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異世界カクゲーSPIRIT'sサイキョー伝説[↓↘→+s] ~知ってる?異世界って格ゲー無いんだぜ(絶望)……ハッ!無いなら作ればいいんじゃね(閃き)~  作者: 宮間
Round 9:港町ステージ

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222/236

222:口止め料(2人と1匹分)

俺、前世はニッポン人、名前はロック!(転生者あいさつ)




さて、なんか茂みから『グゥ~~……』とか『キュルルゥ~~……』とか、あからさまに腹ペコな音響効果(エフェクト)が聞こえてきたワケだが。



「……おい、そこの2人?」



俺が声をかけると、ガサァ!と茂みが揺れる。

さらに、子どもダマしな鳴きマネが返ってきた。



―― 『みゃ、ミャァ~~……』


―― 『ほ、ホゥ! ホホゥ! ホゥ、ホホゥ!』



「な~んだ、ネコとフクロウか……?」



とか、誤魔化(ごまか)されるワケねーだろ!

ワザとらしいにも程があるぞ!



「じゃあ、野生のネコさんとフクロウさんに、料理の毒味でもしてもらいますかねぇ~~~(完全に棒読み)」



さっき料理の片手間で作ってた、(ささ)の葉を4~5枚折って作った丸皿を2枚用意。

それにナマズ・フライを一切れずつ乗せて、軽く塩だけパッパッとふって、ガサゴソいってた茂みの近くに置いてくる。


すると、茂みの奥から、まるで(・・・)ナゾな(・・・)くぐもった声がする。



『……お、おいし、そう……っ』(ジュルリっ)


『……こ、こんなので、だ、だまされない、ぞ……!』(ゴクリっ)


『ホ……、ホゥ?』(ヒョイ、パクッ)



どこかで見た覚えのある、巨大な猛禽類(もうきんるい)がバサバサァ~……ッと木の枝から降りてきて、(ささ)の葉の皿の片方をつまみ食い。



『あ! ダメ! ルゥキ、食べちゃ……っ』


『あっ、俺の分……っ』



思わず茂みから身体半分出てくる、全身コートの少年少女2人。

特に、地元民少女(曲ツノ付き)の方が声を荒げて飼育魔物(ペット)へ注意する。



「『コレ熱い』じゃないのよ、もう……っ。

 アヤシイ奴の作った物なんだから、ちょっとは気をつけて!」


『ホゥ……? ホ・ホホゥ』


「だから『コッチも食べていい?』じゃないの!

 ダメ、コレわたしのっ』



巨大な猛禽類(もうきんるい)が、もう一つの皿の白身フライもつつこう(・・・・)とする。

慌てた地元民女子は、目の前の(ささ)の葉皿を持ち上げ、手づかみの一口でパクリ。



「―― ふっ!?

 美味しい(おいひィ)~~~!」


「し、シゥイ……っ!?」



地元民男子(ケモ耳付き)は、あっさり食べちゃった姉だか幼なじみ少女だかに、絶句。


その間に俺は、そそくさ(・・・・)(ささ)の葉皿2枚を持って行き、ナマズフライを2人前追加で設置。


すると、『女の子座り』してた茶色くてボロボロな全身コートの子が、ピョンピョン!ウサギ跳びで近づき、2皿目に手を出す。



「あ! また落ちてるぅ~っ。

 ―― ハフゥ……、熱々ぅっ」



落ちてねーよ、俺が置いたんだよ。


できたて料理が落ちてる世界とか、どんな童話ファンタジーだ。

『なんとかの青い鳥』かよ。



(そう言えば、前世ニッポンには『青い鳥マーク』のネットサービスがあったな……

 なんだっけ、『SNS対戦ファイティング・ツイッター』だったけ?)



『異世界なう』、あとハッシュタグ『#元の世界に戻る方法』、『#拡散希望』……。

届け、前世ニッポンへ!



「ちょっと、シゥイって……!」


「あ、ファブックはいらない?

