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異世界カクゲーSPIRIT'sサイキョー伝説[↓↘→+s] ~知ってる?異世界って格ゲー無いんだぜ(絶望)……ハッ!無いなら作ればいいんじゃね(閃き)~  作者: 宮間
Round 9:港町ステージ

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233/236

233:最終決戦奥義

春の晴天の<金鉱島(ゴルドアイル)>。

その島の中心付近にある魔物の森に、『氷の構造物(ドーム)』という巨大な異物(・・)が現れてから10分も()った頃だろうか。



―― 不意に、その氷壁に囲まれた内部にけたたま(・・・・)しい(・・)音が響き渡る。


ヴゥオンッ!という音が、まるで雨雲の稲光(いなびかり)かの様に大気を震わせた。



『……今のは、何ダ?』



続いて、 ヴォヴォヴォヴォヴォ……!と響き渡る獣の(・・)うなり(・・・)()じみた重低音。


さらに異変が続く。

周囲が(くら)(かげ)ったのだ。

急に暗雲が立ちこめたように、辺り一帯が暗くなる。



「待ちわびたゼぇ……! 一日(いちじつ)千秋(せんしゅう)のぉ、思いで……!!」



ロックは、『こらえきれない』とばかりに身体を震わせる。

しかし死闘の相手は、黒髪の少年に目も向けない。



『……な、何ダ……?』



金髪ワシ鼻の男は、まずは魔法で作られた『氷の天井』を見上げる。

だが、その向こうにある空は青く、太陽は照りつけている。

そのまま周囲を見渡すが、氷壁の向こうのどこを見ても、暗雲など見たらない。



「これで、約束どおり……! 誓いどおり、になぁ……!」


『何なんダ……? いったい何が、起こっていルぅ……?』



歓喜の声を上げる少年と、恐慌に近いパニック状態の巨体の異形。


さっきまで勝ち誇っていた『異形の人馬形態(ケンタウロス)』が、突然の異変に顔を引きつらせる。

警戒を強めている理由は、何よりも『この異質で異常な魔力』の高まり。


彼、異国の男は、内心『あるいは、<四彩(しさい)>の青魔(カエルラ)が氷壁の外で包囲していて戦略級魔法でも狙い撃とうとしているのでは』とまで危惧(きぐ)した。



『オイ貴様ッ! いったい何を、しでカしたァ!!?』


「これで、お前をぉ……! 殺して、やれるぅ……!」



異国の男がすさまじい悪寒に襲われながら声をかける相手は、勝利の喜悦に震えている。



『なん、だと……?』


「このぉ、千倍(・・)()魔力(・・)()ぇ……!」



大型車両(トラック)なみに巨大な異形の者と、戦傷(せんしょう)のあまり立つ事もできない小柄な者。


しかし、勝利を確信しているのは小柄な少年で、思いがけない窮地に顔を青ざめさせるのは人間と魔物を組み合わせたような男。

その見た目と、戦闘の優劣が、まるでチグハグだ。



俺ごと(・・・)全てを(・・・)消し(・・)飛ばす(・・・)ぅ……!」



そう告げる形相(ぎょうそう)は、死兵の狂気そのもの。


そして、座り込んだ黒髪少年の背後から、ドォン……ッ!と遠雷のような轟音。



「そのためのぉ、範囲(・・)30倍(・・・)以上の(・・・)極太の(・・・)ツクヨミ(・・・・)、だぁ……っ!!」



転生者ロックの勝利宣告。


数百mほど向こうの森林の中で、氷壁の天井を突き破って天を()いたのは、まるで巨大な『漆黒の柱』。

そう(・・)としか見えない、飛び道具の必殺技(・・・)の超・巨大化だ。


それこそ、(けた)(はず)れの魔力量に()かして準備した、ロックの『最後の攻撃』だった。





▲ ▽ ▲ ▽



ロックが今まで密かに起動を進めていた、奥の手。


超必殺技【秘剣・三日月(みかづき)極ノ太刀(きわみのたち)闇月神(つくよみ)】。

それは、自分自身の魔力を魔術式で分解・再構成して『破滅の魔力』を精製(せいせい)し、魔力刃として射出するという『切り札』だ。


さらにその『超必殺技(ツクヨミ)』を、肉体の分解という禁忌の術式で手に入れた莫大な魔力を制御(・・)できる(・・・)限り(・・)全て(・・)(そそ)いで起動した。



―― ズドォー……ンッ!と、遠くに雷でも落ちたような轟音が響いた、


高さ20mある『氷の結界(アイスドーム)』の氷壁の天井をぶち破り、3~4倍の高度にまで達する。

縦で70m以上という、デタラメに巨大な黒い斬撃波(ミカヅキ)が、その偉容(いよう)(あらわ)す。





―― いったい、いつから?

