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異世界カクゲーSPIRIT'sサイキョー伝説[↓↘→+s] ~知ってる?異世界って格ゲー無いんだぜ(絶望)……ハッ!無いなら作ればいいんじゃね(閃き)~  作者: 宮間
Round 8.5:特設ステージ(ボス戦)

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201/236

201:波動昇竜

俺、前世はニッポン人、名前はロック!(転生者あいさつ)




さて、そろそろお昼の時間。

さっきの悪党退治(うんどう)でお腹もすいてきた。

なので、省エネでいきたい。



―― 経緯:リアちゃんを侮辱(ディス)ったクソ中年男をボコる、そしたらその娘さんに敵討(かたきう)ちされてる俺。

以上。



面倒(メンド)い……、武門の連中クソ面倒(メンド)い……)



全滅するまでかかってくンなよ、ゾンビかよお前ら。

そんな根性(ガッツ)があるなら、むしろ魔物退治で()かせよ。



(おぉ~ん、この魔剣士失格(ナマクラ剣士)魔物の退治数(キルスコア)で惨敗しちゃうザコザコ超人剣術(笑)の名門流派(呆)さんよぉ~~?)



※注意:お腹ペコペコでイライラしているので一時的に罵詈雑言(よみづらい)状態になっています、ご容赦(ようしゃ)ください。



「ハァッ!」


「ハァ!じゃねーよ、クソが」



と、超人ダッシュ(笑)で高速接近(呆)してきた重鈍騎士を迎え撃つ。


最強威力の特殊技である【仮称:(はら)い・強化】(未完成)を、『チリン!』と自力詠唱(キャスト)


すなわち、『奥義の術式構文(スペル)を読ませてくれて感謝しますが、そろそろご退場ください』斬撃(スラッシュ)である。



「ブッ飛べ! ――」「―― ……フッ!」



しかし、コォ~……ォン!と軽く響く音。


頑強な盾で防がれたとしても、異常な手応え。

―― まるで、()れた洗濯物を木の枝で叩いた様な。

―― あるいは、打撃の勢いが全て包み込まれて吸収された様な。


そう、さっき(・・・)【跳ね】(ジャンプ斬撃)()時と(・・)まるで(・・・)同じ(・・)だ。



「フフッ、ハァ~ッ! ――」「―― ガフゥ……ッ」



女性騎士(アイリーン)のイノシシじみた突進の勢いで、吹っ飛ばされてしまう。


砂地をゴロゴロ転がり、なんとか身を起こす。

見れば、相手もズザザ~……と立ち止まった頃だった。


女性騎士(アイリーン)は、俺にチラリとしか目を向けない。

むしろ自分の<正剣>(フォマール)を持ち上げ、剣身を見て何かしらのチェックを始める。



「今の一撃で2(いん)も?

 中級魔法の直撃並みか。

 何か、怖ろしい威力の魔法剣だったか……」


「『2(いん)』……?」



俺は言葉をオウム返しして、相手の背中に目を向ける。

すると、たしかに女性騎士の背後に浮かぶ『3本燭台(しょくだい)の魔法陣』に、2個の炎みたいな赤い魔力光が(とも)っていた。


先程までそんな物(・・・・)、なかったハズなのに。



「―― まさか(・・・)

 防御(・・)への(・・)転用(・・)!?」



この<精剣流>奥義も、黒ずくめ4人の秘術的魔法(オリジナル・スペル)も、中核部分(・・・・)はほぼ同じ術式構成(スペル)


だから、きっと効果や使い方も、さっきの連中と同じような物で、

―― (剣帝流(ウチ)の【五行剣(ごぎょうけん)(みず)】みたいに『運動エネルギーをどうか(・・・)する』系統の術式か……?)

と、予想(あたり)を付けていた。


だが、もっと奥深い魔導術式らしい。



(だったら、【跳ね】(さっき)【払い・強化】(今の攻撃)を無効化したのは、盾の操作技術じゃない……?)