 だったら、わたしがもらってあげるぅ~」



地元民男子は、注意するが相手は気にしない。


彼女さん(?)は汚れまくってる素手でつかみ、ハフハフしながら食べてしまう 。

胃袋が(かん)()ち、『食欲には勝てなかったよ』状態。



「シゥイ! 毒が入ってたら……!」


「こんなに美味(おい)しいなら、わたし毒入りでもいい~~っ」


「そ、そんなに美味(おい)しいの……っ?」


「サクサクなのにフワフワぁ~~」


「サクサク!? フワフワ!?(……ゴクリッ)」



どうやら地元民男子もガマンの限界らしい。

お腹がグ~グ~鳴ってるしね。



「おい、焼き魚ができたぞ。

 こっちにこい」



俺は、たき火から少し離れた位置に、グサ!グサ!と串を刺す。


ガサガサ!ガサガサ!と葉っぱまみれ全身コートの、デッカいドブネズミみたいな姿の2人が、四つん這いで近づいてくる。



『ホ……ホ……ホ?』



2人の後ろに、身長2~3mの巨大鳥類魔物もヒョコヒョコ歩いて付いてくる。



『メェ~……』


『ホ……ホゥ』


『メ、メ』


『ホゥ、ホ』



そして、当流派(ウチ)愛玩魔物(ペット)とペコペコと頭を下げ合う。

そんな謎のアイサツを()わしてから、食事の輪に加わった。





▲ ▽ ▲ ▽



「あ~……食ったぁ……」


「久しぶりに、お腹いっぱい……幸せぇ」



―― 【圧勝】俺の調理スキルにポコパンにされた雑魚ガキ2匹が転がってる件について!【胃袋KO】



香辛料(スパイス)いっぱいピリピリの(あん)かけ、美味しかったねぇ~」


「川カニの素揚(すあ)げも、足がパリパリで最高だった~」


「もぅ、ファブックったら! ルゥキと奪い合いとかするしぃ~」



満腹でお腹ポンポコリンな地元民カップルが、雑魚寝(ざこね)でイチャイチャしとる。



(おい、クソガキども、当たり前みたいに腕枕(うでまくら)とかすんな!

 無意味に寄り添って、ナデナデとか、スリスリとかすんな!

 さてはテメーら、本当に正真(しょうしん)正銘(しょうめい)の『バカップル』だな!?)



つまり、公害である。

つまり、公共の場の悪(パブリックエネミー)である。

どこでもイチャイチャ・イチャイチャと公共の風俗を害する、倫理観ゼロの害悪存在(バカップル)だ。


―― いや、違うって! 嫉妬(しっと)じゃないって!! むしろ『クソが(シット!)』だって!

(あ、嫉妬でシット(sh*t)ね、(ひとり笑(ププッ!)



「フ・ゥア~……、もう今日は、いいかなぁ……」

「ファブックったら……、こんな所で寝たら、風邪ひくぅ……フワ~」



(そろ)ってあくび(・・・)し始めた。

放っておいたら、そろそろ昼寝し始めそう。



「―― お前ら二人(ふたり)

 そろそろ自己紹介くらい、しろや」



俺は調理の後片付けしながら、年上として『礼節』の話をする。

鉄鍋にタワシかけて、汚れた水を捨てて、最後に植物油でさび止めコーティング。

油用タオルでキュッキュ・キュッキュ……ッと鳴らしていると、ようやく地元民カップルが身を起こした。



「アンタ達……、何者だ?」


「わたしたちを、どうするつもり……?」


「―― ……おいっ」



(何で今さら、シリアスを演出してんだよっ!?)



さっきまで、当流派(ウチ)食いしん坊(リアちゃん)と、

―― 「おいアンタ、それ塩焼き3匹目!」

―― 「そうよ、ひとりで取り過ぎぃ!」

―― 「だってリアのお魚ですもの! リアのためのお兄様の料理ですわよぉ!」

―― 「でも、わたしも食べていいって言われたもん!」

―― 「そうだ、そうだ! ひとり()めすんなっ」

とか串焼きを取り合いしてたくせに。


『ネコ缶ですぐに腹出してゴロニャンしてきたノラ猫が、食い終わったら急に不機嫌になった』くらいの理不尽さだ。



―― とは思うが、生意気ガキンチョにいちいち怒っても仕方ない。


年上として、いや大人としての度量を示す。

そんな精神年齢が成熟しまくった、転生者の俺(得意顔(ドヤァ!))。



「剣帝流の一番弟子、ロック!

