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異世界カクゲーSPIRIT'sサイキョー伝説[↓↘→+s] ~知ってる?異世界って格ゲー無いんだぜ(絶望)……ハッ!無いなら作ればいいんじゃね(閃き)~  作者: 宮間
Round 8:闘技場ステージ

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174/236

174:練習モードin闘技場

俺、前世はニッポン人、名前はロック!(転生者あいさつ)




春先の<帝都>で、魔導三院(いつもの)バイト中。

新しい朝習慣『魔物のエサやり』in(イン)闘技場(コロシアム)が追加されて、そろそろ3週間かな?



「どりゃー!」



── ギャウッ ギャインギャイン!



ちょっと強めに投げたら、受け身すら出来ない<樹上爪狼(ワンちゃん)>が情けない悲鳴。


こっちはすぐに次の技を練習したいのに、まだ地面でバッタバッタしとる。

そんな感じで『起き上がり動作(もとにもどる)』にさえ手間がかかっている。



(チッ、お前なぁ……っ

 最近の格ゲーだとボタン一つで一瞬(びょう)だぞ、『初期位置リセット(もとにもどる)』とかっ)



(トロ)いしザコいし、練習台(サンドバッグ)としてもイマイチ。



「── チィッ

 コイツ、野生味(こんじょう)ないな……っ」



(毎日エサもらうだけの、ヌクヌク飼い犬(ペット)生活していたせいだろうな……)



仕方ないので時間つぶしに、コマンド練習的に、両手をビュン!ビュン!と空回し。

高速で『デカいハンドル回す』みたいな投げ技の動き(コマンド)を繰り返して、より身体に染みこませる。



── なんか知らんが、平日休業中の闘技場(コロシアム)が投げ技の技コマンド練習場(プラクティス・モード)になってる件について。



しばらく待っても中々起き上がってこない。

なので、思わずグチも出ちゃう。



「オラァどうした、すぐ立たんかボケぇ。

 魔物は待ってはくれねーんだぞっ」


『いやいや! ソイツが魔物だろうがぁ~!?』



魔法の拡声器(マイク)でキーン!と雑音まじりに、三白眼少年の叫び声。


この熱の入り方、さっきから何かに似ていると思ったら ──



(── なんか、ちょっと格闘技の熱血実況(ナレーション)みたいっ。

 そう考えると、ヤる気(テンション)()がるなぁ……!)



気分は『後楽園ホール(プロレス会場)』。

アイ・アム・場外乱闘(エンターテイナー)

フンッ!、と両腕に力を込めてムキムキに筋肉強調(マッスルポーズ)


そんな事をしていると、背後からビュン!と飛んでくる伸縮腕の長い爪(ロング・クロー)



「あま~い!

 うおりゃぁ~~!」



右手の甲に【序の二段目:張り(マホウのバリア)】つけて、ビシッ!って弾く。

左手で獣爪(ツメ)をつかんで、腕をグルリンしつつポイっと投げ!


丁度、前世ニッポンの格闘技カラテの『回し受け』をゆっくりやった、みたいな動作だ。



(これぞ、サ▼スタ▼ン流アイキドーの秘技『()()()げ』!!

 敵の打撃を防御して(ハジいて)投げるという、ゲームならではの理不尽な反撃ぃぃぃ!!)



── ギャン、ギャイン!



『だぁ・かぁ・らぁっ、なに魔物投げ飛ばしてるんだよおぉ!

 おかしいだろ、お前ぇぇぇ!!』



さっきまで、

『アワワ! 悪役ゴッコしてたら魔物解放しちゃった、どどどど、どうしよう!?』

みたいな感じだった三白眼(ガビノ)も、ちょっと苦笑い混じり。


わたくしナマクラ剣士も、安心して頂いたようでなによりです。



(まあ、ねえ。

 脅威力2の(このていどの)樹上爪狼(ザコまもの)>とか、必殺技開発の練習台にしかならないし……っ)



超絶天才(ウチの)美少女魔剣士さん(リアちゃん)なら、ズパパパパ!と群れごと瞬殺だもん。

なので、ザコな兄弟子(にいちゃん)でも素手(ブキなし)で余裕ヨユー。



── そんな感じなんで、お前もその調子で、往年のプロレス解説的な盛り上げしてくれてもいいよ?



