表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

55/218

55:第三の目(仮)

俺、前世はニッポン人、名前はロック!(転生者あいさつ)




……このあいさつ、やけに久しぶりな気がするな……気のせいか?



あ、すまんすまん。

そういえば、まだ決闘の途中だったわ。


ボーとしてたらいかんな。



で、リアちゃんの方は、もう試合終了したっぽい。

ロビンとかいうボウズ頭が、道場からダッシュで来て、叫んでた。

今も、観客?立ち会い人?そんな姉ちゃん2人と、ちょっと遠くでそんな話をしている。



── 『ウソじゃねえって、ホントに、本当に、お嬢ちゃんが勝っちまったんだ!!』

── 『お、お前なら信じてくれるだろ、剣帝流!?』



しかも、なんか必死に叫んでくる。



(ボウズ頭、お前さぁ……

 そんな必死に言い訳するみたいに言うから、逆に怪しまれるんじゃね?)



そう内心ツッコミしながら、ため息交じりに返事した。



「当たり前だろ……

 ウチのリアちゃんが、この程度(・・・・)の相手に負けるワケねーし」



妹弟子(アゼリア)が、今の俺みたいに『未強化(なまみ)』で決闘ならともかく、強化魔法を使った全力発揮(フルスペック)なら負ける理由もない。


そもそも剣帝(ジジイ)の【五行剣(ごぎょうけん)】は、『特級の身体強化魔法』を超えた(・・・)超高性能。


一般的な【特級・身体強化】に比べると、『効果時間が半減』の代わりに『性能が倍増』という、ハイリスク&ハイリターン仕様なワケだ。

得意分野なら、他の【特級・身体強化】の2倍くらいの効果を発揮する。


簡単に言えば、最上位である『特級魔法』を超えた『超級(・・)魔法』みたいなモンだ。

つまり、体格差があっても魔法の効果が上なので、互角以上に闘える。



(しかし、相手もなかなかの剣術LV(うでまえ)だったんで、こんなに早く決着するとは思わなかったけど。

 となるとリアちゃん、例のアレ(・・)使ったのかな……)



── リアちゃん曰く『魔剣士の力と(アルティ)技の極みの(メット)奥義』


俺が、開発中に『マッハ()き』とか呼んでたアレ。

リアちゃんしか使えない【秘剣・木枯(こがらし)四ノ太刀(しのたち)四電(しでん)】。



(相手、死んでなきゃいいけど……)



まあ、<轟剣流>の【強化魔法・剛力型】には、防御の力もあるらしいし。

相手も、まあまあな天才児らしいし。


でも、ウチのスーパー天才児のリアちゃんには、腕前が(おと)るからな。



(うん……ちょっと不安になってきたな……)



奥義(アレ)()らい()れた俺ですら、たまに命の危機を感じるし……

ってか、作った俺ですら『コレはちょっと……』とドン引きレベルの即死技(必殺技)だし。



(マジで、相手が死んでねえよな……?)



噂の神童(しんどう)が、()んどう!

なんちゃって!!



(── いやっ さすがに『人死に(ソレ)』は笑えね~って!)



そんな事を考えていると、ズキズキと(ひたい)が痛くなってきた。

頭痛じゃない、古傷がうずいているんだ。





▲ ▽ ▲ ▽



(── しゃ、シャレにならん危険な(ヤベえ)必殺技(モン)作って(・・・)しまった……っ!?)



それが、【秘剣・木枯(こがらし)四ノ太刀(しのたち)四電(しでん)】が完成した時の俺の感想。



(……まさか、ゲームやマンガでありがちな『不可視の(みえざる)撃剣(けん)』が完成するとは……)



ウチの超天才児(アゼリア)に『妹弟子専用(オリジナル)の必殺技を作って!』とかおねだりされて、ムダに張り切った。

張り切り過ぎて、しまった。


『よ~し無能な(ナマクラ)兄弟子(にいちゃん)ガンバっちゃうぞ!』とか気合いを入れて、あらん限りの知識と能力を総動員して作って、しまった。


結果、とんでもない事になって、しまった。


うっかり、俺がいま開発している途中の『強化(スーパー)必殺技』を()えた『究極無敵の(アルティメット)奥義』が完成した ──

── いや、完成してしまった(・・・・)、のだ。


ある意味、『大失敗よりタチの悪い成功』なワケだ。



「ロック……お主、なんという(モノ)を……っ」



ジジイも、白い目で引きつった顔。


そんな風に、俺と師匠(ジジイ)は冷や汗かいているのに、



「スゴイですの!

