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異世界カクゲーSPIRIT'sサイキョー伝説[↓↘→+s] ~知ってる?異世界って格ゲー無いんだぜ(絶望)……ハッ!無いなら作ればいいんじゃね(閃き)~  作者: 宮間
Round 9:港町ステージ

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218/236

218:ガクガクぱにっく(上)

俺、前世はニッポン人、名前はロック!(転生者あいさつ)




なんか今日は、やたら騒がしい。


というのも、真横で遠吠えしている連中がいる。



ワァオーン!

 アオォーン!

  ワゥゥ~~ウ~~!


「ワオーーン、ですわぁ~!」


『メェ! メメェ~~!!』



猟犬十数匹、妹弟子(リアちゃん)白黒魔物(ブチ)が順番に空に()えてる。



昨日今日と2日連続で、<金鉱島(ゴルドアイル)>の専門冒険者PT(パーティ)について行って魔物牧場での魔物捕獲を見学していたワケだが。


なんか、『群れ』に馴染(なじ)んだらしい。

当流派(ウチ)妹弟子(いもうと)飼育魔物(ペット)


より正確にいうと、魔物捕獲の冒険者さん達が『猟犬たち行け!』と指示すると、何故か一緒に走り出す、我が『剣帝流』のノーテンキ妹弟子とボケ魔物。


そして、魔物の群れのボスらしきヤツを真っ先に狙い、トリャー!と木剣で殴り倒して引きずってくる、超天才美少女魔剣士さん・アゼリア。

その後についてくる、大木みたいな豪腕で首を絞め上げて気絶させ、メェ~!と両手で『デカイの()ったヨ! 2匹も!』と見せてくる、白黒毛の巨体魔物・ブチ。


そんな、ほのぼの観光アクティビティ『(いそ)でお魚さん手掴(てづか)み』みたいな光景が繰り返され、気がついたら群れの一員になってるワケだ。



(……うん、うん! 意 味 が わ か ら ん!)




―― 【悲報】剣帝流の超天才美少女さん、何歳になっても野生児の頃のクセが抜けない件について【大暴れ】


最初は<羊頭狗(ガク)>の巨体にビビってた、黒柴(クロシバ)くらいの武装猟犬(ワンちゃん)たち。


しかし、昨日・今日と一緒に狩りを続けていると徐々に

『あ、コイツら新しい仲間なんだ……?』

と認識してきたらしい。


何か、今日のお昼ご飯の後には一緒にお昼寝とかしている。




―― 見よ! この一見『乙女チックに白馬とお昼寝』という絵画のような幻想風景(ファンタズム)!!


実際は、ペットの白黒斑点柄(ブチがら)外骨獣(がいこつじゅう)(魔物!)と、魔物追い専門の狩猟中型犬の群れに囲まれ、モフモフいっぱい大満足!

群れのボスみたいな顔してグースカお昼寝している、当流派(ウチ)野生児お嬢様(リアちゃん)なのである。



「て、<帝都>の士官学校のお嬢さんって、変わってるんだね……アハ、アハハハッ」


「………………」



魔物捕獲専門PTの冒険者が、引きつった顔で困惑の声。

俺は、『そうですね』とも『いや違います』とも言えず、黙り込む。



大体そんな感じで、<金鉱島(ゴルドアイル)>観光の2日目が終わった。





▲ ▽ ▲ ▽



金鉱島(ゴルドアイル)>観光の3日目の朝。



「―― さて、そろそろダンジョン見学に行かせてくれ!

 いや、行かせてください! お願いします!」



兄弟子、渾身(こんしん)のお願いである。


―― 犬さん達と駆けっこ楽しいですわ~!

―― メェ! メェ!

という、体育会系な旅のお連れさん達への、ガチ懇願(こんがん)なのである。


ほら、兄弟子(にいちゃん)ってばインドア派で理知的な魔導男子(インテリ)だからぁ~?

キミ達みたいに、走って殴ってりゃ満足ってワケじゃないからぁ~?



「お兄様、そもそも今回の旅は、ブチの運動不足解消だったのではなくて?」


『メェ? メ? ンゴッ』



白黒魔物・ブチが、朝ご飯を奥歯でコリコリ()みながら、『何の話?』って顔してくる。


ちなみにコイツ、夜は馬小屋の一角を借りて枯れ草ベッドでゴロ寝。

なので、早朝の今もまた馬小屋でお座りして、アゼリアからエサをもらっている。


その朝ご飯のバケツを見ると、雑穀とか魚の頭とか鳥の骨とか。

多分、宿屋のキッチンから料理の切り落としなんかを、妹弟子がもらってきたんだろう。



「兄ちゃん、この機会を逃すとダンジョンとか入れなさそうなんだよ!