てっきり、武術界隈(かいわい)で『()かす』とか『転化(てんか)』とか言われる系の技かと。

つまり、『攻撃を受け流す防御技』の、達人技巧(ウルトラC)じゃないかと思ってたんだが。



(やばいな……。

 これはちょっと、マズい(・・・)相手かもしれん)



魔剣士にもなれず、『未強化(なまみ)』の身体能力も恵まれない。

そんな貧弱(ザコ)さを、オリジナル魔法『必殺技』という超威力攻撃で穴埋(あなう)めしてきた。


そんな俺にとって、最悪の相性 ――

 ―― つまり、<精剣(せいけん)流>奥義とは攻撃(・・)吸収(・・)による『無敵防御』なのかもしれない。





▲ ▽ ▲ ▽



「―― ほぅ……?」



どうやら、さっきの俺の発言は正解に近いらしい。

重装甲の女性騎士は、鋭い目を向けてくる。



「たった2(ごう) ―― いや、3(ごう)で気付くとは。

 例の『魔導において100年に1人』という話、あながち嘘でもない、かっ!」



最後の「ない、かっ」って辺りで、例の、赤い閃光付きの『初速の超強化(ロケット・スタート)』。


距離10mもない辺りからだと、特級の『疾駆型(スピード)』に近いダッシュには、なんの対応もできない。

するヒマがない。



「―― チィ……ッ」



とっさに出来るのは待機状態(スタンバイ)魔法(必殺技)解放(リリース)だけ!

飛翔突進系の変化(2番)、【秘剣・速翼(はやぶさ)弐ノ太刀(にのたち)乙鳥(つばめ)(がえ)し】で、どうだ!?



バシュン!と円を描く軌道で、高速移動。

妹弟子(アゼリア)の【五行剣(ごぎょうけん)()】突撃ダッシュと競争しても、短距離なら勝てる超高速飛翔だ。



「―― クッ、逃すか!!」



しかし、相手も並みじゃない!

さすがは<御三家>が<精剣流>本家!

さすがは『帝室親衛隊』という選ばれし者(エリート)


目標を失い直進すると思いきや、ジグザク走行で方向転換して追い迫る。

『慣性の法則』なんて完全無視だ。



「チ! ――」

 「ハァ~ッ!」

  「―― クソが!?」



俺が反撃の構え。

その瞬間、重装甲騎士は撃剣の構えから、盾でぶつかる突進態勢へ変更。

それを見て、俺は即座に愛剣・模造剣(ラセツ丸)を鞘にしまって、方針転換。


その間、2~3秒あったかどうか。



―― しかし、ギリギリ、『チリン!』と自力詠唱(キャスト)が間に合う。



「はぁぁあッ!! ――」「―― 何! 突進を受け止めた!」



そう、素手で受け止める!

もちろん、使ったオリジナル魔法は身体強化(パワーアップ)()し】。



ズザザザザァ~~……!と()()っても力負(ちからま)けして、15mか20mくらい押し込まれる。



「ほ、本当に人間か貴様!? このぉぉぉおお!」


「……ぐ、ぐぅっ……ぐぎぃ……っ」

(―― うっせぇ! 素手で人体解体できそうな超人パワー連中に、言われる筋合いないわ!!)



そう言い返したいけど、呼吸を意識しただけで押しつぶされそうな盾突進の圧に、限界ギリギリ状態。



―― そして、コン……ッとかかと(・・・)の靴底がメイン会場の端にある『石壁』に触れる感触!?



「フハッ、止めだ! ――」「―― もらったぁ!」



女性騎士(アイリーン)も俺も、ほぼ同時に叫ぶ!

ともに『勝確(カチカク)!』と口の端をつり上げながら。



―― ドシャァ~~ン!!とドハデな破壊音で、石片が飛び散る。


防具であるはずの盾が、殴打武器として炸裂。

重装甲女性騎士の持つ銀色盾(シールド)が『赤い閃光』をまとい、石壁のブロックを粉々にしながらめり(・・)込む(・・)



―― そんな光景を上空(・・)から見ながら、俺は月面宙返り(ムーンサルト)


女性騎士(アイリーン)に『運動エネルギー』が ―― 『打撃』が吸収されるなら、別種(・・)の攻撃をするだけ……っ


つまり、『物理』攻撃がダメなら『魔法』攻撃である。



空中体勢でポケットに手を突っ込んで、鉄弦(ワイヤー)巻き軸(スプール)を両手に握り、決着(シメ)(わざ)を準備。



(―― 入って良かった!

