145:重要、キャラデザ問題!
!作者注釈!
2023/07/07 前の話(144話)と構成の一部を変更。
念のため、前話後半をもう一回読んでおいてください。
俺、前世はニッポン人、名前はロック!(転生者あいさつ)
次の部屋のドアを開けようとした瞬間、ガチャリッと内側から開いた。
「── 衛兵の方ですか!?
よかった、助けてくださいっ」
飛び出してきたのは、キノコ髪型がやたら似合う美男子。
女性のバイトリーダーに笑顔を振りまくあたり、いかにもだ。
顔面偏差値を最大活用して、世間を上手く渡ってきた感がバシバシする。
(というか、このクソダサ髪型。
自分の美形っぷりに自信があるヤツ専用のファッションだよな……っ)
つまり、キモイ野郎が真似しようものなら、とても見てらんない事になる。
万が一許されるとしたら、お笑い芸人だけ。
そういう、美形ご披露みたいな物。
『見て見てー、ボクってこんなダサい髪型してても美形なんスよぉ?』
とかいう感じの、ウザい自虐風の自慢だ。
(うわ! ブッ■してぇ~~!)
そんな気分で、女性バイトリーダーとのやり取りを眺めている俺。
「士官学校を抜け出して、友達と呑みに来ていたら、急にこんな事にっ」
「そうですか、大変でした ── ねぇ!」
バイトリーダーが最後の『ねぇ!』で自力詠唱。
ドガン!と顔面向けて衝撃波魔法を不意打ち。
どうも彼女も、自虐風の美形アピール野郎に、イラッ☆としたみたい。
「おおぉっと、アブねーー!」
しかし、ムカつく事に、キノコ髪型は超人の運動神経で、後方回転な回避。
そうコイツ、実は魔剣士で【身体強化】を発動していた ──
── 背中をドアにくっつけていたから、魔法陣が隠されていたワケだ。
「ギャハハッ、失敗してんじゃねーか!」
「だっせー!」
「『次はオレにまかせろ』って言って、コレかよっ」
「じゃあ、次はオレの番な?」
薄暗い部屋の中では、応接室みたいなソファーに座ってた仲間が大爆笑。
キノコ髪型含めて男子5人全員が、同じような制服姿でダラケている。
そして、全員が魔法陣を背負っていた。
「……チッ。
士官学校の学生が、帝国を守る魔剣士の見習いたちが、敵国の工作員を手引きですか。
長年の平穏による腐敗は、嘆かわしいばかりですねっ」
バイトリーダーは、仮面の下で舌打ちしながら、そんな事をぼやく。
(── ……ん?
さっきの学生の、自虐風の自慢がウザくて、ツッコミ代わりに攻撃魔法を雑撃ちしたんじゃなかったのか……?)
一瞬、バイトリーダーの感性に親近感を感じたんだが、ぬか喜びだったらしい。
俺が軽く消沈していると、
「これだけ返り血の匂いをさせておいて、今さら騙そうなんて、ふざけていますね?
部下の仇、討たせてもらいますよっ」
▲ ▽ ▲ ▽
バイトリーダーは全身から怒気を滲ませ、ひとりでカツカツと応接間っぽい部屋の中に入っていく。
すると不意に、天井に張り付いていた伏兵が落下。
「権力のイヌめ! 死ねぇ~~!!」
不意打ちの落下斬撃は、ガン!と床材の石畳に弾かれた。
バイトリーダーは急に石畳に寝転がり、伏兵の着地した足下にくっついて首斬りをギリギリ回避。
「クッ、このっ」
伏兵のボウズ頭は<正剣>を逆手に握り直し、転倒追撃の突き刺し攻撃。
しかし、バイトリーダーは逆手刺突の<正剣>と入れ替わるように飛び起き、伏兵の側面へ移動。
「てめー!?」「── ……フッ!」
バイトリーダーが掌底を突き出す。
鋭い呼気に、ズン……ッ!と石畳を震わす踏み込みの音。
その達人の風格がある流れる動作は、大木槌の一撃を想像させる!
