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異世界カクゲーSPIRIT'sサイキョー伝説[↓↘→+s] ~知ってる?異世界って格ゲー無いんだぜ(絶望)……ハッ!無いなら作ればいいんじゃね(閃き)~  作者: 宮間
Round 2/勝利演出:工作員と密偵

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38/236

38:夜の終わりに

俺、前世はニッポン人、名前はロック!(転生者あいさつ)



結局、魔物の森から宿に戻ったのは、深夜ごろ。

宿に帰ったら、プンプンな妹弟子が仁王立ちして待ってた。



それから寝るまでの間、コンコンと説教をされてしまったワケです。


ええ、もちろん反省してます。

可愛い妹ちゃんを心配させて、申し訳なさで一杯です。


だから兄ちゃん、もう正座を崩していいかな?


……うん、まだダメか。




▲ ▽ ▲ ▽



── さて、撤収に時間がかかったのも、仕方ない事情がある。

とっ捕まえた捕虜の数が多すぎたワケだ。


貴公子(ヒョロ)<空飛ぶ駒>(ドールウイング)に、ロープでぶら下げて運ぶとしても、捕虜1~2人が精々(せいぜい)


しかし、俺が鳥魔物から墜落(ついらく)させた研究員と、金髪貴公子(イケメン)がブチのめした黒服ボス、その重要人物だけですでに4人になる。

ザコの皆さんを足すと、軽く20人を超えてくる。


仕方なく、貴公子(ヒョロ)だけ<翡翠領(グリンストン)>に戻って、増援を連れてくる事になった。



── さて、待機場所は、魔物の森。

しかも、時刻は魔物が元気な夜半。

さらに、魔物の死骸がたくさんで、血の匂いがプンプンする。


当然の帰結として、魔物の『大収穫祭』(フィーバータイム)

バーゲン叩き売りみたいな殺到っぷりで、『お客様おさないでください』状態!


俺は仕方なく、アホみたいに集まってくる魔物を、斬って斬って斬りまくった。



しかし、足手まといの捕虜共が、マジ足手まとい。

つか、邪魔すぎる。

何度、放置して魔物のエサにしてやろうかと思った事か。


あと、ピーピー泣くくらいならともかく、この(すき)に逃げようとするし。

(しま)いには、魔物の相手をしている俺の背中を、投げナイフや魔法で狙ってくるし。



── それ以外にも、だ。


「お、俺は高貴な<四彩>の直系だぞ!

 貴様ら無価値な連中とは、命の価値が違うのだぁ!」


とか、


「戦うしか能がないカスのくせに!

 エリートの私の役に立てる事をありがたく思いなさい、この愚民!」


とか、


「なにをトロトロしてんだよ、このグズ! 俺を命がけで守れよぉっ」


とか。

なんか、やたら()めた(くち)きくバカが数人。


イラッ☆としたので、死にかけ魔物の口にダイブさせてやった。

1分間耐久の魔物の体内見学ツアーである。



── ドキ(怒気)ッ!

── 胃液まみれのエリート丸呑み大会! (手足が)ポロリもあるよ!?



昭和な吐・憐・血(ハレンチ)イベント開幕!


キャーキャー、ワーワー、イヤー、ダメー、モウヤメテー!


そんな出演者(キャスト)HI☆ME☆I(Hな声)に、オーディエンス(魔物)は大盛り上がり!

野獣のようなギラギラした目つきで、思わずよだれがゴックン!



── グォオオオ!

── ワァオオオオン!

── ギャァギャァギャァ!



イベント会場の熱気は、破裂寸前で怖いほどだ!!



YEAhhh(イェエエエ~~)

人間(ヒューマン)たちも、もりあがってる?

それじゃあ一緒に()こうか、チェケラ!!



── イベント参加は、強制(きょうせい)! (ラップ調)

── ノドが枯れるまで、叫声(きょうせい)! (合いの手:きょーせい!)

── みごとに人格、矯正(きょうせい)! (チェケラ!)



魔物に押し倒されたり、(くわ)えて奪い合いされたり、本場仕込みの押合い(モッシュ)もあるよ!




「あひゃ、あひゃひゃひゃぁ!」


「夢、これは夢、僕わかっちゃった、この世界は全部夢なんだね!」


「俺たちが悪かった、反省している、反省しているから!」


「だから、こんなムゴい事、もうやめてくれっ」


「どうして、どうして、どうして笑っているんだ!? ひぃやぁーーーーー!!」


「わたしは今ベッドの中、明日もきっと良い天気、キレイなお花を買いに行くの」


「わかった、わかった、アンタの言う事をきく! なんでもしゃべるから!」


「そうだ、全て話す! だから、人間を魔物に食わすのはやめてくれぇっ」


「良い子になります! 良い子になりますから、もう足をかじらないでぇ!」




── みんな良い子になりましたぁ!



