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異世界カクゲーSPIRIT'sサイキョー伝説[↓↘→+s] ~知ってる?異世界って格ゲー無いんだぜ(絶望)……ハッ!無いなら作ればいいんじゃね(閃き)~  作者: 宮間
Round 8:闘技場ステージ

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173/236

173:帝国!地下!労働!日銭!

俺、前世はニッポン人、名前はロック!(転生者あいさつ)




そろそろ<帝都>も、雪解(ゆきど)けの季節。

日中はポカポカ暖かくなってきて、そろそろ外套(アウター)が要らない感じ。


春の気配に、思わず鼻歌まじり。

そんな、ある日の昼休み。


ご機嫌な足取りで、勤め先(バイト)魔導三院(まどうさんいん)の廊下を移動していると、



「あ、スミス研究室の下男!」



相変わらず口調のキツい女性事務員さん(名前知らない)に呼び止められた。



「貴方、力仕事は得意よね?

 ちょっと手伝いなさい」


「え……っ

 でも ──」



思わず『あ! ジブン(いそが)しいんで、また!』と言いかけた。


だが、両手の袋の中身は、借りてきたばかりの研究書籍(ヒマつぶし)

また実際に、別にお急ぎの仕事があるワケではない、今日この頃。


しかも見た感じ、本当にバタバタしていて(いそが)しそうな事務員のお姉さん達。



(さすがに、断るのは悪いかな……?)



ウチの室長(チーフ)研究(しごと)の山場が過ぎたのか、今日は朝からのんびりしてたし。


そんな内心が顔に出ちゃったのか、事務員さんは話を(たた)みかけてくる。



「ちゃんとバーバラ研究員には、事務局(こっち)から言っておくから。

 小一時間くらい、ちょっと付き合いなさい」


「まあ、それくらいで終わるなら……」



そんなワケで、呼ばれるままに着いていく俺。



なんか知らんが、いつものキツい事務員さんの周りの人が、ゴニョゴニョ言ってる。



『せ、先輩……っ』『あの子アレですよね……っ』『だ、大丈夫なんですか……っ』『だって魔剣士……』『プライドが……』



不評というか、陰口というか。

何か女性達のヒソヒソ話が、ちょっと聞こえてくる。



「………………」



(……なんか、俺。

 文句とか苦情とか言われるような事したかな、最近?)



そんな感じで、事務員の後輩さん達から(うわさ)(まと)

『この前も副都で……』『冒険者ギルドが……』『わたしも……』『所長だって……』とか。

魔導三院(つとめさき)から他所(よそ)への移動中の荷車の中でも、しばらくボソボソ、コソコソと聞こえてくる。



(……あ。

 もしかして、<副都>旅行のお土産(みやげ)が、女性には不評だったとか……?)



魔法指導の生徒さんの赤髪少女(メグちゃん)が、やたら『副都って言えばコレだから!』ってグイグイ(すす)めてきたから買ったけど。


あの酒のツマミ系の干し魚って、やっぱ微妙なお土産(チョイス)だったよな。

発酵しているのか、妙な(にお)いで、アレだったしなぁ……。



(失敗失敗っ

 やっぱり、ビスケットみたいなお菓子(スイーツ)系にしておくべきだったか……)



女性事務員のご機嫌とりって、割と大事なんだよなぁ。

前世ニッポンの会社勤め(サラリーマン)経験からすると。



直属上司(バーバラさん)にあげなくて良かったのかもしれない、干し魚(アレ)