その掌底打は、『未強化』の人間だったら胃液を吐いてるような、悶絶級の威力。
しかし、バイトリーダーも、俺と同じで背中に魔法陣がない。
つまり、魔剣士ではない。
だから、超人である魔剣士には ──
── 特に防御の硬い【剛力型】には、簡単に片腕で防御される。
「ナメやがっ ── ゴフォ!」
<正剣>をもう片方の手で振り上げ、反撃しようとしたボウズ頭の学生が吹っ飛んだ。
打撃直後のズドン!という音に、わずかに『チリン!』という鈴の音が混じった。
(おおぉ~……っ
拳術打撃が防がれた保険に、衝撃波魔法を使うのか。
初めて見るタイプの戦闘方法だな……)
前世ニッポンのRPG的な分類をすれば、『殴り魔法使い』みたいな特殊な戦闘型なのだろう。
ちょっと感心しちゃう。
その腕前も。
(チラッと見ただけでも、半端ない精密動作。
俺のLv60剣術や、この前の『なんとか騎士』とかの卑怯技『カギ爪2刀流の連撃』でも、無手でさばきそうな拳術Lv。
もしや、拳術Lv70越え ── いや、もはや80近いのか?)
技量がLv70とか、腰痛時の剣帝みたいなモンだ。
さらに上のLv80とか、半分仙人みたいなモンだ。
(バイトリーダーって、無手の殴り合いなら、当流派の剣帝にも勝っちゃうんじゃね……?)
── あの、『抜群の才能と素質があって、さらに地獄のよう実戦をひとり数十年、心身と魂を削り上げた』当流派の最強無敵ジジイに!?
そんな想像に、ちょっと鳥肌。
剣術もそうだが、技量なんてLv50を境に、めっきり上がらなくなる。
ハッキリ言えば、そこから先は努力じゃどうにもならない、才能の領域みたいなモンだ。
技量Lv70とかLv80とか、才能あふれる人間が、半世紀くらい人生かけて、ようやく手が届く境地。
(まあ、才能がまるでない俺は、イカサマみたいな訓練でムリヤリ『剣術Lv60』まで上げたけど……)
凡人が普通に訓練したら『Lv50 → 60』だけでも、数十年かかってもおかしくない。
(剣帝流の超天才児も、最近ようやく剣術Lv55近くに上達してきたくらいだし……)
となると、バイトリーダーはよっぽどの超々天才か。
あるいは、仮面の下の素顔が、本当に仙人みたいな老女ちゃんでもおかしくない。
(声の感じからしたら、20代前半みたいな若々しさだけど。
本当に前世世界の女仙人(お伽噺)みたいに若返ってたりして?)
── え、スゴ腕な老婆が、若返る?
豪■寺の一族かな?
キャラデザインはムラタレン■かな?
▲ ▽ ▲ ▽
俺がそんな事を考えていると、キノコ髪型が舌打ち。
「バカヤロウ、不意打ちの時に叫ぶからだっ」
するとバイトリーダーは失笑。
「いいえ、貴方たちのお陰ですよ。
魔剣士は魔物に対抗するため、3人組が基本。
まさに教科書どおりの布陣、5人だと1人足りません。
さすがは士官学校の学生さん達です、成績優秀ですばらしいですね?」
「……ハッ。
まあな、俺たちは特別に、アニキが『入れ墨』を入れてくれたからよっ」
1人がそう言うと、一斉に不良っぽい男子学生5人が腕まくり。
この前のヤツが見せつけてきた『炎マーク』と同じデザインの、『白っぽい入れ墨』を見せつけてくる。
「知ってっか? コイツは『自由の紋章』なんだ」
「奴隷の身分から、実力を認めさせ、自由を手に入れた『無敵の紋章』!」
「テメーら権力にシッポ振ってるダセー連中には、一生手に入らねー『自由の紋章』サッ」
「オレたちはアニキと一緒に、この腐った帝国をブッ壊す!」
「皇帝も、貴族も、<帝国八流派>も! くだらねーモン全部燃やしちまう『白い炎』だッ!」
(うわぁ~~っ、革命の闘士さんだ、カッコイイなぁー(笑)
うわぁ~~っ、お揃いの『入れ墨』なんて、反社会勢力の準構成員みたいでアコガれちゃうなー(呆))
そんな白々した気持ちで眺めていると、横からも失笑の吐息。
バイトリーダーが一歩前に出る。
「……貴方たち、入れ墨が『本当はなんなのか』知らないんですか?」
「あん……?」
「『炎罪の民』の『烙印』は、3種類が確認されています。
母体となる集団、北大陸西方に居住する民族の証明、集う火として『赤の炎』。
神王国の工作員としての証明、飛散した火の粉として『金の炎』。
── この2種類は、特殊な色素を使う事で、強く擦らなければ浮かび上がらないという特徴があります。
当然ですよね、彼らは出自を隠したいのですから。
故郷の帝国でも、移民先の神王国でも、寄港の藩王国でも、『炎罪の民』だなんて知られたくはない」
「……で?」
「では、その浮かび上がらない、隠せない『烙印』とは何か。
『白い炎』なんかじゃない、それ燃えた後の灰の色ですよ。
燃え上がった炎の残滓、煙幕がわりに投げ捨てられる燃えカス、それが『灰の烙印』。
貴方たちは、アニキいう人物を慕っているようですが、結局は、舌のよく回る詐欺師にいいようにされてる捨て駒。
それが貴方たちの、裏切りの代価ですよ」
バイトリーダーは、失笑しながら告げる。
『革命軍に仲間入りと思ったら、実は使い捨てだった!?』
という感じなのね、なるほど……
さすがは『正義の革命軍さん(笑)』、異世界バージョンでもロクな事しねーな(呆)。
(前世ニッポンの『うっかり共産国で美女とご宿泊したら実はスパイで、出世した後に写真や映像でおどされる』って噂を思い出すな……
いや、内容からすると『CI▲が敵国を崩壊させるため反政府ゲリラ育ててる』みたいな話なのか?)