 冒険者ギルドの窓口で、色々聞いた感じによるとっ」



例えるなら、前世ニッポンで登山する時の『入山届け』みたいに、冒険者ギルドで手続きしないとダンジョンとか入れない物らしい。


考えてみれば当然だ。


お宝ザックザック&危険なトラップだらけ、という古代遺跡。

一攫千金(いっかくせんきん)を狙う冒険者が他国からも殺到するからこそ、冒険者ギルドが厳格なルールで管理してる。


ダンジョン攻略を目指す冒険者たちの安全確保、という事もあるし。

逆に、見境(みさかい)ないバカが爆薬とか強力な魔法で『貴重で重要な』古代遺跡(ダンジョン)の壁や床をブッ壊したら困るから規制をかける、って意味でもある。


それにダンジョン攻略の時は、古代文明の研究している学者センセイや、冒険者ギルドの監視だって同行する物らしい。



(そういうワケで、今まだ攻略中のダンジョンとか、ギルドから信頼されている高ランク(・・・・)()冒険者(・・・)しか入らせてもらえないらしい。

 当然、冒険者ギルドの『出入り業者』(俺!)とか、登録証(ギルドカード)を持っててもダンジョンに入れないワケで……)



兄弟子、魔剣士になれなかった不遇(ふぐう)が大爆発!

なんだ、この転生後のチビカスゴミ身体(ボディ)、使えねーな!



「というワケで、雰囲気だけでも味わいたいんだ!

 もう攻略済みで、お宝も敵もトラップも、何もなくても構わない!

 ―― 兄弟子のダンジョン未経験(ドウテイ)、卒業させてくれ!」



―― 異世界転生したのクセにダンジョンも行った事ないの?

―― えぇ~、キモーイ!

―― 即死(Wiz系)ダンジョン童貞(ドーテイ)が許されるのはツ●サ文庫までだよね~~!?

そんな風に、異世界転生者専用のBBS(掲示板)で『ダンジョン潜った事ないザコおるwww?』とか煽られて恥をかきたくないワケである。



「なあ頼むよリアちゃん!

 先っちょ! 先っちょだけでいいんだよ! 1回だけ! ちょっと入るだけ、ね? いいだろ、入り口だけだから! ちょっと1回洞穴(ナカ)に入ったら満足するから!」



(※作者注釈:このネット小説は全年齢対応の健全作品です)



「だ、ダメですわ、お兄様っ」


「ダメか、アゼリア!

 兄ちゃんは本気なんだ!

 本当にダメか?、本当の本当に!?」


「だって、そんなぁ……朝からこんな(・・・)所で(・・)……

 ……それに、ヤギさんが見てますわ」


『メェ~……?』


「そだな、こんな(・・・)所で(・・)ワーワー言ってても仕方ないな!

 じゃあ、朝一(あさいち)で冒険者ギルドに予約入れてくる!!」


「―― ちょ、ちょっと、お兄様ぁ!?」



善は急げ、だ。

ダンジョン体験コース(観光客向け・ガイド付き)の手続きするため、冒険者ギルドの金鉱島(ゴルドアイル)支部へと全力ダッシュ。



―― 『お兄様のバカァ~~~!!』



何か背後から妹弟子の怒鳴り声が聞こえたような気もしたが……。



兄弟子(ニイちゃん)、今はそれどころじゃないんで!)





