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異世界カクゲーSPIRIT'sサイキョー伝説[↓↘→+s] ~知ってる?異世界って格ゲー無いんだぜ(絶望)……ハッ!無いなら作ればいいんじゃね(閃き)~  作者: 宮間
Round 8.5:特設ステージ(ボス戦)

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200/236

200:[06]人目

俺、前世はニッポン人、名前はロック!(転生者あいさつ)




ちょっと今、妹弟子(アゼリア)誹謗中傷(ディス)ってたクソ野郎を、()め上げてます(物理)。


このポーリックとかいう中年男、一応は<精剣(せいけん)流>副当主・とかいう魔剣士の重鎮。

そのクセ、平気で一般人の観客さんを巻き込むし、ケガさせるし。

マジで、ロクでなし。


文字通り、キュッと首を絞め(・・)上げ(・・)()、お仕置き中。

すると、そろそろ顔面がムラサキ色で、ブクブクと口から泡を吹き出す。



「ォ、オォ……ッ! ゥゥ……ッ! ガァ……!」



暴れっぷりが激しくなり、ガムシャラにポコポコ(なぐ)ってくる。

『ボコボコ』ではない『ポコポコ』だ。

痛くも何ともない。



「ハハッ、ムダだって。

 お前の今の腕力は、4歳児か、病気の老人くらいなんだからっ」



そう、この中年男にかけた【身体弱化(・・)】魔法は、魔剣士の使う【身体強化】魔法とは真逆(・・)の効果。

つまり、パワー・スピード・反射神経なんかの身体能力を、お子(・・)ちゃま(・・・)お年寄り(・・・・)以下(・・)に減少させる。


いくら全力疾走しても、プールの中で水の抵抗を受けるような感じ。

どれだけ歯を食いしばって全力を込めても、ヘビーな筋トレした(あと)くらい手足がプルプルして、まるで(ちから)が入らない。



「ンン! ン、ングゥ~~~!?」


「だから、ムダだって」



こうやって顔面を両拳でポコポコ(・・・・)叩かれようが、両腕に爪を立てられようが、小さな子どもがジャレてるくらいの痛みしかない。



「―― コ・ォ……ッ、カ……ハァ……ッ」


「フッ、ようやく落ちた(・・・)か。

 随分と(ねば)ったな…… ――」



―― そんなボヤキをかき消すように、ジョボジョボジョボ……ッと派手な水音。

同時にニオってくる異臭。


顔をしかめて確かめると、この中年男のズボンがビチョビチョ。

気絶ついでに、失禁までしてやがる。



「うわ、(きた)ねーっ!?」



兄弟子、ビックリし過ぎて、おもらしオッサンをポイしちゃった。

慌てて、『鋼糸(イト)使い』技能(スキル)を発動して、鉄弦(ワイヤー)4本で追いかけて空中キャッチ。


空中でブランブラ~ンと(さか)()り。



(―― ふぃ~~~っ、(アブ)なかったぁ~~!

 メイン会場の地面まで10m以上あるから、さすがに魔剣士でも即死だな……)



みんなも()失神(オト)す時には、落下(オト)さないように注意しよう!

異世界お兄ちゃんとの約束だよ?



―― そんな事を考えながら、シュルシュル……と鉄弦(ワイヤー)を伸ばしてメイン会場の地面へと降ろす。



(チッ……。

 ―― 『封剣流は、御三家の最弱っ(キリッ)』とか。

 ―― 『所詮は女、黄金世代の面汚しっ(キリッ)』とか。

 あれだけ大口たたいてたヤツが、俺みたいなザコに瞬殺されてんなよ)


「ハンッ、みっともねーな ――」



中年男の小便(おション)のクサさにウンザリしていたせいか、思わず悪態が出ちゃう。


すると、それが聞こえていたらしい、敗者の身内から怒りの抗議(クレーム)が飛んできた。



「―― 貴様ぁ~~~!!」




── ででっでっでっでっ・でぇ~ん!

── ちょう(Here)せんしゃ(Comes)  あら(A New)わるっ!?(Challenger)




「…………」



えぇ~、またぁ?

