表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

35/218

35:古代の生物兵器

俺、前世はニッポン人、名前はロック!(転生者あいさつ)




既に、8人ほどぶちのめしたか。


夜に魔物の森に集結とか、アタマおかしい事している連中。

ヒョロい金髪貴公子(イケメン)いわく、『他の国から禁断実験しにきた後ろ暗い連中』。



(……今のはなかなか良かったな、中二病(スタイリッシュ)的に。

 【放電(スパーク)】を頭上に設置 → 離れて【遠隔起動(ブレイク)】の組合せ(コンボ)っ!

 また、何かの機会でつかおう!)



昨日、貴公子(ヒョロ)が使ってた、<天剣流>の奥義とかなんとかいうヤツは、いくらなんでも複雑すぎて覚えるのはムリだった。

だが、最後の起動術式・【遠隔起動(ブレイク)】だけは模倣できた(パクれた)ので、ちょっと試してみた。


── 想像以上に、イイ感じである。


俺も今まで、色々な術式を組み合わせた『ピタゴラ装置』な迂遠(うえん)な方法で、『時間差式(タイマー)の魔法起動』とか、『遠隔式(リモコン)の魔法起動』とか、色々作ってはいる。

昨日、デカいカメに使った【秘剣・陰牢(かげろう)弐ノ太刀(にのたち)影鋒刺(かげほうし)】なんて、俺的に渾身(こんしん)の一作だ。


だが、貴公子(ヒョロ)()の起動術式・【遠隔起動(ブレイク)】は、それ以上。

四彩(しさい)の赤>だか何だかの、魔術の名門が作っただけある。

洗練されていて、簡潔で、また使いやすい。


魔力(MP)消費が極小なのも、俺みたいな魔力がザコな一般人さん(パンピー)には、ヒジョーにありがたい。



── とか何とか考えていると、バシャバシャと河を渡ってくる足音。



「ロック君、大丈夫かいっ!?

 しかし、色々と予想外というか……予定外というか…… ──」



件の、<天剣流>の金髪貴公子(イケメン)だ。

何か色々言いたそうだが、俺は機先して簡潔に指示。



「── 貴公子(ヒョロ)、構えろ。

 魔物が来るぞっ」


「え……っ!?」



茂みの奥に逃げ込んだ男達が戻ってくる。

巨大な影の群を、引き連れて ──



「キサマらもこれで終わりだよ、薄汚い帝国の密偵どもめっ

 見るがいい! そして、絶望するがいい!

 ── これ(・・)が『古代の魔導師』が造り上げた『最悪の生物兵器』だっ!」




▲ ▽ ▲ ▽



俺の横で貴公子(ヒョロ)が顔を引きつらせた。



「まさか、アレ……<羊頭狗(ガク)>の群れかっ!?」


「ガク?」


能力(ちから)よりも、知能の高さが厄介な魔物だ。

 単体では『脅威力(きょういりょく)3』、群れとなれば戦闘力が()ね上がり『脅威力(きょういりょく)5』!」


「『脅威力(きょういりょく)5』のバケモノねえ……」



脅威力(きょういりょく)5』 ── 冒険者ギルドの最難関の討伐依頼だ。

つまり、冒険者にとっては最上位の魔物だ。

昨日の、異常個体<六脚轢亀(ヘキサスタンプ)>と同じか、ひとつ下くらい。


パッと見た目は、大熊なみの体格の、長い尻尾付きゴリラ。

しかし、体格の割に頭部は小さく、外骨格に覆われた頭は山羊か羊のような感じだ。



「ふ~ん……コイツら『外骨獣(・・・)』か」



となると、弱点が限られる。

外骨獣(がいこつじゅう)』と呼ばれる種類の魔物は、頭部・首・心臓といった急所を、外骨格で守っている。

外骨格は鋼鉄の武器でも弾くので、なかなか致命傷が与えづらい。



「フッハッハッハッ、恐怖におののけ!

