33:ハロー、アナザーワールド
あいも変わらず、例のパターン。
未完成原稿のまま更新されてしまったので、いったん削除して再投稿しています。
中途半端な原稿を入れたまま、投稿予約をしているとダメだね。
俺、前世はニッポン人、名前はロック!(転生者あいさつ)
……ボシャン、ブクブク……ッ、と視界が急転直下。
なんか俺、夜の大河に落ちたっぽい。
まだ体調不良が全快してなかったっぽい。
バランスを崩しただけで、フラ……ッときてしまった。
(いやーいかんね、健康は大事。
報酬に釣られず、安静にしておけばよかったわー。
ワッハッハッハッ)
笑い事ではないが、笑うしかない状況だ。
(しかし、魔物の改良とか、禁断の研究とか……アホかコイツら)
ゲームで出てくると、ベタだなぁ、とか思ってたが。
異世界在住(15年目)となると、ヤバさが際立つな。
ぶっちゃけ、近所にABC兵器の工場があったくらいの衝撃。
だいたいこういうの、ゲームやマンガのパターン的に
・ 魔物改良
↓
・ 生体兵器化
↓
・ 魔物細胞を人間と融合する実験
↓
・ 悲劇のヒロイン(短命)
とかなるんよなぁー。
クソ迷惑な。
他人様に迷惑かけないと死ぬ呪いでもかかってんのか、お前ら悪の研究機関(仮定)。
(だいたいマンガとかゲームだとパターン的に、アレだ。
改良した魔物が原因で、『国が壊滅!天罰!』とかなるんだから。
そういうアホ行動、やめときゃいーのに、もー)
そんな事をウダウダ考えながら、川底から水面の方へ平泳ぎ。
すると、周囲に、大型犬くらいのなかなかデカい気配がちらほら。
多分、さっきのアレだ。
(── しかし、さっきのマグロもどき(川魚)のヤツめ……!)
昨日の昼に双頭<六脚轢亀>のご飯にされていた、バカデカ川魚に奇襲されるなんて。
しかも、こっちを伺うように、周囲をスイスイ泳いでいる。
何、コイツ、さっきから俺狙ってんの?
殺意マシマシだな、この川魚(本マグロサイズ)。
そう思っていると、ビュンッと、突っ込んでくる。
(── うおっ あぶねっ
『魚』だけに……ププっ)
緊迫している状況で、下らない事が笑点にハマってしまう事って、あるよね?
まさにそんな感じで、自分の考えたダジャレが大ハマりして、ゴボゴボ……ッ、と息を吐きだしてしまう。
(い、いかん……
酸素が……脳に……回らん……酸欠……)
必死に犬かきするが、水面ははるか遠い。
つーか、何mあるんだよ、この河の深さ!?
10m!? いや20mくらいか!?
もう河っていうより、ちょっとした湖じゃね!?
(やべぇ、【秘剣・速翼】……っ
── あぁ……っ やっぱ『風魔法』は水中じゃダメか……!?)
水中!
水中で効果ある、移動の魔法!
思い出せ、俺!!
……ああ、いかん、本当に息がもたんっ
焦れば焦るほど、酸素が消費される。
(ああ、ヤベえ……
……意識が、遠のいて……きた……)
最後に、水面を見上げる。
青く淡く月が、水面に揺らいでいる。
── 下から見上げる、水鏡の月。
ああ、みたな、前世でこんなの。
なんだっけ、アニメで、流行った、『私は月へと飛ぶ』とか、そういうジャズの曲の……
バッドエンドまみれの、陰鬱な物語だったような……
▲ ▽ ▲ ▽
気がついたら、なんか暗い中、パイプ椅子に座ってた。
何、コレ?
ナニが始まったんデスカ?
前の方の遠くに、スクリーンらしき物が映っているのが、唯一の光源。
なんか、中学校くらいで、ひじょ~に教育的な映画 (クソつまんねーヤツ)鑑賞会させられた事を思い出すな。
(つーか、さっき思い出してた、バッドエンドまみれアニメ映画でも、こんなシーンあったな)
── 待望の完結編!
── ようやくハッピーエンドか!
── 少なくとも、謎のいくつかは解決するだろ!?
そういう、ファンの期待を嘲笑う、クソみたいな映画だったな。
さっき言った『教育的な映画 (クソつまんねーヤツ)鑑賞会』に匹敵するレベル。
ワクワクで来てたアニメファンの観客、全員、帰りにはお通夜みたいな空気だったぞ。
(あれ2000年代になって、また映画やるとか言ってたらしいが、結局どうなったんだ?
いや、もう期待してないから、どれだけストーリー破綻しても構わんが)
そんな事を、ダラダラ思い出していると、遠くのスクリーンが近づいてくる。
「お兄様っ」
(── お?)
「こんな姿、お兄様だけには、見られたくなかった」
(え、何……?
何が始まったの?)
「お願い、わたしのココロが消えないうちに」
「お兄サマのテで、コロし、て、クダ、さ、い ──」
(なんか、妹弟子が、スクリーンの中で怪物に変身しとる。
ワロタwwww)
え、何、これ?
夢?
一応、ほっぺた捻っとく?
それもベタだけど。
なに、うちの妹弟子、美少女すぎてついに映画女優デビュー?
