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異世界カクゲーSPIRIT'sサイキョー伝説[↓↘→+s] ~知ってる?異世界って格ゲー無いんだぜ(絶望)……ハッ!無いなら作ればいいんじゃね(閃き)~  作者: 宮間
Round 8/勝利演出:常理の外

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210/236

210:勘違い ああ勘違い 勘違い(五七五)


「―― あ、アレは……!?

 アレ(・・)は、いったい何だッ!!」



封剣(ふうけん)流>次期当主候補、パトリックは見た。


翌日から始まった武闘大会本戦の初日に、闘技場(コロシアム)の観客席で。

今回の『剣駿(けんしゅん)(はい)』で起こった、騒動の発端を。



「完成された武!

 我が<封剣流>1千年の研鑽(けんさん)が、ついに結実(けつじつ)した!?

 よりにもよって、あの『汚点の妹(ギルダ)の娘』によって!!?」



―― 1日目の学生トーナメント、1年の部。


魔剣士の技を一切使わずに決勝まで勝ち上がった、不仲な(・・・)姪っ子(・・・)アゼリア=ミラー。

彼女の、剣士としての異常なまでの腕前。



「しかも何だ、あの奇天烈(きてれつ)な技の数々は!?

 まるで(・・・)、【身体強化】魔法を封じ(・・)られ(・・)る事(・・)を前提にして、作り上げられているではないかっ!」



そして、オリジナル魔法『必殺技』で一撃決着するという、魔剣士としての異様(いよう)異彩(いさい)な戦い方。



「状況に応じて自在に、しかも自力(・・)詠唱(・・)で、魔法を使いこなす、だとぉ……!」



魔剣士は、『魔導と剣術の文武両道』 ――

 ―― 武門の界隈でよく聞かれる言葉だが、実際に魔法技術の専門家である『魔導師』ほどに精通する魔剣士は、当然に少ない。


魔導(ソレ)を『玄人(くろうと)裸足(はだし)』ほどに(おさ)めるなど、名門<御三家(ごさんけ)>においても尋常(じんじょう)ではない。

さらに、『剣術でも同世代を隔絶する腕前に磨いておきながら』という前提条件が付けば、それはもはや夢物語の次元(レベル)だ。



「いわば『暗部(あんぶ)手練(てだ)れ』、接近戦闘を得意とする『魔法戦士』ではないかっ!?

 とても(おもて)稼業(かぎょう)の者が(いた)るような戦闘術では無いぞ……っ!」



パトリックは、すでに闘技場(コロシアム)の会場を後にして、ひとり帰路についている。

夕暮れの裏道で、周囲には人気も少ない。

だからこそ、その口から抑えきれない疑念と興奮が吹き出していた。



「―― いや……っ!

