は、妹弟子アゼリアを守る不殺の剣(ナマクラ)と見付けたり!)



なんちゃって。

ちょっと格好(かっこ)つけすぎかな?



しかし、人斬り禁止の活人剣かぁ ──


── ぁぁ、逆刃刀(さかばとう)浪人(ろうにん)剣士かよ、俺。



アレだアレ。


『働きたくない、働きたくないでござる!』

『趣味に明け暮れ、タダ飯食うニート生活がしたいでござる!』



(あれ、なんか違うような……?

 まあ、いいや……)





▲ ▽ ▲ ▽



そんな訳で、生きるためにはカネが要る。

カネのためには、仕事がいる。


── 当然の帰結(きけつ)として、山岳(さんがく)ガイドである。


今日は、我が家(山小屋)の周りの魔物の森を、いろいろ探索するらしい。

魔物から取れる素材は、錬金術の材料とか、特殊なポーションの原料とか、色々カネになるらしい。

ジジイが、たまにそういう事を引き受けてた。



「今日は、剣帝様がいっしょじゃないのか……」



冒険者パーティの中年男リーダーが、そんな事をぼやく。

俺は、ため息まじりに言い返す。



「ムチャ言うなって。

 ジジイもいい歳なんだ、最近は腰が痛いらしいし」


「ガッハッハッ!

 かの達人も、『()年波(としなみ)』には勝てなかったかっ」



冒険者パーティの一人が、そんな風に笑う。

ドワーフみてーなオッサンだ。

性格も見た目もそんな感じ。


俺の隣を歩くリアちゃんが、ハムスターみたいにほおを膨らませる。



「むー、ケガや病気の人を笑ってはいけませんの!

 お兄様から怒られますのっ」


「いや、そういう訳では。

 すまんすまん、お嬢さん方」



── ん、お嬢さん『方』? 複数系?


俺が問いただそうとすると、ちょうどその瞬間、細マッチョ金髪イケメンが反応した。

なんかエルフみてーな顔してんな、この兄ちゃん。



「魔力の流れがおかしい! 来ます!」



さすが腕利(うでき)きの冒険者パーティだ。

いい反応する。


俺が感心してみていると、パーティ全員で、山岳ガイドの俺とアゼリアを守るように構える。


同時に、強化魔法の<魔導具>(マジックアイテム)である腕輪に、一斉に触れた。

腕輪の表面に、魔導の文字が光って浮かぶ。

それが一周回転して『カン!』と拍子木のような音がいくつも鳴る。

<魔導具>(マジックアイテム)の発動音だ。


今回の冒険者パーティは、10人少々(しょうしょう)

そのほぼ全員の背中に、身体強化魔法の魔法陣が現れた。





▲ ▽ ▲ ▽



この冒険者パーティは、魔法使いが2人いる以外は、ほぼ魔剣士らしい。


まあ、魔剣士が世に出てここ400~500年は、魔剣士1強な状況がずっと続いている。


剣士と言えば、魔剣士。

前衛と言えば、魔剣士。

兵士と言えば、魔剣士。

騎士と言えば、魔剣士。

英雄と言えば、魔剣士。


戦士系職業というか前衛職のベースが、全部魔剣士になった感じ。

魔剣士が増えすぎたせいで、『職種:魔剣士、武器:剣以外』みたいなヤツも普通にいる。

今日同行している冒険者パーティも、斧持ってるヤツとか、槍持ってるヤツとか、ナイフ二刀流とか、武器(エモノ)は色々だ。


他には魔法使い専門職にしか活躍の場がない。



(それが『この世界の常識』なら、納得だ。

 俺、生まれ故郷や(ふもと)の村で、指さしてバカにされるよなぁ……)



── 魔剣士の才能がない(・・・・・)くせに、毎日必死で剣()ってるとか。


魔力量も体格も全然で、適性なんてまるで無いのに。

絶対に魔剣士になんて、なれやしないのに。

何やってんだアイツって。



(まあ、魔剣士になる夢は、もはやどうでもいい。

 俺は俺の道をいくからな……

 ジジイもなんか、それで良いみたいな事言ってるし)