▲ ▽ ▲ ▽



そんなワケで始業(オープン)前から、ひとりで待機列。

冒険者ギルド・金鉱島(ゴルドアイル)支店の前で、営業開始を待ち構えている、俺ロック。


開店(?)と同時にダッシュで窓口に詰めかける。



「ダンジョンの練習施設(テストコース)って、冒険者じゃなくても入れるんですよね!?」


「え? ダンジョンの見学コースの申し込み、ですかぁー……。

 ―― ん、もしかして、今日とか……?」



冒険者ギルド窓口の係員は、微妙な返事。

おととい、この島の歴史を説明してくれた男性職員だ。


あ、ほら、あのバターンした人。ウチのペット見て。



「あぁ……、その……」



男性係員さんは、何故か事務所の方をチラ見。

そして、困ったなぁ、とほおをかきながら俺の方に向き直り再確認。



「あ~……、今日、ダンジョンに入りたいって事ですか?」


「午前の一番のコースでお願いします!」


「あのぉ、例の、練習施設(テストコース)で隠し部屋が見つけた、って話ぃ……。

 聞いてます?」


「……はい?」



イエスともノーとも違う返答が返ってきて、俺は首を傾げる。


すると男性係員さん、フウッと小さくため息をついて詳細を説明してくれる。



「2日前に、ダンジョン攻略の練習使用(テストプレイ)をしていた冒険者戦団(パーティ)が、隠し部屋を見付けたって話なんですが?」


「ん……? んん……?」



え、何ソレ。

攻略済みダンジョンから、未発見の何か新しい物を見付けたって事?



(ちょっと、何その、主人公ムーブ)


(―― え、待って。)


(どっかの誰かさんに、既に兄弟子(ニイちゃん)の出番取られちゃったワケ?)


(―― え、しんどい!)


(―― え、マジしんどいよ、それ!)


(俺一応、異世界転生者で、何か主人公ポジション的なアレなハズなんだけどぉ?)


(なんでそんな重要そうなイベント、どっかの現地民(モブ)に取られちゃってんの!?)



理解が、おいつかない。

思考がグルグル、グルグル回る。


ようやく口から出たのは、小声のつぶやき。



「え……、ナニソレ……?」


「―― え、知らない? 初耳なの?

 本当に、ぜんぜん聞いてない?」



男性係員さんに確認されるたび、コクコクうなづく俺。

いや、ショックすぎて、コクコクうなづく事しかできなくなってるワケだが。



「え、本当に、聞いてないの?

 昨日(きのう)おとといと、あんなに大騒ぎだったのに?

 冒険者だけじゃなく、街中その噂でもちきりだったのに?」


「…………はい……」



俺は、ちっさい声で、かろうじて返事する。


前世ニッポンの会社勤め(サラリーマン)の入社1年目で、

『なんでお前そんなに周囲と会話しないの? 社会人はみんなチームで仕事してるんだよ!? 報告(ホウ)連絡(レン)相談(ソウ)くらいちゃんとしようよ!!?』

とか、新人教育の担当からメチャクチャ怒られた心の傷(トラウマ)が思い出されるくらい。



「う~ん……、……まあ、そういう訳で。

 しばらくの間は、ダンジョンの練習施設(テストコース)は閉鎖になってますので。

 多分、再開はぁ……ハハッ、まあ一ヶ月以上は先になるんじゃないかなぁ~」



なんかもう『コイツに言っても仕方ないかなぁ……』という呆れた顔で、会話を打ち切られる。

つまり、100%(ひゃくパー)門前(もんぜん)(ばら)い。




―― 一言でいえば、『とほほ』である。



(我々『剣帝流』一門って、みんなコミュ(しょう)なのでぇ~。

 そういう、世間の噂話(うわさばなし)とか流行事(はやりごと)にメッキリ(うと)いんですよぉ~……(大反省中))



元師匠(ジジイ)・ルドルフ、弱腰(よわごし)のお人好(ひとよ)し。

一番弟子の俺・ロック、前世から(いん)キャ。ブッダ(じるし)筋金入(すじがねい)(いん)キャ。

妹弟子・アゼリア、(ひと)見知(みし)りのお嬢様。ただし、言葉より先に手が出るタイプ。



(はい、ご覧の通り『剣帝流』は、もうダメです。

 世渡(よわた)り的な事とか、完全にダメダメな流派なんです)



求む、コミュ(きょう)の嫁!

俺の婚約者候補(フィアンセ?)(予定は未定!?)のハリエッタ=ローズガーデンさんの活躍が待たれるワケである。





▲ ▽ ▲ ▽



「―― ブッダァァ!

 どうなってんだよ転生仏(ブッダ)ァァ!」



俺ロックの魂の叫びが、青空に木霊(こだま)する。



「異世界! 冒険! ダンジョン! 成り上がり! 前世の知識で大もうけ! お金もちになって奴隷ハーレムでウハウハまいったな! 

 ―― とか、何もねーじゃねーか!?」



血の涙で青空に()えている。アオォ~~ン!