「ロ、ロック君……

 流石にやりすぎでは?」



うっせーな!

幼稚園児以下のチンパンジーなバカの群れを、一人で任された俺の身にもなれ!!



大体(だいたい)が、だ。

── ちょっと魔物に(さら)われて

── ちょっと魔物の巣に運ばれて

── ちょっとアットホーム魔物一家に『いただきます』されたくらいだろ!

その程度、いちいちギャーギャーぬかす事か!?



俺だって、『俺サイキョー!』って調子のってたクソガキの頃とか、何度か死にかけたぞ。

魔物を深追いしすぎて、小型陸サメの大群に全身カジカジされて『ああ、死ぬんだな、俺』みたいな危機(ピンチ)が3~4回あったけど。

でも、ガンバって自力脱出して、逆に全部フカヒレに変えてやったからな!


気合いが足りんのじゃ、貴様らぁ!



そもそも、だ。

ほとんどのケガは、俺の秘蔵の超高価<回復薬(ポーション)>で治してやったんだぞ!



まあ、完治した後、

「さあ、次はどの魔物に食われたい?」

と笑顔で聞いたのが、多分、一番メンタルに()いたんだろうけどな。





▲ ▽ ▲ ▽



「これをひとりで……」

「バケモノか……」

「人間業ではない……」



なんか金髪貴公子(イケメン)が連れてきた兵士どもに、コソコソ貶め(ディス)られている。



(うるせー、お前ら、今からコイツら尋問(じんもん)するんだろ!?

 ヤバい情報を()かせるために、拷問(ごうもん)とかもするんだろ!?

 そのくせ、ちょっと俺が捕虜を痛めつけたくらいの事を、いちいちオーバーに言うな!)



そんなイライラしていると、気を()かせた貴公子(ヒョロ)が、先に帰る手配をしてくれる。


正直、助かった。

俺的に、リアちゃんの仇敵(かたき)(※悪夢の中での)を守るというのは、なかなかストレスだったらしい。


貴公子(ヒョロ)<空飛ぶ駒>(ドールウイング)で現場から離れると、少しイライラが収まってくる。



「あとは、リアちゃんの無事な顔を見て、安心して寝よう」



そんな事を言うと、<空飛ぶ駒>(ドールウイング)2人乗りの、前に座った貴公子(ヒョロ)が顔だけ振り返る。



「相変わらず仲がいいね。

 ロック君は、アゼリア君と血のつながりはないんだろ?」


「血のつながりは関係ねーよ。

 俺は、兄貴として、あの子を守る。

 そう、俺が勝手に誓っただけだ。

 ……まあ、本人は迷惑しているかもしれないけどな」


「そんな事はないさ」


「そうか?」


「そうだよ、僕にも兄さんが居るからわかる」


「へー」


「まあ、ロック君ほど優しいタイプじゃないけどね。

 でも、僕にとっては、良い兄さんさ」


「まあ、兄弟はそれぞれだな。

 で、お前みたいにイケメンでモテモテなのか?」



ちょっと皮肉を言ってみる。



「いや、兄さんはタイプが違う。

 ああ、この兄さんは下の兄で、僕より五つ年上なんだけど、どっちかというと、男臭いっていうか、(いか)ついタイプかな。

 だから、いつも僕に叱咤激励(しったげきれい)をくれる『この天剣流の面汚(つらよご)しが!』ってね」


「…………ん?」



なんか、不思議な事を言われた。

空飛んでる風の音がうるさいから、言葉を聞き間違えたのかと思った。

しんみりとした口調に似つかわしくない、過激な言葉が聞こえた、気がする。



叱咤(しった)激励(げきれい)……?