それはさておき。

視線を、冒険者の兄ちゃんたちの、背中の魔法陣に向ける。



「しかし、こればっかりは、どこの流派でも変わらないんだな……」



元・師匠(ジジイ)妹弟子(アゼリア)が訓練する際の、毎日の光景と全く同じ。

<魔導具>(マジックアイテム)の腕輪の術式や、背後の魔方陣の紋様に、多少の違いはある。

だが、その本質は同じ(・・)だ。


疾風の速さで駆ける。

無重力のように飛び()ねる。

雷光のような剣閃(けんせん)を走らせる。


常人の身体能力を超人のそれ(・・)に変え、魔物を()つ英雄を生み出す。

それが、身体能力強化の魔法術式。


あれよあれよという内に、もう魔物の群を1/3くらい倒してしまった。

魔物1匹を3人がかりの安全策で、着実に討伐していく。

なるほど熟練(じゅくれん)だ、ハデさはないが堅実な戦法だ。


(おそ)ってきたのは、<毒尾蜥蜴(ポイズンテイル)>の群れ。

ワニみたいな巨体のくせに、巨大樹を素早く()い回り、隠れて攻撃してくる厄介(やっかい)な魔物だ。

サソリみたいに尻尾を伸ばして、毒付きの(とげ)を突き刺してくる。


毒をもらったら最後、100m級の巨大樹の枝(地上から数十m)までお持ち帰りされ、意識があるままボリボリ食われてしまう。



「── 火魔法いきます、下がって!」



女性の魔法使いが、目の高さに両手をあげる。

両手の平に、それぞれ魔法術式が作る光の輪 ── <法輪(リング)>が現れ、回転し、消える。


魔法の発動音『チリン!』が、何度も続けて鳴った。



(── お、<魔導具>(マジックアイテム)じゃなくて自力発動か、珍しい……)



女性魔法使いの左右の手の平に、黄色い蝶々が1匹ずつ、計2匹が現れる。



(何あれ、召喚魔法?)



俺がじっと観察していると、蝶々は結構なスピードで、空中を(すべ)るようにスーと飛ぶ。

いや、なんか今、魔法で移動させた?


蝶々2匹が、特にデカい<毒尾蜥蜴(ポイズンテイル)>のリーダー格に、ピタリと張り付く。


── 瞬間、ドーンッ、と爆発した。


ギギャァァーー! とデカいトカゲが巨大樹から吹っ飛ばされ、ドッタンバッタン。



(何あれ!?

 羽根の色が黄色から赤に代わった瞬間、爆発したぞ!

 魔導の教本に書いてあった『精霊召喚』なのか!?

 召喚精霊の、特攻自爆攻撃なのか!?

 ── 魔法使いの姉ちゃん、エグいぞ、それっ)



異世界生活15年目にして初めて目にする、魔法使い本職の攻撃魔法に、ドン引きした。


ジジイが<魔導具>(マジックアイテム)で攻撃魔法発動したの、何回か見たことあるけど、チュドーンっと吹き飛ばす全体攻撃みたいなヤツだったし。

魔法と言うよりも、昔なつかし戦闘機のシューティングゲームの『ボム』みたいな感じだった。

それで倒すというよりも、広範囲にダメージ与えてHP削る的な、広範囲爆撃。


そうドン引きしたが、長年オリジナル魔法開発のため術式をいじり回していたら、いつの間にか魔法マニアみたいになってしまった俺である。


魔法使いの姉ちゃんがさっき使った術式を、見よう見まねでマネとしてみる。

だが、いくつか大事な構文(スペル)を見落としたっぽいので、上手く術式が組めない。



「さすがは『四重詠唱者(クワッド・キャスター)』!」

「うちパーティの魔法使いは、帝国(いち)ぃ!」

「止めなさいって、そういうの!

 何度も言ってるでしょ、わたしのは(ただ)の『二重詠唱(ダブル・キャスト) × (かける)2』なの!」

「そうそう、帝都の宮廷魔術師とかなると、本物の『三重詠唱者(トリプル・キャスター)』とか『四重詠唱者(クワッド・キャスター)』とかが居るんだから。

 あんまり嘘はいけないと思うの」

「嘘じゃないって、ハッタリだって。 肩書きをきいて依頼主が『おおっ』ってなれば、それだけで依頼料が上がるんだぜ?」

「それに周りからそう呼ばれてるだけなら、嘘にはならんだろ?」

「そんな風だから、冒険者はヤマ師だって言われるのよ!」



そんな冒険者達の雑談ついでの片手間で、<毒尾蜥蜴(ポイズンテイル)>のリーダー格は、退治されてしまう。

魔剣士の4~5人の袋だたきで、ズッタズタ。


── なんという事でしょう!

そんな凶暴な人食い魔物も、冒険者(たくみ)の手によって次々と貴重な魔法素材に生まれ変わっていきます!



(── あ、一匹だけ()ちもらしてる……

 兄ちゃん、オッサン、姉ちゃん、誰でもいいから早く気づけ。

 おい、デカいの倒したからって、皆で油断してんじゃねえよ。

 忘れた頃に、背中からザクってやられるぞ?)



チームワークのいい冒険者パーティなので、口出しするべきか迷う所。

余計な事言ったせいで、気を取られてケガされても困るし。


そんな事を迷っていると、隣からバシュンと何か飛んでいった。


直前に、<魔導具>(マジックアイテム)の発動音『カン!』という拍子木(ひょうしぎ)みたいな音がしたと言う事は ──



(── 多分、うちの妹弟子がシビれ切らしたパターンですね、これ……)



ハァ……と、思わずため息が出た。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