まあ、『後で何か別に良さげなお土産(みあげ)を選ぼう』と思ってて、結局そのまま忘れて後で気付いたワケだが……。


いくら寝不足&疲労困憊(こんぱい)だったからって、ダメダメだな、俺。





▲ ▽ ▲ ▽



性格キツい事務員さんに連れられて、乗合荷車(クルマ)で20~30分移動。

連れて行かれた先は、デッカい円形建物。


そう、みんな大好き賭博の殿堂(ギャンブル・メッカ)ドーム横の券売しょ(ウイ■ズ・こうらくえ)……──

 ── 訂正(ミス)、<帝都>目玉施設(ランドマーク)の『闘技場(コロシアム)』だった。



「魔物の、エサやり……?」



予想外すぎる場所に連れて行かれ、予想外すぎる用件を任された。



「ええ。

 貴方って昔は魔剣士目指していたらしいじゃない。

 だから魔物にも慣れてる、とか聞いたけど?」


「はあ、まあ、それは……」



俺は微妙な返事をしながら、周囲を見渡す。


見た感じ、地下の牢屋みたいな場所。

薄暗くて、ガウガウギャウギャウうるさいし、やたらとケモノ臭い。


どんな魔物が居るんだろう、とちょっと興味本位でのぞいていると、



「なんか、本当に大丈夫そうね。

 じゃあ、明日からは毎日、朝一(あさいち)の仕事ね。

 ── で、頼めるかしら?」



女性事務員さんは、『頼める?』とか疑問形で言う割に、半分決定事項みたいな決めつけ口調。


俺が、う~ん……と天井を見て悩んでいると、決定打が放たれる。



「あ、一応、危険手当的な物がつくわよ?

 事務局や下働きも、みんな怖がるから困ってたし。

 仕方ないから冒険者ギルドにでも頼もうかって、予算も用意してたから」


「OK、毎朝やります!

 なので、直属の上司(バーバラさん)との調整、お願いします(たのんます)っ」


「じゃあ、決まりね」



性格キツい事務員さんが、珍しくニコニコする。



「しかし、なんで急にそんな話に?」



俺の質問に、女性事務員さんは疲れた声で事情説明してくる。



「ああ、これね。

 本当は魔物の生態を研究している、リネン研究室の役割なのよ。

 でも、研究室の関係者全員が ── あ、ほら年始の、あの一件で……」


「ああ、そう言えば……」



あのデカいワンちゃん(たしか<跳岳大狗>(ワイルド・ファング)だったけ?)が倉庫の中で大暴れの一件ね。

言われてみれば、最初に背中かじられた(・・・・・)人の他に、何人がブッ倒れていた気がする。


やっぱ<跳岳大狗(アイツ)>、実験用魔物(モルモット)だったんだな。

たしか『爆弾持ち(ボマー)』とかいう、特殊な変化した魔物だったし。



「仕方なく、事務局の中で、回り番でやってたんだけど。

 こっちは魔物の世話なんてやった事ないから、噛まれかけたり、檻の柵から引き込まれそうになったり。

 そんな風だから、みんな嫌がって、だんだん押し付け合いになってきて」


「ははあ」


「しかも、最近、大型の魔物が入荷されたばかり。

 そのせいで、他の魔物達も気が立っていてるみたいなのよ。

 今まで以上に檻の中で暴れたり吠えたりするから、今日の担当の子達なんて、エサやり途中で泣いて帰ってきちゃって」


「なるほど」



魔剣士でもない一般人で、か弱い女子だからな、魔導三院の事務員さん達。

3~4人居た後輩事務員さん達を探すと、階段の上(つまり地上階の入り口のドアあたり)から怖々のぞき込んでいて、降りてくる気配もない。


この魔物のガウガウは、慣れてない人には、ちょっとおっかない(・・・・・)かもなぁ。





▲ ▽ ▲ ▽



「……しかしまた、エサの量、多いな」



生肉入りの金属バケツが、まだ中身入ってるのだけで40~50個。

空いて重ねられた物を入れたら、優に100越えそうな量がある。



「悪いわね。

 元々は研究室の下男(おとこで)3人くらいで担当してたのよ。

 魔物の前に来ると、女性の裸を見たくらいに鼻息が荒くなる、変態3人だったけど……。

 居なくなると、連中のありがたさ(・・・・・)が解るわねぇ~」


「………………」



そんな変態(ヤツ)ばっかりかよ、魔導三院(ここ)って。



(まあ、この魔導三院とか国立研究機関のくせに、下男(おとこで)のお賃金は、運送業や湾港荷下ろしの半分くらい。

 そんな(・・・)安月給(・・・)で働くとか、生粋(ガチ)趣味人(マニア)だろうから、仕方ないね!)



あるいは、魔導研究の書籍(ホン)を読むの目当てな、俺くらいだろう。



女性事務員さんが、重いため息ついて話を続ける。



「その魔物マニア3人も、年始のあの日に『珍しい魔物を間近で見たい』って、水路の搬入口へ押しかけてたみたい。

 それで大暴れに巻き込まれて、そろって大ケガして、まだ入院中なのよ」


「……ん?