―― 鉄弦(ワイヤー)を操作して、妹弟子を『氷の結界(アイスドーム)』の外へと離脱させた時から。



―― いったい、どこから?

―― 遥か0.5km(キロ)ほど向こうから、熟練した『鋼糸(イト)使い』技能(スキル)により、もはや指の延長に等しい鉄弦(ワイヤー)(かい)した遠隔操作で。



―― いったい、どうして?

―― 得意の必殺技を出来る限り使用せずに戦闘を続けて、その分の魔力操作の意識容量(リソース)『十重詠唱』(デキュブル・キャスト)へと優先的に()いて。



―― いったい、どのように?

―― 『破滅の魔力の精製』に不可欠な『魔力過充填(オーバークロック)』の青い魔力の特徴的な音(ィィィィイイイ……ィン! という音)を、『鋼糸(イト)使い』技能(スキル)演奏技術(・・・・)を応用した音波合成(ノイズキャンセル)消音(・・)しながら。



―― いったい、なにを?

―― この敵・異国の男は自分自身が大型魔物以上の脅威(バケモノ)である事から、この『氷の結界(アイスドーム)』という構造物(かこみ)を、黒髪少年(ロック)妹弟子(アゼリア)を奪い返して守るために作り出した『猛獣の(おり)』と勘違いしたのだろうが、そう(・・)では(・・)無い(・・)



―― いったい、どうやって?

―― この『氷の結界(アイスドーム)』とは妹弟子の身命(しんめい)に危害をくわえた、この『異国の男(くそヤロー)』を処刑の刻限(トキ)まで()がさない『死刑囚の監獄(おり)』なのだ。



―― いったい、どうする?

―― だから(・・・)近接戦闘で敵の注意を引き続けて、最後の最後まで手札を隠した完全に不意をつく形で、『必殺』を()す。





▲ ▽ ▲ ▽



「さあ、消し(・・)飛べ(・・)ぇ……!

 俺ごと(・・・)全て(・・)ぇ……!!」


『じ、自爆攻撃ダとぉ……っ!? 正気カ、貴様ァ~~!?』



ロックの独白により、危機を感づいた『異形の人馬形態(ケンタウロス)』はすぐに離れようと巨体をひるがえす。


しかし ――


―― ビィイ~~……ンッ!と、鉄弦(ワイヤー)が震えて、逃げだそうとする巨体を束縛する。

いくつもの鉄弦(ワイヤー)が巨大な四本の脚部に絡みつき、それから周囲の樹木の幹へと伸びて張り詰め、束縛の鉄糸(イト)となって動きを封じる。



「逃がす、かよぉ……! ゲフッ……。

 この、くそヤローがぁ……!!」


『チクショー、チクショー! チクショーメぇええ!』



異国の男の巨体は、まるでクモの巣にとらわれたヤモリの様に、ジタバタと。

しかし、彼はすぐに何か気付いて、両手を手刀(てがたな)の形にする。



『もう()るカぁ! こんなチクショーの下半身(・・・)

 邪魔ダ、邪魔ダ、邪魔ダ、邪魔ダぁ~~!!』



赤茶の竜鱗(スケイル)手刀(てがたな)を振り回し、自分の下半身にザクザクと突き刺す。

まるでミシン目のように等間隔(とうかんかく)の『切り取り線』を(きざ)むと、両手の手刀(てがたな)で一気に切除(カット)


金髪ワシ鼻の男は、鉄弦(ワイヤー)に引っかかった巨大な(・・・)下半身(・・・)()切り(・・)捨てて(・・・)骨盤から上の『人間の部分』だけになると、捕縛網罠(ネット・トラップ)の拘束からなんとか抜け出した。