(例えば ──

 ── 『おおぉっと、ここでまたロック選手の得意技・()()()げ炸裂ぅ!!』

 『魔物選手(ロングクロー)の凶器攻撃を完全に封じてしまっているぅ!!』

 『もはや会場は、ロック喚声(コール)一色だ~!!』みたいな?)



── いやぁほぉおおおお!!

元師匠(ジジイ)、俺ここまで出来るようになったよ!

おちこぼれ弟子の活躍を見守っていてくれぇ!!


とか、存命中(・・・)の白髪ロングのジジイの『親指立て(グッジョブ)イイ笑顔』を虚空(そら)幻視(イメージ)



感涙と歓喜で、『リングという名の四角いジャングル』で雄々しく(こぶし)を突き上げる一番弟子(ロック)なのでした!





▲ ▽ ▲ ▽



『な、なんなんだよ!

 なんなんだよ、このチビ!

 おかしいだろ、絶対おかしいだろ!!』



なんか、司会(ガビノ)が盛り上げマイクパフォーマンスしてくれる。



(うんうん、繰り返しで強調していくとか、まさに熱血アナウンサー!

 あとでビンタして気合い注入してあげるぜ、どうですかァーー!)



なので、俺もそれに乗っておく。



「うぃ~~!! かかってこいや~~!」



両拳バンザイ(人差し指・小指の2本立ての謎手つき)で、魔物に突撃。

魔物の飛びかかり攻撃をバク転でかわして、ひっくり返りつつ両足でドーン!と蹴り上げ。


前世ニッポンの格闘技ジュードーの『巴投(ともえな)げ』の変形みたいな投げ技だ。



『うそぉっ、足で!

 足だけで、魔物を!!?』



── 違う。

違うよ、ガビノったら。



解説(そこ)はちゃんと『ロック選手っ』を前につけて! ねっ?)



やっぱり素人(シロート)さんなので、実況中継(アナウンス)の腕がいまいち。



(例えばぁ ──

 『まさかまさかの展開っ』

 『ロック選手、足だけで魔物をさばいしてしまったぁ!』

 ── とか、そういう感じで頼む!)



── そんな事を思っている内に、上空5mくらいに吹っ飛んだ魔物が、ヒューン……ドシャァン!と墜落。

ゴロゴロゴロぉ……と転がり壁で止まる。


ギャゥ……ッと情けない声上げて、完全に気絶(ダウン)



「あっれぇ~。

 調子乗って、やりすぎたか……?」



さっきから投げ技の補助に使ってる、運動エネルギー操作の【序の三段目:(なが)し】で、勢いつけすぎたみたい。



『クソがぁっ

 ふざけんなよ、あの “黒ずくめ(ゴキブリ)” ども!

 “特級の魔剣士だって、腕輪と剣を取り上げたらタダの人間(ヒト)” って言ったじゃねーか!』



ガビノがキーン……!キーン……!と魔法の拡声器(マイク)を鳴らしながら、何か叫んでる。


── だが、俺はグッタリ気絶(ダウン)しちゃった<樹上爪狼(ワンちゃん)>が心配で心配で……。



「うおぉ~い、大丈夫かワンちゃんっ

 ちゃんと息してる?

 足ピクピクしてるけど……、まだ死んでないよなっ? なっ!?」



変な腕した大型犬(レトリバー)くらいの毛玉生物(ケダモノ)をユッサユッサ。


俺って一応『エサやり作業要員』として、お手当もらってるワケで……。

その養育魔物を『投げ技練習で(あそんでたら)、うっかり殺しちゃったZE(ゼッ)☆』とかシャレにならんワケで……。



『── “事故死”はもういい、諦める!

 お前らぁッ、用意したの全部出せぇ~!

