201:波動昇竜
俺、前世はニッポン人、名前はロック!(転生者あいさつ)
さて、そろそろお昼の時間。
さっきの悪党退治でお腹もすいてきた。
なので、省エネでいきたい。
―― 経緯:リアちゃんを侮辱ったクソ中年男をボコる、そしたらその娘さんに敵討ちされてる俺。
以上。
(面倒い……、武門の連中クソ面倒い……)
全滅するまでかかってくンなよ、ゾンビかよお前ら。
そんな根性があるなら、むしろ魔物退治で活かせよ。
(おぉ~ん、この魔剣士失格に魔物の退治数で惨敗しちゃうザコザコ超人剣術(笑)の名門流派(呆)さんよぉ~~?)
※注意:お腹ペコペコでイライラしているので一時的に罵詈雑言状態になっています、ご容赦ください。
「ハァッ!」
「ハァ!じゃねーよ、クソが」
と、超人ダッシュ(笑)で高速接近(呆)してきた重鈍騎士を迎え撃つ。
最強威力の特殊技である【仮称:払い・強化】(未完成)を、『チリン!』と自力詠唱。
すなわち、『奥義の術式構文を読ませてくれて感謝しますが、そろそろご退場ください』斬撃である。
「ブッ飛べ! ――」「―― ……フッ!」
しかし、コォ~……ォン!と軽く響く音。
頑強な盾で防がれたとしても、異常な手応え。
―― まるで、濡れた洗濯物を木の枝で叩いた様な。
―― あるいは、打撃の勢いが全て包み込まれて吸収された様な。
そう、さっき【跳ね】の時とまるで同じだ。
「フフッ、ハァ~ッ! ――」「―― ガフゥ……ッ」
女性騎士のイノシシじみた突進の勢いで、吹っ飛ばされてしまう。
砂地をゴロゴロ転がり、なんとか身を起こす。
見れば、相手もズザザ~……と立ち止まった頃だった。
女性騎士は、俺にチラリとしか目を向けない。
むしろ自分の<正剣>を持ち上げ、剣身を見て何かしらのチェックを始める。
「今の一撃で2印も?
中級魔法の直撃並みか。
何か、怖ろしい威力の魔法剣だったか……」
「『2印』……?」
俺は言葉をオウム返しして、相手の背中に目を向ける。
すると、たしかに女性騎士の背後に浮かぶ『3本燭台の魔法陣』に、2個の炎みたいな赤い魔力光が灯っていた。
先程までそんな物、なかったハズなのに。
「―― まさか!
防御への転用!?」
この<精剣流>奥義も、黒ずくめ4人の秘術的魔法も、中核部分はほぼ同じ術式構成。
だから、きっと効果や使い方も、さっきの連中と同じような物で、
―― (剣帝流の【五行剣:水】みたいに『運動エネルギーをどうかする』系統の術式か……?)
と、予想を付けていた。
だが、もっと奥深い魔導術式らしい。
(だったら、【跳ね】と【払い・強化】を無効化したのは、盾の操作技術じゃない……?)
てっきり、武術界隈で『化かす』とか『転化』とか言われる系の技かと。
つまり、『攻撃を受け流す防御技』の、達人技巧じゃないかと思ってたんだが。
(やばいな……。
これはちょっと、マズい相手かもしれん)
魔剣士にもなれず、『未強化』の身体能力も恵まれない。
そんな貧弱さを、オリジナル魔法『必殺技』という超威力攻撃で穴埋めしてきた。
そんな俺にとって、最悪の相性 ――
―― つまり、<精剣流>奥義とは攻撃吸収による『無敵防御』なのかもしれない。
▲ ▽ ▲ ▽
「―― ほぅ……?」
どうやら、さっきの俺の発言は正解に近いらしい。
重装甲の女性騎士は、鋭い目を向けてくる。
「たった2合 ―― いや、3合で気付くとは。
例の『魔導において100年に1人』という話、あながち嘘でもない、かっ!」
最後の「ない、かっ」って辺りで、例の、赤い閃光付きの『初速の超強化』。
距離10mもない辺りからだと、特級の『疾駆型』に近いダッシュには、なんの対応もできない。
するヒマがない。
「―― チィ……ッ」
とっさに出来るのは待機状態の魔法の解放だけ!