 超・速いですの!

 きっと誰にも負けませんのぉ!」



と、ピョンコッピョンコッ飛び跳ねる、超ゴキゲンな当流派(わがや)お姫様(リアちゃん)である。



―― いま思えば、この時ちゃんと注意しなかったのが、悪かったのかもしれんな……。



兄弟子(にいちゃん)、一生の不覚である。


だいたい、ちょっと考えれば、すぐに解る事だ。

同流派(ウチ)妹弟子(アゼリア)が『この究極無敵の(アルティメット)奥義』を、いったい『誰に(・・)』、(ため)()ちするか、なんて ──



(はい、そうですね!

 暴れん坊(リアちゃん)の目の前に、中型陸鮫(サメ)にカジカジされても死なない、やたら頑丈(タフ)だけが取り柄の『落ちこぼれ(ナマクラ)兄弟子(剣士)』がいますよね!?)



かくして『自分で開発した即死技(ひっさつわざ)の実験台にされる(バカ)』が爆誕(ばくたん)したワケである!!





▲ ▽ ▲ ▽



だいたい、この技、横で見てても目に(・・)うつらない(・・・・・)ほど速いって、どんなスピード?


コレ(・・)、本当に4連撃してる?

その内の1撃どころか、残像すら見えないんだけど?



(絶対、前世ニッポンの『格闘ゲーム(かくゲー)小足(こあし)』より、数倍(はえ)ぇーぞ?)



小足(こあし)』 ──

 ── つまり、格闘ゲームの『しゃがみ弱キック』とか、だいたい5フーレム(0.08秒)くらいの高速攻撃だ。


前世ニッポンの医学によると、人間の反応・・速度の限界が『0.1秒』らしい。

つまり、『小足』(0.08秒)の時点で、動きを見て対応は不可能(・・・)


いわゆる『小足(こあし)見て昇竜(しょうりゅう)なんて、無理にきまってんじゃん』問題である。

(説明めんどいので詳細は(はぶ)く。気になる人は検索(ググって)




── 閑話休題(それはさておき)




結論だけ言うと、この『即死技(おうぎ)』は、

「2m強の間合いから飛んでくる「人間の限界(反応速度0.1秒)」超えた刺突(つき)、対応できる人外(バケモン)()る?」

という超絶攻撃なのだ。



(……げっ、雑に計算しても時速400~500km以上、超高速列車(シンカンセン)の全速力並のスピードかよ!?

 開発中に冗談で『マッハ()き』『マッハ()き』って言ってたら……

 うわぁ……1発に速度を集中したら、正真正銘(マジもん)の『音速超過(マッハ)』になりそうだぞ、この奥義(わざ)……!?)



よくよく考えると超危険な(ヤベー)状況に、さらに脂汗(へんなあせ)がダラダラ出る開発者(にいちゃん)である。


そんな罪もない開発者(にいちゃん)へ、アルティ(りふじんな)メット奥義(ぼうりょく)が振るわれるワケである。

しかも、日々の訓練で、しょっちゅう。




(まさか、『俺の作った奥義(わざ)危険(ヤバ)さ』を実体験させられるなんてっ

 ちょっと、これシャレにならんぞ!)



── oi(オイ)


ミス


おい


やめろ、ポンコツ妹!

気軽にポンポン、ポンポン、即死技撃ってくるんじゃねえ!


お前な「えい☆」じゃねえんだよ、本当な!

可愛く言っても、兄ちゃん許さねえからな!


兄ちゃん、ボコスカ(ひたい)()られ過ぎて、そろそろ『第三の目』が開眼しそうな感じになってんだろうが!?

いい(とし)で『邪眼(ジャガン)』に目覚めて、『邪王(じゃおう)(■■)殺拳(さつけん)の使い手』になったら、どうしてくれるっ


おいコラ、なにが『勇猛なお兄様らしくありませんわね?』だよ!

なに『ヒ■イはそんな事言わない』的な事を言ってんだ!?


