53:君の●●が食べたい
!作者注釈!
ギリギリまで2分割しようかと思ったけど、もうこのまま行きます。
剣帝流VS轟剣流の決着
2022/03/21 17:50 すまんマジすまん、公開30分でちょっと修正、というか一部更新が漏れてた、マジ後悔、公開直後だけにっ(ここ爆笑ポイント!)
「── やっぱり、これは、『剣帝流』が勝っちまうんじゃねえのか?」
自分ガイオ=シャーウッドに背後からかけられた声は、見ずとも解る得意満面のものでした。
小さく首を振って、呆れのため息を吐きます。
「── ハァ……
ちゃんと見ましたか、先ほどの試合の流れを」
あの木剣の応酬が5分5分に見えたとしたら、素人です。
「見たさ。
ことごとく躱された神童サマと、3発お見舞いした『剣帝流』。
どっちが有利かなんて ──」
最低な事に、素人以下でした。
「── やはり、わかってませんね。
そもそも、魔剣士の闘いには『3すくみ』がありますよね?」
護身術訓練を兼ねた『こども教室』ではないのですから……。
まさか<翡翠領>まで来て、こんな基礎中の基礎を講義させられるとは思いませんでした。
── さて。
魔剣士が世に出て、およそ500年。
現在では3系列の『身体強化の魔法』が主流です。
<轟剣流>が用いる『剛力型』。
<封剣流>が用いる『疾駆型』。
そして、我が<魄剣流>や<天剣流>が用いる『杖剣型』。
この主流の身体強化3種には、『3すくみ』という優劣 ── いわゆる『勝負の相性』があるのです。
「<封剣流>の流れを汲む『剣帝流』は、基本的に『疾駆型』の身体強化。
魔剣士の『3すくみ』で言えば、『剛力型』は『疾駆型』に優る。
たとえばこれが、体格と技量が同等の ── つまり同格同士の試合だとしても『7:3』で『剛力型』の<轟剣流>が勝ち越します。
いわんや、小柄な乙女と、巨漢の青年。
もはや結果は見る必要もない、必然のものでしょう」
「必然ねぇ……」
「ええ、必然ですよ。
軽くて速い『疾駆型』の攻撃では、重くて硬い『剛力型』の防御を突破できない。
先ほどの3発は、いずれも有効打になっていない。
神童カルタ殿の、岩壁の如き筋肉に、はじき返されている。
その上、ハデな動きは消耗が激しいのですから、いかに巧く躱し続けても、やがて体力の限界がくる。
先ほど言った『同格同士で7:3』という勝率差は、そういう事です」
「はぁ、そうか……?」
馴れ馴れしい長髪青年は、ここまで説明してもなお、納得していない表情。
どうやらこの分派の道場生たちは、頭が飾り ── 帽子置きにしかならない連中のようです。
「いやぁ、本家のおチビ様、お前さぁ……
世の中そんな、すべて理屈どおりにいくと思っているのか?」
いや、それどこか訳知り顔で、こちらが無知と、哀れむような目すら向けてくるのです。
── 心底、不愉快です。
頭脳がお粗末なだけならまだしも。
それに飽き足らず、態度すら最悪。
人間としての品位すら底辺です。
まったく、気分が悪い連中です。
「……いったい、何が言いたいんですか?」
「いや、別に。
天下の『剣帝流』は流石にスゲェ、って事だけさ。
あのチビ兄弟子だって、半端なかったぜ?」
自分ガイオは、相手の誤魔化すような口ぶりに、思わず声を荒げます。
「バカげてる!