 名字なし学歴なしの16歳、最近は帝都でアルバイト中、以上。

 ―― 次、リアちゃんっ」



俺が指名すると、妹弟子が手を上げ、元気にお返事。



「はぁ~い、剣帝流の後継者・アゼリア=ミラーですわ!

 士官学校1年D学級(クラス)の16歳、好きなお菓子はクッキー!

 しばらく<帝都>から離れていて流行に(うと)いので、美味しいお店があれば教えてください!

 仲良くしていただければ嬉しいですのっ」


「―― ……なっ……んだ、と……!?」



俺の背中に衝撃が走る。

お前それ(・・)、ちょうど1年前に練習してた『新入生のクラスでの自己紹介』の文言そのまま(・・・・)じゃねーか?



(まさか、この1年間ずっと使い回し!?

 お前ちょっとお前もうちょっとあのさぁもっと場所とか相手とか、TPOにあわせてアレンジとか ――

  ―― うん! ぜったいに出来ませんね!!)



キミ、ホントそういうの不器用だもんね!

コミュ症No.1女子(ウチのリアちゃん)は!



「な、仲良く……、ですか?」


「ええ、新しいお友達、ですの!」


「お、お、おともだちぃ~~!?」



―― んっ、なんか相手の女子にクリティカルヒットしとるぞ?



「おっともだち~」

 「おっともだち~」


「おっともだち~」

 「おっともだち~」


「おと、おと、おと、おと、おともだち~」

 「おと、おと、おと、おと、おともだちっち~~」




なんか『♪せっせっせ~のよいよいよい』みたいな手遊びで、仲良くじゃれ合い始めた女子2人。



「ね、義姉(ねえ)さん……?」



ポカンとしてる地元民男子。

俺は、それに鋭い声をかける。



「―― おい、そっちは!? 自己紹介っ」



すると、ハッとした顔で口元を引き締め、ゆっくりとフードを後ろにやる。

バサバサッと振るった濃紫髪から、ヒョコリと一対のケモノ耳。



「―― ファブック……。

 『(とが)(たみ)』の末裔(まつえい)、ファブック=リシャ=カフ、だ」



続いて、地元民女子も彼氏に(なら)って、フードを下ろす。



「シゥイ……。

 『(とが)(たみ)』の末裔(まつえい)、シゥイ=ライ=テンケ、……です」



まるでヒツジのような、頭部から横に生えた曲角(まがりつの)をさらした。





▲ ▽ ▲ ▽



「ふ~ん。

 ―― で、そっちの鳥型魔物のペットが『ルゥキ』だったか。

 あ、ウチの魔物(コイツ)は『ブチ』ね?

 見ての通り、白黒ブチ柄だから」



以上。

と俺が自己紹介タイムを切り上げようとすると、『待った』がかかる。

なんか切羽(せっぱ)()まった感じの、地元民男子(ファブック)の声。



「―― いや、ちょっと! あのさ!」


「うん……?

 ―― ああ、そうか、さっきなんか『ペット(・・・)じゃなくて友達(・・)』とか言ってたか、その魔物。

 ああすまんすまん、ウチがペットだから、つい、うっかり」


「いや! そうじゃなくて、ですね!」



と今度は、地元民女子(シゥイ)の声。


俺は、何か言いたげな2人に向き直る。



「え、何?」


「なんか言う事あるだろ?」


「ほら、これっ、これ!」


「いや、さっき見たし……」



俺としては、料理と片付けの疲れもあって、そんなの後にしてくれという気分。



「いや、ちゃんと見てないだろ、さっき!」


「そうそう! よく見たら、色々言う事ありますよね!?」



2人して、自分たちの頭に生えたケモ耳と曲ツノを指さし、強めの主張。



兄弟子(にいちゃん)、フッと鼻で笑っちゃう。



「―― 残念だったな、少年少女!

 俺とか、獣人みたいなファンタジー人種に初めて会うから!

 耳やツノの形とか『(とが)の民』とか何か色々言われても、まるで解らんぞ!!」



そう! モノを知らない奴はサイキョーなのだ!!



(―― うっせぇーよ!

 『これだからコミュ症は常識なくて……ハァ』、とか言うな!!)