 『藩王国レジェンド講師の演奏教室』(授業料・金貨7枚(約100万エン))!!)



そう、講師センセ(リュート(仮名)さん)から一子(いっし)相伝(そうでん)されちゃった、世紀末(せいきまつ)救世主(きゅうせいしゅ)伝説(サーガ)な『鋼糸(イト)使い』技能(スキル)



「―― つまり、『お前はもう死んでいる』!」


「何ぃ~~!? 何故(なぜ)そこに() ―― ゴォ、ヒュゥ……ッ!?」



俺の勝利宣告(テッパン演出)にビビリ散らかす、<精剣流>副当主の娘さん(20代後半(もしやアラサー)?)。

言葉(なか)ばで、俺の鉄弦(ワイヤー)が首を()()げ、背伸び体勢で爪先が浮くくらいまで()り上げる。



―― 次回ぃッ、ぃセカイのケン(けぇぇん)~~ッ!


―― 邪悪なる黒ずくめ集団を倒した主人公(ロクシロウ)に、新たな(テキ)ィせまるゥッ!!


―― 正義の兄貴ブレードを振れッ、可憐なる聖少女アゼリアの笑顔を守るためぇぇ!!!


―― (あや)しく輝く死兆星(しちょうせい)はァ、(ダレ)ェの死を意味するのかァ~~~!!!!!!(ノド限界絶叫)



そんなパチ■コ的な確定演出(ムービー)(注:妄想)が、脳裏を駆け巡る。

つまり今の俺は、劇画風ハードボイルド系ヒーロー!



「キサマら悪党に、刑事罰(けいじばつ)では生ぬるい……! フン!!」



俺が、『必殺!暗殺稼業(シゴトにん)』的に鉄弦(ワイヤー)をビン!と弾く。

絶縁体(・・・)に使っていた石ころ(・・・)を、引っこ抜いたのだ。


メイン会場の石壁上にある観客席の魔物対策・電流鉄網(・・・・)から、鉄弦(ワイヤー)を伝って電撃(・・)がピシャーン!!



脳内の確定演出(妄想)も、終盤を迎える。

―― B o n u s(ボ~ナぁぁぁスぅ) 確 定 !?

―― 『609(ロック)番台、大当たりスタートしました(店内アナウンス)』



「う~し。

 これでキリついたし、昼メシ行ってくるかぁ~……」



ハァ~、ちょっと疲れたなぁ。

肩コリほぐしに両腕を回して、ゴリゴリ。


あ、店員さぁ~ん、メシ休憩15分、入れといてねぇ~。





▲ ▽ ▲ ▽



俺が(きびす)を返して、出口へ向かおうとすると。



―― バツン!と、背後から予想外の断裂音。



(この感触、鉄弦(ワイヤー)を外す前に『千切(ちぎ)られた』! まさか!?)



特殊な技巧で魔力を伝達させている『鋼糸使い』技能において、鉄弦(ワイヤー)はもはや俺の身体の一部も同然。

その察知機能(センサー)が、ギリギリで回避を間に合わせた。



「クソっ! ――」


「―― この程度の電撃魔法で!

 この<聖霊銀(ミスリル)>装甲が破れると思ったかぁ~~!」



怒声(どせい)が遅れて聞こえるような、女性騎士(アイリーン)の爆速突進。


間一髪で、飛んで(・・・)かわす。

もちろん飛翔魔法(ハヤブサ)最速(4番)・【夜鳥(ぬえ)】を自力詠唱(『チリン!』)して。



(なるほど、『物理攻撃』は奥義の運動エネルギー吸収で、『魔法攻撃』は対魔法の防具で対策してるのか。

 となれば、まずはあの大盾や鎧(<聖霊銀(ミスリル)>製らしい)をどうにか(・・・・)しないと、有効打(ゆうこうだ)が入らないか……っ)