自分の未熟を棚に上げ、『相手が強者だった』とウソを吹聴するのは止めなさいっ
まるで、半端者の冒険者が失敗を糊塗するような、見苦しい言い訳ですよ、この落伍者ども!」
「落伍者ねえ……
まあ、神童サマ相手には手も足もでないんだ、ぐうの音もでないよ」
長髪の青年道場生は、小さく肩をすくめました。
そして、少し口の端を吊り上げます。
その顔は、どこか幼少期の従兄殿のようです。
つまり、悪戯坊主のような、ろくでもない事を考えている表情です。
「しかし、さすがは『噂の神童サマ』。
全力がこれなら予想以上、俺らが2~3人束になっても勝てない。
それどころか『八方掛かり』 ── 8人が同時に相手しても、簡単に蹴散らされそうだ」
「当たり前でしょう?」
分派の連中は、『神童コンビ』を何だと思っているのでしょうか。
彼らは、帝国西方の若き英雄です。
魔物の大群に怯まず、多大な戦果をあげて都市を守った、勇猛なる魔剣士です。
半端者ばかりの分派の道場生など、何人居ても同じです。
この道場には『四方八方からの攻撃に対応する修行』があるとは聞いていますが、その程度なら楽にこなすでしょう。
── 当然の事でしょう。
すると、長髪の青年は、さらにこう続けます。
「だが、『噂の神童サマ』も、所詮は人間の子。
その倍いれば、なんとか抑え込めるかもしれない。
さすがに15~16人同時に蹴散らすような、バケモノではないらしい」
「当たり前でしょう?」
自分は、同じ言葉を、真逆の意味で繰り返します。
分派の連中は、神童カルタ殿を何者だと思っているのでしょうか?
たとえ『神童』の称号をもつ『<聖都>守護の剣』とはいえ、やはり一人の人間。
周囲ぐるりと十人以上の相手に囲まれてしまえば、さすがに対応できません。
そもそも、15~16人を同時に蹴散らすなんて、どんな高名な魔剣士でもできるはずありません。
2本の腕で出来る事には限界があります。
── それも、当然の事でしょう。
「つまり、半端者で落伍者な魔剣士の俺らでも、一致団結して15~16人集まれば、『噂の神童サマ』に勝てるかもしれない。
言い換えれば、一致団結して15~16人で当たれば、『噂の神童サマ』くらいの働きはできるかも知れない」
「まあ、そうでしょうね……」
「ちょっとは、先に光明が見えた感じだ。
今回の一件は、むしろアンタ達に感謝したいくらいだ」
その顔は、増長を叩きのめされた半端者、とは思えません。
成長に伸び悩む者が、やっと己の殻を破ろうとするような、強い意志の光がすら宿っています。
「ハァ……?」
そもそも、なぜ感謝を?
我々は、貴男方 ── 不出来な分派を懲罰粛正に来たのですが。
いや、もちろん、腐った性根を叩き直す事が出来たなら、それに超した事はないのですが……。
それにしても、あまりに改心が早い。
早すぎる。
▲ ▽ ▲ ▽
── ……いったい、これはどういう事でしょう?
自分ガイオは、内心にて自問します。
このユニチェリー流の道場生たちは、<帝国八流派>の分派という看板に胡座をかき、無様をさらした増長慢ばかりのはず。
しかし、先ほどの『懲罰粛正の時分』もそうですが、神童カルタ殿にまるで気後れしない気迫の取り組み。(もちろん腕前は拙いものですが)
剣帝の一番弟子だか知りませんが『魔剣士になれなかった剣術巧者ごとき』に負けて尻尾を巻いた『負け犬』とは、とても思えない……。
── この連中、全てがチグハグです。
「……解りません。
結局、何が言いたいのですか、貴男は?」
「……俺らが今さら何言っても、アンタらは耳を貸さないだろ?
だがな、一応忠告だ」
やけにもったいぶって言うので、一応聞いてやります。
「 ── 『剣帝流』は、まさに『魔剣士の頂点』。
途方もねえ連中さ。
多分、あの嬢ちゃんも、まだ本気じゃないハズだ。
決して、なめちゃいけねえぜ?」
── 『本気じゃないハズ』ですか……、なるほど、つまり ──
「あぁ……
つまり、ここの連中全員、『剣帝』の信者なのですか……」
ようやく、得心しました。
つまり、『負けると解っていても、地元の英雄の縁者を応援する連中』。
結果は惨敗でも『惜しかった、もう少しだった』等と、口先で誤魔化すのでしょう。
無法者が『俺たちを舐めんじゃねえ』と喚いているのと同等の、意味の無い雑音。
「── ああ、下らない!