 実家(いえ)の権力で()()すからっ!!』



またガビノが、血相変えてギャーギャー叫んでる。

だがやっぱり、キーン……!キーン……!と魔法の拡声器(マイク)共鳴音(ハウリング)がひどくて、半分くらい聞こえん。



「……どうしたの、お前?」



主力研究室らしい魔導オタクな猫背(ねこぜ)主任(チーフ)さんに怒られて以来、何か変よ?

今なら特別に、お昼(ランチ)にお肉おごってくれたら、思春期のお悩み相談ぐらい乗ってあげるよ?



(ほら、オジさんって前世の分も(・・・・・)人生経験あるから!

 他の人には出来ない、 “““深い”””(ガンチクある) アドバイスとか出来ちゃうしぃ~?)



そんな感じで、脳内がお肉料理でいっぱい。

もうすぐお昼の時間。

お腹すいてきたから、仕方ないね!



すると周囲からガシャーン……ッ! ガシャーン……ッ! ガシャーン……ッ!と鉄の揺れる音が3回。



「……なんぞ?」




── ででっでっでっでっ・でぇ~ん!

── ちょう(Here )せんし(Comes )ゃ  あ(A New )らわるっ(Challenger)!?




グルルルゥ……ッと、<樹上爪狼(ロングクロー)>が3匹追加されてしまった。





▲ ▽ ▲ ▽



「いやいや。

 さっきのは別に『次の相手、でてこいや~!』の(こぶし)()げじゃなかったんだけど……」



なんか、ガビノが『おかわり』用意してくれたらしい。

プロレスっぽいから、謎の乱入者レスラーって事なのかね。



(でもまあ、せっかく気を()かせてくれたのに、断るのもアレだしね……?)



そんな事を考えていると、『ゴォーン!』『ゴォーン!』『ゴォーン!』と魔物特有の魔法起動音。

狼型魔物(オオカミもどき)3匹が大口をあけて、一斉に火炎放射。


案の定の展開、<樹上爪狼(ロングクロー)>が包囲してからの定番攻撃だ! ──

 ── を見越した対策を自力詠唱(『チリン!』)



「どりゃあ! エア・サイクロ~ン!!」



オリジナル魔法【序の三段目:(なが)れ】の特殊効果で、大気をつかんで(・・・・)、グルグル風を引っかき回す。

プロレスの投げ技・ジャイアント・スイングみたいな動きだ。


狙い通り、俺の周りに風の(うず)が出来上がる。



「── うわ!? アチャチャッ、(アツ)ぅ~ッ」



旋風(つむじかぜ)というか、小型竜巻というか、ともかく風の渦が勢いよく炎を吸い込んだ結果、高熱を至近距離で浴びてしまう。


もちろん直撃くらって真っ黒(すみ)よりマシだが、カッコ良く防ぐつもりが、散々だ。

これなら普通に、衝撃波魔法【撃衝角(アタックラム)】で防御してりゃ良かった。



(最近、水の操作に慣れてきて調子乗ってたけど。

 風の操作って何倍も難しいな……)



水に比べると、軽すぎるし、まとめにくいし、物理的な影響力も微妙。

よほどの突風でも起こさないと、目くらまし(・・・・・)くらいの使い道しかない。



元師匠(ジジイ)がよくやる『空中を蹴って方向転換』とか、まるで出来る気しないし……)



当流派の剣帝(ジジイ)が非常識な件について。



仮面仙女(バイトリーダー)の幻像モノマネ練習で体術が上達してきて、ちょっと調子に乗ってたけど……。

 まだまだだなぁ~……ハァッ)



内心ちょっと(へこ)んでいると、ガビノの挙動不審(キョドリ)すぎて裏返った拡声器(マイク)の声。



『ウヒヒィ~っ

 さすがに3匹相手なら、てぇっ、てこずってるぅ……っ』



あ、いかんいかん。

考え事しすぎて、うっかり魔物の事忘れてた☆(舌だし(テヘペロッ)