だいたいなぁ、俺の前世ニッポンのサラリーマン経験からしてだなぁ、

―― 『え! 何とかさんって、●●なんですか、あの▲▲の!?』

とかオウム(がえ)しでテキトーに驚き演技(リアクション)しておけば、相手はだいだい満足すんだよ!



コーシエンの常連とか、ラグビーの花園とか、水泳の名門とか、陸上の強豪とか、知るかそんなモン!(笑)

旧華族の何々家とか、どこどこ会社の創業家とか、マイナー過ぎんだよ!(呆)


せめて地下闘技場(東京ドームの隠し施設!)を運営しているトクガー家くらいの知名度になって出直してこいよ!



「リアも! ぜんぜん分かりませんわ!!」



妹弟子も、俺のマネしてエヘン!と胸を張る。


すると、さっきまでリアちゃんと仲良く『おっともだち~♪手踊り(パラパラ)』してた地元民女子(シゥイ)も、眉を吊り上げて文句を言い始める。



「えええ~~、そんな雑な対応あるぅ~!?」


「だって、わかりませんものっ」



今度は、地元民男子(ファブック)の文句。



「いやいやいや、フツー見せたらみんな驚くし……。

 今までもずっと、気味悪がられて……」


「あ、そうなん?」


「いや、『あ、そうなん』って……

 いや、でも……」



なんか、ブツブツ言ってる。


しかし、わたくし、天然っぽい紫色ヘアーの時点で、

『おおファンタジー…っ(感動)』

という感想なくらい、この異世界に詳しくないのですよ。


この異世界ではクソ田舎(いなか)出身で、しかも帝国東北部の人外魔境<ラピス山地>で、第二の人生の大半を過ごしてきたワケだ。



(俺って世間知らずっぷりでは、あまり妹弟子の事を言えんしなぁ~……)



そんな俺のアッサリ反応が気に入らないかったらしい。

なんか、地元民女子(シゥイ)がプンプンと吊り目で立ち上がり、大声を上げる。



「そうよ! そう!

 この耳や角のせいで、わたしたち化け物あつかい!

 そのお陰で、フツーに街なんか入れなくてぇ、近づけなくてぇ ――」


「―― あ、うん?

 でも、鉄兜(ヘルメット)(かぶ)れば行けんじゃね?」



俺が声をかぶせると、妹弟子が何かゴソゴソと探し始める。



「お兄様、ちょうど『ブチのエサ入れ』にしようと拾ってた鉄兜(ヘルム)がありましてよ?」


『フニャ……、メェ……?』



これは、ブチの寝ぼけ声。


こいつら2人、迷惑なバカップルではあるが、当流派(ウチ)アンポンタン(リアちゃん)が電気ショック漁法(りょうほう)とかいう『超級の禁忌(タブー)』をやった後始末を手伝ってくれたんだ。


あとちょっとくらいなら、面倒見てやってもいい。



「おおナイス、妹ちゃん!」


「ちゃんと洗って、死体の臭い匂いは落としてますのっ」


「えらいえらい」


「ウフフ~、()められましたのぉ」


「よし後は超速で加工して、ケモ耳とツノ出す穴を開けたら充分っ」



俺が、ガンガン!カンカン!ギリギリ!と金属加工を始める。



『メェ……フワ~……』『ホゥ……クルル……』



満腹顔で昼寝している魔物2ブチとルゥキが、迷惑そうにチラ見してくる。



「―― よし! ケモ耳対応と曲ツノ対応の鉄兜(ヘルメット)完成!」


「は、早いって! なんか色々おかしいぞ、この連中!」


「そもそも、なんでその剣、鉄が斬れるの!?」


「いいから早く()けてみろ、細部調整(フィッティング)するぞ?」



俺が、金属加工断面のバリ取りみたいな細かな作業をしていると、またケモ耳な彼氏さんが気弱な発言。



「でも、さ……。

 俺が、せっかく鉄兜(ヘルメット)(かぶ)っても、耳とかツノとか飛び出てたら意味ないんじゃない?」


「バカお前っ、これ(かぶ)っておけば『冒険者だ』って言い張れるだろ?」


「えぇ~……っ」



何故か(・・・)、信じられないという顔の地元民男子(ファブック)


