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異世界カクゲーSPIRIT'sサイキョー伝説[↓↘→+s] ~知ってる?異世界って格ゲー無いんだぜ(絶望)……ハッ!無いなら作ればいいんじゃね(閃き)~  作者: 宮間
Round 8.5:特設ステージ(ボス戦)

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197/236

197:ただ今勝ち抜き中

<帝都>の象徴的施設(ランドマーク)闘技場(コロシアム)


最大の目玉である『武闘大会の本戦』とは思えない、静まり返った会場内。

しかし、貴賓席には、そんな観客席とはまた違う、不思議な(・・・・)緊張感が漂っていた。


せめぎ(・・・)合う(・・)空気 ―― つまり、緊迫だ。

一触(いっしょく)即発(そくはつ)、いつ爆発してもおかしくない。

そんな静寂が、ピン……ッと痛い程に張り詰めていた。



「―― フゥ……ッ」



静寂(それ)(やぶ)ったのは、最上段の席 ―― 帝室関係者の席に座した者。

豪奢(ごうしゃ)な衣装の中年男性の嘆息(たんそく)



黒装束(くろしょうぞく)(ぞく)が使った、魔法(アレ)

 アレは貴殿(きでん)の ―― カンマジェム家の奥義ではなかったかね?

 <精剣(せいけん)流>の副当主殿」



鋭い目つきの美丈夫(ハンサム)が、静かな抑揚(よくよう)で問いかける。

疑義(ぎぎ)を向けられた相手は、下段の席から立ち上がり、最上段へ振り返った。



()な事を申されますな、閣下(かっか)

 (いや)しくも旧・王国時代から王の(ふところ)にあった<御三家(3本の剣)>が(ひと)つ、我が<精剣(せいけん)流>の奥義があのような『無様な力押し』に比べられるとは……!?

 まったくもって、(なげ)かわしいっ」


「ほう、貴殿(きでん)は『違う』と(もう)すか?

 ―― しかし、我ら『武門の素人(しろうと)』には、同じような特殊な(・・・)身体(・・)強化(・・)魔法(・・)と思えたが?」



自身を『武門の素人(しろうと)』と称した最上段席の男だが、服の間から見える首は野太く、指は節くれて荒々しい。

人物や来歴を知らずとも、屈強な武人とひと目でわかる。


そんな並々ならぬ美丈夫(ハンサム)と、武門の重鎮は、視線をぶつけ合う。



「………………」「………………」



まるで剣術試合のように、無言の気迫がぶつかり合う。

周囲の貴族達は、声を(ひそ)めて思わず首をすくめた。


そんな硬直を崩したのは、下段の席から見上げていた、<精剣(せいけん)流>の副当主。

半分白くなった赤髪短髪を()でつけながら、溜息。



「フン、……なるほど、確かに。

 素人目(しろうとめ)には『同じ術式(モノ)』に(うつ)る ―― でしょうなっ」



しかし、その声は不義(ふぎ)を疑われた者としては、強気で不遜(ふそん)



「我が<精剣(せいけん)流>直系カンマジェム家に伝わる、奥義『廻精(かいせい)撃剣(けん)』。

 閣下のお立場(・・・)であれば既にご存じでしょうが、この奥義は元々、(はる)か西方から流れてきた流民(るみん)の秘伝を買い上げ、長年をかけて改良した術式(モノ)