新手3匹に向き直る。



『── いいぞ! やっちまえぇ~っ

 女好き変態チビすけを血まみれにしてやれぇ~~!!』



魔法の拡声器(マイク)の声に反応したみたいに、新手の<樹上爪狼(ロングクロー)>3匹が包囲を狭めてきた。





▲ ▽ ▲ ▽



『ヒヒッ、お前が悪いんだぞ、チビすけぇっ

 他人の婚約者(オンナ)に手を出すからぁ~っ、アッヒャッヒャ~~ァ』



ガビノが俺に何か言ってるっぽい。

だが悪いが、今はちょっと魔法の準備に忙しく、相手してあげられない。



グゥ……グルwッ


グルルwwッ


グガァwwwッ



うなりながらも、舌なめずりしてそうな<樹上爪狼(ワンちゃん)>3匹。

包囲している側なので、圧倒的有利だと油断しまくり。



── 炎にまかれてアッチッチってww


── もうこれ魔法使わんでも楽勝やろww


── 魔力くそ弱(ザッコ)人間(チビ)やしっ、ファァーwww!



みたいな、ナメまくりの心境が手に取るように分かる。

(なお魔物が猛虎弁(もうこべん)なのは、俺が異世界語を翻訳する都合であり現実にはウンヌンカンヌン ──……(略))



3匹とも、調子のりまくりで、無警戒(くそナメた)ジャンプ攻撃。



ガウ! ガァ! ワウゥ!



「おりゃ! おりゃ! おりゃ~!」



スパン! スパン! スパァ~ン!と『当て身投げ』で3匹とも叩き落としてやる。



(まさに『ザンギの高飛び()ちガイル ──

 ── 訂正(ミス)、『ケイマの高飛びフの餌食(えじき)』という、迂闊(うかつ)すぎる攻撃パターンだな)



つまり、コマンド投げの練習に最適!

やっぱコイツら、練習モードのCPU並に低能(ザコ)だな。



『── はぁっ?

 はぁぁぁああああ~~~!?

 3匹まとめてとか、何だよそれぇぇぇええ!!』



魔法の拡声器(マイク)を握りしめた三白眼(ガビノ)も声を張り上げる。

気合いの合いの手(リアクション)で場を盛り上げようとしてる、っぽい。



(でも、なぁ……)



やっぱ、エンタメ大国の本場・異世界ニッポンから来た俺的には、微妙な実況中継(アナウンス)が気になっちゃう。

しかし、発展途上な異世界(笑)の素人(シロート)お坊ちゃん(呆)が、せっかくガンバってる姿にケチつけるとか、大人としてアレだ。


仕方ないので、脳内で補正 ──



(── おお~っと、ロック選手あぶない!

 乱入してきた謎のレスラー3人組が凶器をもっておそいかかるぅ!

 ── だっしゃぁ!(謎歓声)

 しかし、得意の『当て身投げ』で全て叩き落としてしまったぁ~!

 まさに『柔よく剛を制する』ぅ!

 見たか異世界ぃ!

 これぞヤマト魂ぃ~!!)



気分は()()げ、なので『起き攻め』しに行くぜ!


地面でバタバタしてる魔物(ザコ)どもを、スルスルゥー……と地面を滑る歩法(魄剣流のアレ!)で距離詰める。

こっちに気付いて『── ゲゲッ!?』と大口あけた狼型魔物(オオカミもどき)3匹が、驚き(あわ)てながら伸縮長腕の爪攻撃(ロング・クロー)



雑反撃(ソレ)を待ってましたァ~っ)



── 再度、『コマンド(←↙↓↘→↗ )投げ(+[K])』×3回!

(右手の【張り(バリア)】で弾いて、左手の【流し(アシスト)】で強制円回転(グルリン)投げ飛ばし(ポイッと)!:名称未設定)



「うりゃ! おりゃ! どりゃ~!」



ズダンッ、ギャインッ!

 ズパンッ、ギャインッ!──

  ── スカッ……ッ、ワゥッグルル!と、最後1匹の投げ失敗。


2匹は虫みたいにひっくり返ってってジタバタしてる。

残り1匹は、警戒して離れていく。



(クソっ

 さすがに3連チャンだと、タイミングと間合いが難しい!)



内心、舌打ち。



『── おぃぃいっ

 逃げるな魔物っ、その牙や爪は(かざ)りかぁ!

 向かって行け! ちゃんと噛みつけ! 爪でひっかけ!