もういいよ、乱入はさぁ。

兄弟子(にいちゃん)、そろそろ昼飯に行きたい気分だし。


昔の2D戦闘機(シューティング)ゲームのボス・ラッシュかよ。





▲ ▽ ▲ ▽



「待てぇ! 逃げるなぁ卑怯者ぉ!」


「逃げるにきまってるだろ、剣振り回して追ってくるなっ」



ブン!ブン!ブン!と、お怒りの剣ブン回しする、女性騎士さん。

ピョン!ピョン!ピョン!と、観客席を八艘(はっそう)飛びして逃げる、俺。


そんな追跡&逃走の果てに、結局また闘技場(コロシアム)メイン会場へ逆戻り。



「追い詰めたぞ、()(もの)め!

 父上の(あだ)屈辱(くつじょく)、ここで()らす!」


「……別に、失禁(おモラシ)は俺のせいじゃなくない?

 夜もトイレに起きるご年齢だろうし、きっと下半身(シモ)が緩かっただけで ――」


「―― 殺すっ!!」


「……………………」



と、まあ、こういう感じ。

前世ニッポンでの中年経験から、『あ~、たしかに歳とると小便(おション)の回数増えるもんな~』と気を遣った言動しているのに、プリプリお怒りされてしまう。


俺も一応、なんとか穏当に話し合いの解決を持ちかけたのに。

一応、ね?



(さて、どうしようかなぁ、この女性(ヒト)……)



あのクソ中年男は、妹弟子(アゼリア)誹謗中傷(ディス)ってたからブチのめしたけど。

正直、それで気が済んだし。

あのクソ中年男の娘らしいけど、この女性騎士さん自体には恨みも何もないしなー。


そんな困惑していると、ザン!と砂地に剣を突き立てる音。



「―― ……お?」



女性騎士さんは、剣を地面に突き立て両手をフリーにすると、野球の作戦指示(サイン)みたいな事を始める。



「先程のような卑劣(ひれつ)だまし(・・・)討ち(・・)で、我が<精剣(せいけん)流>の奥義『廻精(かいせい)撃剣(けん)』を破ったと思うな!

 暗部の(・・・)連中(・・・)とは(・・)違う(・・)、『本物』を見せてくれる!」


「……お、おぉ……っ」



なんか、例の『赤い閃光で威力アップする特殊な身体強化』をじっくり(・・・・)見せてくれるらしい。



え、マジ!? スゲー!

御三家(ごさんけ)>の<精剣(せいけん)流>って、チョー太っ腹じゃん!


リアちゃん()の<封剣(ふうけん)流>本家とか、どれだけ頼んでも(うわさ)の奥義『封魔(ふうま)撃剣(けん)』を全然見せてくれないのに。

ケチー。



―― そんな風に、観察する事しばし。

<精剣流>女性騎士は『チリン!』と自力詠唱(キャスト)の音を鳴らし、例の『特殊効果のある身体強化』を発動。



「……………………っ」


不意打ち(・・・・)で父上の奥義を妨害できたからと、(おご)ったか?

 その思い上がり、すぐに後悔させてやる!」


(いや、『なるほど』って感心してただけなんだが……)



俺が、熱心にジッと奥義の術式構文(スペル)読んで(・・・)いたら、変な勘違いされたらしい。



20~30m先には、面部解放(オーブン・フェイス)白兜(ヘルム)から赤髪が流れる女性騎士。

その背後には、『3本(・・)燭台(しょくだい)の魔法陣』。


そして、青筋(あおすじ)立てたお怒りの形相(ぎょうそう)で剣と盾を構えて、激しく口上(タンカ)を切る。



「<精剣流>本家、アイリーン=カンマジェム、参る!」





▲ ▽ ▲ ▽



「セヤァァァ!」



重装甲の騎士が、まるで噴射装置(ロケットブースター)でも付けたような速度で突進してくる。

特級の『疾駆型(スピード)』にも負けないどころか、上回るかもしれない超・高速移動。



(―― コレ(・・)が、<精剣(せいけん)流>の奥義。

 <御三家>の『剛力型(パワー)』が追い求めた理想(・・)の姿(・・)……)



さすがに『未強化(なまみ)』で避けられる速さじゃない。


特殊技【序の二段目:()ね】を自力詠唱(『チリン!』)

ジャンプ斬りの魔法効果を利用して、斜め前へジャンプ移動して回避。



(つまり、『剛力型(パワー)』の重鈍さを初速の超強化(ロケット・スタート)で補う、ってワケか。

 ……う~ん、なんというか微妙だな)