そもそも、<精剣流(コイツら)>が警備厳重な闘技場(コロシアム)の中に悪党を手引きした、黒幕っぽい。

だからと言って、いつかの無差別放火攻撃したクズ裏稼業(ヤクザ)みたいに『問答無用でブッ殺す(本気(ガチ))』というワケにもいかないだろう。



(例の、<帝都>を裏から守る政府スパイな『仮面女仙人(バイトリーダー)』にでも、引き渡すかなぁ……)



そうなると、非・殺傷(ナマクラ)モードで殴り(・・)倒す(・・)しかない。



「―― と、なるとコレか!」



着地と同時に自力詠唱(『チリン!』)

即座に『背中に(・・・)魔法陣(・・・)()背負った(・・・・)()』が飛び出していく!


例の『慣性ムシのジグザグVターン走行』で方向転換したばかりの、女性の白銀騎士に対して、真っ向から。



「ク……、フフッ

 この! 身の程知らずがぁ~!!」



女性騎士(アイリーン)(おさ)えきれない笑顔。

ウサギを狩る肉食獣(ライオン)のような獰猛(どうもう)さ。


ズザザァ……!と重装甲の急ブレーキで、砂地の地面を滑る。

まるで銀色盾を突き出すように左の半身(はんみ)の片足で砂地で踏ん張り、すぐさま右の半身(はんみ)へと変更。


一見すれば、『横身のブレーキが効かず、つんのめって倒れた』様にも(・・・)見える(・・・)動作。

だがそれは、『剛力型(パワー)』の魔剣士が爆速突進の勢いを、剛の斬撃へ変換する手順(プロセス)のハズだ。



「くたばれぇ~~~!」



炸裂した剛剣は、大木を斬り裂くどころか、石柱すら粉砕しかねない一撃。

ズダァァ~ン!と人影を真っ二つにして、赤いモノをまき散らす。



―― そう、俺の『幻像(ニセモノ)』に仕込んだ、目くらましの赤い花吹雪を!



「な、なんだ! 血じゃない!? ――」「―― (おせ)え!」



相手は、渾身(こんしん)の一撃を振り抜いた(すき)だらけの体勢で、驚きの大口(おおぐち)(びら)き。

そこへ、ドン!と衝撃波魔法が炸裂。


そう、俺の幻像(デコイ)魔法(バクダン)を仕込んで飛ばすミサイルみたいな必殺技・【秘剣・散華(ちりはな)弐ノ太刀(にのたち)徒花(あだばな)】だ。



「なんの! これしきぃ~~~!」



この女性騎士(アラサー)は、大鉄槌(ハンマー)でブン殴られたくらいの衝撃でも、ちょっとフラついたくらいで、倒れもしない。



「だろうな!」



だが、俺の狙いは、あくまで『足止め』だ。

例の『赤い閃光』付きダッシュというジグザグ爆速(チート攻撃)を停止させ、10mくらいの至近距離(・・・・)のまま10秒くらい時間(かせ)ぎをするのが目的だった。


その甲斐(かい)あって、半分忘れかけていた術式構文(スペル)を、なんとか記憶の海から引き上げ、自力詠唱までも間に合った。



(『物理』も『魔法』も効かないなら!

 だったら、魔法が間接的(・・・)に作る(・・・)力場(りきば) ―― 『無属性(みかづき)』なら、どうだっ!?)



実戦では(はつ)目見(めみ)え!

対人戦の奥の手(おうぎ)乱舞(らんぶ)技を作った時の副産物。



「―― 【序の四段目(よんだんめ)(みだ)(づき)】っ」



『チリン!』という自力詠唱の音の直後、模造剣(ナマクラ)を振りまくる。


ズシャシャシャシャシャシャ……!と、まるで横殴(よこなぐ)りの雨のような音。

二十数発の飛び道具技【旧式・三日月(みかづき)】が、重装甲の女性騎士へと殺到(さっとう)した。





▲ ▽ ▲ ▽



「―― <精剣(せいけん)流>奥義『廻精(かいせい)撃剣(けん)』、だったか?

 ……なんだ、このルール無用のクソズル技(チート)、対人戦マナーくらいちゃんと守れよっ」



効果時間10秒の間に至近距離(・・・・)で、23~24発は飛び道具(ミカヅキ)(非殺傷)を叩き込んだのに。



「なんでピンピンしてんだ、このバケモン(・・・・)女?