かぁー、つれーわー。
かぁー、妹弟子が才色兼備の有能すぎて、つれーわー。
かぁー、こりゃもう兄弟子、付き人で頑張るしかないわー。
途端、ガタン……ッ、と隣の席で何人か立ち上がった。
みたら、昨日の冒険者パーティの人達。
なんか知らんが、光の勇者みたいな貴公子が言う。
「ロック君、気持ちは分かる!
だが、『コレ』はもう、アゼリア君じゃない!」
なんか知らんが、教会の聖女みたいなメガネ女子が言う。
「ロックさん、アゼリアさんの涙を思い出して!
彼女、苦しんでるんです、もう解放してあげてください!」
なんか知らんが、凄腕の魔導師みたいな年下少女メグが言う。
「アンタ、この子の兄貴なんでしょ!
最後くらい、ちゃんと看取ってあげなさいよ!!」
なんか知らんが、悪の幹部みたいなトゲトゲ黒鎧が言う。
「クックックッ……。
目障りな剣帝の弟子どもめ、お互いに殺し合うがよいわぁ!」
なんか知らんが、スクリーンから出てきて目の前に立っている『妹弟子inクリチャー』みたいな顔だけ人間の怪物が、苦しそうに呻く。
「……おに……い、さま……お願い……
……わたくしの……意識が、残っている内に……」
俺は。
俺は。
俺は。
おれは
オレは
オレハアァァァァ
いつの間にか。
倒れているリアちゃんを抱きかかえていた。
意味が、わからない。
何だか、わからない。
ただ、ジワジワと、心が底から冷えてくる。
「あたたかい」
「最後は、お兄様の腕の中で」
「うれしい」
「アゼリアは、幸せでした……」
「だから、泣かないで」
まるで、眠っているかのように、穏やかな顔で。
アゼリア=ミラーが、呼吸を止めた。
永遠に。
永久に。
「── リア、ちゃん……?」
「こんなのって、ない! こんなのってないわよっ」
「ひどい、せっかくアゼリアさんと、友だちになれたのにっ」
「さ、ロック君、アゼリア君を弔ってあげよう?」
どうして、だか、まるで解らない。
だが。
俺の、手には、血まみれの剣、が握られている ── ?
「あ、アゼ……リ……ア……?
な、なんだよ、これ、なんだこれ、血、血?
おい、なんなんだよ、これ!?
ふざけんな、一体、これなんなんだよぉ!!?」
俺が?
俺が?
俺が?
おれが?
オレが?
オレガアァァァァ!!?
(ああぁ、ああぁぁ、あ゛ぁ゛あ゛ぁ゛ぁ゛あ゛ぁ゛!)
(アゼ*リ#ア=み¥ラσーを!?)
(俺GAA、此のテDEE、頃§h♀・てしま〆ッ丁α、だとぉ!?)
それを認識した瞬間。
ヒドい頭痛 ──
ナニかがコワれたような衝撃 ──
── ブッッ……………チィンッッ!!!
(……コ……ロ……ス……)
…………コロス…………
……………………コロス!
コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス! コロス!
▲ ▽ ▲ ▽
── 脳を灼くほどの大激怒。
脳の灼熱で、ガンッと殴られたように、意識がハッキリする。
(悪夢だ……)
悪夢だと解っている。
だが、腹の虫がおさまらない。
目の前が真っ赤に染まったままだ。
頭が殺意で埋め尽くされた、悪夢のままの、精神状態。
(……全てが、目障りだ)
陸で、はしゃいでいるバカ共も。
空で、何か叫んでいる、どこかの誰かも。
水中で、こちらを狙っている、うっとうしい肉食魚共も。
(── 俺は、なんのために、異世界にいる?)
── 期待された、師匠の後継者に、なれもせず。
── 夢に描いた、魔剣士に成る事も、かなわないまま。
(それなのに、何故?
いまだに未練がましく、毎日剣なんて振っている?
『ゲームの必殺技』を再現なんてお遊びに、一体なんの存在価値がある?)
── そんなの決まっている!!
あの不憫な女の子を ──
健気で純真な乙女を ──
こんな無能を『お兄様』と慕う妹弟子を ──
(── この異世界にはびこる、ふざけた不条理どもから守るため!
そうだろう、ロック!?
もしも、この異世界が、あの子の敵だというならば!?
俺は、この異世界の一切合切を踏み潰し、粉砕してやる!!)
噛み付いてきた川魚を、間一髪かわし。
逆に、ガブリ…ッと、のどのぶに食らいつく。
── 風魔法をメインとする【秘剣・速翼】は、水中では役に立たない。
(なら、どうする?)
答えは、簡単だ。
使えない術式を全て廃棄。
両手に残る9個の指輪を全て、【滑翔】の魔法に書き換え、発動。
昨日、魔法の水風船カエル爆弾(?)を移動させていた『この魔法』は、移動に特化した魔法だ。
なにせ、魔法の術式である<法輪>や、俺の姿をした魔法の幻すら移動させられるのだから。
── 水中移動なんて、お手の物。
大河の水底15mで、水圧で死にかけてた、俺。
マリンジェットの勢いで水面をブチ破り、河岸に着陸。
ペッ……と、咥えていたマグロもどきを吐き出し。
ヤケっぱちに笑う。
── ハロー、異世界!
── クソったれな陰謀の皆さん、こんばんわ!
── はるばる遠くニッポンから、蹂躙しに来てヤったぜ!
2021/11/24 バグ台詞追加