表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界カクゲーSPIRIT'sサイキョー伝説[↓↘→+s] ~知ってる?異世界って格ゲー無いんだぜ(絶望)……ハッ!無いなら作ればいいんじゃね(閃き)~  作者: 宮間
Round 3:遺跡ステージ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/236

39:駆け落ち騒動

俺、前世はニッポン人、名前はロック!(転生者あいさつ)




今日もジジイの代わりに、リアちゃんと二人で山岳ガイドのお仕事。

<ラピス山地>の中腹にある家(山小屋)から(くだ)り、(ふもと)の村に来ていた。



「お姉さんが(さら)われた ── ですか?」



依頼人は、村の酒蔵(村長の家よりデカい!?)に納品中だった行商のオッサン。

そんな豪邸な酒屋さんの応接間を借りて、くわしい話を聞いている最中だ。



「いえいえ、違います違いますっ

 カケオチ、()()ちですよっ」



恰幅(かっぷく)のいい行商人は、慌てて手を否定(ノー)の方に振る。

さらには、人聞きの悪い、とちょっとムッとした顔。


しかし、その横の席に座っていた娘さんが、目を三角に()り上げた。



「うそデース!

 お姉ちゃんが、あんな根暗にホれる訳ないデース!

 変態ムッツリ野郎にサラわれたに、決まってマース!」



メガネで、栗色の髪で、小麦色の肌の少女は、カタコトっぽい口調で反論。

すると商人のオッサンは、頑固に言い張る思春期の少女へ、ジト目を向ける。



「いや、しかしねえ。

 行商の道中で、ウチの番頭と何回も()()きしてたし……っ」


「まだ言うか、このオタンコナス!

 お姉ちゃんへの侮辱、許しまセーン!」



メガネのカタコト少女が、野良ネコみたいに栗色髪を逆立てて、商人に飛びかかった。

首を絞められるオッサンの顔が、どんどん紫になっていく。



「グェッ……く、くるし、い……っ」


「── ちょっと貴女(あなた)、やり過ぎですわ!」



慌てたリアちゃんが、カタコト少女の後ろに回って羽交(はが)()めでストップ。



「お、お姉ちゃんが、エルを置いて、どこかに行く訳ないデース!

 エルとお姉ちゃんは、二人っきりの家族なんデース!」


「どうどう、ですわ。

 少し落ち着くといいですわ」


「……ゲフ! ……エフ!

 このぉ……っ、ジャジャ馬娘め……っ」


「……大丈夫ですか?」



俺は、ゼーセーいってる行商のオッサンの背中をなでる。



「きっと悪い男に、ダマされてるだけデース!

 お姉ちゃんをバカにするな、デース!」



リアちゃんに抑えられても、まだジタバタしているカタコト少女。

このまま放っておいたら、いつまでも話が進みそうにないので、俺が話をまとめて先を促す。



「── ともかく、お話を整理すると。

 昨日の朝から、商会の番頭さんと、エルさんのお姉さん、そのお二人の姿が見えないんですね?」


「ええ、その通りです。

 これだから行商隊(キャラバン)によそ者を入れたくなかったんですが……」



行商のオッサンはうんざりとばかりに、ため息。

すると、カタコト少女の叫びがキンキンと響く。



「なにが言いたいデース!

 エル達が悪いと言うんデースかぁ!?」



(……マジうるせーな。

 いい加減、俺も聞いていて疲れてきた……)





▲ ▽ ▲ ▽



なんでも、この行商のオッサンは、この辺りの地方(帝国東北部)を定期的に巡業している行商隊(キャラバン)の一員との事。


最近は北の隣国にも船でまわり、海運貿易までしているらしく、その際にカタコト少女とそのお姉さんに会ったらしい。

両親が亡くなったので、(となり)の村 ── この(ふもと)の村 ── の親類に身を寄せる事になった、若い姉妹2人。


しかし、『(となり)の村』とは言っても、国境を挟んだ向こう側。

しかも、<ラピス山地>周辺は魔物が ── 『人食いの怪物』がゾロゾロ居る危険地帯。

少女2人だけで旅をするのは危険すぎる。

行商隊(キャラバン)に同行させて欲しい』と、北の国の漁村の村長に頼み込まれたそうだ。


行商隊(キャラバン)も、最初は『足手まといだ』と渋ったらしいが、『身寄りのない子供を放り出すのもどうか』という事で議論になり、最終的に護衛費用を負担する条件で同行を認めたらしい。


貿易船で国境を越え、<ラピス山地>周辺まで陸路で、なんとか無事に()してきた。


旅程2週間かけて、この(ふもと)の村に着いたのが、一昨日(おととい)の事。


しかし、せっかく親類のいる村についたのに、翌日(つまり昨日)の朝にはお姉さんの姿がない。

その上、オッサンの商会の若い番頭さんも、姿をくらましている。

さらには、商会の資金の一部もなくなっている。



── つまり、『若い二人が駆け落ちして、そのついでに商会の金を持ち逃げしたのでは?』という事でトラブルになっているらしい。



そのため、唯一の肉親に置いて行かれたカタコト少女は、パニクって若干ヒステリー気味。

昨夜は眠れなかったのか、目元を泣き()らしている。



「── なんですか、その態度はぁ!?