 『まだ入院中』って……」



もう春前だぞ。

かれこれ3ヶ月前じゃね、あの年始の事件(デカいワンちゃん大暴れ)。



(あれ、それって……。

 その『魔物大好きの下男(マニア)3人組』って、もしかして全治(・・)3ヶ月(・・・)以上?

 切り傷くらい半日で治る<回復薬(ポーション)>とかがある、医療技術なら前世ニッポン以上の、この異世界で?)



そんな事実に気づくと、ちょっと冷や汗。



(……もしかしてソイツら、死にかけるくらいの大ケガしてね?)



少なくとも、内蔵が2~3個ヤられるレベルの大変な事になってそう。

あちゃ~、と頭かかえちゃう。



「ついでで悪いけど、今日の残り分も作業(カタ)してくれる?

 終わったら、入り口の係員に言って。

 すぐに魔導三院(けんきゅうしょ)までの車両(くるま)都合(つごう)してくれるからっ」



キツい口調の女性事務員さんは、肩の荷が下りたとばかりに、笑顔で先に帰って行った。




── そのカツカツいうヒールの足音が完全に消えてから。



俺は、

── 『かぁー、つれーなー、でも仕方ねーなー』

── 『かぁー、女性のためだもんなぁー、男としてガンバるかー』

── 『かぁー、でもやっぱ危険で重労働は、つれーなー』

というイヤイヤな表情を解除。



「ブフォッ!

 こんなカンタン(・・・・)楽チン(・・・)業務で、危険手当もつくなんて!」



兄弟子(ニイちゃん)大歓喜(クソワロタ)



「うっひょひょ~!

 控え目にいって、超サイコォ~~!!」



もう、ルンルン♪なスキップが抑えられない。

そんなご機嫌で、片っ端からバケツに入った魔物エサを片して(・・・)いく。



「オラァッ、エサだ!

 ありがたく食え、クソ虫魔物っ!」



檻ひとつあたり数十kg(キロ)の、大量の生肉(エサ)をポンポン投げ込んでいく。



「── ああん!?

 ギチギチギチィ!(牙こすり威嚇)じゃねんだよ、オラァ!」



鉄格子(てつごうし)にガチガチ噛みつくような悪い子には、☆お仕置き(グーパン)

短時間(ショート)版パワーアップ【序の二段目:()し】の握り拳で、檻の奥の壁へと一直線(おホシさま)



「ヤッベ、これアレじゃね?

 ── 朗報、日頃の行いが聖者(ゴッド)すぎて釈尊(ブッダ)がボーナスくれた件について!!」



そんなハイテンションの高笑いしながら、手早くエサやりを終わらせる。



「── ん?

 この一番奥のデカい檻の中、なんで空なんだ……。

 でもさっき、たしかに魔物の気配がしてたような?」



(もしや、係員さんが連れ出していて、散歩中なんだろうか?)



少し判断に迷って、ちょっと首を(かし)げたが。

取りあえず、空の檻の中へ、エサの生肉だけ投げ込んでおいた。





▲ ▽ ▲ ▽



そんな感じの、楽勝お仕事(ミッション)を始めて2週間目。

労働の汗をぬぐい、気分良く背伸び。



「うぅ~ん。

 手袋してても生肉(くさ)くなる事以外は最高だな、この仕事っ」



先週のお給料日なんて、嬉しすぎて何回も明細を見ちゃう感じだった。



(さて、戻りの車両(クルマ)の手配待ちの間に、ちょっと『闘技場(コロシアム)』の探索でもすっかな?)



さすがに<帝都>目玉施設(ランドマーク)だけあって、建物内部はかなり立派。

しかも、関係者(スタッフ)オンリーな施設内部や特等席に入れるのだから、施設見学のしがいがある。



── そんなワケで今日はテクテク、魔物の檻の先に行ってみる。


角を曲がった突き当たりには、工事現場の鉄枠すけすけエレベーターみたいな昇降装置。

その脇にある階段を上ると、入場ゲートみたいな所に出た。

どうやら、魔物の搬出口らしい。


その先には『闘技場(コロシアム)』の競技スペースがある。

野球スタジアムで言えば、観客席に囲まれたメイン・グラウンドみたいな場所だ。


その地上階部分を歩いてみて、観客席の最上段席を見上げると、なかなかの迫力だ。

見た感じ、大きさは東京ドームと同じか、それ以上だ。



「おお、スゲー!