 ホント、ちゃんとした人間?

 人型の新種魔物とか、じゃない?」



俺がそんな事をボヤいてると、10mほど先で相手は盾を投げ捨てた。

いや、どっちかというと『ボロボロ(・・・・)になった<聖霊銀(ミスリル)>の盾を地面に叩きつけた』みたいな感じか?



「こ、こ、こぉ……っ

 ―― こんな!

 対・(・・)魔法(・・)素材で出来た盾を、ベコベコにする攻撃魔法(・・・・)とか使う!

 キサマみたいな異常者に、『バケモン』とか言われたくないわぁぁ~~~!!!」


「…………解せぬ」



兄弟子(にいちゃん)理不尽(りふじん)に怒鳴られて困惑しちゃう。

すると、拡声器(マイク)<魔導具>(マジック・アイテム)を『キーン』とハウリングさせるような大声が聞こえてくる。



―― 『な、な、なんだぁ~~~!?』


―― 『ミ、聖霊銀(ミスリル)の防具が、魔法攻撃で破損(はそん)ッ!?!?』


―― 『そ、そんな事、本当にありえるんですかぁ?』


―― 『いいえ! いいえ、そんな事! そんな事ありえないッ!』


―― 『ですよねぇ! 魔法を! いえ、魔力自体を弾く性質がありますよねぇ!?』



なんか、実況と解説の人も大騒ぎしとる。

何故?


そもそも、すでに『盾に加工している』んだから。

聖霊銀(ミスリル)とかいう鉱物(メタル)は、完全無敵な素材なワケもない。


だったら、やり方(・・・)工夫(くふう)すれば『魔法攻撃が通る』のは当然じゃない?



(あ~……、でも。

 あのムッスリ眼鏡不機嫌女子(フーキイーン)が『魔力を弾く性質』とか、そんな事を言ってたな……)



なんか、<帝都(ココ)>に来てすぐの頃だったけ……?



……そういえば。

あの女子生徒(フーキイーン)も最近見かけないなぁ。

謹慎中(きんしんちゅう)三白眼少年(ガビノ)みたいに、何か問題起こした?

魔導学院(ガッコウ)の出席率は大丈夫か、あの2人。



―― そんな、最近姿を見ない知り合いの心配は、ひとまず脇に置いて。


そもそも<聖霊銀(ミスリル)>が()魔法(・・)素材っていう話自体が、マユツバなんじゃね?



(ちょっと思い返してみたら、<聖都>(センダード)でも斬った事あったな……。

 <聖霊銀(ミスリル)>の全身装甲(フルアーマー)とかいう、成金(なりきん)趣味のキラキラ装備)



うん、マユツバ説が濃厚になってきた。


多分、『(たい)・魔法素材』というより『(たい)・魔法素材』って感じだな。

100%耐性(カット)じゃなくて98%耐性(カット)みたいな『微妙にダメージ入るよ』って感じかも。


しかし、『98%カット』とか、まるで前世ニッポンの紫外線保護液(U.V.カット)だな。

『安心の100%カット!』表記とか商品ラベルの違反か何かで、消費者センターに怒られちゃうヤツ。



(うん、やっぱり『絶対』とか『必ず』とか『100%大丈夫』とか、物理的にありえん。

 前世ニッポンの消費者庁(おやくしょ)も、そう言ってるし。

 さすがは、電子遊戯(ビデオ・ゲーム)もないような、文化的に未開(ミカイ)(笑)な<帝都(トカイ)>(呆)だけあるぜ……)



頭の端っこで、そんなしょう(・・・)もない(・・・)事を考えながらも、ちゃんと相手の出方(でかた)をうかがう。



「もはや『未強化(なまみ)』だと加減はせん!

 全力を()くす!」


「…………」



この女性騎士(アラサー)、また鼻息荒い事を言ってる。



(なんかさっきも『全力を()くす!』とか言ってたよな?)