 泣きわめき、哀れったらしく(ゆる)しを()うがよい!」



── その偉そうな姿が、ちょっとだけ『悪夢の中のトゲ鎧の悪党』に重なる。



(そうか、コイツがリアちゃんを夢の中で(・・・・)あんな目に!?

 ── 死ぬほどブチのめすっ!!)



悪夢を引きずる、俺の怒りが爆発!

激情のまま【序の三段目・()ね】で突っ込んだ。



「ひゅぅっ」



気合いの一撃!


しかし、カァンッ!、と甲高い音をたて、羊のような角で防がれた。

魔物が ── 『人食いの怪物』が身を(てい)して、人間を(・・・)守った(・・・)のだ。



(マジで、魔物を飼い慣らしてるのか……

 ヤバすぎるだろ、コイツら……っ)



俺は、内心舌打ち ──


── 途端、ボッフュン!と、空気をうならせた反撃がくる!

丸太みたいなゴリラ腕が、空気が爆ぜるようなアッパーカット。



「あぶねぇ……っ」



まだ空中に居た俺は、なんとか魔物の角を蹴って、後方宙返り。

間一髪の回避が間に合った。

うっかり、ポテチの袋みたいに爆発四散させられるところだった。


その間に、俺が狙ったボス格らしい黒服の男は、急いで後退しながら苦笑い。



「ふ、はは。

 まるで、風のような身のこなし!

 キサマ、ただの密偵ではないな、名の知れた暗殺者か!?」



違いますぅー!

剣帝の一番弟子ですぅー!

暗殺者とか汚れ仕事じゃありませーん!



「暗殺者だと!? そんな話、聞いてないぞ!」

「忌々しい、皇帝の密偵(イヌ)どもめ!」

「おいバケモノ! この暗殺者を焦がしてやれっ」



取り巻きのメガネのおっさんとかが、ザワザワし始める。

なんかコイツら研究者っぽいな。

インテリくさいというか、体力なさそうというか。


それはともかく、指示を受けた魔物が反応。



── メェ~ッ!



魔物が、その巨体からすると、妙に可愛らしい声を上げる。

同時に、外骨頭の2本角の間で<法輪(リング)>が回転。


発動音が『ゴーン!』と鳴って、雷光がスパーク。



── ズパァァ……~~ァンッ!!



耳をつんざくような、爆音。いや、爆雷か。


俺は【序の三段目・()ね】を逆方向に起動し、超バックジャンプで巨石の上に退避していた。



「バカかッ!? 水辺で雷撃を使わせるな!」

「そうだ、火の方だ! 火魔法で戦わせろ!」

「も、申し訳ありませんっ」



ボスや取り巻きの怒声に、茂みの中で誰かが答えて、ぼんやりと魔力の光が立ち上る。

魔物たちは、一斉にちょっとだけ虚空を見上げて、指示に返事するように「メェ~ッ」と鳴く。



(なるほど、あそこか……)



俺は魔力センサー魔法【序の四段目・風鈴眼(ふうりんがん)】で大まかな位置を察知。

ついでに周囲を見渡した。



(うん、貴公子(ヒョロ)が剣でガンバってるなぁ)



昨日の<短導杖(ワンド)>は【雷光鞭(ライトニング)】(初級魔法【放電(スパーク)】の上位版、人間は焼け焦げる)で、水辺では通電が危ないので、<正剣>(フォーマル)一本勝負みたいだ。


しかし、2匹に(から)まれ、上手く攻められていない。



(まずは、そっちから行きますかね。

 ── 忍法ウツセミの術! ニンニン!)



俺は、『チ・チリン』と必殺技を2連続発動する。





▲ ▽ ▲ ▽




「あ、ロック君!