 エル達は、アナタ達のお客様デースっ」


「……客は客でも、招かれざる客ですよ」



情けをかけたら裏切られた、みたいな状況の行商のオッサンは苦い顔。



「で、でも!

 ちゃんとお金払ってマース!!」


「お金を払えばいいとか、既にそんな問題じゃないでしょう?

 それに、大したお代はいただいていません、赤字も良いところですよ」



さっきから、ちょっと話す度に、こうだ。

ワーワーギャーギャー、話がすすまない。


仕方ないので、俺が口出し、話を仕切る事にした。



「まあ取りあえず、依頼の内容は『姿をくらました男女2人を探す』って事でいいんですね。

 しかし、聞けば聞くほど『山岳ガイド』より『冒険者』の仕事のような……」



前世ニッポンなら、人捜しとか探偵の仕事だな。

つまり何でも屋案件 ── この世界では『冒険者』 = 『何でも屋』なワケである。



「ええ、そうですね。

 しかし、他の場所ならともかく<ラピス山地>周辺となると、不慣れな者ではどうにもなりません。

 行商隊(キャラバン)の護衛達も、海賊や山賊も怖れない屈強な連中ですが……

 それがこの辺り(・・・・)では、街道を外れるのも嫌がるくらいですから」



行商のオッサンは苦笑い。

事件が昨日の朝に事態発覚してから、護衛の人達と『探しに行く・行かない』と随分と()めたらしい。


お陰で、呼び出された俺とリアちゃんの登場に、

『あんな子供たちが』『本当かよ?』『悪い冗談だ』『魔物のエサになるだけだぞ』

みたいなザワザワ(うわさ)された。



(テメーら、ウチのリアちゃん貶めて(ディスって)んのか!?

 『剣帝』様の後継者な、ウルトラスーパー超天才児だぞ、ヲオォォンっ!?)



とか、因縁(いんねん)でも付けてやろうか、とすら思った。



でも、まあ、仕方ない反応でもある。


そんな風に『とても女子供が行けないヤベー場所』って思われてるからこそ『山岳ガイド』なんて微妙な仕事でも(もう)かるワケなんで。



「……しかし、()()ち ──

 ── いや、商会のカネを持ち逃げって言っても、麓の村(ココ)からドコへ?」



ちょっと疑問に思ったので、()いてみる。

<ラピス山地>の周辺には村がいくつか有るけど、どこも距離が離れていて、人の足じゃ数日かかる。


護衛がいて装備のそろっている行商隊(キャラバン)ならともかく、人間2人くらいで野宿とか魔物のエサになるだけだ。


運良く他の村まで逃げのびたとしても、結局は横領罪とかで官警(サツ)に捕まるだけ。

あんまりに場当たり的な行動すぎて、意味がわからない。



「……実は、心当たりのある場所が一つ。

 昔、陸路で北の隣国と貿易をしていた時に使っていた行程(ルート)の途中に、古代の遺跡がありましてね」


「古代の、遺跡……?」


「ええ、廃墟とは思えないような頑丈な建物が残っているので、野営には丁度良いのですが。

 しかし<ラピス山地>にかなり近づくという事で、この辺りの村の住民でもめったに近寄らない、そんな場所なんですよ」



え、マジ!?

そんないかにもファンタジーなステキ地点(スポット)が、この辺りにあったの?


隠し部屋とか、地下ダンジョンとか、伝説の武器的な希少(レア)なアイテムとか ──

── もしかして、そういうロマンが遺跡の中にあったりしちゃったり!?



「そこで野宿して、北の隣国へ抜けるつもりではないかと。

 国境さえ抜けてしまえば、大抵の罪は『お(とが)()し』ですから。

 あとは、元の漁村に戻るのは無理でしょうけど、どこかの村にでも逃げ込む算段(さんだん)なのでは……」



前世の世界みたいに、国と国と行き来が簡単にできないから、その手もありか。

よっぽどの重罪人でもなければ、他の国から身柄引き渡しとか、手間のかかる事をいちいちヤらんだろうし。



── まあ、そんなクソ下らん犯罪逃亡劇(サスペンス)よりも、ロマンあふれる古代の遺跡(ファンタジー)だ!



「いやー、それは大変だなぁー。

 さっそく探しに行かないと、日が暮れたら魔物があぶない!

 若い二人の(とおと)い人命にかかわる、緊急事態だ!

 商会のお金も心配だし!

 ああ、大変だなー、すぐに行かなきゃ(棒読みセリフ)」



という訳で、二つ返事で引き受けた俺。



「……なんだか、お兄様がワクワクしてますの」



妹弟子(アゼリア)には、あっさり見抜かれたみたいだが。


まあ、付き合い長いからね、仕方ないね。

!作者注釈!


この作品にはオマージュ要素が含まれています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