 その女好き変態チビすけを、ボロボロの血まみれにしろぉ~~!!』



戦意喪失しつつある乱入者(チャレンジャー)に、熱血実況(ナレーション)から注意が入る。





▲ ▽ ▲ ▽



さっきから『いま()めています』の体勢で、迂闊(うかつ)ジャンプ攻撃狩り(30年変わらない伝統芸!)してんだが……。


完全に警戒されて、お見合い状態。

俺から近づくと、サッサッと逃げられ、距離が縮まらない。



── あかん、この人間(チビ)“““本物(ガチ勢)”””っぽいわ!

── 勝てんから逃げるでー!



という感じな、最後の<樹上爪狼(ワンちゃん)>。

逃げ腰&(およ)び腰で、回避一択(いったく)という対応をされちゃう。



(うぅ~ん……

 やっぱ、魔物は魔法使うだけあって、バカじゃないなっ)



まいったね、こりゃ。



『いけぇ! やれぇぇ!

 牙と爪でズタボロにしてやれぇぇ!

 人食いの怪物のプライドをみせろ~~!!』



三白眼の実況司会(ナレーター)も、声を()らしそうな勢いで『教育的指導(グルグル~ビシッ)』。



(さて、どうしよう……)



戦意喪失気味(ぎみ)な相手に、何度かのため息 ──

 ── と、そこへ聞き慣れた警備のオッサンの、呼び声。



『おぉ~い! 魔導三院のボウズっ

 帰りの車両(クルマ)来たぞ! どこ行ったんだ、トイレかぁ?』



カツカツと足音が近づいてくる。



(── ヤベぇ!

 こんな風に遊んでるのバレたら、ガチで怒られるパターンっ)



魔物のエサやり係が、『平日休業の闘技場(コロシアム)に魔物を出してプロレスごっこ』とか。

その上、見世物(ショー)のための魔物をケガさせたとか、賠償金(ばいしょうきん)ものだ。



「ウラー、クソ犬ッコロ!

 一瞬(びょう)で終わらせるぞっ」



俺が【序の二段目:推し(スピードアップ)】を自力発動(『チリン!』)して全速力。

すると、<樹上爪狼(ワンちゃん)>が錐もみ回転突撃みたいな新技をかましてくる。


もちろん、ヒョイッと避けたが。



(お、吸血鬼狩人(バン△イア・▲ンター)狼男(ガ■ン)?……──

 ── いやむしろ、怪物(モンスター)がプロレスするゲームに、こんなの居たなっ)



そんな事を考えながら、着地直後の硬直を狙って間合いを()める。


すると、魔物が大口開けて待ち構え、至近距離で魔法起動音(『ゴォーン!』)



(そう、組み付いて火炎吐いてくる、こんなドラゴンも居た……!)



── たしかアレは……『デス▼レイド』!?



DEC●(デコ)ゲー愛好者(マニア)かよ!

 うわぁ懐かし、シブい所ツいてくるなコイツ)



そう思いながら、スライディングでギリギリ回避。

火炎放射の下をすりぬけ、特殊技を自力発動(『チリン!』)


序の三段目:払い(ふっとばし)】の両足蹴りで、上空へと打ち上げる。

そして即座に【秘剣・速翼(はやぶさ)】で、昇空追撃(エリアル・コンボ)の開始。



「ビィー! ビィー! ビィー!(OKゲージMAX必殺技の効果音(S.E.))」



空中で狼型魔物(オオカミもどき)を捕まえ、その胴体を抱え込む。



お前は(アイ・ウィル)ミンチだ(・マッシュ・ユー)!」



せっかくだから俺は動く石像(ゴーレム)を選ぶぜ!

名前が岩石(ロック)だからな!



── ズドォ~ン……ッ、と抱え投げ(パワースラム)っぽく地面に叩き付ける。


空中3~4mからの落下攻撃。

しかも、俺の分まで体重乗せて地面に叩き付けられたら、さすがの<樹上爪狼(ワンちゃん)>もグッタリだ。



『はあああぁぁ!?

 魔物を空中でつかんで投げたぁ!?

 魔物4匹とも地面にたたきつけて倒したぁ!