だからな、奥義(それ)をヤ・メ・ロって!


って、また、ギャアアァァ~~ア!



── そんな悲鳴が、最近の当流派(わがや)の修行場では、日常のモノになってしまっているワケです。





▲ ▽ ▲ ▽



そんな事を思い出すだけで、(ひたい)の古傷(更新中!)がズキズキする。



(……妹弟子(アイツ)、俺がヤメロって言ってるのを、前世ニッポンで言うところの『押すなよ! 押すなよ! 絶対押すなよ!?』的なフリと思ってねえか……?)



前世ニッポンのダ■■ウ倶楽部(コメディアン)じゃねえんだぞ、コッチは。

バラエティ番組のノリで臨死体験したかねえぞ!


リアちゃん、何度も言うけどな?

オメーの兄弟子(にいちゃん)、『凡人に毛が生えたレベルのナマクラ剣士』だからな?


だから、ホントにやめて!

兄弟子(にいちゃん)って、意外とあっさり死んじゃうのよ!? ハカナい(いのち)なの!


少なくとも、転生前にあっさり死んでるから、この話は確実(ガチ)



(── 俺が、何度も何度も、そう言ってんのに。

 妹弟子(オマエ)の『お兄様なら大丈夫』ってのは、どんな種類の信頼!?)



だから、奥義撃ちたくて、ウズウズすんな!

『訓練で使い慣れてないと、実戦で役に立たない』とか、それらしい言い訳すんな!



(誰だ、そんなもっともらしい口実(こうじつ)を教えたヤツは!?)



── ああ、俺か……


やはり兄の教育が悪かったようです。

誠に、残念(ざんねん)至極(しごく)



(……なぜ兄弟子(オレ)は、かわいいカワイイ妹弟子(リアちゃん)をこんな凶暴残虐(モンスター)に育てあげてしまったのだろう……)



―― ()せぬ。



あと、な。

徐々にこの地獄に慣れてきたのか、妹弟子の『目視不可(みえざる)奥義の1撃目だけ(・・・・・)』はかろうじて即応防御(ジャスガ)が出来るようになってきたんだ……。


え、言っている意味わかんねー、って?

うん、そうだろうね……。

即応防御(ジャスガ)が出来てる、俺自身も意味わかんねーもん……。




「── ふおおおおおっ

 お兄様はやっぱりスゴイですのぉ!

 リアのお兄様は、世界一の格好よく強い(カッコツヨツヨ)剣士ですのよぉ~~お!!」




いや、『格好よく強い(カッコツヨツヨ)』じゃねえんだよ、リアちゃんよ……



(あのな、兄弟子(にいちゃん)はな。

 妹弟子(オマエ)の『不可視の(アルティメット)撃剣(おうぎ)』なんてムチャクチャな物を、たった1撃のみとはいえど『防御(ガード)できてる』……

 そんな人外(バケモノ)化してきた自分自身(・・・・)に、ちょっとヒいてんだぞ……?)



……俺って、そろそろリアル『斬鉄剣の人(石川ゴ■モン)』になっちゃうのかな?

そのうち『銃弾とか剣で斬れる』的な、ビックリ超人になっちゃうのかな?


転生世界が剣と魔法のファンタジーとは思っていたが、こんな領域(ジンガイ)に足を踏み入れるとは……


……人間って、無限の可能性を秘めてるんですね?



(こんな何度も何度も何度も、ジャパニーズ・サンズ・リバーの観光ツアーを異常に反復(ヘビロテ)した先の無限の可能性なんぞ、知りたくもなかったが……)





▲ ▽ ▲ ▽



── まあ、大体そんなワケだ。


凶暴残虐(モンスター)妹弟子(リアちゃん)との日常訓練(命がけ)のせいで、不本意ながらも超高速攻撃に順応(じゅんのう)してきた兄弟子(オレ)である。



(なんか、さっき神童(ザコ)(笑)さんが、神速(呆)の3連撃とか撃ってきたけどぉ!

 刺突(ツキ)がクソ遅すぎて、ハエがとまっちゃいそうだZE()☆)



せめて『格ゲーの小足(攻撃速度0.08秒)()えてから、神速とかいってくんない?

まあ『身体強化なし(なまみ)』なら速い内なのかな。

さっきの『これで(しず)めっ!』とかいうアレ?