どっちにせよ、敵国の不良学生をスカウトして即戦力に育成しても、最後まで面倒みるワケねーよな。
むしろ『敵国の裏切り者を連れて帰ってどうするんだ?』って感じだろうし、どこかで『処分』されるのは時間の問題……。
(まあ、理想に燃える学生さん達には『衝撃の事実!?』という感じのはず……
怒り狂うか、まるで信じないか、反応は二択だろうな)
そんなワケで、一応、激昂された時の迎撃準備しておく。
── しかし、相手の反応は、なんだかイマイチ。
怒るワケでも、笑い飛ばすワケでもない。
キノコ髪型が目配りすると、他4人も苦笑いしながら立ち上がった。
「……フ~ン、で、なんだっていうんだ?」
「芸人みたいな仮面かぶって、小難しい事をブツブツ言いやがって、なんなんだよ?」
「実家の連中や教官どもみたいに、オレをコマ扱いしやがって……チッ、イヤになるぜっ」
「そんな風だから滅ぶんだよ、この間違った帝国はなっ」
「しかし、初対面のオンナから『カス呼ばわり』はムカつくなっ」
「オレたちを裏切り者って言うのは仕方ねーが、アニキを悪く言うのは許せねーっ」
その気にしてないような、どこか余裕がある態度に、俺は『ンン~?』と首を傾げて ──
── ある可能性に気付いて、ちょっとガックリきた。
そして、呆れながらバイトリーダーへ進言する。
「── あ~……、ちょっといい、バイトリーダー?」
「なんです?」
「バカ相手には『キミは実にバカだな!』とハッキリ言ってやらないと、解んないみたいよ?
ホントに頭悪いから、ちょっと難しい言葉とか、持って回った言い方をすると、なんか勘違いしてるっぽいよ?」
「……は?」
「── というワケでぇ~~!
バイトリーダーが奇襲くらわなかったのは、お前らがバカなせいでしたぁ~!
あとお前らはバカすぎて、敵にダマされてるだけなんですぅ~!
バーカ、バーカ!」
俺は手本として、舌をベロベロしながら叫ぶ。
「なに言ってんだ、このガキ!」
「アニキがオレをダマすワケねーだろ!」
「バカにしてんのか!」
「上等だ、ジゴクみせてやる!」
「2人ともブッコロス!」
士官学校の、どうも落ちこぼれらしい不良学生5人は、ようやく怒りに火が点いた。
それを見て、バイトリーダーは2度3度うなづく。
「……なるほど、挑発に引っかからなかったのは、話が理解できていなかっただけですか。
相手の知能に合わせるなら、小さな子供相手くらいの、解りやすい話をしないといけなかったのですね……
……ひとつ勉強になりました」
▲ ▽ ▲ ▽
怒りのまま、無造作に突っ込んでくる、士官学校の不良さんが2人。
まずは、バイトリーダーが狙われる。
「魔法は使わせねぇよ!」「<四環許し>が『未強化』に負けるかっ」
片方は、壁を蹴って側面から飛んでくる、足下狙いの低空横斬り。
もう片方は、天井まで跳ね上がった落下斬撃。
「甘いっ」
バイトリーダーは空中を舞うような体術でかわしつつ、<正剣>2刃を両手の手甲の甲でいなす。
すると、挟み撃ちしようとした不良2人は、勢いのまま仲間同士で衝突。
「── ガッ」「クソぉッ」
敵2人は、男同士で抱き合うような体勢で転がる。
バイトリーダーは容赦なく下級魔法を自力詠唱、衝撃波がズドン!とまとめて追撃。
あっと言う間に、2人制圧。
バイトリーダー1人で、もう戦果3人だ。
── なので、残りは俺が引き受ける事にする。
「チィッ」「だったら、魔法だっ」「くらえっ」
残り3人の学生が壁際に固まり、<正剣>を構えて柄をイジり始めた。
魔法攻撃の一斉発射だろう。
「── チ……ッ」
少し迷って、室外に退避するバイトリーダー。
それを入れ替わりに、俺が突進。
「バカが!」「くたばれ!」「死ね!」
『カン!』×3人の機巧発動で一斉に放たれる、衝撃波魔法【撃衝角】 ──
── それを、自力詠唱×3点発動(両手と舌先)の【撃衝角】で迎え撃つ。
ズドドドン!と下級の衝撃波6個がぶつかり合い、全て相殺する大爆音!