まともに話を聞いてた、自分がバカみたいです……っ」
そうなると、そもそもの『魔剣士でもないような相手に無様を晒した』という例の一件すら、その真偽も怪しくなってきました。
敬愛する剣帝に頼まれ、その落ちこぼれ弟子のために、一肌脱いだのでは ──
ワザと手を抜き負けてやって、奮起を促したとか ──
── そんな八百長試合のような恥知らずすら、有り得そうです。
「結局、一から十まで、全てバカの戯言でしたか……
まったくもって時間の無駄でしたね……」
脱力と共に、失笑がもれます。
分派の愚劣揃いには、相応しい事の顛末です。
まあいい、好きにさせましょう。
いくら信者が熱心に声援を飛ばしたところで、勝敗は揺るがないのですから。
我ら西方の誇りである『神童コンビ』が膝をつくなんて、あの『<黒炉領>の魔物の大侵攻』ですら無かったのです。
「── ああ、それとも……?」
アゼリア=ミラーが、熟練の冒険者パーティや正騎士の部隊が手こずるような、凶悪で巨大な魔物より手強いとでも?
あの少女が1人が、脅威力4のバケモノ(例えば<雷雲巨鷹>や<六脚轢亀>)を、単身で討ち取る程に強いとでも?
「ハハッ……
いや、有り得ないか……っ」
全盛期の剣帝の逸話(それすらも真偽があやしい)ではないのですから。
小さく笑って、勝負の場へと向き直ります。
壊れた木剣から交換して、素振りを終えた決闘両者が戻ってきたのです。
さて、決闘の立会を、最後まで務めなければ。
▲ ▽ ▲ ▽
アゼリア=ミラーと、神童カルタ殿は、再度向かい合います。
共に新しく持ち替え、手に馴染ませる素振りを終えた、黒い木剣の切っ先を向け合います。
「渾身の一撃にその身をさらし、一歩も退かずに即座の反撃……
これが噂に聞く<轟剣流>の秘技『磊響戻破』ですのね?」
「その通り!
中型魔物の重撃すら受け止めるこの肉体に、可憐な少女の剣撃などまるで響かん!
── つまりは、無敵!」
「そう断言するには、まだ早いのではなくって?」
「いいや、断言しよう!
男の児として! 益荒男として!
剣帝の門下生、恐るるに足らず!!
剣帝殿ご本人ならまだしも、御弟子に敗れる事なし!
── つまりは、確勝!」
あぁ、我らが神童が、高らかに勝利を約束!
2年前の『<黒炉領>の魔物の大侵攻』でも、このように士気を鼓舞したのでしょう!
見ている自分ガイオの体温すら上がってきます。
「── ハッ、……ハァア~~ァッ!?」
対極的に、極寒の声を漏らす、剣帝流女子。
緑の瞳は、もはや氷河のような冷厳の光を宿しています。
「貴男っ、それっ、貴男っ、今っ、それぇっ!?
わたくしのお兄様を相手にしても、『敗れる事がない』とか言っておりますのぉ~~っ!?
ちょっと、ちょぉっと、ちょぉお~っと少しばかり頭脳が、南国トロピカルお花畑パラダイスではなくってぇ~~!!」
何か、おかしな言動を始めました。
いったい何ですか、『南国トロピカルお花畑パラダイス』って……?
「あらっ、あらあらっ、あらあらあらっ!?
もしかして、リアのお兄様が、どれだけ最強で無敵でスーパーでウルトラで格好良く強いなのか解らないままに、威勢ってしまったのですのぉ?
それはちょぉ~~っと、いくらなんでも脳天気すぎる、花笠わっしょい蝶々祭りVer.408ですわよねぇ!?」
さっきの言動の何がそんなに『心の琴線』に触れたか解りませんが、どう見ても錯乱してます。
いったい何ですか、『花笠わっしょい蝶々祭りVer.408』って……?
「ふむ! それほどに自信があるなら、あえて受けよう!!
今より一切の攻撃を避けぬ、全力でこられよ!
── つまりは、専守防衛!」
神童カルタ殿はそう言い放つと、木剣を肩に担ぎ、全身の筋肉を緊張させます。
ただでさえの巨漢が一層膨らみ、岩山と錯覚するような立ち姿です。
「良い覚悟ですわ!!