正直な感想は、『器用貧乏』。

元々が『剛力型(パワー)』なんだから、黒ずくめ(・・・・)連中と同じ超・威力攻撃の方が合ってそう。

それか、無敵の防御にでも特化するとか。


前にも何回か説明したと思うが、魔剣士の修行で重視されるのは『技量』と『習熟度(しゅうじゅくど)』。


簡単に言うと『慣れ』だ。

―― 慣れない剛力に振り回されて、剣で自分の足を斬ったり。

―― 慣れない高速ダッシュに感覚がついていかず、足をからませて顔面粉砕したり。

つまり、『慣れない事』をムリにやるべきじゃない。



そんな事を考えていて、少し油断していたせいだろう ――



「―― ()った!」


「な、なにぃっ!?」



俺が着地(・・)した(・・)直後(・・)予想外に(・・・・)女性騎士(アイリーン)が目の前に迫っていた。

突進する全身にも、振り上げる<正剣>(フォーマル)にも、例の『赤い光』が宿っている。



「死ねぇえええ! ――」「―― クッ!?」



突進の勢いを横回転に転化する、横薙(よこな)ぎの撃剣(けん)


ギャリィイン!と模造剣(ナマクラ)が砕けんばかりに悲鳴を上げた。

一応は、【序の一段目:()ち】の魔法付与(エンチャント)で強度を上げているってのに!


さらには吹っ飛ばされ、ズザザー……ッと砂地を7~8mは(すべ)らされる。



(……あ、(あぶ)ねー!

 防御オリジナル魔法【()め】の発動が間に合ってなかったら、死んでたなっ)



正直、今日一番(あせ)った。



(どうなってんだ!?

 俺が斜め前(・・・)に回避した以上、突進攻撃を空振りした(スカった)相手は(ユー)ターンしてくるしか無いハズだろっ)



そうやって、急ブレーキ&再ダッシュしてきたには、あまりに速すぎる。


このクソ異世界が魔法のファンタジー(苦笑)だからって、物理法則って物はちゃんとある。

『慣性の法則』とかいう高速移動の()重要(・・)課題(・・)だって、れっき(・・・)として(・・・)存在(・・)している(・・・・)



(―― なら、その『慣性の法則』を誤魔化(ごまか)しているのが、『精剣(せいけん)流の奥義』の特性って事か……?)



―― ん? 『何の話か解んねー』って?

つまり、『ハイスピード移動中に即・真逆に軌道変更(180度ターン)とか、絶対ムリ!!』って事だよ。


地面をテレテレ低速で走る事しかできない、我々一般人(パンピー)にはなかなかピン(ティン)とこない話だが。

簡単に言うと『スピードが出れば出るほど、減速(ブレーキ)の時間と距離が増える』という悪魔の仕様(システム)だ。

『慣性の法則』ってのは。


だから(・・・)、【飛翔(・・)魔法(・・)なんて(・・・)空中で(・・・)急停止(・・・)急旋回(・・・)のでき(・・)ない(・・)超難易度(・・・・)()使用者(ユーザー)が極端に少ないワケだ。


ちなみに、この【飛翔】魔法ってのは、

―― 『低空で使えば、人・家・木に衝突しまくって前歯が全部なくなる』

―― 『中空で使えば、飛ぶ鳥衝突(バード・ストライク)でアバラが粉砕』

―― 『上空で使えば、強風横殴りと上昇気流でモミクチャの後に魔法切れて墜落死』

という、3種全て(走・攻・守)そろったクソ魔法である。



(これも全部! 『慣性の法則』ってヤツの仕業(しわざ)なんだ!!)



兄弟子(にいちゃん)、【飛翔】魔法を改造して【速翼(ハヤブサ)】造るのにスゲー苦労しました(マルッ)





▲ ▽ ▲ ▽



(ともかく、コイツに動かれると厄介だ……!)



という判断から、即座に反撃。

ジャンプ斬りのオリジナル魔法【()ね】を自力詠唱(『チリン!』)



「―― はぁ?」「フッ……」



一瞬で距離を詰めて斬りつけた俺は、疑問符。

余裕(よゆう)シャクシャクと盾で受けた女性騎士(アイリーン)は、鼻で笑う。


屈強な魔剣士だって脳天(のうてん)一撃で気絶させる特殊技のジャンプ斬りが ――

 ―― コォ~ンッと軽い(・・)()しか鳴らさなかったから。


まるで、濡れた洗濯物を木の枝で叩いたような、感触。

打撃の勢いが全て包み込まれ、吸収されたような、奇妙な手応え。



「『破斬(はざん)』! ――」「―― チィ……ッ」



俺が地面に着地した瞬間、相手の反撃がくる。

盾の防御と入れ替わりに振り下ろされる、剛の剣!