「── やったか!」
しかも、暗い室内なので、勘違いして負けフラグを立てるバカまで居る始末。
「── 【秘剣・木枯】っ」
第2の必殺技を解放。
『チリン!』と鳴ると同時に、秒間20発の高速連撃。
壁際で逃げ場のないバカ学生3人まとめて、ズドドドド……!とタコ殴り。
「ガァ……!?」「ゴォ……ッ」「な、ギャァ……!」
どうも1番使い手だったらしいキノコ髪型は、とっさに<正剣>で迎撃しようとしたらしい。
だが、振り上げた剣が背後の壁に当たって体勢を崩すという、クソダサ行動のまま必殺技に沈んだ。
(イヤァッホォ~!
ウザいイケメンに赤っ恥かかせてやったぜ~~!)
デュフデュフッ、コポォ……ッ
これにはモテない女顔男児も気分ルンルンですゼェ~?(粘着笑顔)
▲ ▽ ▲ ▽
とっさに室外に退避したバイトリーダーが、戻ってきて呆れ声。
「……いま……なにか……?
貴方、おかしな魔法の使い方しませんでした?」
うん?
おかしな魔法の使い方?
── もしかして: 必殺技の事?
「魔剣士になれなかった俺なりの、工夫だよ工夫」
「いや……、三重詠唱が『工夫』のひと言で済む問題ですか……?」
なんか壁に向かって、ひとりブツブツ言っているバイトリーダー。
(この人も、なんか独り言が多いよな……
職場の室長みたいに、過去に何かあって孤立なのかな?)
そう思いながらも、腰の袋から小瓶を1本抜いて、投げ渡す。
「── それよりバイトリーダー、ホイっ」
「……何です、これ?」
仮面の小柄女性は、壁を向いたままろくに振り返らず、気配だけで小瓶をキャッチ。
まさに仙人みたいな超絶反応だ。
「安物の<回復薬>。
さすがに生爪が割れたままじゃ、やりにくいだろ?」
「……鮫皮の防刃手袋の下を、透視でもできるんですか、貴方は?」
何故か、振り返って、ジッと見てくる。
仮面だから表情が解らないけど、何となく睨まれているような気配。
「いやいや……っ
そんなに魔法発動の起点を肉体ギリギリにしたら、どんな達人でもケガするだろ?」
俺もその手のポカを何回もやったから、気をつかっただけなのに。
(俺って、バイトリーダーに嫌われてるんだろうな……
なんか、やたら態度がキツいし……)
「……ン……ゥンっ」
リアル女仙人疑惑のバイトリーダーが、壁の方を向いて仮面をずらし、安物<回復薬>(混ぜ物なし!どノーマル)を一気飲み。
うっすら見える横顔をチラ見していると、衝撃の事実が判明。
(なんかスゴい艶っぽいなタラコ唇してんなぁ~。
意外と『清楚系』よりも『妖艶系』寄りだよな……
アレ……、もしや人物造形ムラタ氏ではない?
── ひょっとしたら、テラダ御大かっ!?)
マジかよ!?
バーチャ2かよ!
それもアツいな!!
(あるいは、ツカサ■ュンとか、シンキ■ウとかぁ……っ!?)
前世ニッポンでは、業務用の販促ポスターをゲーセンからもらって(店舗によっては使用済みポスターを『お持ち帰り自由』って丸めて置いてくれてた)、部屋の天井にいっぱい張ってたんだよなぁ~。
── ちなみに前世の俺は、コタニ■モユキが『最推し』でした。