 なんじゃそりゃぁぁぁぁ!!』



お、三白眼少年もそろそろ、格闘技の実況中継(アナウンス)に慣れてきたみたい。

熱い絶叫で、俺の勝利を(たた)えてくれている。



「ビィー! ビィー!(勝利時の効果音(S.E.))」



なので俺も、DEC●ゲー・リスペクトで応える。

インド舞踊みたいな両手広げた謎ポーズで、勝利演出してみた。





▲ ▽ ▲ ▽



「── さて。

 いつまでも遊んでいる場合じゃねえっ!(今さら大慌(おおあわ)て)」



警備のオッサンが、闘技場(コロシアム)のメイングラウンドに来る前に片付けないと!


そんなワケで、『鋼糸(いと)使い』の技能で超速回収。

お昼寝中の雑魚寝(ザコね)アザラシみたいな体勢で転がっている、魔物(ザコ)どもを鉄弦でグルグル巻きにして引っ張っていく。



(── あ、ザコだけにザコ寝(・・・)独り笑(ププッ)!))



久しぶりに魔物を制圧(ボコ)にして、気分も爽快!

なので、『人食い生物』というクソみたいな生態の魔物に対しても、ちょっと優しく接してあげちゃう。


そんな上機嫌ルンルン♪な、今日の兄弟子(ニイちゃん)



「はぁ~い、運動の時間終わりぃ~!

 ワンワンたちぃ、お家帰るよぉ~?

 ── ギャゥッ!じゃねんだよ、このクソ駄犬(ワンコロ)がぁ、ドリャア!(ヒザ蹴り)」



肉体言語(しつけ)だって、うっかり骨を折らないように、細心の注意の上だ。

最初の1匹目とか、ダメージ回復してうるさかったので、頭へ(シット)空中(シット)連続(シット)蹴り(シットぉッ)気絶(ピヨ)らせておいた。


そんな感じで、うっかり脱走しかけた狼型魔物(オオカミもどき)1匹+3匹の計4匹を、地下の檻の中に蹴り込んでおく。



── パパッと汚れ防止のエプロンから着替えて、ボンヤリしている三白眼(ガビノ)から愛剣・ラセツ丸を回収。

そして探してくれていた、さっきの警備のオッサンの所まで駆け足。



「お~、居た居た。

 魔導三院の下男のボウズ、もう帰りの車両(クルマ)来てるぞ?」


ありがとうございます(アッザ~~ス)

 スンマセン、ジブンちょっとウンコしてましたァ~っ(大ウソ)」



すると、ちょっと離れた所から ──



『ウソじゃねえ!

 ホントだって!

 今、さっき、たしかに居たんだって!

 闘技場(コロシアム)のステージに、素手で<樹上爪狼(ロングクロー)>をボコボコにしてた子どもがぁ ── いや、だぁ~かぁ~らぁ!!

 俺の幻覚でも酒でも薬物でも、ねえんだって!

 ホントに居たんだってぇ、信じてくれよぉ!!』



なんか事務っぽい制服の兄ちゃんが、警備の強面な人達とモメている。



(ヤッベ……っ

 調子にのって遊んでたら、見てた人いたのかっ)



俺は、顔を隠しながらササッと闘技場(コロシアム)を後にした。





▲ ▽ ▲ ▽



その翌週くらい、だったかな……──



「── あの、スミス研究室の。

 あ、えっと、ロック君?」


「うん?」



魔導三院の週初め早朝の、定例処理(いつもの)

研究機材の受け取り作業に行くと、いつも見る男子2人組が、何故か1人だけになっていた。



「あ、そばかす少年(マーティン)

 今日、三白眼少年(あいかた)は?」


「あー……、うん。

 ……ちょっとしばらくは、魔導三院(コッチ)にも顔出せないかも」



季節の変わり目なんで風邪でもひいたのか、と心配したが違うらしい。


何か大失敗(ヤラカシたの)が親にバレて、謹慎処分くらったらしい。

しばらくの間は、帝都から遠い親戚の家に預けられ、性根を叩き直されているらしい。



「あ~……っ」



そう言われて、ようやく先週の出来事を思い出した俺。


── 『闘技場の操作盤か何かイジくりながら、悪役(ム■カ)ごっこ』

── 『うっかり魔物が解放されちゃったので、俺も手伝い証拠隠滅(モミけした)



(もしかして、これ。

 俺も怒られちゃうパターン……?)