「……………………」



最上段席の男の責めるような目線にも、<精剣(せいけん)流>副当主はまるで動じない。

劇場弁者(ナレーション)が物語を読み上げるかのように、朗々(ろうろう)答弁(とうべん)を続ける。



「あの金銭(カネ)(いや)しい流浪(るろう)(もの)集団の事です。

 おそらくは、方々(ほうぼう)でその秘伝を安売りして回っていたのでしょう。

 ―― アレらの(ぞく)は、その買い手(・・・)の一つかと」


「……フゥ、なるほど」



やがて、鋭い目つきの美丈夫(ハンサム)は、いよいよ目を細めて(たず)ねる。



「つまり貴殿(きでん)は、『大本は同じだが、別物である』と(もう)(ひら)くのか?」


「失礼ながら、閣下。

 『(もう)(ひら)く』のではなく、『事実として別物(ソウ)』なのです。

 もちろん! ――

 ―― 魔剣士として皆伝(かいでん)でいらっしゃる御身(おんみ)であれば、ひと目でお解りの事でしょうがッ」



カンマジェム家の年配男性が、フン!と鼻息を明らかに鳴らす。

―― 『特級の魔剣士のくせに、その程度の違いも見極められぬのか、この若造は』

そんな内心を隠しもしない。


壮年(そうねん)か初老の<精剣(せいけん)流>副当主の顔には、20は年下の相手に明らかな(あなど)りがある。


武門の最高峰<御三家(ごさんけ)>の重鎮だとしても、帝室を()めているとしか言いようがない。

あまりに不敬(ふけい)な態度だった。





▲ ▽ ▲ ▽



帝室の美丈夫(ハンサム)は、嘲笑(あざわら)ってくる武門の重鎮に、ただ冷たい声を返す。



「複雑な魔導の術式を『見れば解る』と?

 そんな教鞭(きょうべん)(ほう)()げた説明で、いったい誰が納得しよう」



安い挑発には乗らぬぞ、とばかりに冷静に対応する。



「貴殿も疑惑(ぎわく)()らす気があるのなら、その奥義『廻精(かいせい)撃剣(けん)』と、賊の使った魔法(アレ)との違いとを、少しは詳細に説明して欲しいものだな」


「なんと!

 まさか閣下(かっか)は、我が一族伝来にして門外不出の奥義『廻精(かいせい)撃剣(けん)』について、『この場で説明しろ』とおっしゃいますか!?

 このような有象無象(うぞうむぞう)(やから)が並ぶ場で!

 誰が聞き耳を立てているか解らぬ場で!?

 秘伝術式の開示(かいじ)を!?」



赤髪を半分白くした<精剣(せいけん)流>副当主は、鍛え抜かれた肺活量で、ビリビリと空気の震えるような怒号(どごう)を上げる。



「さらには『疑惑』ですと!

 いにしえ(・・・・)より王都を! 帝都を! お守りした、我ら<精剣流>に!?」



そして、両手を広げて、『嘆か(なげか)わしい』と叫ぶ。

まるで演劇じみた、大仰(おおぎょう)な身振りと声だった。



「―― これ以上の侮辱(ぶじょく)には、耐えかねます。

 この国を800年支えてきた武門の重鎮として、許し(がた)(あつか)いだ!

 退席を願いたい!!」



精剣(せいけん)流>の副当主は、『願いたい』と言いながらも、既に背を向けていた

豪奢(ごうしゃ)な衣装を着た上司の許しを待つこともなく、一方的な宣告をして勝手に出て行こうとする。


それを見かねた貴賓(きひん)()きの守衛の1人が、進み出る。

長槍を突き出して、<精剣(せいけん)流>の副当主の行く先を(ふさ)ぐ。



「お、お待ちを! カンマジェム殿 ――」


「―― なんだ貴様ァッ!

 その身のこなし、さては<狼剣(ろうけん)流>の門弟か!?

 たかだか4~500年の歴史しかない新参の、異国流派の、しかも小童(こわっぱ)がァッ!

