55:第三の目(仮)
俺、前世はニッポン人、名前はロック!(転生者あいさつ)
……このあいさつ、やけに久しぶりな気がするな……気のせいか?
あ、すまんすまん。
そういえば、まだ決闘の途中だったわ。
ボーとしてたらいかんな。
で、リアちゃんの方は、もう試合終了したっぽい。
ロビンとかいうボウズ頭が、道場からダッシュで来て、叫んでた。
今も、観客?立ち会い人?そんな姉ちゃん2人と、ちょっと遠くでそんな話をしている。
── 『ウソじゃねえって、ホントに、本当に、お嬢ちゃんが勝っちまったんだ!!』
── 『お、お前なら信じてくれるだろ、剣帝流!?』
しかも、なんか必死に叫んでくる。
(ボウズ頭、お前さぁ……
そんな必死に言い訳するみたいに言うから、逆に怪しまれるんじゃね?)
そう内心ツッコミしながら、ため息交じりに返事した。
「当たり前だろ……
ウチのリアちゃんが、この程度の相手に負けるワケねーし」
妹弟子が、今の俺みたいに『未強化』で決闘ならともかく、強化魔法を使った全力発揮なら負ける理由もない。
そもそも剣帝の【五行剣】は、『特級の身体強化魔法』を超えた超高性能。
一般的な【特級・身体強化】に比べると、『効果時間が半減』の代わりに『性能が倍増』という、ハイリスク&ハイリターン仕様なワケだ。
得意分野なら、他の【特級・身体強化】の2倍くらいの効果を発揮する。
簡単に言えば、最上位である『特級魔法』を超えた『超級魔法』みたいなモンだ。
つまり、体格差があっても魔法の効果が上なので、互角以上に闘える。
(しかし、相手もなかなかの剣術LVだったんで、こんなに早く決着するとは思わなかったけど。
となるとリアちゃん、例のアレ使ったのかな……)
── リアちゃん曰く『魔剣士の力と技の極みの奥義』
俺が、開発中に『マッハ突き』とか呼んでたアレ。
リアちゃんしか使えない【秘剣・木枯:四ノ太刀・四電】。
(相手、死んでなきゃいいけど……)
まあ、<轟剣流>の【強化魔法・剛力型】には、防御の力もあるらしいし。
相手も、まあまあな天才児らしいし。
でも、ウチのスーパー天才児のリアちゃんには、腕前が劣るからな。
(うん……ちょっと不安になってきたな……)
奥義、食らい慣れた俺ですら、たまに命の危機を感じるし……
ってか、作った俺ですら『コレはちょっと……』とドン引きレベルの即死技だし。
(マジで、相手が死んでねえよな……?)
噂の神童が、死んどう!
なんちゃって!!
(── いやっ さすがに『人死に』は笑えね~って!)
そんな事を考えていると、ズキズキと額が痛くなってきた。
頭痛じゃない、古傷がうずいているんだ。
▲ ▽ ▲ ▽
(── しゃ、シャレにならん危険な必殺技を作ってしまった……っ!?)
それが、【秘剣・木枯:四ノ太刀・四電】が完成した時の俺の感想。
(……まさか、ゲームやマンガでありがちな『不可視の撃剣』が完成するとは……)
ウチの超天才児に『妹弟子専用の必殺技を作って!』とかおねだりされて、ムダに張り切った。
張り切り過ぎて、しまった。
『よ~し無能な兄弟子ガンバっちゃうぞ!』とか気合いを入れて、あらん限りの知識と能力を総動員して作って、しまった。
結果、とんでもない事になって、しまった。
うっかり、俺がいま開発している途中の『強化必殺技』を超えた『究極無敵の奥義』が完成した ──
── いや、完成してしまった、のだ。
ある意味、『大失敗よりタチの悪い成功』なワケだ。
「ロック……お主、なんという技を……っ」
ジジイも、白い目で引きつった顔。
そんな風に、俺と師匠は冷や汗かいているのに、
「スゴイですの!
超・速いですの!