 あの(おぞ)ましき『(ふる)き闇』すらも、あんな(・・・)常識外(・・・)()(もち)いないだろうっ」



そう独り言を続けるパトリックが顔を上げれば、暗い空と、城壁の向こうに沈もうとする赤い太陽が見えた。


かつて、この帝都には『夕闇(ゆうやみ)の向こうから来る燐火(りんか)』と呼ばれた集団がいた。

軍部の関係者からは、組織(・・)解体(・・)から十数年()つ今も『(ふる)き闇』と(おそ)れられている、国家の闇を仕切った『暗部(あんぶ)』部隊。



<帝都>治安維持は、対人戦で圧倒的有利な『疾駆型(スピード)』の<封剣流> ――

巨大魔物の対応は、最強魔法剣【天星四煌(スターライト)】の<天剣(てんけん)流> ――

そして、<帝都>周辺の魔物を根絶した事で『魔物退治のための集団戦』という出番が減った<精剣(せいけん)流>が、裏稼業を仕切る ――


 ―― かつて(・・・)は、そういった魔剣士<御三家>の役割分担があったのだ。



しかし、権力の独占状態が(なが)く続けば、必ず腐敗は起きる。

様々な問題から『燐火(りんか)』と呼ばれた暗部部隊は解体され、裏稼業の権限は<精剣(せいけん)流>から取り上げられた。


そして、親衛隊の内部へ組み込まれる事で『帝室』の直轄(ちょっかつ)となった。

それが現在の帝室親衛隊の調査班、いわゆる『帝室の密偵(みってい)』だった。



「そして、中央に(かたよ)りがちな『帝室の密偵(みってい)』を補完(ほかん)するための、外回り担当が『第四の防諜(カウンター)』。

 不穏分子であれば貴族すら粛正する権限を与えられた、帝国内部調査の監査部隊」



<封剣流>次期当主候補は足を止めて、さらに思考を巡らす。



第四(アレ)は帝国騎士団第四方面隊『巡回遊撃隊』という新・騎士団に組み(・・)込ま(・・)れた(・・)、一番新しい『暗部』部隊。

 その『第四方面隊』 ―― つまり『辺境の魔物被害対策』が新設された契機(けいき)は、『剣帝剣号(けんごう)授与式典』における剣帝ルドルフの嘆願(たんがん)だ……っ

 ―― もしや繋がっているのか、この全てが……っ!?」



パトリックは、自分の言った言葉に、ゾクリと背筋を寒くする。

『隠された真実』に触れた緊張感から、思わず周囲を見渡してしまう。


夕暮れの、街灯がポツポツと灯り始めた街並みが、何かいびつ(・・・)で底知れない何か(・・)が息を殺して潜む、魔物の森の茂みの様にも思えた。



―― まったくもって完全無比に勘違いの、大暴投なのだが。

肝心の姪っ子(アゼリア)なんて「ひさしぶりに本気のブンブン楽しいですわ~~!」と脳天気に剣を振り回して、同学年をボコボコ叩きのめしただけなのだが。



国家権力の中枢(ちゅうすう)近くで、無数の策略・陰謀の類いに触れてきた男は、ありも(・・・)しない(・・・)秘密裏な計画の進行に “““気付いて””” しまう。



「―― 剣帝ルドルフは、いったい何を目論(もくろ)んでいる……?

 あの愚弟は、クルスのヤツめは、剣帝と共謀して何をしようとしているのだ……っ。

 例え絞め上げても、必ず聞きださねば……っ!」



―― この後、メチャクチャ兄弟ゲンカした。





▲ ▽ ▲ ▽



そして、盛大な勘違いは、同じ闘技場(コロシアム)の中で、また別の方向にも発生していた。


こちらは武闘大会本戦、2日目。

場所は、メイン会場と地続きの選手用通路の中。


ロックに師事(しじ)していた士官学校の生徒2人。

魔剣士科2年Cクラスの男女、オズワルドとマチルダ。



「……そ、そういう事だったのですか、恩師(コーチ)っ!?」


「わ、私たちに、大会の前週に秘技を伝えてくださったのは……っ」



2人は、選手控え室へと通じる通路入り口から、上級生たちの試合状況を見ていたのだ。

やがて本戦トーナメントでぶつかるかもしれない敵選手(ライバル)の偵察として。


そして、見た。



―― 2日目の学生トーナメント、3年生の部。

何かの謀略としか思えない、魔物退治の『試練』での異常事態。



「あぁ……、ああ、そうだ……!

 別離(わかれ)餞別(せんべつ)だったのだ……っ」


「秘伝の伝授を受けたと、浮かれていた自分が恥ずかしい……っ」



士官学校3年生の優勝候補である<天剣流>天才児が、魔物退治の『試練』で謀殺されかける様子を。

そこに駆けつけ、助力して、騒動の下手人たちを捕縛する恩師(コーチ)・ロックの姿も。



「第2皇太子閣下(かっか)の前でひざま(・・・)づき(・・)、ご下命(かれい)を受けて<御三家>の精鋭すら討ち倒す ……――」


「それをわざわざ、第1皇太子閣下(かっか)のご帰還前に、この闘技場で示す ……――」



ロックが『(もと)・暗部』の精鋭集団を一蹴し、<精剣流>副当主や精鋭女性騎士と闘った姿は、彼らにはこう(・・)映っていた。



「つまり恩師(コーチ)は ―― 貴男は、第2皇太子陣営(・・)の『万能札(ジョーカー)』だったのですねっ

 おそらく、恩師(コーチ)の師である『剣帝』と第2皇太子閣下(かっか)の間には、特別剣号(・・・・)に推挙(・・・)した事(・・・)に関連する密約があり、『秘蔵っ子』として今まで存在を隠されてきたっ」