 この『(もと)・王都の三剣(さんけん)』である、<精剣(せいけん)流>の副当主の前にィ、立ち(ふさ)がるなッ!!」


「―― ぅ……っ」



守衛の騎士は、副当主の気迫に呑まれ、つい槍を戻して引き下がってしまった。

まるで、一喝(いっかつ)の声に吹き飛ばされる様な光景。

特級魔剣士の若手精鋭ばかりで構成される帝室親衛隊も、半世紀を武に捧げた達人の前には形無しだ。


精剣(せいけん)流>の副当主は、吐き捨てるように言って、客席の階段を上り始める。



「まったく……。

 昨日といい、今日といい、不愉快な事ばかりだっ

 帰るぞ」


「ハッ、父上」



いつの間にか後ろに騎士姿の若い女性が付き従い、一緒に出入り口へと向かっていく。



「……フゥ。

 武門の面子(めんつ)争い、権勢(けんせい)争いに振り回される。

 武力を重んじた我が帝国ゆえの、宿痾(しゅくあ)だな…… ――」



上席の中年は、国家の『業』(カルマ)の深さを嘆き、疲れたような息を吐く。

彼が上げかけていた腰を下ろし、豪奢な衣装の飾りをジャラリ……ッと鳴らして座り直した瞬間、予想外の声がかかった。



「―― よろしい、のですか?」



いつの間にか、貴賓席の一角に、赤い服の人影が現れていた。





▲ ▽ ▲ ▽



闘技場(コロシアム)の最上端にある、士官学校1年D学級(クラス)の観戦部屋。

一瞬の静寂の後、爆発するように少年・少女の声が溢れた。



「う、うそでしょ!」「ま、魔物が……」「はぁあっ?、あの一瞬で?」「何! 何が起きたの!」「え……、これ演出?」「……28、29、30ぅ? え、まだ居る」「いや、あり得んし!あり得んすぎ!」 ――


―― 等々、少年少女の疑いと驚きの声が、狭い室内にこだまする。



闘技場(コロシアム)の最上段の端には、士官学校の生徒専用の観戦部屋がある。


最上段にある理由は二つ。


一つ目は、学生枠トーナメントも賭博の対象になっている事から、同級生といった関係者から情報を抜き出そうとする様な、迷惑な観客から隔離するため。

そのため、彼らは最上段の壁の一部のような最も離れた位置で、狭い箱のような部屋の中に学級(クラス)ごとに押し込められている。


だから、出窓のような観覧場所に詰めかけて団子状態、押し合いながら観劇用望遠鏡(オペラグラス)を使って友人や先輩・後輩の試合を観戦する羽目になっている。



理由の二つ目は、この異世界において高所(・・)()危険地帯(・・・・)だから。

飛行型魔物という、空を(・・)飛ぶ(・・)巨大な(・・・)人食い(・・・)怪物(・・)()いて()てる程に生息する『この異世界』では、高貴な人物が高所なんて命を(おび)かされる場所に『わざわざ居るべきではない』事は当然。

まさに、考えなしに高所に昇るなんて『バカと煙だけ』。


そのため貴賓席は、間近で観戦できる実況席のすぐそば。

当然のように、周囲では帝室親衛隊などの精鋭騎士が警護している。


つまり、観覧席の等級(ランク)が下がる程にメインステージから遠ざかり、上の方へ、上の方へと押し(・・)やられる(・・・・)

ここ最上段の席は、もっともメイン会場の試合展開が見づらい、最低等級(ランク)の観客席より悪条件(ハズレ)の観戦場所である。



「―― 皆様、見てくださいまし!」


『………………』



同級生達の騒ぎ声も、少女の呑気な歓声(かんせい)ひとつで静まってしまう。



「リアのお兄様が悪い人たちを倒してしまいましたわぁ~」



両手を上げてピョンピョンと跳び回り、銀髪を揺らす美少女。

魔剣士名門<封剣(ふうけん)流>直系にして『剣帝の後継者』、アゼリア=ミラーだ。



「う、うわ~、リアちゃんのお兄さん、超トンデモないヨ」

「アハハ……、見かけによらず(すご)く鍛えているとは知ってたけど、ねえ?」

「お兄さん、さすがに人間()めすぎ……。 東区のシーサイド・モールで、用心棒の人たちが最敬礼するはず……」


「そうですわよ、ウフフッ。

 リアのお兄様はすごい方なのですわぁ~!」



仲の良い友人3人も『ドン引き』という顔をしている。

だが、上機嫌のアゼリア本人は、兄弟子の勇姿に見入っており、周囲の様子にまるで気付かない。





▲ ▽ ▲ ▽



そんなアゼリアへ、クラスメイトの女子の1人がおそるおそると声をかけた。



「あのさ。

 アゼリアちゃん……お兄さん?、が使ったさっきの技って……?」


「さっきの技、というのは【断ち】 ―― いえ、つまり魔法剣の『斬撃の魔導』の事ですの?