きっと誰にも負けませんのぉ!」
と、ピョンコッピョンコッ飛び跳ねる、超ゴキゲンな当流派のお姫様である。
―― いま思えば、この時ちゃんと注意しなかったのが、悪かったのかもしれんな……。
兄弟子、一生の不覚である。
だいたい、ちょっと考えれば、すぐに解る事だ。
同流派の妹弟子が『この究極無敵の奥義』を、いったい『誰に』、試し撃ちするか、なんて ──
(はい、そうですね!
暴れん坊の目の前に、中型陸鮫にカジカジされても死なない、やたら頑丈だけが取り柄の『落ちこぼれ兄弟子』がいますよね!?)
かくして『自分で開発した即死技の実験台にされる俺』が爆誕したワケである!!
▲ ▽ ▲ ▽
だいたい、この技、横で見てても目にうつらないほど速いって、どんなスピード?
コレ、本当に4連撃してる?
その内の1撃どころか、残像すら見えないんだけど?
(絶対、前世ニッポンの『格闘ゲームの小足』より、数倍速ぇーぞ?)
『小足』 ──
── つまり、格闘ゲームの『しゃがみ弱キック』とか、だいたい5フーレムくらいの高速攻撃だ。
前世ニッポンの医学によると、人間の反応速度の限界が『0.1秒』らしい。
つまり、『小足』の時点で、動きを見て対応は不可能。
いわゆる『小足見て昇竜なんて、無理にきまってんじゃん』問題である。
(説明めんどいので詳細は省く。気になる人は検索)
── 閑話休題。
結論だけ言うと、この『即死技』は、
「2m強の間合いから飛んでくる「人間の限界」超えた刺突、対応できる人外居る?」
という超絶攻撃なのだ。
(……げっ、雑に計算しても時速400~500km以上、超高速列車の全速力並のスピードかよ!?
開発中に冗談で『マッハ突き』『マッハ突き』って言ってたら……
うわぁ……1発に速度を集中したら、正真正銘の『音速超過』になりそうだぞ、この奥義……!?)
よくよく考えると超危険な状況に、さらに脂汗がダラダラ出る開発者である。
そんな罪もない開発者へ、アルティメット奥義が振るわれるワケである。
しかも、日々の訓練で、しょっちゅう。
(まさか、『俺の作った奥義の危険さ』を実体験させられるなんてっ
ちょっと、これシャレにならんぞ!)
── oi
ミス
おい
やめろ、ポンコツ妹!
気軽にポンポン、ポンポン、即死技撃ってくるんじゃねえ!
お前な「えい☆」じゃねえんだよ、本当な!
可愛く言っても、兄ちゃん許さねえからな!
兄ちゃん、ボコスカ額割られ過ぎて、そろそろ『第三の目』が開眼しそうな感じになってんだろうが!?
いい歳で『邪眼』に目覚めて、『邪王¥殺拳の使い手』になったら、どうしてくれるっ
おいコラ、なにが『勇猛なお兄様らしくありませんわね?』だよ!
なに『ヒ■イはそんな事言わない』的な事を言ってんだ!?
だからな、奥義をヤ・メ・ロって!
って、また、ギャアアァァ~~ア!
── そんな悲鳴が、最近の当流派の修行場では、日常のモノになってしまっているワケです。
▲ ▽ ▲ ▽
そんな事を思い出すだけで、額の古傷(更新中!)がズキズキする。
(……妹弟子、俺がヤメロって言ってるのを、前世ニッポンで言うところの『押すなよ! 押すなよ! 絶対押すなよ!?』的なフリと思ってねえか……?)
前世ニッポンのダ■■ウ倶楽部じゃねえんだぞ、コッチは。
バラエティ番組のノリで臨死体験したかねえぞ!
リアちゃん、何度も言うけどな?
オメーの兄弟子、『凡人に毛が生えたレベルのナマクラ剣士』だからな?
だから、ホントにやめて!
兄弟子って、意外とあっさり死んじゃうのよ!? ハカナい命なの!
少なくとも、転生前にあっさり死んでるから、この話は確実!
(── 俺が、何度も何度も、そう言ってんのに。
妹弟子の『お兄様なら大丈夫』ってのは、どんな種類の信頼!?)
だから、奥義撃ちたくて、ウズウズすんな!
『訓練で使い慣れてないと、実戦で役に立たない』とか、それらしい言い訳すんな!
(誰だ、そんなもっともらしい口実を教えたヤツは!?)