上半身と両腕だけで地面を()って逃げる、『()つん()い』ならぬ『()つん()い』だ。



『冗談じゃない! 冗談じゃない! 冗談じゃない! ――』


「―― 逃がすか、コラァ~~~!!」



その背中へと、ロックがしがみつく。

即席に飛翔魔法を使って、空中体当たりを行ったのだ。



「ふざけんなよ、テメー!!」


『離せ! 離せぇ~~~!!』



両脚を失った少年と、腰骨から下を自切(じせつ)した異国の男。

上半身と両腕だけという、同じような姿形(シルエット)の2人が、もみ合い、泥臭く争う。


しかし、超人を超えた筋力の異国の男と、満身(まんしん)創痍(そうい)の『魔剣士失格(ナマクラ剣士)』の少年。

その身体能力には、歴然とした性能差がある。

隔絶(かくぜつ)した、力量差。


異国の男が死に物狂いで繰り出した、左の肘鉄(エルボー) ――

 ―― その一発だけで、背後から()め上げようとしていた、小柄な少年ロックの身体は1m以上も()ね上げられる。



「ゲ、フゥ……ッ!?」



続いて、ガムシャラに繰り出された、右の裏拳(バックブロー) ――

 ―― 落下してきた黒髪少年ロックの顔面をとらえる。


パカァ~~……ンッ!と竹の割れる様な快音(かいおん)

黒髪の頭蓋骨(ずがいこつ)が破砕され、脳漿(のうしょう)まで飛び散った。



「ガ、ハァ……ッ!!」





▲ ▽ ▲ ▽



―― 死ぬのか?


―― あと一歩というところで?


―― 死ぬのはいい、だが……。


―― 仕留(しと)(そこ)なうのは、腹が立つ……っ


―― 何か……!!


―― 何か、ねーのかよ!!


―― あと一歩で、届くんだ……!!


―― そう、俺のいm★■●▲(―― 記憶破損 ――)のために……!!


―― 大事な大事な&7%¥^#(―― 記憶破損 ――)ァのために……!!


―― あの【今は名前も顔も思い出せない】(むすめ)のために……!!




―― 男 が 女 の た め 命 か け て ん だ ぞ !




―― どっかに奇跡の一欠片(ひとかけら)くらい、落ちてねーのかよ!!!?



それは一瞬の、脳神経の火花。

頭蓋(ずがい)が砕けて飛び散る脳細胞たちが、末期(さいご)()わした神経伝達。


ある詩人の言葉を借りるなら、『仮定された有機(ゆうき)交流(こうりゅう)電燈(でんとう)』がチカ(・・)チカ(・・)()最後に放った、青い電光(シナプス)の輝き。



まるで、そんな希求(ききゅう)に応えるように、どこからか雪の結晶ようなモノがひらひら(・・・・)一欠片(ひとかけら)