 それとも、剣帝流の奥義『無声の一迅』(サイレント・ゲイル)の事ですの?」


「う、うわー……」



アゼリアが喜色満面で問い返すと、質問した少女は引きつった半笑いで一歩後ろに下がる。


しかし、周囲にいる同級生の少年少女も、そんな声は上げはしないが、内心は彼女と同じだった。



―― 剣帝の奥義の代表格、『無声の一迅』(サイレント・ゲイル)


その術理は単純、『緩急(かんきゅう)の剣技』だ。

初動はあえてゆっくりと速度を落とし、相手の警戒が薄れて心の(すき)が生じた瞬間を見極め、一気に加速して間合いを侵略する。

決して、珍しい術理(モノ)ではない。

この程度の術理の技など、どの流派にも転がっている。


問題とされるのは、むしろ練度の方。

練度(ソレ)がまるで、幼児と大人。

自流派高弟(こうてい)の熟練の技が子ども(・・・)だまし(・・・)に思える程の、『神業(かみわざ)』。



その場に居た同級生全員が、こう内心で(うなづ)いた。

―― (なるほど、約10年前に『剣帝』という特別剣号が与えられたとき、各流派の頭の硬いお歴々や、難物の年寄り連中が認めるはずだ……)



彼らも、うっすら覚えている。

そう、あれは約10年前の『特別剣号授与』の式典への臨席(りんせき)のため、大人達が正装で出発準備をしていた時だった。


両親・祖父母・親族、あるいは流派の高弟(こうてい)達が、

―― 「たかだか冒険者くずれ(ごと)きに、特別な称号をくれて(・・・)やる(・・)なんて」

―― 「皇帝陛下の弱腰 ―― いや、お優(・・)しさ(・・)にも困ったものだ……っ」

―― 「(たし)かに、半世紀にわたる稀代(きだい)の働きとはいえ、所詮(しょせん)は辺境の村の魔物退治」

―― 「100年に1度の『魔物の大侵攻』(モンスター・パレード)で活躍したのなら、まだともかく」

などと、口々に不満や愚痴を言っていた事を。


そして式典が終わると、その全員が全員、見事に黙ら(・・)されて(・・・)、眉間に特大のシワ寄せして帰ってきた。



もしも、式典会場で『あんな技量(モノ)』を見せ(・・)つけ(・・)られた(・・・)のなら、それも当然だろう。

プライドの高い魔剣士ほど、腕前に自信があるほど、深く心を(えぐ)られる。



―― だから(・・・)、魔剣士としてプライド(・・・・)の低い(・・・)下位学級(Dクラス)の生徒達の心は、重大な傷を負わずに済んでいた。


彼らは、武門や貴族の出自ではあるが、闘争本能や競争意識が薄い。

何かと兄弟姉妹や(とし)の近い親戚(しんせき)に比べられ、溜息をつかれたり、『あの子は覇気(はき)がない』とか『おっとり(・・・・)している』とか諦めた声で(ひょう)された者ばかり。

その分だけ学級(クラス)の結束があり、気遣(きづか)いのできる同級生達は、無言で目配りして頷き合う。


アゼリアは、そんな周囲には気付かず、紅潮した顔で小刻みに飛び跳ねる。



「もうこれで、お兄様を悪く言う人は居なくなりますわぁ、ウフフゥ~」


『………………』



そんな声を聞き流す同級生の男女の胸中は、大体こんな感じだ。



(アゼリアちゃんが、兄弟子さんに懐いているらしいから……)


(『兄弟子さん、剣帝の一番弟子、の事には触れないようにしよう!』)


(そんな風に、クラスの皆で話していたけど ――)



(―― 余計な事(・・・・)を口走らなくてェッ!!

 本当にィ、よかったぁ~~ッ!!!!)



クラスメイトの大多数が、愛想笑いの裏で、内心の絶叫をあげる。

そんな奇妙な緊迫と静かさが、士官学校1年D学級(クラス)の観戦部屋の中を満たした。





▲ ▽ ▲ ▽



俺、前世はニッポン人、名前はロック!(転生者あいさつ)



「フイィ~~……」



久しぶりに悪党退治(うんどう)できて、ちょっとスッキリ。

背伸びしたり肩をグルグル回して、運動後の事後体操(クールダウン)