── ああ、俺か……
やはり兄の教育が悪かったようです。
誠に、残念至極。
(……なぜ兄弟子は、かわいいカワイイ妹弟子をこんな凶暴残虐に育てあげてしまったのだろう……)
―― 解せぬ。
あと、な。
徐々にこの地獄に慣れてきたのか、妹弟子の『目視不可奥義の1撃目だけ』はかろうじて即応防御が出来るようになってきたんだ……。
え、言っている意味わかんねー、って?
うん、そうだろうね……。
即応防御が出来てる、俺自身も意味わかんねーもん……。
「── ふおおおおおっ
お兄様はやっぱりスゴイですのぉ!
リアのお兄様は、世界一の格好よく強い剣士ですのよぉ~~お!!」
いや、『格好よく強い』じゃねえんだよ、リアちゃんよ……
(あのな、兄弟子はな。
妹弟子の『不可視の撃剣』なんてムチャクチャな物を、たった1撃のみとはいえど『防御できてる』……
そんな人外化してきた自分自身に、ちょっとヒいてんだぞ……?)
……俺って、そろそろリアル『斬鉄剣の人』になっちゃうのかな?
そのうち『銃弾とか剣で斬れる』的な、ビックリ超人になっちゃうのかな?
転生世界が剣と魔法のファンタジーとは思っていたが、こんな領域に足を踏み入れるとは……
……人間って、無限の可能性を秘めてるんですね?
(こんな何度も何度も何度も、ジャパニーズ・サンズ・リバーの観光ツアーを異常に反復した先の無限の可能性なんぞ、知りたくもなかったが……)
▲ ▽ ▲ ▽
── まあ、大体そんなワケだ。
凶暴残虐な妹弟子との日常訓練(命がけ)のせいで、不本意ながらも超高速攻撃に順応してきた兄弟子である。
(なんか、さっき神童(笑)さんが、神速(呆)の3連撃とか撃ってきたけどぉ!
刺突がクソ遅すぎて、ハエがとまっちゃいそうだZE☆)
せめて『格ゲーの小足』超えてから、神速とかいってくんない?
まあ『身体強化なし』なら速い内なのかな。
さっきの『これで沈めっ!』とかいうアレ?
でもな、<魄剣流>の細目男さんよ、世界は広いんだぜ?
神童が『奥の手3連突き』の1撃目の撃ってる途中くらいで、『超天才児のマッハ4連の刺突』が撃ち終わってるからな?
(── んん?
という事は『アルティメット奥義』……
『格ゲーの小足』、つまり『5フーレム』の間に4撃×往復くらいのスピードなワケで……
あれ、もしや1撃当たるまでが『0.01秒』……?
……いやいや、ウソだろ?)
…………アレ、前に計算した時の倍くらいの速度じゃね?
計算間違い……じゃ、ねえな……
……おい、マジで拳銃の弾丸くらいスピード出てないか、この奥義?
いや、ソレはさすがおかしいって!
そんなのもう人間が反応どころか、感知すらできるモンじゃねーぞ……?
……この、『超スピード刺突4連撃』……
(── と、すると、だ……。
……いったい俺はどうやって、この【秘剣・木枯:四ノ太刀・四電】の1撃目に反応して、即応防御してんだ……?)
おおぅ……っ
兄弟子、マジで『第三の目』が開眼して『邪眼使い』になってしまったのか……?
── そして。
(……妹弟子よ……
……これ絶対、人間に向かって撃っていい奥義じゃねえぞ……?)
兄弟子、最近の『臨死体験∞周回』の理由がハッキリ解って、ちょっとブルーになったぜ。
▲ ▽ ▲ ▽
(―― おっといかん。
ちょっと黄昏れて、ヒドい回想に浸ってた……っ)
我ながら緊張感がない事だ。
せっかくの他流派試合なのに。
対戦相手に手加減されてる悔しさより、ブルーな感傷が勝ってしまい、うっかり気落ちするところだった。
(せっかく好都合に、心火がボーボー燃えてるんだ。
この心の火が消えないウチに、勝負をすませておこう)
そんな事を考えながら、持ってる木剣を、真ん中でスッパリ2分割。
あ、手刀じゃないよ、コレ。
中指の爪に【序の一段目:裂き】付けて、それで切っただけ。
ほらアレ、前に作った『チェーンソー風の魔法付与』。
繰り返し練習してたら、慣れてきたのか脳ミソの負担が軽くなってきたので、ちょくちょく使ってる
「よし、向こうが終わったなら、こっちもケリつけるか」
<中剣>の長さから、<小剣>に短くした木剣を素振り。
重心の変化を確認しているワケだ。
(さすがに10分以上振り回したから、この木剣も手に馴染んできたな……)
── 『手に馴染む』、それが重要な事なのだ。
「お前、たしか……神童ルカって言うんだっけ?