飛翔突進系の変化、【秘剣・速翼:弐ノ太刀・乙鳥返し】で、どうだ!?
バシュン!と円を描く軌道で、高速移動。
妹弟子の【五行剣・火】突撃ダッシュと競争しても、短距離なら勝てる超高速飛翔だ。
「―― クッ、逃すか!!」
しかし、相手も並みじゃない!
さすがは<御三家>が<精剣流>本家!
さすがは『帝室親衛隊』という選ばれし者!
目標を失い直進すると思いきや、ジグザク走行で方向転換して追い迫る。
『慣性の法則』なんて完全無視だ。
「チ! ――」
「ハァ~ッ!」
「―― クソが!?」
俺が反撃の構え。
その瞬間、重装甲騎士は撃剣の構えから、盾でぶつかる突進態勢へ変更。
それを見て、俺は即座に愛剣・模造剣を鞘にしまって、方針転換。
その間、2~3秒あったかどうか。
―― しかし、ギリギリ、『チリン!』と自力詠唱が間に合う。
「はぁぁあッ!! ――」「―― 何! 突進を受け止めた!」
そう、素手で受け止める!
もちろん、使ったオリジナル魔法は身体強化【圧し】。
ズザザザザァ~~……!と踏ん張っても力負けして、15mか20mくらい押し込まれる。
「ほ、本当に人間か貴様!? このぉぉぉおお!」
「……ぐ、ぐぅっ……ぐぎぃ……っ」
(―― うっせぇ! 素手で人体解体できそうな超人パワー連中に、言われる筋合いないわ!!)
そう言い返したいけど、呼吸を意識しただけで押しつぶされそうな盾突進の圧に、限界ギリギリ状態。
―― そして、コン……ッとかかとの靴底がメイン会場の端にある『石壁』に触れる感触!?
「フハッ、止めだ! ――」「―― もらったぁ!」
女性騎士も俺も、ほぼ同時に叫ぶ!
ともに『勝確!』と口の端をつり上げながら。
―― ドシャァ~~ン!!とドハデな破壊音で、石片が飛び散る。
防具であるはずの盾が、殴打武器として炸裂。
重装甲女性騎士の持つ銀色盾が『赤い閃光』をまとい、石壁のブロックを粉々にしながらめり込む。
―― そんな光景を上空から見ながら、俺は月面宙返り。
女性騎士に『運動エネルギー』が ―― 『打撃』が吸収されるなら、別種の攻撃をするだけ……っ
つまり、『物理』攻撃がダメなら『魔法』攻撃である。
空中体勢でポケットに手を突っ込んで、鉄弦の巻き軸を両手に握り、決着技を準備。
(―― 入って良かった!
『藩王国レジェンド講師の演奏教室』(授業料・金貨7枚)!!)
そう、講師センセから一子相伝されちゃった、世紀末救世主伝説な『鋼糸使い』技能。
「―― つまり、『お前はもう死んでいる』!」
「何ぃ~~!? 何故そこに居 ―― ゴォ、ヒュゥ……ッ!?」
俺の勝利宣告にビビリ散らかす、<精剣流>副当主の娘さん(20代後半?)。
言葉半ばで、俺の鉄弦が首を絞め上げ、背伸び体勢で爪先が浮くくらいまで吊り上げる。
―― 次回ぃッ、ぃセカイのケン~~ッ!
―― 邪悪なる黒ずくめ集団を倒した主人公に、新たな敵ィせまるゥッ!!
―― 正義の兄貴ブレードを振れッ、可憐なる聖少女アゼリアの笑顔を守るためぇぇ!!!
―― 妖しく輝く死兆星はァ、誰ェの死を意味するのかァ~~~!!!!!!(ノド限界絶叫)
そんなパチ■コ的な確定演出(注:妄想)が、脳裏を駆け巡る。
つまり今の俺は、劇画風ハードボイルド系ヒーロー!