実質的に、キャィ~ンッ!キャンキャンッ!と負け犬(ドーテイ)遠吠(とおぼ)えである。



「そもそもぉ! 『良い子にしてたらあの世で72人の処女とウハウハな毎日よ!?』ってのが仏教(ブッティズム)の最大の目玉(ウリ)だったよなぁ!! たしかぁ!!」



それなのに『俺たちの巨乳(オッパイ)聖戦(ジハード)はこれからだ! 第一部完!!(男坂エンド!)』みたいな感じである。

再開の見込みは絶望的なのである。


こんな毎日、念仏(ナームー)してる敬虔な信者に対して、この扱い……!?



現世利益(げんせりやく)! 仏尊(ホトケ)のやくめでしょ! はやくして!!」



―― しかし、いくら叫んだところで、現在、ダンジョンは封鎖中。


それでも、諦めがつかない俺。

昼前になっても、まだダンジョンの入り口(封鎖中!)の周りをウロウロ。


あんまりダンジョンの入り口近くに行くと、冒険者ギルドの人に追い払われるので、近くの高台からず~~~っと未練タラタラ、見ているだけ。



そうやって俺がいつまでも、ダンジョン入口周辺をウロウロして離れないから、

―― 「ブゥ~……、お兄様、今日はどこも遊びに行きませんの?」

―― 「リア、ちょっとブチを運動させてきます」

と、妹弟子も呆れてどっか行ってしまった。


ペット(魔物)連れて、お散歩みたいだ。



(しかし、なんというニアミス……っ!

 <金鉱島(ゴルドアイル)>に到着したその日に、ダンジョン見学していたら!

 もしかしたら、俺が隠し部屋発見してたかもしれないのに……っ!?)



なんというか、『宝くじが20番ちがいで1等前後(ぜんご)(しょう)を逃した』みたいな気分だ。(あ、前世ニッポンで例えれば、って事ね?)

宝くじ売り場の並ぶ順番が少し違えば……っ!、と思えば思うほど、悔しさがこみ上げる。



―― そんなこんなで、もう1~2時間。


ダンジョン入口の仮設テントには、ひっきりなしに多数の人が出入りしている。

冒険者ギルドの人たちが資材運び込んだり、冒険者PTや学者センセイと打ち合わせしたり。

まるでお祭りの準備みたいに、みんな笑顔で活気づいている。



(クソぉ……っ。

 何かが違えば、俺があの大発見の中心人物だったかもしれないのに……!)



未練というか、歯がゆさというか、悔しさみたいな感情に、いつまでも踏ん切りがつかない。

だから、いまだに入り口の見える小山の上から離れられない。


遠目でボンヤリ見ていると、ガサガサ……ッと向こうの茂みが揺れる。

ここは『M字』の地形で、谷底がダンジョン入口、それを挟んで左右に山がある形だ。

そして今、ガサガサ鳴ったのは、1~2km(キロ)離れた向かいの山の上の方だ。


雑に『魔力感知(サードアイ)』で調べると、何人か大人が2列になって山登りしてるっぽい。



「う~ん、冒険者じゃなさそう。

 じゃあ、林業の人かな……?」



そんな事をつぶやきながら、ヒマ(つぶ)しで『鋼糸(イト)使い』技能の練習をしていると、変な風に『ビィン!』と鉄弦(ワイヤー)が震える。


それも、二度三度、連続で。



「いったい何……?

 コレ、もしかして音叉(おんさ)的な共鳴か……?」



イヤな予感がして、サボってた魔力センサー【(じょ)四段目(よんだんめ)風鈴眼(ふうりんがん)】を自力詠唱(『チリン!』)



「―― ヤバッ!」



叫ぶと同時に、俺は飛び出した。


薬指の指輪に偽装した待機状態(スタンバイ)の魔法を解放(リリース)

魔法の術式<法輪(リング)>が、腕輪の大きさに広がって高速回転、『チリン!』と鳴る。



―― 【秘剣・速翼(はやぶさ)四ノ太刀(しのたち)夜鳥(ぬえ)



俺のオリジナル魔法『必殺技』で最速の飛翔で上昇。

山の木々を抜けて、さらに上空へ。





▲ ▽ ▲ ▽



―― さっきの『林業の人たち』(5~6人)の周りを遠巻きに囲む、中型魔物(・・・・)の気配!?