意地になって『未強化』を通したいなら、別にそれでも構わんが ──」
俺は、<小剣>の木剣を『ホームラン予告する野球選手』みたいに、相手に突きつける。
「── 死んでも、知らんぞ?」
「死ぬ? ワイが?
エラい自信やな、お前ぇ……っ」
帝国西方の若き英雄・神童ルカとやらは、苦笑い。
まあ、そりゃそうだろう。
今までボコボコにしていた防戦一方の格下から、『今さら威勢られても』という感じだろうし。
「まあ俺も『魔法剣見せろ』とか『本気出せ』とか、さっきムチャ言ったよな、と反省したんだ……」
同流派の剣帝や妹弟子が、『未強化の俺』相手に、遠慮なく、容赦もなく、ポンポン【五行剣】使うし。
俺も常時そんな『逆ハンデマッチ』な組み手稽古してるから、すっかり忘れていたが ──
「普通、『未強化』の相手には、強化魔法を使わないんだよなぁ……
そう、フツーの魔剣士は……」
── 一般人相手に過剰暴力を使うのは、そこのボウズ頭とその相棒みたいな最低ぐらい。
ソイツらすら、頭に血が上るまでは躊躇するぐらいの『魔剣士業界の非常識』だったワケだ。
「そういうワケなら、仕方ねえ。
否が応でも、使わせてやろうっ」
── 『手に馴染んだ木剣』を、腕の延長と誤魔化して、オリジナル魔法【序の一段目:断ち】を魔法付与。
これを、別に用意した魔法の術式で『飛ばす』のが、【秘剣・三日月】の原理だ。
「これが俺の作った我流の魔法剣、【秘剣・三日月】だ!」
人差し指の指輪に偽装した、待機状態の魔法を解放。
魔法の術式<法輪>が、腕輪の大きさに広がって高速回転、『チリン!』と鳴る ──
── だが、まだ魔法を放たない。
魔法を発動させるが、発現はギリギリまで延ばす。
『遅延発現』という魔法の小技。
前に、<天剣流>の金髪貴公子の仲間、魔法技工士が使ってた技術だ。
(── さて、もう一丁ぉっ)
『チリン!』と、また魔法の起動音が鳴るが、やはり何も起きない。
相手は、俺が『魔法発動に失敗した』と勘違いしたんだろう。
しかも2連続での、自力詠唱の失敗。
「……おい」
傍から見たら、『格好つけて魔法を自力詠唱とか難しい事やったくせに、案の定、大失敗!』という感じだろう。
細目の『神童』も呆れ顔。
ちょっと気が抜けた顔で、口を開いた瞬間 ──
「お前、いったい何がしたいんや……?」
── その瞬間に合わせて、木剣を斜めに振り下ろす!
最近、また改良して速度上昇した、三日月型の魔力刃を木剣から射出!
あと、一応、警告(非殺傷バージョンじゃないので)。
「当たると死ぬぞっ ──」 「── ~~~っ!?」
敵も然る者。
さすがは、『神童』とか呼ばれるだけある。
気が抜けた脱力から、一瞬で反応。
杖代わりにしてアゴ乗っけてた木剣を踏み台に、一気に超ジャンプ。
魔法で身体強化をしていない『未強化』とは思えない、ジャンプの高さだ。
「── なんや、今のは!?」
細目男は、目を見開き、顔を引きつらせている。
自分がジャンプする前の位置を見ているんだろう。
そこには【三日月】直撃でスッパリ真っ二つの、踏み台代わりの木剣。
しかし、まあ『空中だから』と油断したんだろう。
「── 隙あり!!」
すでに、俺はそいつの側面に迫っていた。
(── 異世界転生して苦節15年!!