「キサマら悪党に、刑事罰では生ぬるい……! フン!!」
俺が、『必殺!暗殺稼業』的に鉄弦をビン!と弾く。
絶縁体に使っていた石ころを、引っこ抜いたのだ。
メイン会場の石壁上にある観客席の魔物対策・電流鉄網から、鉄弦を伝って電撃がピシャーン!!
脳内の確定演出(妄想)も、終盤を迎える。
―― B o n u s 確 定 !?
―― 『609番台、大当たりスタートしました(店内アナウンス)』
「う~し。
これでキリついたし、昼メシ行ってくるかぁ~……」
ハァ~、ちょっと疲れたなぁ。
肩コリほぐしに両腕を回して、ゴリゴリ。
あ、店員さぁ~ん、メシ休憩15分、入れといてねぇ~。
▲ ▽ ▲ ▽
俺が踵を返して、出口へ向かおうとすると。
―― バツン!と、背後から予想外の断裂音。
(この感触、鉄弦を外す前に『千切られた』! まさか!?)
特殊な技巧で魔力を伝達させている『鋼糸使い』技能において、鉄弦はもはや俺の身体の一部も同然。
その察知機能が、ギリギリで回避を間に合わせた。
「クソっ! ――」
「―― この程度の電撃魔法で!
この<聖霊銀>装甲が破れると思ったかぁ~~!」
怒声が遅れて聞こえるような、女性騎士の爆速突進。
間一髪で、飛んでかわす。
もちろん飛翔魔法の最速・【夜鳥】を自力詠唱して。
(なるほど、『物理攻撃』は奥義の運動エネルギー吸収で、『魔法攻撃』は対魔法の防具で対策してるのか。
となれば、まずはあの大盾や鎧(<聖霊銀>製らしい)をどうにかしないと、有効打が入らないか……っ)
そもそも、<精剣流>が警備厳重な闘技場の中に悪党を手引きした、黒幕っぽい。
だからと言って、いつかの無差別放火攻撃したクズ裏稼業みたいに『問答無用でブッ殺す(本気)』というワケにもいかないだろう。
(例の、<帝都>を裏から守る政府スパイな『仮面女仙人』にでも、引き渡すかなぁ……)
そうなると、非・殺傷モードで殴り倒すしかない。
「―― と、なるとコレか!」
着地と同時に自力詠唱。
即座に『背中に魔法陣を背負った俺』が飛び出していく!
例の『慣性ムシのジグザグVターン走行』で方向転換したばかりの、女性の白銀騎士に対して、真っ向から。
「ク……、フフッ
この! 身の程知らずがぁ~!!」
女性騎士の抑えきれない笑顔。
ウサギを狩る肉食獣のような獰猛さ。
ズザザァ……!と重装甲の急ブレーキで、砂地の地面を滑る。
まるで銀色盾を突き出すように左の半身の片足で砂地で踏ん張り、すぐさま右の半身へと変更。
一見すれば、『横身のブレーキが効かず、つんのめって倒れた』様にも見える動作。
だがそれは、『剛力型』の魔剣士が爆速突進の勢いを、剛の斬撃へ変換する手順のハズだ。
「くたばれぇ~~~!」
炸裂した剛剣は、大木を斬り裂くどころか、石柱すら粉砕しかねない一撃。
ズダァァ~ン!と人影を真っ二つにして、赤いモノをまき散らす。
―― そう、俺の『幻像』に仕込んだ、目くらましの赤い花吹雪を!