砕けた頭蓋(ずがい)の下でポカンと開けっぱなしの、まるで死骸(しがい)の様な大口開(おおくちびら)きへと。


何か(・・)が、降って、入った ――





▲ ▽ ▲ ▽



矢の様な速さで(せま)り来る、巨大な漆黒の柱。


バリバリと氷の天井を割り砕き、森の木々も、土砂も全て呑み込みながら、竜巻の様に迫り来る。

近づいてくれば、その強大さに身震いする程だ。



『チクショー、チクショー! チクショー ――』



相変わらず、『()つん()い』ならぬ『()つん()い』で逃げる異国の男。


不意に、ビュビュンッ、ビィン!ビィィ……ンッと、楽器用の(げん)が震えて鳴る音が響いた。

上半身だけで逃げる金髪男の、必死に地面を()く胴体に、両肩に、両腕に、鉄弦(ワイヤー)が絡みつく。


決して逃がさぬと、筋肉を絞め上げ、骨を(きし)ませる。



『チクショー離せ! このクソガキぃ…… ――

 ―― ぃ、ぃぃ、ひぃ~~~!!?』


「貴様、何を勝手に逃げている?」



首だけ振り返って、異国の男は悲鳴を上げる。

死体が、口をきいたからだ。



「貴様、何を勝手に生きよう(・・・・)としている?」


『ひっ……!』



頭が上半分砕けて脳を無くし、すでに両の目玉が飛び出し眼窩(がんか)から向こうの景色が見える。

そんな明らか(・・・)な死人(・・・)だ。


それ(・・)が、空中に浮いて、両手で鉄弦(ワイヤー)を操りながら、異国の男に迫ってきた。

(まさ)亡者(もうじゃ)怨霊(おんりょう)幽鬼(ゆうき)(たぐ)い。



「お前はここで(ロック)と死ぬのだ」


『ひ、ぃぃぃぃ! ひぃ! ひぃ~~~!!?』



淡々と告げられる声が、何よりも恐ろしい。

生まれてきた事を後悔する程に、恐ろしい。


そして、それよりもさらに恐ろしいのは、その人影の向こうから、夜の闇よりなお(くら)い『何か』が迫っている事。


少年だった(・・・)()の後方0.5km(キロ)から ―― いや、もう残り100(メートル)もない程に近づいている ―― すさまじい勢いで闇が迫ってくる。

ヴォヴォヴォヴォヴォ……ッ!と、飢えた獣の喉を鳴らす音を、何百倍にもした轟音をまき散らしながら。



『い、いやだ! たす、けて! たすけて! たすけて! 死にたくない!!』



異国の男はガタガタと震えながら、身体にめりこんだ鉄弦(ワイヤー)を引きちぎる。

両手の竜鱗(スケイル)の鋭さを使って斬り裂き、必死に鉄弦(ワイヤー)捕縛網罠(ネット・トラップ)から抜け出す。


彼の真後ろの居る、死霊の様な少年は、もはや必死の足掻(あが)きに構いやしない。

ただただ、死を宣告するように、こう告げる。



これ(・・)は、貴様を(ほおむ)るための俺ロックの最期(さいご)の『必殺技(ひっさつわざ)』」



闇が迫る。

濃紫色の、超巨大な柱が。



「俺の『%ト3゜?ヨ(ホコリ)』を踏みにじった貴様に絶対(・・)の死(・・)をくれてやるために、肉体を犠牲にした千倍の魔力量を込めて、一日(いちじつ)千秋(せんしゅう)の憎しみで創り上げた、絶死(ぜっし)奥義(ワザ)



まさに、天を()く程の巨大斬撃。



「―― すなわち、『最終(↓↘→)決戦(↓↘→)奥義(+P・K)』!

 見せてやる、『三日月(ミカヅキ)』の極限(キワミ)を!!

 これが、『闇月神(ツクヨミ)』の必殺剣(ツルギ)だァ!!」



以前に戦った『魔物の大侵攻(モンスターパレード)』の首魁(ボス)の巨体すら呑み込む程の、超・必殺技(マホウ)だ。



「【千滅(せんめつ)ノ太刀(のたち)()(けん)(ツク)黄泉(ヨミ)】ッッ!!!」


『うわぁ~! いやぁ! 来るなぁ!! いやだぁ~~!』



異国の男が、いくら超人の戦士・魔剣士を超えた肉体能力があるとはいえ、両足を失っては素早く移動できない。

未強化(なまみ)』の子どもが歩く方がマシな、遅々たる移動速度で、とても逃げ切れない。

だから、両腕で()っての『逃走』を諦めた。


代わりに、その場で地面を掘り返し始めた。

土中への『退避』だ。


ザクザクと竜鱗(スケイル)手刀(てがたな)をスコップ代わりにして土石をかき、ドシャン・ドシャンッとまるで(みず)しぶき(・・・)の様に巻き上げながら、必死に穴掘りを続ける。



『母ちゃん! 母ちゃんたすけて! 死ぬのは、いやだぁ~~~!!』



そんな涙目の悲鳴すら、狂った獣の(うね)りが()りつぶす。

濃紫色の闇が、世界の一切を()りつぶす。


その間際(まぎわ)に、かつてロックであった屍体(しかばね)は ―― 常世(このよ)(ことわり)()えて動く死人(しびと)は、こう告げた。



■■■■=■■■(―― 記憶損壊 ――)(あだ)()す者よ、闇夜(やみよ)(つゆ)と消えろ。

 無用の一番弟子(このオレ)と共に」



そして、ああっ、と感嘆のような息を吐いて何か告げる。

その口から出る蒸気か、あるいは冷気の様な白い吐息(といき)が、天へと昇る。

それには、狂気に(はい)死兵(しへい)と化した男の、最後の人間性が込められた。



「XXX、XXXXXX……っ」



しかし、その言葉も、末期(まつご)の声も、全て深紫色の闇に()まれて、消えた ――……。


///////!作者注釈!///////


2025/11/01 『最終決戦奥義』の決めセリフ追加


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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 ……この流れ、本当に『今までのロック』は死んでしまったんですね多分。最後に彼の骸を操っていた(?)存在も気にはなりますが、それ以上に悲しみが強いや…。・(つд`。)・。 それで…
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