これが、近代格闘ゲームの醍醐味!
念願で悲願の、スタイリッシュ空中追撃をくらえぇぇ!)
飛翔突進系の必殺技【秘剣・速翼】で一撃!
ジャンプ回避する敵を、空中追撃で叩き落とす!
▲ ▽ ▲ ▽
空中の敵を、【速翼】の側面撃ちで吹っ飛ばす。
だが、なんとか受け身を取る、細目細面の天才児。
ゴロゴロ転がってなんとか立ち上がってくる。
俺は、そうでなくちゃ、と思いながら余裕の声をかける。
「ちょっと迂闊だったな、<魄剣流>『神童』さんよ」
「クッ……、なんや今のは……っ」
なんや、も何も。
前世ニッポンの格闘ゲームだと、『跳ばせて、落とす』は基本だぞ?
なんだっけ『ケイマの高飛びフの餌食』……って、それはショウギだったか?
── あ、さっき『隙あり』って声出したのは、ワザとだよ?
コイツを不意打ちで倒しても、あんまり意味ないからな。
あくまで『俺ってこれだけ強いから、お前も全力出せよ?』というアピールなんで。
── 『な、なんなの、今の動き!?』
── 『あれ飛翔魔法!?』
── 『でも、あんな高さまで一瞬で飛べるものなの!?』
お胸の豊かな長身姉ちゃん、驚いたか!
これが『必殺技』を『遅延発現』するメリット!
オリジナル魔法である『必殺技』を発動させ、発現はギリギリまで延ばしている『遅延発現』の最中に、次の『必殺技』を発動させて、これも『遅延発現』する。
すると、『必殺技』を放った直後の硬直を『無効化』するみたいに、空き時間なしに『必殺技』を連続発現できる。
まあ、俺が理想とする『必殺技の途中で別の必殺技を上書き発動』する『途中変更発動』には、ほど遠い。
それでも『必殺技』数珠つなぎできるのは、かなり便利。
(よく考えるとコレ、ス■ZEROシリーズの『スパコン』だな
『必殺技』を連続技みたいにできる『スーパーコンボ』システムだったか?
── よし、以後『必殺技連撃』と呼ぶかっ)
そんな事を考えていると、外野がイイ感じで盛り上がっているみたいだ。
── 『うわぁ……前よりキレが良くないか』
── 『まさか、まだまだ強くなるのか、アイツ?』
── 『そりゃあ、あの妹に「兄貴は最強」とか言われるハズだぜ……』
── 『ちょ、ちょっとぉ!』
── 『あ、あの人、本当に人間なんですかぁぁ!?』
── 『そ、そうよ! アレ、「剣帝に破門された落ちこぼれ」なんでしょ!?』
── 『なんであんな、えっと、なんていうか、そのっ、ムチャクチャなのよぉおおお!?』
── 『おいおい……そんな事、今さら言うなよ、お前ら……』
── 『魔剣士でもないのに魔剣士道場を壊滅させる』
── 『そういう理不尽の塊だぞ……アイツ?』
『決闘』を見学してる外野の人達が、随分ガヤガヤと……
『ガヤガヤ』、『外野』だけに。
──ププっ!
俺が笑いを抑えていると、ようやく細目男が木剣を拾って、戦闘体勢を整えた。
俺の『三日月』で斬られた相手の木剣は、<中剣>から<小剣>くらいに短くなっていた。
「―― まさか、お前っ!
今の今まで、手を抜いとったって、いうんか!?
ふざけんなよ、貴様ぁ!!」
「あからさまに手加減してたヤツに、そんな事を言われたくねーな!」
理不尽な事を怒鳴りつけてくる相手に、俺はそう怒鳴り返してやった。
まったく。
こういう『恵まれた環境(笑)』で『ぬくぬく(呆)』してきた天才児さんは、甘ちゃんで困るぜ!!
(ただし、ウチの超天才児を除く! あの子は、不幸のズンドコで必死に生きてきた、健気さんなので!!!)
!作者注釈!
2022/04/03 16:00 多少文章追加、説明もれがあった
2022/05/10 20:14 神童の木剣を<正剣>→<中剣>に長さ変更