 この施設って、何万人くらい入るんだろ?」


『── ハッ、チビが!

 笑っていられるのも、今の内だっ』



ふと、キーン……ッとスピーカーの鳴り音(ハウリング)と共に、聞き慣れた悪態の声。

振り返れば、見知った顔。



「おお、ガビノ。

 お前も、武術大会の準備の手伝い?」



三白眼の少年が、スタジアム式観客席の一段下の、作業スペースみたいな場所に居た。

拡声器(マイク)みたいな<魔導具>(マジック・アイテム)が設置しているので、司会席みたいな物なのかもしれない。



(そういえば、魔導三院(けんきゅうしょ)どころか魔導学院(がっこう)の方も、『武術大会の裏方(スタッフ)』として駆り出されるんだったけ)



魔剣士No.1(ナンバーワン)を決める武術大会の本戦とかは、帝国国民の大人気娯楽イベント。

<副都>とか<聖都>(センダード)とかの大都市から、出場者の腕利き魔剣士や、見物客がツアー団体さんで押し寄せて、かなりの大混雑になるらしい。



『イヒヒィ~ッ、武闘大会なんて、お前には関係ねー!

 何故なら、ここで死ぬんだからな!!』


「……何言ってんの、お前?」



え、ちょっと気分がノッちゃって、悪役ごっこ?


この『闘技場(コロシアム)』って色々な仕掛けがあるみたい。

確かにちょっと、操作盤の前で『ロボットのオペレーターごっこ』とか()りたくなる気持ちは分かる。



(うんうん、男の子だもんなっ)



俺も高い塔とか登ったら

── 『見ろ、人がゴミのようだ!』

── 『旧約聖書にある天の火だ!』

とか有名悪役(ム●カ)名言(セリフ)を言いたくなっちゃうし。


そう理解を示し、腕組み(うなず)く(中二病(チュウニズム)の有識者しぐさ!)。


すると、なんかガコガコ機巧(ギミック)の作動音が聞こえてきた。



「おいおい……、マジで装置のボタン押しちゃったの?」



俺が出てきた方とは別の出入口(ゲート)から、ガシャーンと下からせり出してくる、小さめの檻。



── グルルルゥ……ッと、<樹上爪狼(ロングクロー)>が解き放たれた。





▲ ▽ ▲ ▽



「おいおい、魔物が出てきちゃったよ……」



俺もさすがに呆れて、ため息。


知り合いの三白眼(ガビノ)は『中二病(チュウニズム)』なごっこ遊びで操作盤いじくっていたら、本当に装置を作動させてしまったらしい。


多分、うっかり主電源でも入れちゃったんだろう。

あるいは、安全装置みたいな制御(ロック)が外れちゃったのか。



「ガビノ、お前……。

 魔物(コレ)、早くなんとかしないと、マジで怒られるぞ?」


「── ヒッヒッヒッヒィ!

 ちょっと強いからって調子に乗って、他人(ひと)の婚約者を()ったバツだ!」



魔導学院の三白眼少年は、ひきつったような声。

予想外の事態に動揺(テンパ)ったせいで、いまさら悪役ごっこが止められないんだろうか?


それにしては、何だか様子がおかしいが。



(しかし、この仕掛け(ギミック)からして。

 地下の魔物たちって、やっぱり『武術大会出場の魔剣士が戦わされる相手』ってパターンか?)



