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異世界カクゲーSPIRIT'sサイキョー伝説[↓↘→+s] ~知ってる?異世界って格ゲー無いんだぜ(絶望)……ハッ!無いなら作ればいいんじゃね(閃き)~  作者: 宮間
Round 8:闘技場ステージ

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182/236

182:勇者ロックの苦悩(上)

俺、前世はニッポン人、名前はロック!(転生者あいさつ)




「意識を飛ばされる事など、いつ頃ぶりか……」



開口(かいこう)一番(いちばん)、アゼリアの祖父・ベニートはしみじみ言う。


『道場やぶり』のザコ(もちろん俺!)に殴り倒され、数分気絶していたのに、どこか楽しそうにも見える。



「── で、小僧、俺はどう(・・)だった。

 今お前の師・ルドルフと真剣勝負するとすれば、どの程度やれ(・・)そう(・・)か?」



急に俺の方を向いて、そんな事を訊いてきた。



「……腰痛(弱体化(剣術Lv70))の時のジジイ相手なら、10回勝負で7勝。

 体調全快(ぜんかい)の完全全力(剣術Lv100(真ラスボスモード))でも、1~2取れるくらいだろう?」



アゼリア祖父(このジジイ)も剣術Lv80超という、バケモノの領域に片足つっこんでる超天才(プラス)超努力タイプ。

だから、剣術Lv(ぎりょう)の格差で判断するくらいしかなくて、かなり雑な分析になっちゃう。



「2、か……っ!」「── ~~~~ぃっ」



俺は、その顔(・・・)を見た瞬間、総毛立(そうけだ)つ。

気配察知を(おこた)って、目の前まで魔物の大口(おおぐち)(せま)ってた気分。


()(あせ)が一瞬で吹き出して、思わず模造剣(ラセツ丸)を抜きかけたくらいだ。



「クックックゥ~……ッ、ア、剣帝(アレ)に10の内2かよォッ!?

 ── 10年ッ!

 この歳になって10年かけた意味が、あったではないかぁ……っ!」



しかし、アゼリア祖父はシワの深い顔をクシャクシャにして、じっと自分の手の平を見ている。

そして、その手をギュッと握りしめ、まだ少しフラフラとしながら立ち上がった。



「ククッ……。

 よいよ、ルドルフの小僧。

 アゼリアはお前にくれて(・・・)やる(・・)、どこへでも連れて行くがいい」


「ふざけんな、クソジジイ!

 リアちゃんを『イヌネコの子を()る』みたいに言うな!」



その大上段の物言いに、軽くカッチ~ン☆ときたので怒鳴っておく。


しかし相手は、ハハッ、といよいよ楽しそうに笑う。



「……そうよ、なあ。

 ── さて、アゼリア?」


「はい! 何ですのっ?」



呼ばれて、超天才の銀髪美少女さん(宇宙開闢(ビッグバン)級!)が元気よく近づいてくる。


決闘をみて血が騒ぎウズウズしていたリアちゃんは、すでに顔が紅潮気味。

さっきまでピョコンッピョコンッしてて、うっかり飛び出さないように、叔父(クルス)さんに肩をつかまれていたくらいだ。


アゼリア祖父は、ポンポンと自分の服のホコリをはたくと、居住まいを正す ──



「すまなかった」



── そして、90度腰を折って頭を下げた。





▲ ▽ ▲ ▽



予想外の光景に、周囲がどよめく。

しかし、アゼリア祖父が深々と頭を下げたまま言葉を続けると、周囲(モブ)はすぐに静まった。



「お前の幼少期の不幸は、このベニート=ミラーの不徳こそが原因だ。

 俺は、お前の祖父として、そしてお前の母の父として、まこと不明であった」


「ご当主さま……」


「お前の苦しみも、お前の母の悲しみも、すべてこの俺に(せき)がある。

 そのせいで、つらい思いをさせた」


「………………」



祖父からの真摯な謝罪の言葉に、孫娘アゼリアはたっぷり数十秒、目をつぶる。


── 物心つく前に母に捨てられ、孤独と飢えが日常

── 近所の人々の善意で、かろうじて生き延びてきた

── 優しい叔父さんに引き連れられ、見知らぬ帝都(マチ)