いや、勘弁してよ。


ノリノリで『デス▼レイドごっこ(モンスタープロレス)』しちゃったのは、やむを得ずの緊急避難だったワケで。


兄弟子(にいちゃん)、『身体が鈍らないようにアレまたやろうかな』とか3ミリくらいしか考えてないから!


そんな冷や汗かいてたら、そばかす少年が妙な事を言ってくる。



「今度、ガビノの親御(おやご)さんが、魔導三院(コッチ)まで正式に謝罪に来るって」


「え、なんで……?」


「なんで、って……」



俺の当然の疑問に、マーティンは言葉に詰まる。

少し考えて、ようやく、声を細めて答えてくる。



「ほら、ガビノがロック君に迷惑かけたでしょ?

 それで、ほら、大変な思いっていうか、トンデモない事になりかけた訳だし……っ」



なんか、モゴモゴモゴモゴ、歯に物がはさまったような、微妙な言葉。



「ん……?」



大変な思い、って何?

トンデモない事、って何?


別に、『脅威力2(クソザコ)』の<樹上爪狼(ワンちゃん)>が4~5匹逃げ出したくらい、大した騒ぎにもならんだろうし。

どうせ、騎士団とか親衛隊とか、その手の特級魔剣士さん達が、瞬殺するだろうに。


さすがに超絶天才美少女(リアちゃん)金髪貴公子(ヒョロいイケメン)には一歩劣るだろうけど、『帝都守護の剣』<表・(おもて)御三家(ごさんけ)>の門下生は『段違い(レベち)』らしいし。



(あ~……でも、そうか。

 一応、平和な帝都市民の皆さん的には、『動物園から猛獣が逃げ出した!』的な大騒ぎになるのか?)



そんな事柄に頭を巡らせていると、なんとなくマーティンの言う事の意味が “““理解(わか)””” った。



「つまり、口止め料か……」


「え、何か言った?」



そういやガビノの家って、そこそこの貴族らしいし

勤労(きんろう)学生している平民(マーティン)とタメ口だから、すっかり忘れていたが。



(なるほど、なるほど。

 子弟(むすこ)が一般人が大パニックな事件起こしかけた、とか貴族の立場じゃ大問題。

 そんな大失態(ヤラカシ)の後処理した謝礼と、口止め料って事ね!)



かぁー、つれーわー。

かぁー、ちょっと知り合いのトラブル助けただけなのに、つれーわー。

かぁー、善意100%(ひゃくパー)な人助けなのに謝礼目当てと思われるとか、マジつれーわー



「── え、いくらもらえんのっ?

 え、こういう時って、相場じゃいくら!?」


「あ、え、ゴメン……

 ボクもそういうの、あまり知らないから……」



俺と同じで平民出身のそばかす少年は、そういう貴族のアレコレまでは詳しくないらしい。



── もちろん、謝礼も口止め料も、()(がた)くいただきマンモス!

軍資金(タネセン)が増えるのは、いくらでもウエルカム!


おいおい、このままじゃ『4月の武闘大会(士官学生の特別枠)』公式賭博(ギャンブル)の配当が大変な事になっちゃうよ!?



そんな風に内心盛り上がっていたら、マーティンが変な事を言ってくる。



「あ、あと、一緒にグラッツィア先輩の親御(おやご)さんも来るって」


「………………」



え、なんで……?


性格キツくて問題児(トラブルメーカー)な、あのグラッツィア先輩?

あの石頭メガネ風紀委員っぽい魔法学園女子の親御(おやご)さんが?


え、マジで、なんで……???


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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様です。 デコゲーか~、自分はデスブレイ○はRTAの動画位でしか知らないですね。ごっついタイガーバズー○のアレか、セガサター○で出てた水滸○武はちょっとだけやったこと有りますが…
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