 僕が突っ込むから、援護を ──」



貴公子(ヒョロ)は、背中に(・・・)身体強化(・・・・)の魔法陣(・・・・)をつけた『俺』が、駆け寄ったのをチラ見して、構えを変える。


── 剣を前に突き出した防御メインの構えから、剣を後方に引いた攻撃メインの構えに。

次の瞬間、特級・身体魔法の脚力が爆発。


下段からの、疾風のような斬り上げ ──

即時反転して落ちてくる、雷光のような斬り落とし ──


── 大木でも真っ二つにしそうな2連撃!


しかし、<羊頭狗(ガク)>とかいうクマ並体格のゴリラ魔物は、頭部の巻き角でそれを受け止めた。



── メェ~ッ!



魔物の角の間で<法輪(リング)>が回転。

黄色く四角い目が細まり、至近距離で、必殺の火炎魔法が ──



「── させるか、クソヤギめ!」



突如、魔物の背後(・・・・・)に出現した俺。

さっき使った必殺技は、幻影を生む【秘剣・散華(ちりはな)】と、隠密移動の【秘剣・速翼(はやぶさ)四ノ太刀(しのたち)夜鳥(ぬえ)】だ。


魔物にも察知されない不意打ちで、外骨格装甲のない首の付け根をなで斬りにする。



── メ、メェェ!?



その一撃で、均衡が崩れた。



「はぁっ!」



貴公子(ヒョロ)<正剣>(フォーマル)が、魔物の腹を突き、そのまま斜めに引き裂いた。



── メェ~ッ!!



横合いから突撃してくる、もう一匹の魔物。

俺はそちらに飛び出し、迎え撃つ。



── メェ!!



魔物は、アゴを引いて巻き角を突き出して突進。

俺はその隣を、ギリギリですり抜ける ──


── その瞬間、斜めに軸を傾けて360度の横回転。



「── 【秘剣・三日月(みかづき)参ノ太刀(さんのたち)水面月(みなもづき)】っ!」



── ゴ、ヒャ……ァ!



斜めに水面の波紋のように広がった、360度の広域斬撃攻撃(秘剣・三日月)

魔物は、上半身と下半身がなき分かれ、突進の勢いのままゴロゴロ転がっていく。



「ふ~ん……。

 外骨格のない腹を斬ればいいだけなら、そんなに難しい相手でもない、か?」


「いや、ロック君、油断しないで。

 相手は、かなり危険な魔物<羊頭狗(ガク)> ── アレは『古代の魔導師』が造り上げた『最悪の生物兵器』!

 簡単な相手では、決して ──」


「おらぁ、【秘剣・三日月(みかづき)】! 【秘剣・三日月(みかづき)】! 【秘剣・三日月(みかづき)】! 【秘剣・三日月(みかづき)】! 【秘剣・三日月(みかづき)】!

 ハッハッハぁ~ッ!

 昨日のクソカメより柔らかいし、山小屋(ウチ)の周りの陸サメより遅い(トロい)し!

 コイツら【秘剣・三日月(えんきょりこうげき)】で斬り放題じゃねえか!?

 なんだよ、『古代のナントカ』とか大げさな!

 『生物兵器』とか、いちいちビビらせんなよ!

 ── ん、貴公子(ヒョロ)、いま何か言った?」


「……いや、ゴメン。 やっぱり、なんでもない……」



あ、俺、気張りすぎて、貴公子(ヒョロ)の分まで斬っちゃった?

残り魔物2~3匹かぁ……。



(あー、なんかスマンな。

 お前も、せっかく気合い入れてから参戦してきたのに……)



でも、まあ。

魔物と一緒に周りの木も斬り倒したので、見晴らしが良くなったぞ!

さてさて、逃げた敵兵(クソ)どもを探しますかね。



夢の中の(・・・・)リアちゃんのカタキだ! 絶対に許さん!!)



── 俺を怒らせた事、後悔させてやる!!


そう!!!


誰も!!!


まだ誰も!!!


リアちゃんには!!!


ちょっかい出してないのである!!!!(アフ■田中風、2回目)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