世間知らずな貴男の蒙を啓いて差し上げます!!」
アゼリア=ミラーは、まず左手の腕輪に触れ、そのまま左腕を真横に広げます。
「『剣帝』から授かりし、最速の魔剣士の力、【五行剣:雷】 ──」
アゼリア=ミラーは、木剣を握る右手の中指を伸ばし、魔法の<法輪>を浮かべたまま、右腕も真横に広げます。
「そして、『最強剣士』より授かりし、最速の魔剣士の技、【秘剣・木枯】 ──」
アゼリア=ミラーは、上段の片手刺突に構えを直し、木剣の半ばに左手を添えます。
「この二つを組み合わせて完成したのが、わたくし剣帝流妹弟子だけの、『アルティメット奥義』!!
お兄様の『スーパー必殺技』を超えた『アルティメット奥義』ですのよ!
史上最強の絶技を、お見せいたしますわ!!」
……大仰な構えで、何か頭の悪い啖呵を、自信満々に言い放ちました。
何が『スーパー必殺技』ですか、何が『アルティメット奥義』ですか。
小さい子どもみたいに『剣術ごっこ』でもやってるつもりですか、貴女は?
まあ、一見『名家の令嬢』然とした彼女とて、武門の女子。
厳しい鍛錬のせいで脳筋となり、聡明さにほど遠いのは仕方ない事かもしれませんが……。
ああ、本当にまともな女性は武門にいないのでしょうか。
我が愚妹といい、神童カルタ殿の姉君といい、剣帝流女子といい……。
── ああ、居ませんね、ごめんなさい、無い物ねだりでした。
▲ ▽ ▲ ▽
そんな自分ガイオの遠ざかりかけた意識を引き戻したのは、『カン!』という<魔導具>の起動音。
【五行剣:雷】 が起動したようで、剣帝流女子の背中に、黄色の魔法陣が現れます。
「なんという気迫!!
相手にとって不足なし!!
その絶技の全て受け止めよう、愛とは耐える事ゆえに!
── つまりは、漢気!!」
神童カルタ殿が、より一層に、筋肉を緊張させて米神に青筋すら浮かべます。
あぁ、まさに武神の形相!
並の人間なら、ひと睨みで戦意喪失しかねないほどの、濃厚な覇気が漂います!
「では、行きますわよっ」
剣帝流女子の、右手中指に宿った自力発動魔法の<法輪>が、『チリン!』と鳴りました ──
── 瞬間、パアァン!と快音と共に、彼女の木剣の先が砕け散ります。
「フゥ……。
黒金樫の一番良い物を選んだつもりでしたのに。
案外、脆いのですわね、木剣というのは……」
アゼリア=ミラーは、銀毛の眉を寄せて、構えを解きます。
「……あ、また爪が割れてしまいました。
もう、この技を使うと必ずこうで、イヤですわね。
あとでお兄様に、手当していただきましょう……っ」
さらに、決闘相手に背を向けて、自分の指をイジり始めました。
なんでしょう……?
魔法の不発?
あるいは、暴発?
壊れた木剣を取り替えて、もう一度仕切り直すのでしょうか?
そんな疑問を思い浮かべる自分ガイオに、剣帝流女子はチラリと目を向けます。
「あら、立会人さん?
お友達なのでしょう、その方を手当てして差し上げませんの?」
ペロリと、割れた生爪から出る鮮血を舐めつつ、そんな事を言ってきます。
何でしょう、不思議な凄みのある微苦笑です。
「は……?」
この女、いったい何を言っているんでしょうか?
自分ガイオは、意味不明な剣帝流女子の言動に困惑していると、ズドンと重い音。
振り向けば、え、は、あ、え、な ──
「── カ、カルタ殿!?
どうされたのですか、いったい。
あの、どうされました、神童カルタどのぉ?」
訳がわかりません。
急に、神童カルタ殿が、天を仰ぐように倒れてしまっています!