(―― しかも、例の『赤い閃光』付き!?)



通常版より3倍魔力を消費する、強化版の【止め】(仮仕様(ベータ版))が間に合った。


ズドォン!と爆破じみた衝撃で、またも砂地をズザザー……ッと(すべ)らされる。



「……ふぃい~~~。

 砂や石を飛ばさないのは、やっぱ正統剣術のプライドなのかな?」



念のため胴体を(おお)った短期バリア【序の二段目:()り】がムダになったけど、まだ油断はできない。


なにせ、推定99%であの暗殺者(くろずくめ)の親玉のハズだ。



(チィッ、これはヤバいなぁ……)



内心、舌打ち。


この女性騎士(ねーちゃん)が相手だと、結構、手札を使わされそう

公衆の面前なので、なるべく隠しておきたいのに……。



(できたら『瞬ごくs ―― 訂正(ミス)、【ゼロ三日月(みかづき)・乱舞】は使いたくないな。

 一応アレ、俺の対人戦・最終手段(おうぎ)で『初見(しょけん)(ごろ)し』だし)



少なくともリアちゃん()<封剣流>当主(ようかいジジイ)(剣術Lv80超!?)以外なら、初見(しょけん)で対応される事はないだろう。

奥の手として、自衛手段として、なんとか隠しておきたい。


兄弟子(にいちゃん)、なんといっても『か弱い一般人(パンピー)』だしっ(☆ミ(キャピッ)



とか色々考えていると、急に拡声器(マイク)<魔導具>(マジック・アイテム)の声が響いてくる。



―― 『おぉっと、いったい何が起きているのでしょうかぁ!』


―― 『先程の乱入者が、<精剣流>本家の魔剣士と戦っていますねー』


―― 『やはり! あの人物は! 不埒(ふらち)にも闘技場(コロシアム)に入り込んだ無法者(むほうもの)なのかぁ~~!?』


―― 『剣帝流の縁者(えんじゃ)。そんな名乗りも、一気に疑わ(・・)しく(・・)なってきましたねー』


―― 『ええ、そうですね!! なにせ、この帝都を守る御三家(・・・)の方(・・)に敵対しているのですから!』


―― 『それはもう! 真っ当(・・・)()人間(・・)のはずがありません!!』



そんな実況と解説の、口早でわざとらしい言葉に、思わずため息。



(―― ……おい、お前ら、そこの2人。

 いくら何でも、相手をひいき(・・・)し過ぎじゃね?

 そんな急に、あから(・・・)さま(・・)に肩をもったら、雇い主(スポンサー)()なのか(・・・)バレバレだぞ?)



いえぇ~~い、乱入者でヤラレ役(ヒール)のロック君でぇ~す!

異世界のみんな、この興業出演(ショービジネス)が終わった後は、ちゃんと仲良くしてね?(青筋笑顔(ブチぎれ寸前)ッ)



そんな俺の、イライラでとっ(・・)散ら(・・)かる(・・)思考を ――

 ―― ギギギィィィ~~~ィン!!という、金属が圧力で(きし)むような不快な騒音が引き戻す。


見れば、重装甲の女性騎士が『バイオリンを弾く』みたいな動作(ポーズ)で、自分の盾に剣を押しつけて騒音を立てていた。



「なるほど。

 『(もと)・暗部』を4人始末するだけはある。

 まとも(・・・)な相手では、ないな」



おそらく20代(なか)ばの女性騎士は、怒り顔から一転し、クスリと笑う。


そして、赤い前髪をよけて白い兜の顔面保護(フェイスガード)を下ろすと、<正剣>(フォーマル)と盾を構え直す。



「もはや、貴様を(あなど)ったりはせん。

 ―― ここからは、全力を()くす!!」



そう言うが早いか。

<精剣流>副当主の娘・アイリーン=カンマジェムは、【身体強化】魔法の超人脚力で駆け出し、再び(せま)ってきた。


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更新お疲れ様です&明けましておめでとうございます! そして累計200話到達おめでとうございます!Wめでてぇ! 頭筋肉のジジィと違って、悪の女幹部(いや親玉?)は剣の腕というか奥義『だけ』はかなりのも…
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