── ワケも解らないまま、本家道場で厳しい武術の訓練

── 生まれと見た目で爪弾(つまはじ)きにされて、孤立してしまう

── そしてまた別の地へ、<封剣流>と確執のある剣帝(ろうじん)の元へ……


そんな幼少の頃のつらい記憶が、一気によみがえってきたんだろう。

アゼリアの細い肩と、銀色の髪が小さく震えた。



「ご当しゅ ── いえ、お祖父(じい)様。

 どうか、頭を上げてください」



そして彼女は目を開けて、祖父の顔を真っ直ぐ見つめながら、胸の内を語る。



「お祖父(じい)様の事、お母様の事、そしてどなたか知らないお父様の事。

 まったく恨んでないと言えば、それは嘘になります」



胸に溢れる感情のせいか、鈴のような声が震える。



「でも剣帝(おししょう)(さま)の元に行って、兄弟子(おにいさま)に出会えました。

 それに、叔父様、叔母様、恋敵(ライバル)のカイ様、士官学校D学級(クラス)のお友達たち ──

 ── 優しい方々に囲まれています。

 今、アゼリアは幸せです。

 生まれてきて良かったと、心から思っています」


「そうか。

 そう、言ってくれるか」


「ええ、つらくとも生き抜いてきて良かったと、自分の人生を誇りに思えています」


「そうか……。

 であれば、俺からこれ以上、とやかく言うまい」



感動の和解!

みんな笑顔の大団円(ハッピーエンド)!!



「……ぅ、うぅ……リアちゃん、よかったなぁ……っ」



兄弟子(にいちゃん)、涙が出ちゃう!

だって、男親(おとこおや)の気分だもん。


途中で『絶対死ぬ!』と涙目になりながら、超・達人ジジイとの決闘をガンバった甲斐(かい)があったよ。



── すると、なんか不思議すぎる言葉が聞こえた。



(よめ)に出す孫娘が、幸せのようで安心した。

 ── 婿殿(むこどの)、これからもアゼリアの事を頼む!」



なんか、アゼリア祖父がキリッとした顔で、妙な事を口走る。

しかも、俺に(・・)向けて(・・・)



「……………………はいぃ?」


「それはもう、知っての通りジャジャ馬娘で、手綱を握るのは大変だろうが。

 まあ、良くしてやってくれ」



カッカッカッ!と高らかに笑う、アゼリア祖父。

心のつっかえが取れた、とばかりに爽快な顔だ。



……ん?


……ん、ん~?


……んんん~~?



(何ナゾ言動してんだ、このジジイ……

 さっきの決闘で頭打ったせいで、まだ意識モウロウとしてんのか?)





▲ ▽ ▲ ▽



改めて、アゼリア祖父の言動を思い返してみる。



(……そういえば、やたら『ムコ』とか言ってたけど、アレって何?

 え、『ヨメ』って、どういう事……?

 兄ちゃんは、あくまで兄弟子でぇ~……。

 いわゆる一つのその、妹ちゃんを護る保護者的な立場のアレですよ……?)



そりゃ兄ちゃんも、さっき、

<封剣流>本家(リアちゃんのご実家)殴り込み(ごアイサツ)』(キリッ)

みたいな事言っちゃったけど……。



(いや、アレ、比喩(ひゆ)表現だから?

 ものの例えってヤツだからっ)



そんな感じで何か、大変な行き違いがあるような気がする。

うっすら、背中に冷や汗すら流れ出す。



「……う、ぅぅ~~ん?」


「── お、おにいしゃまぁ~~!

 ついに、ついに、お祖父(じい)様の公認ですわっ」



猛獣の勢いでピョン!ピョン!襲いかかってきた、ワンパク少女(リアちゃん)


即座に【序の三段目:流し(投げ技アシスト)】を使って(『チリン!』)、両手だけでエイヤッと投げ飛ばす。



(いや今兄ちゃん考え事して(いそが)しいんだからっ

 (うれ)ピョン!でジャレるの、後にしてチョンマゲ!)



それなのに、投げられた野生児系妹(リアちゃん)が空中クルリンと受け身をとる。

さらに、2度3度ダッシュ突進してくるので、それもポンポン投げ飛ばす。



「リアが、婚約者でフィアンセで未来の嫁で、学生結婚の幼妻(おさなづま)ですわよぉ!」



ってか、オメー、兄ちゃんが遊んであげてると勘違いしてね?