つまり、マジメに働く島民の皆さんの周囲には、オオカミよりデカい魔物が忍び寄り、ヨダレを垂らして待ち構えているワケだ。

これは、『人類守護の剣』剣帝流として見過ごせない事態。



しかし、現場が1.8km(キロ)先とか、遠すぎる。

普通の【飛翔】魔法だと、5~6分はかかるだろう。


俺の必殺技【速翼(はやぶさ)】の最速『(ヌエ)』でも、2分はかかる。(それも、20~30回は連続使用しないと届かない遠距離だ)



―― なので、仕方なく禁じ手(タブー)を解放!



空中に浮く俺の左手の薬指に、青い光が宿る。

ィィィィイイイ……ィン!と、過充填(オーバークロック)の異様な響く。



「【秘剣・速翼(はやぶさ)強化(アオ)】!」



文字通り『青い魔力』による『強化必殺技(スーパー)』だ。

途端、『ギャリィン!!』と、金属かガラスが強く(こす)られたような、異音。


ドオォ……ォン!!と弾丸のように、俺自身(ロック)射出(・・)される!

一瞬で亜音速に(たっ)する、まさに弾丸 ―― 銃弾なみの超加速だ。

その代わりに、空気の層をぶち抜くような激しい衝撃と揺れで全身モミクチャ、呼吸もできない。


そう、これ(・・)は一年前の『魔物の大侵攻(モンスター・パレード)』で、アゼリアのピンチに駆けつけた亜音速飛行(ソニック・ジェット)だ!



―― そんな眼球が(・・・)潰れ(・・)かねない(・・・・)程の超・空気圧を、両腕を交差(クロス)にして防ぎつつ、魔力センサー【風鈴眼(ふうりんがん)】で位置を確認。


そして200m程手前で、『鋼糸(イト)使い』技能(スキル)と【序の三段目:(なが)し】の合わせ技 ――

 ―― ボフォ……ンッッ!と、空気の破裂したような音が青空に響く。


あるいは、『どこか山の中で青竹でも燃やして()ぜた』とも思っただろう。


俺が使ったのは『空力抵抗減速(エア・ブレーキ)』。

つまり、パラシュートだ。


広げた鉄弦(ワイヤー)で編み目をつくり、特殊効果魔法『(なが)し』で大気をからめ(・・・)取る。

元師匠(ジジイ)が使えば『空中を蹴って方向転換』とか仙人みたいなマネができる【五行剣:(みず)】の術式コア部分を流用しただけあって、使い方を工夫(くふう)すれば何でも出来ちゃう万能手札(ワイルド・カード)だ。


さらにパラシュート(鉄弦(ワイヤー)による輪郭(フレーム)だけ)で、20秒くらいかけてゆっくり(・・・・)地上へ落下。


およそ30秒くらいで、向かいの山頂付近に到達!



「魔物退治の専門流派、『剣帝流』推参!

 ―― みんな、もう大丈夫だぜ!!」



ヒーロー登場!という感じの、握り(こぶし)ついての着地。

ちょっとテンションが上がって、そんな名乗りまでしちゃう。



「け、剣帝流だとぉ!?」「なぜここに!?」「なぜ分かった!?」「クソ、『白紙(シロ)』だ!」「もはや、ダンジョンどころではないっ」「総員、戦闘準備ぃ!」



……なんか、感謝や歓迎の言葉どころか、敵対心MAX(マックス)な件について。



『<羊頭狗(ガク)>どもを全て出せ!』『華奢(きゃしゃな)な女とあなどるなよ!』『第五の防諜(カウンター)・剣帝流だ!』『どこまでも()ぎつけてくる!?』『もはや、我らにとっての死神(しにがみ)か!』『全員でかからねば、我々が()られるぞ!』



……なんか、見覚えのある覆面かぶって、急に襲ってきた件について。



『メェ! メェ~~!』

『フッ、シャァ……! メ゛ェ゛!』

『メ、メェェエエ!!』



……なんか、見覚えのあるタイプの魔物が、茂みから飛び出してきた件について。



(―― もうね! 異世界ってマジでクソ!!)



【不殺の掟】兄弟子(ニイちゃん)、殺意の■動に目覚めそうな件について!!!【破りてぇ!】


!作者注釈!


2025/07/01 ギルド会話シーンを追加しました

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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 昔のネットに『犬も歩けば棒に当たる、ヒーローも歩けば悪人に当たる』というネタが有りましたが、ロックはまさにヒーロー気質として産まれてしまったみたいですね。本人は120%お断り体質…
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