「な、なんだ! 血じゃない!? ――」「―― 遅え!」
相手は、渾身の一撃を振り抜いた隙だらけの体勢で、驚きの大口開き。
そこへ、ドン!と衝撃波魔法が炸裂。
そう、俺の幻像に魔法を仕込んで飛ばすミサイルみたいな必殺技・【秘剣・散華:弐ノ太刀・徒花】だ。
「なんの! これしきぃ~~~!」
この女性騎士は、大鉄槌でブン殴られたくらいの衝撃でも、ちょっとフラついたくらいで、倒れもしない。
「だろうな!」
だが、俺の狙いは、あくまで『足止め』だ。
例の『赤い閃光』付きダッシュというジグザグ爆速を停止させ、10mくらいの至近距離のまま10秒くらい時間稼ぎをするのが目的だった。
その甲斐あって、半分忘れかけていた術式構文を、なんとか記憶の海から引き上げ、自力詠唱までも間に合った。
(『物理』も『魔法』も効かないなら!
だったら、魔法が間接的に作る力場 ―― 『無属性』なら、どうだっ!?)
実戦では初お目見え!
対人戦の奥の手・乱舞技を作った時の副産物。
「―― 【序の四段目:乱れ月】っ」
『チリン!』という自力詠唱の音の直後、模造剣を振りまくる。
ズシャシャシャシャシャシャ……!と、まるで横殴りの雨のような音。
二十数発の飛び道具技【旧式・三日月】が、重装甲の女性騎士へと殺到した。
▲ ▽ ▲ ▽
「―― <精剣流>奥義『廻精の撃剣』、だったか?
……なんだ、このルール無用のクソズル技、対人戦マナーくらいちゃんと守れよっ」
効果時間10秒の間に至近距離で、23~24発は飛び道具(非殺傷)を叩き込んだのに。
「なんでピンピンしてんだ、このバケモン女?
ホント、ちゃんとした人間?
人型の新種魔物とか、じゃない?」
俺がそんな事をボヤいてると、10mほど先で相手は盾を投げ捨てた。
いや、どっちかというと『ボロボロになった<聖霊銀>の盾を地面に叩きつけた』みたいな感じか?
「こ、こ、こぉ……っ
―― こんな!
対・魔法素材で出来た盾を、ベコベコにする攻撃魔法とか使う!
キサマみたいな異常者に、『バケモン』とか言われたくないわぁぁ~~~!!!」
「…………解せぬ」
兄弟子、理不尽に怒鳴られて困惑しちゃう。
すると、拡声器の<魔導具>を『キーン』とハウリングさせるような大声が聞こえてくる。
―― 『な、な、なんだぁ~~~!?』
―― 『ミ、聖霊銀の防具が、魔法攻撃で破損ッ!?!?』
―― 『そ、そんな事、本当にありえるんですかぁ?』
―― 『いいえ! いいえ、そんな事! そんな事ありえないッ!』
―― 『ですよねぇ! 魔法を! いえ、魔力自体を弾く性質がありますよねぇ!?』
なんか、実況と解説の人も大騒ぎしとる。
何故?
そもそも、すでに『盾に加工している』んだから。
聖霊銀とかいう鉱物は、完全無敵な素材なワケもない。
だったら、やり方を工夫すれば『魔法攻撃が通る』のは当然じゃない?
(あ~……、でも。
あのムッスリ眼鏡不機嫌女子が『魔力を弾く性質』とか、そんな事を言ってたな……)
なんか、<帝都>に来てすぐの頃だったけ……?
……そういえば。
あの女子生徒も最近見かけないなぁ。
謹慎中の三白眼少年みたいに、何か問題起こした?
魔導学院の出席率は大丈夫か、あの2人。
―― そんな、最近姿を見ない知り合いの心配は、ひとまず脇に置いて。
そもそも<聖霊銀>が対・魔法素材っていう話自体が、マユツバなんじゃね?
(ちょっと思い返してみたら、<聖都>でも斬った事あったな……。
<聖霊銀>の全身装甲とかいう、成金趣味のキラキラ装備)
うん、マユツバ説が濃厚になってきた。
多分、『対・魔法素材』というより『耐・魔法素材』って感じだな。
100%耐性じゃなくて98%耐性みたいな『微妙にダメージ入るよ』って感じかも。
しかし、『98%カット』とか、まるで前世ニッポンの紫外線保護液だな。
『安心の100%カット!』表記とか商品ラベルの違反か何かで、消費者センターに怒られちゃうヤツ。
(うん、やっぱり『絶対』とか『必ず』とか『100%大丈夫』とか、物理的にありえん。
前世ニッポンの消費者庁も、そう言ってるし。
さすがは、電子遊戯もないような、文化的に未開(笑)な<帝都>(呆)だけあるぜ……)
頭の端っこで、そんなしょうもない事を考えながらも、ちゃんと相手の出方をうかがう。
「もはや『未強化』だと加減はせん!