もしや、大仰に『絶技』などと言いながら、あまりに拍子抜けな結末に、呆れ果ててしまったのでしょうか。
そんな自分の背に、剣帝流女子が声をかけてきます。
「そう言えば、まだ技の名前を言ってませんでしたわ。
お兄様が【秘剣・木枯】を、アゼリアのためだけに作り直して下さった『四ノ太刀』。
『剣帝』をもって『まさに電光の如き、見えざる4連の刺突』と言わしめた、絶対必倒の奥義!
── 技名を『四電』といいます。
その方が目覚めたら、伝えてあげて下さいます?」
そんな、バカな、と思います。
有り得ない、と思っています。
しかし、我らが英雄に近寄れば、その岩壁の如き筋肉に、生傷と出血が!
まるで鈍器が突き刺さったような皮膚の破れと、打撃の腫れが!?
なんだ、これは!?
いつの間に、こんな傷が!?
しかも、4カ所も!?
うそだ、ありえない!
自分ガイオは、瞬きすらせず、決闘を見つめていたのに!
バカげている、『不可視の撃剣』だと!?
そんな物が、現実に有り得るとでも言うのか!
「やっぱり剣帝流の勝ちぃ!」「うわぁ、今の技、えげつなっ」「兄弟子でも半端ねえのに、さらに上いくのか……っ」「今の見えたヤツ、いる?」「いや、見えねーって」「ムリムリ」「なんか、一瞬、木剣がかすれたなぁ、とは思ったぜ?」「俺も俺も」「うそつけっ」
あまりの混乱に、周囲の声が耳に入りません。
「負けた……神童がっ!?
そ、そんな……っ
う、うそだっ、幻だ、そ、そうだ、まやかし、まやかしだ、こんなの!
あ、有り得ない! こんな少女に!? 神童カルタが!?」
神童が! 我らの英雄が! 帝国西方の希望が! <聖都>守護の剣が!?
「いまの4連だってさ」「4連刺突!?」「という事は、3+4で『7撃』か」「いぇ~い! 俺、大正解!」「ばか、お前、前半最後の木剣打ちを忘れているだろ?」「……あっ」「うぉおおお!と言う事は『8撃』! 俺か!!」「うっそだろ、ぬか喜びかよ」「ありよりの、なしだな」「お前それ、何の話?」「どんまい!」
その愚劣どもの騒がしさが、幸いしたのでしょう。
「うぅ……っ」
「か、カルタ殿!」
神童カルタ殿が身じろぎして、薄目を開けます。
首だけ持ち上げ周囲を見渡し、そして、勝者である剣帝流女子の姿を認めて、一言。
「ああ、やはり、その方は常人ではない……
── つまり、天使……っ」
「まだ動いてはいけません! 頭を打っていますっ」
自分ガイオが制止するも、神童カルタ殿は上体を起こします。
そして、額ににじみでる出血をぬぐい、万感の声を上げました。
「あぁ……君の、ムダ毛を、剃りたい、そして食べたい……
我らは、それをもって一体となり、永遠となる……
── つまりは、聖体拝領……」
いわく言い難し、おぞましい発言でした。
いったい何を寝言ほざいてやがりますかこの色ボケ青年め心配しているひとの気もしらずにお前ほんとにもう。
「── へ、ヘンタイですのぉおお~~~!!!」
涙目の銀髪少女が、身震いして跳び上がります。
さらには、黒い木剣をブンブン振り回して、倒れた相手への滅多打ちを始めました。
「ちょっと、やめろ、バカ、剣帝流!
相手はケガ人、頭うってるんだ、朦朧としておかしな事口走っただけっ
だから木剣で殴るなぁああ~~~~~~!!」
自分ガイオは慌てて羽交い締めにしますが、強化魔法が切れていない彼女は、暴れ馬も同然。
抑えるどころか振り回されるばかりで、正直、自分の手には負えません。
「死ねぇええ、死んでしまえですわぁああ!!!」
── 最後に。
この騒動が収まるまで10分ほどかかった、とだけ報告しておきます。
!作者注釈!
アゼリアが1話で言ってた「アルティメット奥義」がようやくお披露目。
なお、第2必殺技の『風系・4番』なのに『四電』と『雷系』の名前がついてるのは、『不可視の魔剣』なのが理由です。
せめて解る人だけにでも伝われ、作者渾身のオマージュ要素!