周囲を見渡すと、なんかシラ~……ッとした空気。

みんな黙ってジッと見られて、ちょっと居心地が悪い。



「ロック君……」



背中にかかった金髪貴公子(ヒョロいイケメン)の声も何か、ちょっと言いたげ。


振り返ると、こっちに小走りで近づいて来てる。

デッカい魔物と鉄網電流デスマッチ(?)な魔物退治試練が終わって、競技舞台(ステージ)から降りているので、今から退場する流れなんだろう。


そのついでに、空気読めず場外乱闘して目立っていたバカ(もちろん俺の事!)を回収する気なんだろう。



「あ~……、はいはい。

 今からAブロック?、Bブロック? ―― もう1人の学生トーナメント決勝出場の3年生が、魔物退治やるわけね?」



部外者がいつまでもメイン会場の中をうろうろしてたら、困るんだろう。



「そんなに心配しなくても、スパイ4人(コイツら)連れて出て行くつもりだったんだけどな……」



せっかく助けてあげたのに。

兄弟子(にいちゃん)、あまり感謝されてない感じで、ちょっとムクれちゃう。


まあ、確かに最初から『親切の押し売り』って言ったけど、さ。



(例えばお礼にさぁ、ちょっとお高い店で、さぁ。

 分厚いステーキ的な肉とかゴチってくれても、よくない?)



そんな不満を考えちゃうのは、時刻がそろそろお昼前だから。



(観戦しながらポップコーン食ってたのが、『()(みず)』になった?

 ちょっと早くも、(はら)時計が……)



そんな雑念と煩悩まみれのまま、『鋼糸(イト)使い』技能(スキル)鉄弦(ワイヤー)4本操作。


メイン会場のあちこちで昏倒(こんとう)している、さっきの4人組をグルグル縛り上げる。

『チリン!』と、オリジナル魔法【(じょ)の二段目:()し】で身体強化(パワーアップ)

んで、4人まとめて、ズルズル引っ張っていく。



(はいはーい、黒ずくめの悪い子達も一緒に退場よー?)



そんな後始末しながら、関係者出入口に向かっていると、



―― 『―― なんだ貴様ァッ!』



と、なんか聞き覚えのある怒鳴り声。



「お……?」



声の方向的に、実況席の近く、か?

なんか偉いっぽい人がいっぱい座ってる『VIP(ビップ)ボックス』みたいな所。

いたいけな警備の(アン)ちゃんを怒鳴りつけてる、クソ汚客(クレーマー)が居た。



―― 『この『(もと)・王都の三剣(さんけん)』である、<精剣(せいけん)流>の副当主の前にィ、立ち(ふさ)がるなッ!!』



(おお、マジで昨日の『カンマジェム家の副当主』とかいう、クズ野郎じゃんっ)



そう認識すれば、昨日のイラッ☆と言動が脳裏によみがえる。

―― 『ミラー家の娘も落ちたものだ』

―― 『あんな小細工(こざいく)、黄金世代の面汚(ツラよご)し』

―― 『フンッ、所詮(しょせん)は女、混じり物の()()御三家(ごさんけ)の最弱ゥ』



「―― ~~~~……っ!!」



兄弟子(にいちゃん)、思い出し(いか)りで、(オニ)になった。



「よぉ~し! ついでにお前もブチのめす!」



そうと決まれば、ズルズル引っ張ってた黒装束4人を、関係者出入口そばにポイ捨て。

(あ、とは言っても、ちゃんと全身鎧の警備の人のそばに積み上げたよ?

 何か『ヒィ……!?』とか、惨殺死体でも押しつけられた的な反応されたけど……)



(―― それはともあれ……!)



身体強化(スピードアップ)のオリジナル魔法【(じょ)の二段目:()し】を自力詠唱(『チリン!』)

シュババ……ッと高さ5mくらいの石壁を登り、観客席の間を、ヒョイ・ヒョイ・ヒョイッと飛び跳ねて移動。


目指す先は、偉い人いっぱいの『VIP(ビップ)ボックス』。



―― 喜べ<精剣(せいけん)流>本家の偉そうなオッサン。

―― お前は今から、デジタル表示『ただ今勝ち抜き中[05(・・)]人』という勝ち星(カウント)に成り下がるのだ!


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― 新着の感想 ―
おはようございます。 >失礼ながら、閣下。  『申し開く』のではなく、『事実として別物』なのです。  もちろん! ――  ―― 魔剣士として皆伝でいらっしゃる御身おんみであれば、ひと目でお解り…
更新お疲れ様です。 カンマジェム家のバカ×2「こんな場所に居られるか!私は(自宅の)部屋に戻らせて貰う!(…早よ逃~げよっと)」 我らのロックニキ「(ここから無傷でバイバイできる)…と思っているのか…
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