全力を尽くす!」
「…………」
この女性騎士、また鼻息荒い事を言ってる。
(なんかさっきも『全力を尽くす!』とか言ってたよな?)
呆れた気持ちだが、油断はしない。
さすがに、約10mという至近距離だと、相手の様子がよく観察できる。
すぐに、重装甲騎士が背負う、『3本燭台の魔法陣』に変化があった。
「フゥ~……」
女性騎士の呼吸に合わせて、灯った3個の赤色光の内1個が弾けて、全身を包み込む。
「ハァ! ――」「―― ほいっ、と」
いくら爆速の『初速の超強化』でも、動き始めの瞬間が解れば、対処は可能。
最近、ヒマを見付けてはずっと続けてる、居合い抜き式の【旧式・三日月】。
さっきの連打24発が自力詠唱音と鳴ったからこそ、無音攻撃がバツグンの奇襲になるハズ!
「やはりか! 甘い!!」
女性騎士の熱血叫び声と共に、ドォオン!と破裂音。
無音攻撃の『居合いで旧式・三日月』を、『赤い閃光』付き斬撃で叩き割る。
さらに勢いのまま、砂地の地面を強撃して、赤い爆裂!
一気に砂煙が舞い上がる。
(―― 砂を舞上げて煙幕!
だったら、死角からの攻撃かっ!?)
そう考えると同時に、身体が動く。
薬指の指輪に偽装した待機状態の魔法を解放。
魔法の術式<法輪>が、腕輪の大きさに広がって高速回転、『チリン!』と鳴る。
また飛翔魔法で飛び上がって、空中回避。
ん、『また』? ――
(―― いや、違うっ!
『飛び上がった』んじゃない、『飛ばされた』ッ……!?)
格ゲー対戦で磨き抜かれた、俺の勘が告げてくる。
「これは波■昇竜戦法だ」と。
つまり、『飛ばせて落とす戦法』って ――
―― いや、だ・か・らぁ!
(もう何回も、『野球で例えたら、打たせて取る戦法』って説明したでしょーが!?
キミら若い子もさぁ、きちんと格ゲーに向き合わないとロクな社会人にならないよぉ!!)
そんなバカな事を考えながらも、何とか対策を準備。
今世16年の人生の大半を捧げた武術の訓練が、無意識的に脳内に攻防手順を組み上げていく。
―― しかし、俺の予想より、女性騎士の攻撃は速く、鋭かった。
ボンッ!と、闘技場メイン会場に舞い上がった砂煙を突き破って迫る、赤い閃光の重装甲騎士!?
(―― 何ぃ、『空中へのジャンプ攻撃』だとぉ!
だが俺は今、高度15mまで空中回避してるんだぞ!?)
いくら超人身体能力の魔剣士だって、全力ジャンプで届く高さは、2階建ての屋根がせいぜい。
つまり、7~8mも飛び上がれば、高くジャンプした方だ。
そんなジャンプ限界の約2倍『高度15m』という、余裕を取っている。
―― そんな安心が、致命的な油断となった。
対戦相手に、『裏をかく絶好の隙』を与えてしまう。
白い重装甲がロケットのように飛び上がってきながら、両手で<正剣>を振り上げる。
「飛竜の首を落とした一撃! 味わうがいい!!」
「よりにもよって! 赤い閃光・2連発!?」
まるで、そんな俺の悲鳴を呑み込むように。
―― ズドォォオオオン!!!と『赤い閃光』が生み出す爆音が、<帝都>昼前の青空に木霊した。
!作者注釈!
2025/02/23 一部説明を追加しました