「それなら納得だわ、表に出られるはず(・・)がない……っ

 次期帝位の最有力、第1皇太子陣営(・・)との後継者争いの暗闘で、あらゆる謀略(ぼうりゃく)から主君を守る『最強の懐剣(かいけん)』だと言うのならっ」




―― 【悲報】主人公ロック、ヤバイ権力争いの戦闘要員(エージェント)と勘違いされてしまう【人生終了!】




「今から、政争が始まるのかっ!」


「血で血を洗う様な、兄弟での帝位の奪い合いねっ」


「今考えてみれば、恩師(コーチ)が『路傍の岩(ロック)』などという『いかにもな偽名』しか名乗られなかった事も……」


「我々を巻き込まないようにするための、気遣いだった訳ね……

 師のお役に立てない、未熟な自分自身が恨めしい……っ」



ロックにとっては単に、朝練のついでで、兼・不良生徒(ヤンキー)の保護観察だったのだが。

そんな『行きずり剣術教室』の生徒さん2人は、ドラマチックな勘違いを進行させていく。



「それは違うぞ、『相棒(マティ)』。

 思い出せ、恩師(コーチ)はこうおっしゃっていただろうっ。

 『お前たちは魔剣士なんだから』と…… ――」


「そう、そうだったわ……。

 魔剣士の正道である『人類守護の剣』としての道を歩め。

 そういう意味の、お言葉だったのねっ」


「『俺とは違って、お前たちは ――』か……。

 ああ、恩師(コーチ)……っ」


「名も残らぬ暗部の自身と違い、我々には光の当たる道を……。

 いったい、どれほどの想いと覚悟が込められた、悲しい言葉だったの……っ」



ついに、女子生徒マチルダが感極まり涙を流すと、それにつられて男子生徒オズワルドも鼻を鳴らして目を潤ませる。



勝ち目(・・・)のない(・・・)政争(・・)と知りながら、あえて身を投じる……っ

 貴男の人生は、苦難と死線ばかりではないかっ!」


「流派の恩義のために、師である剣帝様の不遇を救った恩人のために、険しい道を!

 私たちの恩師(コーチ)は、やはり強く、優しく、正しい方だわ……っ」


「ああ、そうだ! まさにあの方らしい!」


「それだけに、これ以上貴男から学べない事が、残念で仕方ありません……うぅっ」



彼らは、鮮烈な出会いから始まった、半年にも満たない修行の日々を思い返す。

―― 不良生徒を囲い込む地下組織に勧誘され、国家転覆の陰謀に巻き込まれる。

―― 経歴不詳の達人に助けられ、その元で師事する事になった。

―― 時に、魔物退治に駆り出され、<副都>を滅亡させる巨魔とも闘った。

―― 特殊な訓練と実戦経験を重ねた事で短期間で上達。

―― その成果を認められたのか、ついに強力な切り札となる『秘技』すらも伝授される。

―― しかし、その偉大な恩師は、宿命の闘いに身を投じて姿を消す。



「せめて、貴男から受け継いだ剣と秘術は、後世に伝えていきます!!」


「ええ、必ずや!

 貴男(・・)()弟子(・・)である、私たち2人が!!」



男女2人の士官学生は、握り拳をぶつけ合って誓いの言葉を口にした。


そんな感じで『生涯の別離(わかれ)となった』と思い込んでいる、オズワルドとマチルダだった。





▲ ▽ ▲ ▽



そして、嵐のような武闘大会が終わる。


最終日の夕暮れに、目当ての人物を見付けて、背の高い少女が駆け寄った。



「ふぅい~~~、1週間ながかったなぁ~……っ」


「リアちゃんのお兄さん、お疲れ様っ」



くたびれた声で背伸びをする、魔導三院の赤い制服を着た小柄な少年・ロック。

そんな彼の背中に声をかけたのは、健康的な小麦色肌で短髪長身の少女・クローディア。



「お、クローディア(ディアちゃん)も今日は闘技場に来てたのか?