呆れた気持ちだが、油断はしない。


さすがに、約10mという至近距離(・・・)だと、相手の様子がよく観察できる。

すぐに、重装甲騎士が背負う、『3本燭台(しょくだい)の魔法陣』に変化があった。



「フゥ~……」



女性騎士(アイリーン)の呼吸に合わせて、(とも)った3個の赤色光(ホノオ)の内1個が弾けて、全身を包み込む。



「ハァ! ――」「―― ほいっ、と」



いくら爆速の『初速の超強化(ロケット・スタート)』でも、動き始めの瞬間が解れば、対処は可能。


最近、ヒマを見付けてはずっと続けてる、居合い抜き式の【旧式・三日月(みかづき)】。

さっきの連打24発が自力詠唱音(『チリン!』)鳴った(・・・)から(・・)こそ(・・)無音(・・)攻撃(・・)がバツグンの奇襲になるハズ!



「やはりか! 甘い!!」



女性騎士(アイリーン)の熱血叫び声と共に、ドォオン!と破裂音。

無音攻撃の『居合いで旧式・三日月(みかづき)』を、『赤い閃光』付き斬撃で叩き割る。

さらに勢いのまま、砂地の地面を強撃して、赤い爆裂!


一気に砂煙が舞い上がる。



(―― 砂を舞上げて煙幕!

 だったら、死角からの攻撃かっ!?)



そう考えると同時に、身体が動く。


薬指の指輪に偽装した待機状態(スタンバイ)の魔法を解放(リリース)

魔法の術式<法輪(リング)>が、腕輪の大きさに広がって高速回転、『チリン!』と鳴る。


また(・・)飛翔魔法(ハヤブサ)飛び(・・)上が(・・)って(・・)、空中回避。




ん、『また(・・)』? ――




(―― いや、違う(・・)っ!

 『飛び上がった』んじゃない、『飛ば(・・)された(・・・)』ッ……!?)



格ゲー対戦で(みが)き抜かれた、俺の勘が告げてくる。

「これは()(■■)昇竜(しょうりゅう)戦法だ」と。



つまり、『飛ばせて落とす戦法』って ――

 ―― いや、だ・か・らぁ!



(もう何回も、『野球で例えたら、打たせて取る戦法』って説明したでしょーが!?

 キミら若い子もさぁ、きちんと格ゲーに向き合わないとロクな社会人にならないよぉ!!)



そんなバカな事を考えながらも、何とか対策を準備。

今世16年の人生の大半を捧げた武術の訓練が、無意識的に脳内に攻防手順を組み上げていく。



―― しかし、俺の予想より、女性騎士(アイリーン)の攻撃は速く、鋭かった。



ボンッ!と、闘技場(コロシアム)メイン会場に舞い上がった砂煙を突き(・・)破って(・・・)(せま)る、赤い閃光の重装甲騎士!?



(―― 何ぃ、『空中へのジャンプ攻撃』だとぉ!

 だが俺は今、高度(・・)15m(・・・)まで空中回避してるんだぞ!?)



いくら超人身体能力の魔剣士だって、全力ジャンプで届く高さは、2階建ての屋根がせいぜい。

つまり、7~8mも飛び上がれば、高くジャンプした方だ。

そんなジャンプ限界の約2倍(・・・)『高度15m』という、余裕(マージン)を取っている。



―― そんな安心が、致命的(クリティカル)な油断となった。

対戦相手(アイリーン)に、『裏をかく絶好の(すき)』を与えてしまう。



白い重装甲(アイリーン)がロケットのように飛び上がってきながら、両手で<正剣>(フォーマル)を振り上げる。



「飛竜の首を落とした一撃! 味わうがいい!!」


「よりにもよって! 赤い閃光・2連発(・・・)!?」



まるで、そんな俺の悲鳴を呑み込むように。


―― ズドォォオオオン!!!と『赤い閃光』が生み出す爆音が、<帝都>昼前の青空に木霊(こだま)した。


!作者注釈!


2025/02/23 一部説明を追加しました

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更新お疲れ様です。 ……あれ?ミスリ○装備(指輪物○の権利を持ってるトールキ○財団から、何ちゃら言う会社が権利を行使する権利を買い取った→また別の会社が買い取って云々らしいので、公に非権利所有者がミ…
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