でもな、<魄剣(はくけん)流>の細目男さんよ、世界は広いんだぜ?

神童(テメー)が『(おく)()3連()き』の1撃目の()ってる途中くらいで、『超天才児(リアちゃん)のマッハ4連の刺突(つき)』が撃ち終わってるからな?



(── んん?

 という事は『アルティメット(リアちゃんの)奥義(アレ)』……

 『格ゲーの小足(こあし)』、つまり『5フーレム(0.08秒)』の間に4撃×往復(2回)くらいのスピードなワケで……

 あれ、もしや1撃当たるまでが『0.01秒』……?

 ……いやいや、ウソだろ?)



…………アレ、前に計算した時の倍くらいの速度じゃね?

計算間違い……じゃ、ねえな……


……おい、マジで拳銃(ピストル)弾丸(たま)くらいスピード出てないか、この奥義(わざ)


いや、ソレ(・・)はさすがおかしいって!

そんな(・・・)のもう人間が反応どころか、感知すらできるモンじゃねーぞ……?

……この、『超スピード刺突(つき)4連撃』……



(── と、すると、だ……。

 ……いったい俺はどうやって(・・・・・)、この【秘剣・木枯(こがらし)四ノ太刀(しのたち)四電(しでん)】の1撃目に反応して(・・・・)即応防御(ジャスガ)してんだ……?)



おおぅ……っ

兄弟子(にいちゃん)、マジで『第三の目』が開眼して『邪眼(ジャガン)使い』になってしまったのか……?



── そして。



(……妹弟子(リアちゃん)よ……

 ……これ絶対、人間(ひと)に向かって撃っていい奥義(わざ)じゃねえぞ……?)



兄弟子(にいちゃん)、最近の『臨死体験(サンズ通い)∞周回(がデイリー)』の理由がハッキリ解って、ちょっとブルーになったぜ。





▲ ▽ ▲ ▽



(―― おっといかん。

 ちょっと黄昏(たそが)れて、ヒドい回想(おもいで)(ひた)ってた……っ)



我ながら緊張感がない事だ。

せっかくの他流派試合なのに。


対戦相手に手加減されてる悔しさ(・・・)より、ブルーな感傷(・・・・・・)(まさ)ってしまい、うっかり気落ちするところだった。



(せっかく好都合に、心火(いかり)がボーボー燃えてるんだ。

 この心の火(モチベ)が消えないウチに、勝負をすませておこう)



そんな事を考えながら、持ってる木剣を、真ん中でスッパリ2分割。


あ、手刀じゃないよ、コレ。

中指の(つめ)に【序の一段目:()き】付けて、それで切っただけ。


ほらアレ、前に作った『チェーンソー風の魔法付与(エンチャント)』。

繰り返し練習してたら、()れてきたのか脳ミソの負担が軽くなってきたので、ちょくちょく使ってる



「よし、向こうが終わったなら、こっちもケリつけるか」



中剣(ミドル)>の長さから、<小剣>(ショート)に短くした木剣を素振り。

重心の変化を確認しているワケだ。



(さすがに10分以上振り回したから、この木剣も手に馴染(なじ)んできたな……)



── 『手に馴染(なじ)む』、それが重要な事なのだ。



「お前、たしか……神童ルカって言うんだっけ?

 意地になって『未強化(なまみ)』を通したいなら、別にそれでも構わんが ──」



俺は、<小剣>(ショート)の木剣を『ホームラン予告する野球選手』みたいに、相手に突きつける。



「── 死んでも、知らんぞ?」


「死ぬ? ワイが?