 他の子達は?」


「ええ、今日は(ウチ)だけ。

 故郷(イナカ)から両親が来たので、案内してます」


「うんうん、親孝行な娘さんだねー」


「アッハッハッ、相変わらず親御(おやご)さんみたいな事を言うお兄さんですねー」


「アハハ……、ちょっとオッサンくさいかな?

 リアちゃんの保護者みたいな事してたらねー」



闘技場の観客用廊下の端で2人が雑談していると、遠巻きに関係者が通り過ぎていく。

その中には、白く目立つ装甲を着た屈強な一団もいた。

彼らは、整列して深々と一礼し、退出して行く。


その様子を見た、士官学生の少女が、ピタリと動きを止める。



「―― あれ……?

 今のって、親衛隊の人たち、ですよね……?」


「あぁ~、来賓とか帝室とか偉い人用の護衛の人たちね。

 あの白づくめ連中、最初むちゃくちゃ態度悪かったんだけど、なんかクレーム入ったんじゃない?」


「……クレーム?

 帝室親衛隊に対して……? いったい誰が……?」



この少女の、疑問の言葉を詳しく説明するなら、

『皇帝と帝室以外には一切の干渉を受けない最上位(・・・)武官(・・)・親衛隊に対して、誰が苦情(クレーム)などを言って、態度を改めさせられるのか?』

という、権力構造を理解しているからこその、問い返しだった。



「さあ……?

 闘技場の運営の事務員とか、所長とかが言ったんじゃない?

 アイツら大会前の準備とかの時も、やたら横柄(おうへい)だったし。

 ―― 『貴賓(VIP)席の周りをチョロチョロするなって言ったろうがぁ~っ』とか。

 ―― 『おい平民アレ取ってこい。 ほら早く! チッ、走れよ!』とか。

 ―― 『何オレら親衛隊に逆らってんだよぉ! なあ! チビスケがぁああ!』とか。

 先週とか、会場準備や掃除の手伝いしてたら、妙にからま(・・・)れた(・・)し」


「からまれたぁ!? 誰が! 誰に!?」


「だから、俺が、アイツらに」


「……ぃ……っ」



クローディアは(のど)まで上がってきた悲鳴を、なんとか抑え込む。



(―― よ、よりにもよって、この『お兄さん』に……!?

 この『剣帝の一番弟子』にぃ~~っ!!)



士官学校1年生の長身少女は、日焼けした顔を青ざめさせた。


ここ数日で評価が180度反転した、この(・・)人物(・・)不敬(ふけい)(はたら)く。

その顛末(てんまつ)を想像しただけで、背筋が冷たくなる。



(うわぁ~~~、その『親衛隊の隊員』さん達、今頃はすごく大変(・・)な事(・・)になってそう……

 ア、ハッ、ハ~~……)



なにせ『剣帝流』という『皇帝陛下(へいか)(うしろ)(だて)とする流派』の高位(・・)門下生(・・・)に対して、無礼(・・)()働いた(・・・)訳だ。

それは『帝国の頂点に向けて(つば)()いた』に等しい行為。



―― しかも、よりにもよって、帝室(・・)親衛隊の隊員が。



クローディアとすれば、(とう)の『親衛隊員の身の上(・・・)』が心配になるくらいだった。


!作者注釈!


2025/03/03 あんまりにも意味わからん文章があったので、訂正・加筆しました。マジすまんのう。

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― 新着の感想 ―
更新お疲れ様です。 ルドルフさん「知らん間に闇で暗躍する謀略家にされてる件について」 ロック「知らん間に第二皇子の『剣』にされてる件について」 まさにこんな感じですね…しかも勝手に政争に巻き込まれと…
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