続いて、曲ツノな彼女さんの方も気弱な発言。



「いや、あの。

 せっかくで、ありがたいんですけど……。

 そもそも、わたしたち、冒険者ギルドとか、カードとか持ってなくてぇ……」


「ああ、大丈夫。

 無くしたって言い張れば、ちょっと(・・・・)の罰金で済むから」


「いや、そんなので良いの……?」



こちらも何故か(・・・)、信じられないという顔の地元民女子(シゥイ)



―― ま、あくまで『身元引受人が居る』という事が前提条件だがな。


でも、だいたいどこの都市でも、身分証明書の代わりに金貨1枚くらいの罰金で出入りできるハズ。

(あ、皇帝陛下が居るので特別厳重な<帝都>は、例外ね。

 兄弟子(にいちゃん)、一度それでヒドイ目にあいました)



細かな加工作業を邪魔するように、地元民男子(ファブック)がまた何か言ってくる。



「でも、さ。

 シゥイの頭角(ツノ)は誤魔化せても、俺の獣耳(ミミ)は?

 これピコピコ動いて、自分でも止められないんだけど……」



さっきから『でもでも』うるせえな、コイツ。



「だから『冒険者だっ』て言えば、誰も気にしないって!

 殺した魔物の角とか爪とか、ケモ耳とか、動く尻尾とか、ナゾに()える虎の顔とか、変な装飾(カザリ)を付けるヤツいっぱい居るから」


「え、えぇ~……っ」


「冒険者って、なんなの……?」



地元民男子(ファブック)は呆れ顔、地元民女子(シゥイ)は苦笑い。



(つまり、MMORPG上級者かコアなバンドマンみたいな、超奇抜(イカれた)な格好(ファッション)の連中ばっかりだ!)



あ、前世ニッポンで例えるなら、って事ね。

もちろん。





▲ ▽ ▲ ▽



そんな感じで、バカップル2人にそれなり(ボーケンシャ風)な格好をさせて、身元チェックの場所『関所(ゲート)』へ連行。

(あ、ほら都市城壁の入口すぐの中庭、人間をチェックする所ね)



「ぼ、冒険者で~す。ギルドカード落としました」

「わ、わたしも冒険者ぁ~、ギルドカードなくしました~」



と、棒読みセリフの、ケモ耳と曲ツノの獣人カップル。

落ち(・・)てた(・・)防具を着させているので、ブカブカ感は(いな)めない。



「……フン」



しかし、衛兵の中年係員は、その2人をチラ見して、鼻息鳴らしただけ。

無表情で帳簿へ提出書類を挟み込み、赤ペンでチェック項目を書き込みながら、俺へ手を出す。



「はい罰金2人、と。

 ひとり金貨4枚、合計8枚だ」


「おい、それはさすがにボッタクリだろ!」


「ここ金鉱山もあるし、養殖魔物の売買も盛んだから。

 景気がいい都市だから人頭税がな、つまり入場料がそもそも高いんだよ。

 罰金がつくと、さらに倍」



うっせぇ、『倍率ドン!さらに倍!』じゃねーよ!

昔のクイズ番組かよ!?



「くっそぉ~、8枚!?

 マジで、2人で金貨8枚!?

 他の都市の4倍以上とか、予想外の出費すぎる!

 前世ニッポンなら、およそ100万!?

 そんだけあれば何ヶ月ゲーセンに通えるんだと ――」


「―― いいから早く。罰金払って入れ。

 次の人も待ってるんだから、早く」



衛兵の中年係員は、ズイッと手を差し出してくる。



今の俺は建前上『護衛の冒険者2人(シゥイとファブック)の雇用主』である冒険者ギルドの出入り(・・・)業者(・・)

つまり、臨時とはいえ『従業員』の違反行為(ヤラカシ)に責任を()う立場。


しぶしぶ、金貨8枚を支払う。



なお、説明が面倒なお友達な鳥型魔物ちゃん(たしかルゥキ)については、捕獲用の木製檻(ケージ)適当に作って(こさえて)、『荷物』扱いで入ってもらった。



―― 何か、予想の数倍な『(くち)()め料』の支払いになってしまった。


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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 まぁ言い出しっぺはロックだから、金貨8枚は高い授業料(?)と思って諦めるしかないですね……学んだことは『世間は世知辛い』ことだけですがwwww そう言えばアゼリアちゃんが何かさら…
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