 ── え、何て言われるって?」


「だから『この天剣流の面汚(つらよご)しが!』とか。

 『スケこましの優男(やさおとこ)が!』『また、天剣流は帝都の種馬、なんて汚名をひろげるつもりか!?』とか、さ。

 ── ほら、僕って、兄2人を飛び越えて次期当主候補になったから、未熟な僕が務まるか心配なんだよ」


「……ん? ……んん?」



俺は、いよいよ首をひねる。

面汚(つらよご)し』とか『スケこまし』とか『種馬』とか。

なんか『異世界なんで、違う意味があるのか?』とか考え込んでしまう



「下の兄さんとか、一族の会議で弟の僕が次期当主候補って決まったら、すごい(かば)ってくれたから。

 『弟は気が弱いから当主に向かない』とか色々、長老にも抗議してくれたらしい。

 だから兄さん『弟よりも俺が当主に(・・・・・)ふさわしい(・・・・・)』って、随分と言ってくれたみたいなんだ」



あれ、それって。



「それからは、月に1回くらい、特別訓練してくれるんだ。

 ── うちの兄さん、厳しいんだよ?

 素振りで手の平が血まみれなったり。

 もう立てなくなるくらい、走り込みやらされたり。

 あとは、組み手で倒れても、木剣(ぼっけん)容赦(ようしゃ)なく(たた)かれたり」



いや、お前、それって。



「兄さん寡黙(かもく)だから、あんまりしゃべったりしないんだけど。

 まあ、住んでる(・・・・・)家も違う(・・・・)から、めったに会わないんだけど……。

 毎月初めの、一族の食事会くらいかな?

 ── でもさ、いちいち言葉にしなくても、気持ちって伝わるもんだよね?」



うん、お前って、つまり、その、あの。


俺は、色々思って。

そして、思いきって、一つ()いてみる。



「……なんか、一緒に住んでないとか言ってたけど。

 もしかしてお前って、兄さん達と片親(かたおや)が違ったりしない?」


「あ、うん、そうだよ。

 あ、ごめん、そっか、まだ言ってなかったね。

 僕の母は、父さんの後妻で、前の奥さんは亡くなっているんだ」


「で、その兄さん達は前妻の子で、半分しか血がつながっていない?」


「そうだね。

 でも家族って、血のつながりだけの関係じゃないでしょ?

 ほら、ロック君がさっき言った通り、僕もそう思う」


「お、おう……そ、そうだな……」



俺がさっき言った意味とは、天と地ほどの差がありそうな気もするが。

なんか否定もしづらいので、とりあえず(うなづ)いておく。



「僕も兄さん達の事を尊敬しているし、兄さん達も僕の事を常に心配してくれている。

 『お前は色情狂(しきじょうきょう)大爺様(おおじいさま)の生き写しだから、いつか女関係の騒動を起こさないか心配だ』って、いつも言ってくれるんだ!」


「う、うん……そうか……」



これ、アカンやつだろ!?

幼い頃から罵声(ばせい)あびせられ続けて、感覚マヒしてんじゃねえのか!?



「その……お前の家族について、周りの人は、なんて言ってるんだ?

 たとえば、同じ道場の友だちとか……」


「ええと……友だち?」


「おう、友だち。

 もしや、お前…………友だち、いないのか?」


「え、あ、いや、いるよ、いるって。

 ほら、ロック君とか、アゼリア君とか」


「……リアちゃん、お前の事、覚えてなかったじゃん?」



あと、俺をナチュラルに『友だち枠』に入れんなよ。

非リア充(非モテ)金髪貴公子(イケメン)は、不倶戴天(ふぐたいてん)の敵同士って“““鉄の掟(ルール)”””なんでな。



「……ええ、あれー……」


「男友だちいるのか、そもそも。

 昨日言ってた、精剣流のナントカ君とかは?」


「ケーン君だね。

 ケーン君とは、いつもちゃんと挨拶するよ!」


「あいさつ、って……それだけ?」


「他には、ほら、手合わせとか?

 交流試合とか結構、年に3回くらい?

 同じ年代だから、いつも対戦するし」


「あのさ……そのケーンだっけ?

 そいつと、いっしょに遊びに行ったりとか、買い物とか?」


「いや、ないけど」



あっさり否定すんな!

おいぃ、マジ挨拶(あいさつ)だけの関係かよぉぉ!?



「ほら、ウチ、武門の本家だからさ。

 買い物とか行くと、だいたい門下生の女の子が付き()うよね?」


「おい、お前……」



何がどうなったら、『武門の本家だと、門下生女子がいつもお供』とか、そんな意味不明な認識にたどり着く?


ってか、周りの女連中も、色々問題あるのか。

世間知らずな御曹司(おんぞうし)なのを良い事に、変な事を常識って教え込まれてそう。

── うわ、(こわ)



「あ、それに、ほら。

 僕ら<御三家(ごさんけ)>の後継者同士なんで、あんまり遊ぶ時間もないというか。

 基本的に、帝都に居る間はほとんど、訓練()けだったし」



最初に言ってた<御三家(ごさんけ)>の同世代ライバル関係、どうなった!

