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異世界カクゲーSPIRIT'sサイキョー伝説[↓↘→+s] ~知ってる?異世界って格ゲー無いんだぜ(絶望)……ハッ!無いなら作ればいいんじゃね(閃き)~  作者: 宮間
Round 2:山岳ステージ

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23:追加料金サービス

俺、前世はニッポン人、名前はロック!(転生者あいさつ)




年下少女メグが、回避をミスって尻餅(しりもち)をついていた。

多分、後衛のくせに前に出すぎたんだろう。

安全距離(マージン)どりに失敗し、魔物に()()られたっぽい。


どうにも初歩的なミス過ぎる。

この赤毛っ子、新米冒険者っぽい。


道理で、動きがぎこちないワケだ。



「い、いやぁ~っ こ、こないでっ」



いや、『こないで』じゃないがな。

すぐ立ち上がれって。

はやく逃げろって。


俺が呆れて見ていると、かろうじて妹弟子(アゼリア)が間に合った。



「まったく、手がかかりますわね……っ」



リアちゃんが、ポツリとグチをこぼす。

年下少女メグを小脇に抱えて救出。


小型観光バスくらいの魔物<外骨河馬(ロックイーター)>の突進に、間一髪(かんいっぱつ)(すべ)り込んでいた。



そしてリアちゃんは、お荷物な赤毛っ子を雑に投出(ポイ)して、振り返り様に<正剣>(フォーマル)を振る。



「【秘剣・三日月(みかづき)】ですのっ ──」



大ぶりの(なな)()ぎ。

さらに回転して、勢いのまま剣を振り上げる。



「── もうひとつ【秘剣・三日月(みかづき)】ぃぃ!」



『チリン!チリン!』と連続で、魔法の起動音。


リアちゃんの得意技が炸裂。

俺は、(ひそ)かに『X字(クロス)三日月(みかづき)』とか呼んでいる。

1発目と2発目の速度を調整して同時着弾させる、技巧的(テクニカル)な必殺技の連続発動だったりする。



(この必殺技を作った俺ですら、そんな面倒な事はしたくないのに……

 やっぱり、こういう所は天才児だよなぁ……リアちゃん)



ウチの妹弟子、剣も魔法も半端ない(ッパねえ)わぁ。

その上、可憐かわいいなんて、マジ聖女だわぁー。(兄バカ)



── グオォォッ!



突進で大木をへし折り、方向転換したばかりの巨大カバ(ロックイーター)が、痛みに身悶える。

下顎に『X字』の傷が入り、ブワッと血が飛沫(しぶ)いた。



「す、すごい……っ」



目をいっぱいに見開く、赤毛の年下女子。

座り込んだまま、ポカンと観戦している。



(いや、そんな事より、早く立てよ……)



すぐに移動しろって。

前衛にとって邪魔なんだよ、その位置。





▲ ▽ ▲ ▽



「硬いですわっ

 斬りにくいですわっ

 イライラしますのっ」



リアちゃん、ブツブツ文句言いながらも、すぐに超スピード突進。

背中の赤い魔法陣の残像が、ロケットの噴射みたいだ。


小型観光バスくらいある魔物の、バタバタ暴れる前足を超スピードでかいくぐり、ズバッとすり抜けざまに後ろ足を斬りつける。



── グオッ! グオォォォォッ!



うん、確かに、傷が浅いな。

『鎧』の外骨格(がいこっかく)だけじゃなく、表皮も固いんだな、あの魔物。



「── な、何あれっ!

 みたことない魔法!? 魔剣士の技なの!?」

「いえ、聞いた事ないです。

 マァリオさんが使うところ見たことないですし」

「じゃあ、アレが『剣帝』の技!?」



そうです、あれが(うわさ)の【五行剣】ですよ、お嬢さん方。

しかし、本職の魔法使いでも驚くレベルなんだな、剣帝(ジジイ)のオリジナル強化魔法。


まあ、あの突進力は驚異的だし。

リアちゃんが実家で授かった【特級・身体強化:疾駆型(スピード)】に比べても、倍ぐらいのスピード感あるよな。


まあ、【五行剣:火(あの魔法)】の欠点は『突進専門』なんで、方向転換とかが苦手な事だけど。



「── すまないっ

 アゼリア君、待たせた!」



金髪ボブ男の貴公子(ヒョロ)が、(たか)られていた<岩蝙蝠(いわこうもり)>の群を追い払い、戦線に復帰。


しかし、協調性のない妹弟子(リアちゃん)は、面倒そうにチラ見。



「……わたくし、ひとりでも出来ましてよ?」


「ごめんごめん!

 これは、ちょっと頑張らないと、見直してもらえなさそうだね?」


「何でもいいです。

 邪魔にならないようにしてくださる?」


「ハハッ、手厳しいなぁ……

 ── じゃあ、いくよ!!」



貴公子(ヒョロ)と妹弟子が、交互に突撃。

魔物の巨体の周りをグルグル回りつつ、左右または前後から、挟み撃ちで斬りつけていく。


即興とは思えない、抜群のコンビネーション!