そういう演出というか、演目というか。

魔物すらほとんど見た事ない、安全地帯在住の<帝都>市民の皆さんに『魔剣士ってこんなに強いんだぞ!』と宣伝するための、やられ役(サンドバッグ)らしい。



── そんな事を考えている内に、グルルルゥ……ッと、<樹上爪狼(ロングクロー)>が警戒しながら横移動。



「しゃーねーなー……」



魔物の動きに気をつけながら、準備運動として肩をグルグル回したり、アキレス(けん)伸ばし。


俺は給餌(エサ)係を任されただけなんで、本来は関係ないんだが。

武術大会の準備お手伝いに来てた、魔導学院生徒さんのイタズラが、思いがけず大事(おおごと)になっちゃっただけだし。


とは言え、知り合いの失敗(ヤラカシ)を放置するのも、アレだ。



「まあ、脅威力2が1匹。

 殺さずに捕まえるくらい……」



すると、なんか三白眼少年(ヤラカシ・ボーイ)が口を挟んでくる。



『ヒィヒィヒィッ

 こんな魔物なんて、ワケないって思ってんだろ!?』



はい(イエス)もちろん(オフコース)


だからガビノ(おまえ)も、

── 『どうしよう……!?』

── 『大変な事になっちゃった、アワッ、アワワッ』

って、動揺(テンパ)らなくても良いよ?



『だが、残念だったな!

 お前の武器はここだぁ~!!』



なんか、俺愛用の素振り用・模造剣(ナマクラ)()げて見せてくる。



(あ、そう言えば……。

 生肉の血や汁で汚れないように、魚屋さん的な防水エプロンつけた時に、邪魔で外してたな。

 愛剣の模造剣(ラセツ丸)



防水加工のエプロンを脱ぐ時に、回収すればいいや、と思ってたんだが。

気を利かせて、持って来てくれたらしい。



(別に、そのまま置いていてくれてても、良かったのに……)



『欲しいか、コレがぁ!?

 欲しいよな、チビすけぇ~?

 そうだよなぁ、いくら有名流派のスゴ腕な魔剣士サマだって、武器がなきゃ何もできねーもんなぁ~!?』



うん?

なんか、心配されてる?



「いやいや、ガビノって。

 別に、このくらいのザコ魔物とか、素手でもっ」



アハハッ、心配性だな、コイツ。

そういえば思い出したけど、新年の<跳岳大狗>(デカいワンちゃん)の一件、結構ビビってたな。


日頃は態度と目つきが悪いくせに、意外と気が小さいんだな。



『武器さえなきゃ! お前がいくら強くても! ただの人間なんだよぉ!!

 わかったか、この調子のりチビすけ~~!!

 これが他人(ヒト)婚約者(オンナ)に手を出した、バツだぁぁ!!

 今から泣きわめきながら、魔物に切り刻まれるんだよ、お前はぁ!

 地獄を味わいながら俺に()び続けろぉ、寝取りクソ女装(オカマ)ヤローめぇ!!』



ガビノが、さっきから何か必死に言ってくる。


慌てて、大声で叫び過ぎなんだよ、お前。

お陰で、拡声器(マイク)が途中途中でキーン!と音割れして、言葉が半分くらいよく聞こえん。


まあ多分、『オイ、早くこっちに武器取りにこ~い!』って感じなんだろう。



(そんなに慌てなくても、別にいいのに……)



生意気言動のくせに、実はビビりらしい。

そんな知人を微笑ましく見てたら、横からビュン!と爪が高速で伸びてくる。



「おっと!」



回避と同時に、用意していたオリジナル魔法を自力詠唱(『チリン!』)

樹上爪狼(ロングクロー)>の飛びかかり&爪伸ばし攻撃を、肩にかついで一本背負い。


慣らし運転中の新・特殊技【序の三段目:(なが)し】の効果で、慣性とか運動エネルギーも制御してやる。

樹上爪狼(ロングクロー)>は、半径3mくらいの大きな()(えが)いて大回転。


そして、ベシン!と背中から砂のグラウンドに叩き付け。

勢いあまって、ボールみたいに跳ねる。



── ギャィイン!


『── うっそぉッ!? 何だよソレぇ!!』



平日午前の、閑散(かんさん)とした『闘技場(コロシアム)』のメイングラウンドで。

駄犬魔物(オオカミもどき)の悲鳴と、三白眼少年の驚き声が、重なって響いた。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様です。 >武器さえなきゃ云々 いやそれはむしろ、ピッコ○さんで例えるなら相手がわざわざ重いマントとターバンを外しに来てくれた→自ら塩を送るのと同じな気がするんだよなぁ…ロック…
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