お前の妄想か、あれ、全部!?


あいさつしたら、みんな友だちぃ!

──とか、コミュ障こじらせ過ぎアカンでしょ?



「……おい、まさか、お前。

 日頃、女子としか口きかないのか?」


「いやいや、ちがうよ?

 さっきも言ったけど、うちの男兄弟が仲いいし。

 上の兄さんとか、魔導学院に通ってるから、最近は滅多(めった)に顔をあわせないけど。

 それでも実家に帰ってくる度に、『まだ(あきら)めず続けているのか』とか『お前よりジョルジュの方が当主にふさわしいと思うが』とか、色々心配して相談に乗ってくれるし」



── 上の兄すらダメか。

下の兄は、次期当主を狙うライバル。

道場の中にも外にも、男友達はなし。

周りの女子は玉の輿ねらいで、変な事を吹き込むばかり。



「……四面楚歌(しめんそか)、だったか……」


「え、何か言った?」


「いや……なんでもないんだ……気にせんでくれ。

 ── ただ、お前の二番目の兄さん、実は『弟さえ居なければ、俺が当主になるはずだったのに』とか思ってたりするんじゃないかなぁって……」


「いやいやぁ。

 よく勘違い(・・・・・)されるん(・・・・)だけど(・・・)、そういうのじゃないよ?

 兄さんは寡黙(かもく)だから誤解されやすいけど、ほら、(きび)しい言動も『愛の(むち)』ってヤツ?

 年下で未熟な僕が、当主にふさわしく成長するよう、心を鬼にして鍛えてくれているんだよ」


「お、おう……そうか……?」



やめろ、やめろ、もうやめろ。

なんか俺、心の中の何かがゴリゴリ削れてんですけど?


アレぇ……、コイツ、リアちゃん並かそれ以上にコミュ障なんじゃね?

友だちの作り方とか、他人との人付き合い的な事とか、まるで解ってないんじゃね?


ってか、アレか?

DV被害者みたいな変な依存思考になってね?

こいつメンタル大丈夫か?



「まあ、他流派の事情に口出すのもアレだけどさ

 ロック君も、もうちょっとアゼリア君に(きび)しくして上げた方が良いんじゃない?

 やっぱり、身内だと、訓練で甘えとか出ちゃうしさ」


「う、うぅん……そ、ソウデスネ……」



(── アレ、これって、もしかして……)



俺は、ひとつの悲しい真実に気づいてしまった。



(リアちゃんが貴公子(ヒョロ)の事を覚えてないのも、仕方ないんじゃね?

 リアちゃん的に『他流派でよく対戦するだけの人』だった可能性が、(ばく)()がりしてね?

 そもそも、自己紹介とか、試合の前後に会話とか、そういうコミュニケーションも皆無だったんじゃね?)



何故か、イヤな汗が、じんわりと背中を伝った。





▲ ▽ ▲ ▽



── そんな事を思い返していると、急に現実に引き戻される。



「── お兄様、聞いていますか!?」


「も、もちろん、もちろん聞いているよ。

 ただ、美容院行った後のリアちゃんは格別カワイイなあ、って」


「そ、そうですの?

 美容院の人に勧められた、初めての髪型ですけど……似合ってまして?」


「うんうん、前の長いストレートも似合ってけど。

 でも、今のクルクルな髪もお嬢様っぽくてカワイイ、カワイイ」


「イヤですわお兄様……あまり褒められると、リア恥ずかしい……──

 イメチェンすれば身近な男性もドキッとするという話は、本当でしたのねっ 

 ── って、そんな話をしている時ではありませんわ!

 わたくし今、とっても怒ってますの!!

 お兄様、いつも、そうやって誤魔化すんですから!

 んもうっ! んもうっ! んもうっ! んもうっ!」



枕でべしべし叩かれる。



「ハハハ、リアちゃんごめんごめん」



俺は、二重の意味で、リアちゃんにごめんした。



── この翌日。

なんか公衆の面前で、(ひざ)の上に美麗(びれい)な妹のっけて、アーンし合っている恥ずかしい男子が居た事だけ、申し添えておく。



現場からは以上です。

作者からのお願い。


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「この作品読んだ!」的なツイートをしてもらうだけでも、作品の宣伝になり、喜ばれます(作者に)



2021/12/12 一部修正、追加

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