── と、言いたいところだが。

実は、好き勝手に暴れてるだけの銀髪美少女(リアちゃん)と、その動きを予想して適宜(てきぎ)フォローしている貴公子(ヒョロ)


動きが噛み合っているのは、8割方(わりがた)貴公子(ヒョロ)の功績だ。



妹弟子(うちの子)他人(ひと)に合わせるの苦手だもんなぁ……)



それにしても、やはり貴公子(ヒョロ)がかなりの腕前だ。

5年も会ってない相手の、しかも昔より進歩した剣術の腕前に、即興でコンビネーション取るなんて。

言うほど簡単に出来る事じゃない。


さすがは<帝国御三家>の直系男子。



(── ライバル(リアちゃん)の5年間の成長を予想できているって事は、相当意識してたんだな。

 本当に、報われないライバルすぎるだろ、貴公子(ヒョロ)のヤツ……)



貴公子(ヒョロ)が『弱音を吐いてたら、ライバル達に置いていかれる……っ!』

みたいな感じで、マジメに一直線に剣術を磨いてきたのが、手に取るように解る。


知れば知るほど、不憫(ふびん)なヤツだ。


あとで、5年ぶりの手合わせの機会くらい作ってやろうかとも、思うくらいだ。

そのためには、上手くリアちゃんを丸め込まないと。

また人見知りが発動しそうだけど。



(まったく……精神年齢は幼稚園児か、うちの天才児(リアちゃん)……)



そんな事を考えながら、泥沼の近くに歩いて行く。



「── サリー姉は、今のどう思う?」

「わたしはやっぱり、発動音が二回鳴っていたので、『二重詠唱(ダブル・キャスト)』なんじゃないかなぁ、と」

「そうよね。

 一つにまとめると、術式が複雑化しちゃうもんっ」



魔法使いの従姉妹(いとこ)2人(コンビ)は、支援するのも忘れて、魔法の解析談義に華を咲かせていた。



(いや、仕事しようよ、君ら。

 君ら、魔法使いの仕事、後方支援でしょ?)



さっきまで、『おお、見たことない魔法がいっぱい!』とか術式の模倣(コピー)に必死になってた俺が言うのも、アレだけどさ。



(……雇い主で女の子じゃなければ、ケツ蹴っ飛ばしてるぞ?)



そんな風に、俺がイライラして、腕組みして指トントンしている内に、



── グガァッ! グォォ………ッ!



ドスン……ッ、っと小型観光バスくらいの巨体が、ついに倒れた。

ラストは、天剣流(ヒョロ)の剣と魔法の二刀流攻撃で、雷撃魔法が(とど)めになったようだ。


リアちゃん、貴公子(ヒョロ)、お疲れさん。





▲ ▽ ▲ ▽



戦闘が終わると、再び周辺探索が始まった。


俺は、先頭を行く金髪ボブ男(イケメン)に、小走りで追いついた。



「ちょっと良いかい、依頼主さん?」


「あ、ロック君。 どうかしました?」


「さっきの戦闘。

 追加料金の話をしておこうかと思って」


「あはは、やっぱりそうなります?」


「そりゃ、そうでしょう」



俺ら、山岳ガイドなんだし。

契約外の仕事はしないよ。

したなら別料金だよ。



「ケチー!

 いいじゃない、アレだけ強いんだから。

 それに、そっちの女の子、マァリオの知り合いなんでしょ?

 だったら、少しくらい手伝ってくれても、いいじゃないっ」



と、社会の仕組みが解ってない赤毛のお子様から、非難が入る。



「君らを無償(ただ)で手伝ったと知られたら、他のお客様(パーティ)からもタダ働きさせられる。

 しなかったら、『なんでウチだけ金取るんだ!』と他のお客様(パーティ)に文句言われる。

 さらに『アイツら、相手によっては手抜きをする』とか、変な噂をされたら信用に関わるし、依頼も減る。

 だから、ちゃんと契約書通りに別料金を請求する。

 ── わかった?」


「わ、わかったわよ……っ」



ブラック企業じゃあるまいし。

過度のサービスなんて、身を滅ぼすマネはしない。


技術やサービスに正規料金を払わないから、前世ニッポンの経済は衰退したんじゃなかろうか。

── とか、そんなムダな事すら考える。

まさに『異世界転生した(ヨソにいった)ヤツが何言ってんだ?』という話題だが。



俺は、手頃な枝を一本拾い、蜘蛛の巣を払いながら、貴公子(ヒョロ)と話を続ける。



「あとどのくらい調査を続けるんです?

 さっき『調査対象が見つかった』みたいな話をしてましたよね?」


「う~ん、もうちょっと詳しい調査が必要なので……。

 できれば日暮れ前には、<翡翠領(グリンストン)>に戻りたいですね」



まるで『予定は未定』みたいな事を言われてしまう。


一応、山での遭難(そうなん)対策として、街に送り届けるまでは契約内だ。

なので山岳ガイドの業務として、相手の気の済むまで同行するしかない。



(たしか極秘任務の内容は、『<外骨河馬(ロックイーター)>や<岩蝙蝠>みたいな魔物が、本来の縄張りを離れた原因』の調査だったよなぁ……)



まあ、貴公子(ヒョロ)は、なかなか頭も回るようだ。

だったら『原因の輪郭(りんかく)』くらいは、おおよそ予想が付いているだろう。



── 『原因』をひと言でいえば、『環境』の変化。

本来の生息地(=水辺)で『環境』が変化し、住んでいた魔物達が追い出された。



だが問題は、その『原因 = 魔物の生息環境の変化』が起こった『さらなる原因』。

『根本的な原因』と言い換えてもいい。



(── 小型観光バス(・・・・・・)みたいな(・・・・)凶暴な魔物(・・・・・)が、縄張りから追い出された『根本的な原因』かぁ……)



絶対、ロクなもんじゃねえな。


俺は、依頼人にバレないように、こっそりとため息をついた。




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