 エラい自信やな、お前(ワレ)ぇ……っ」



帝国西方の若き英雄・神童ルカとやらは、苦笑い。


まあ、そりゃそうだろう。

今までボコボコにしていた防戦一方の格下(おれ)から、『今さら威勢(イキ)られても』という感じだろうし。



「まあ俺も『魔法剣見せろ』とか『本気出せ』とか、さっきムチャ言ったよな、と反省したんだ……」



同流派(ウチ)剣帝(ジジイ)妹弟子(アゼリア)が、『未強化(なまみ)の俺』相手に、遠慮なく、容赦もなく、ポンポン【五行剣】(特級・身体強化)使うし。

俺も常時そんな『逆ハンデマッチ』な組み手稽古してるから、すっかり忘れていたが ──



「普通、『未強化(なまみ)』の相手には、強化魔法を使わないんだよなぁ……

 そう、フツーの魔剣士(ヤツ)は……」



── 一般人相手(オレみたいなヤツ)過剰暴力(オーバーキル)を使うのは、そこのボウズ頭とその相棒みたいな最低(クズ)ぐらい。

ソイツらすら、頭に血が上るまでは躊躇(ちゅうちょ)するぐらいの『魔剣士業界の非常識(タブー)』だったワケだ。



「そういうワケなら、仕方ねえ。

 (いや)(おう)でも、使わせて(・・・・)やろうっ」



── 『手に馴染(なじ)んだ木剣』を、腕の延長と誤魔化して、オリジナル魔法【(じょ)の一段目:()ち】を魔法付与(エンチャント)

これを、別に用意した魔法の術式で『飛ばす』のが、【秘剣・三日月(みかづき)】の原理だ。



「これが俺の作った我流の魔法剣、【秘剣・三日月(みかづき)】だ!」



人差し指の指輪に偽装した、待機状態(スタンバイ)の魔法を解放(リリース)

魔法の術式<法輪(リング)>が、腕輪の大きさに広がって高速回転、『チリン!』と鳴る ──

── だが、まだ魔法を放たない。


魔法を発動(・・)させるが、発現(・・)はギリギリまで延ばす。

遅延発現(ディレイ)』という魔法の小技。

前に、<天剣流>の金髪貴公子(ヒョロ)仲間(パーティ)魔法技工士(サリーさん)が使ってた技術(テク)だ。



(── さて、もう一丁ぉ(・・・・・)っ)



『チリン!』と、また(・・)魔法の起動音が鳴るが、やはり何も起きない。


相手は、俺が『魔法発動に失敗した』と勘違いしたんだろう。

しかも2連続での、自力詠唱(キャスト)の失敗。



「……おい」



(はた)から見たら、『格好(かっこ)つけて魔法を自力詠唱とか難しい事(・・・・)やったくせに、(あん)(じょう)、大失敗!』という感じだろう。

細目の『神童』も呆れ顔。


ちょっと気が抜けた顔で、口を開いた瞬間 ──



「お前、いったい何がしたいんや……?」



── その瞬間に合わせて、木剣を斜めに振り下ろす!


最近、また改良して速度上昇(スピードアップ)した、三日月型の魔力刃を木剣から射出(しゃしゅつ)


あと、一応、警告(非殺傷バージョンじゃないので)。



「当たると死ぬぞっ ──」 「── ~~~っ!?」



敵も()る者。

さすがは、『神童(しんどう)』とか呼ばれるだけある。


気が抜けた脱力から、一瞬で反応。

杖代わりにしてアゴ乗っけてた木剣を踏み台に、一気に超ジャンプ。

魔法で身体強化をしていない『未強化(なまみ)』とは思えない、ジャンプの高さだ。



「── なんや、今のは!?」



細目男は、目を見開き、顔を引きつらせている。


自分がジャンプする前の位置を見ているんだろう。

そこには【三日月】直撃でスッパリ真っ二つの、踏み台代わりの木剣。



しかし、まあ『空中(・・)だから』と油断したんだろう。



「── (すき)あり!!」



すでに、俺はそいつの側面に迫っていた。



(── 異世界転生して苦節15年!!

 これが、近代格闘ゲーム(かくゲー)醍醐味(だいごみ)

 念願で悲願の、スタイリッシュ空中追撃(コンボ)をくらえぇぇ!)



飛翔突進系の必殺技【秘剣・速翼(はやぶさ)】で一撃!

ジャンプ回避する敵を、空中追撃で叩き落とす!





▲ ▽ ▲ ▽



空中の敵を、【速翼(はやぶさ)】の側面()ちで吹っ飛ばす。


だが、なんとか受け身を取る、細目細面の天才児(エリート)

ゴロゴロ転がってなんとか立ち上がってくる。


俺は、そうでなくちゃ、と思いながら余裕の声をかける。



「ちょっと迂闊(うかつ)だったな、<魄剣(はくけん)流>『神童』さんよ」


「クッ……、なんや今のは……っ」



なんや、も何も。

前世ニッポンの格闘ゲームだと、『()ばせて、落とす』は基本だぞ?