── 「エイヤッ、楽しいですわ~」じゃねーんだよ、ちょっと大人しくしてろ!!



「ハハッ、仲睦(なかむつ)まじい事だ。

 こう見ると、意外と似合い(・・・)ではないか」


「ええ、そうでしょう?

 アゼリアも昔からロック君の事を、『実の兄』のように(した)ってましたし」



アゼリア祖父と叔父(クルス)さんが、にこやかに変な事を言っとる。



(やべーな……っ

 可及的(かきゅうてき)(すみ)やかに誤解を(・・・)とか(・・)ないと(・・・)、将来がピンチッ!?)



違うから!

兄弟子(にいちゃん)不憫(ふびん)な妹弟子ちゃんのために、ロクでなし親族の皆様をガツンとお説教(物理)しにきただけだから!



決して、プロポーズとかそういう方向の『ご実家にアイサツ』じゃねえからな!



例えば、

── 『お祖父様(じいさま)、アゼリアさんをボクにください(キリッ)』

── 『ならぬ! どこの馬の骨とも知れぬ、青二才がぁ』

── 『命がけで、彼女を守護(まも)りますから(キリリッ)! どうか!』

── 『大言(たいげん)を吐いたな、小僧! 腕前を見せてもらおうか!』

── 『ふ~ヤレヤレ、お年寄り(おじいさま)に乱暴する気は無かったんだが?(イッケメーンッ)』



(なんか、そんな(・・・)勘違い(・・・)されてますよね、皆さん!

 だから、ぜんぜん違うからぁ!)



そんな事を考えていると、アゼリア祖父がヤベー事を口走り始める。



「若い2人のため、新居(イエ)でも用意してやるか……?」



アワワ、勘違いが加速してる!

このままじゃ近親(きんしん)相姦(そうかん)っぽい、不適切な関係になっちゃう!?



兄弟子(にいちゃん)な、例えば(ヒカル)GENJI(ゲ・ン・ジ)みたいな、ワイセツ(インモラル)はイカンと思うんです!

 前世ニッポンの頃から『義兄妹AV(くり●むレモン)って、さすがにアレよなぁ……』って感想で、むしろ義憤さえ感じちゃってた、厳格な倫理派義士(モラリスト)だから!)



── あ、知らん若い人のために言っておくが。

あくまで、ここで言う『AV』は『()ニメ・()デオ』の略だから!

なんかそういう、変な意味じゃないからな?





▲ ▽ ▲ ▽



そもそも俺は、この異世界に生まれ落ちた時に、こう誓ったんだ!



(── せっかくファンタジー世界だからエルフを嫁にする、ってな!)



つまり、マイ・妖精嫁(エロフ)

お胸がステキだったら、なおグッド!


お胸がステキだったら、なおグッド!



お胸がステキだったら、なおグッド!



大事な事なので、3回言いました!!



よし、念には念を、もう一回言っておこう。



── 『お胸がステキだったら、なおグッド!』



(── 釈尊(ブッダ)ァァ! 転生仏(ブッダァ)アアア!

 マジで頼む、お胸(そこ)だけは!

 この人食い怪物ワチャワチャ異世界に輪廻転生(リーンカーネーション)しちゃったヤマト魂な俺に、母性豊かな(意味深!)癒やしをくれぇぇl!

 貴方の教義(おしえ)敬虔(けいけん)な信徒、このオッパイ聖人(セイント)の唯一の頼みですよぉぉ!!)



よし、念仏(おいのり)OK!

(ネン)には(ネン)を、でブツブツ(・・・・)(ネン)()しするだけに、『(ネン)(ブツ)』ってなぁ(吹笑(ププッ)))



これこそ『人事(じんじ)()くして天命(てんめい)()つ』だ!



そんなワケで、エロフでもお胸ステキでもない嫁なんて、ノーセンキュー。


この!

けっして周囲に流される事なく初志貫徹する、この『鉄の意志(めんどうさ)』!!

これこそ、古参ゲーマーの誇り(プライド)!!!



そんな意気込みを新たに、グッと拳を握りしめる俺。



── 兄弟子を、無礼(ナメ)るな!



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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様です。 大切な人の為に、一族のトップと鎬を削る……言われてみりゃ確かに状況的には「彼女を嫁に下さい!」の武門バージョンですよね、やってる事は(笑) [一言] >胸部装甲が有れ…
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