なんだっけ『ケイマの高飛(たかと)びフの餌食(えじき)』……って、それはショウギだったか?



── あ、さっき『(すき)あり』って声出したのは、ワザとだよ?

コイツを不意打ちで倒しても、あんまり意味ないからな。


あくまで『俺ってこれだけ強い(ヤる)から、お前も全力出せよ?』というアピールなんで。




── 『な、なんなの、今の動き!?』

── 『あれ飛翔魔法!?』

── 『でも、あんな高さまで一瞬で飛べるものなの!?』



お胸の豊かな長身姉ちゃん、驚いたか!

これが『必殺技』を『遅延発現(ディレイ)』するメリット!


オリジナル魔法である『必殺技』を発動(・・)させ、発現(・・)はギリギリまで延ばしている『遅延発現(ディレイ)』の最中に、次の『必殺技』を発動させて、これも『遅延発現(ディレイ)』する。

すると、『必殺技』を放った直後の硬直を『無効化(キャンセル)』するみたいに、空き時間(タイムラグ)なしに『必殺技』を連続発現(・・・・)できる。


まあ、俺が理想とする『必殺技の途中(・・)で別の必殺技を上書き発動(・・・・・)』する『途中変更発動(本当のキャンセル)』には、ほど遠い。


それでも『必殺技』数珠つなぎ(コンボ)できるのは、かなり便利。



(よく考えるとコレ、ス■ZEROシリーズの『スパコン』だな

 『必殺技』を連続技みたいにできる『スーパーコンボ』システムだったか?

 ── よし、以後『必殺技連撃(スーパーコンボ)』と呼ぶかっ)



そんな事を考えていると、外野がイイ感じで盛り上がっているみたいだ。



── 『うわぁ……前よりキレが良くないか』

── 『まさか、まだまだ強くなるのか、アイツ?』

── 『そりゃあ、あの妹(・・・)に「兄貴は最強」とか言われるハズだぜ……』


── 『ちょ、ちょっとぉ!』

── 『あ、あの人、本当に人間なんですかぁぁ!?』


── 『そ、そうよ! アレ、「剣帝に破門された落ちこぼれ」なんでしょ!?』

── 『なんであんな、えっと、なんていうか、そのっ、ムチャクチャなのよぉおおお!?』


── 『おいおい……そんな事、今さら言うなよ、お前ら……』

── 『魔剣士でも(・・・・・)ないのに(・・・・)魔剣士道場(・・・・・)を壊滅(・・・)させる(・・・)

── 『そういう(・・・・)理不尽(りふじん)(かたまり)だぞ……アイツ?』




決闘(しあい)』を見学してる外野(がいや)の人達が、随分ガヤガヤと……



『ガヤガヤ』、『外野(がいや)』だけに。

──ププっ!



俺が笑いを抑えていると、ようやく細目男が木剣を拾って、戦闘体勢を整えた。

俺の『三日月』で斬られた相手の木剣は、<中剣(ミドル)>から<小剣>(ショート)くらいに短くなっていた。



「―― まさか、お前(ワレ)っ!

 今の今まで、手を抜いとったって、いうんか!?

 ふざけんなよ、貴様ぁ!!」


「あからさまに手加減してたヤツに、そんな事を言われたくねーな!」



理不尽な事を怒鳴りつけてくる相手に、俺はそう怒鳴り返してやった。


まったく。

こういう『恵まれた環境(笑)』で『ぬくぬく(呆)』してきた天才児(エリート)さんは、甘ちゃんで困るぜ!!



(ただし、ウチの超天才児(リアちゃん)を除く! あの子は、不幸のズンドコで必死に生きてきた、健気さんなので!!!)


!作者注釈!


2022/04/03 16:00 多少文章追加、説明もれがあった

2022/05/10 20:14 神童の木剣を<正剣>→<中剣>に長さ変更

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] いつかリアちゃん、四電を更に極めて「十電(フラッシュピストンマッハ突き)ですわ~!」的な、どこぞの塾のボクサーみたく(最初の設定では)0.7秒で10発のパンチを放つ必殺技みたいな突きを放つ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