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異世界カクゲーSPIRIT'sサイキョー伝説[↓↘→+s] ~知ってる?異世界って格ゲー無いんだぜ(絶望)……ハッ!無いなら作ればいいんじゃね(閃き)~  作者: 宮間
Round 7:副都ステージ

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144/236

144:バイト(即金、短期、高額、誰でも)

俺、前世はニッポン人、名前はロック!(転生者あいさつ)




つい先日から、『カネなし法一(ほういち)』になってしまった兄弟子です。


ほら、アレだ、前世ニッポンで昔居たらしい

『ギオンショウジャもカネがねえ! オラこんな京都(ミヤコ)イヤだ~! オラこんな平家(セイジ)イヤだ~!』

とかいう批判(ディスり)ラップの弾き語り(ビワほうし)



つまり、現在そんな感じです。

士官学校の寄付金集め(チャリティ)合法賭博(ギャンブル)全額投入(ぜんツッパ)の結果は、惨敗(ざんぱい)でした。


愚かな兄弟子、まことに反省至極(しごく)



(しかし、マジでこのままじゃ年末が()せない気配が濃厚っ

 ── まさか異世界まできて、月末の給料日まで節約生活するハメになるとは!)



下宿先である魔導師学園の男子寮が、朝夕の食事付き(調理手伝いのまかない(・・・・))だったのが、不幸中の(さいわ)い。

でなきゃ兄弟子(にいちゃん)、餓死してたかもっ



やっぱ、大穴(オオアナ)1点()りはダメだな!(当たり前)



(── よくよく考えてみたら、『確率1.5%』とか絶対ムリじゃねえか!

 携帯ゲーム(ソシャゲ)の単発ガチャで、いきなり『SSR(大当たり)』引くようなもんじゃねーか!)



あの時の俺は、大穴10倍に目がくらんで、どうかしてたっ

『ウヒョヒョ、金貨が10倍に!?』

じゃねーんだよ、おバカ!



(ク……ッ、これも平家の亡霊の(たた)りか!?)



そんな事を思いながら、パン屋でもらったパンの耳とかモソモソかじる、最近のお昼ご飯。

『よーしパパ、年末でボーナス出たばかりだから、今日のお昼はフンパツしちゃうぞー!』みたいな昼間っから肉食ってるオッサンに、うっかり呪詛(ノロイ)を飛ばしそうになるくらい。



(── クソが!

 いまどき『一杯のかけそば』みてーな、年末の辛気(しんき)くせーお涙頂戴(なみだちょうだい)(ばなし)とか、流行(はや)らねーんだよ!)



今にみていろ、平家の亡霊どもめ!

ハンニャシンキョウは、全てを解決するっ!!(キリッ)


── これこそ、我らが仏教徒(ブッディズム)の究極最終奥義『タ・リキ・ホンガーン』!!

(妄想覚醒技、キャラ選択画面で()()()()()()()()して[B]・[A]でキャラ選択(ティロリロリン♪)



そんな感じで、うろ覚えのハンニャシンキョウを唱えながら、帝国騎士団『第四』・監査部調査室(スパイぶもん)の隠れ家の周りを托鉢(たくはつ)(坊さんが寄付をもらうアレ!)にウロウロしてたら、イヤがられた。



(前世ニッポンの、年末の名物行事だぞ!?

 恵まれない可哀想(かわいそう)な兄弟子に愛の手を、だぞ!?

 これだから異世界(さいきん)政府秘密組織(わかいヤツ)はダメなんだよぉっ!)



そんなイラッ☆と気分になったので、夜にチリンチリン鈴鳴らしながら周囲をウロウロ、ウロウロ。



「ハンニャ~ナントカ~、カネくれカネくれぇ~!(お経特有の語尾伸ばし)

 ナンジ~ウンチャラ~、カネくれカネくれぇ~~、ェィッ!(ナゾ気合い)」



近所迷惑だと、超イヤがられた。



「そんなに元気がありあまっているなら、ちょっと暴れておいでっ」



そんな感じで『夜間の肉体労働で短期でガッポリ』な高額バイトを紹介してもらえた。



(── 超ラッキー!

 いつかどっかで見たような白髪のバアさん、マジありがとう!)



あれは、先月だったか、先々月だったか。

銭湯(フロ)帰りに、ケガした妹弟子の文通相手(エルちゃん)を見付けて助けた甲斐(かい)があった。

『なんとかの騎士(ナイト)』とかいう敵国の工作員(スパイ)だか暗殺者(アサシン)だかも、しっかり引き取ってくれたし。



── そんなワケで、肉体労働アルバイト的に明るく元気に、ご挨拶(あいさつ)



「チッス、チーッス!

 今日はよろしくお願いしま~~す!

 自分(ジブン)、おカネのタメに、超がんばりま~す」


「……これ、……が?

 本当に……あの、『巨獣(きょじゅう)殺し』……?

 ……ありえない、……強者?」



変な仮面かぶった女性バイトリーダーに、『なんか変なヤツが来た!?』みたいな反応をされてしまった。





▲ ▽ ▲ ▽



仮面の女性バイトリーダー、10分くらいブツブツ何か言ってた。

慣れない宴会の仕切り(・・・)を任された、若手幹事(かんじ)みたい。



「── い、色々、理解できない事が、ありますが……っ」



そんな前置きで、バイト『作業』の説明開始。

念入りな事に、図面と持って来て、色々細かな指示をされる。



(うぅ~ん、現場にイマイチ慣れてない感じがする。

 この女性バイトリーダー、ガチで新任(しんにん)さんみたい……)



なんだか『マニュアル通りに段取り踏まないと怖くて進められない』というくらいのピリピリ雰囲気を感じる。


そんな、超念入りな仕切り(・・・)で、俺含めて30人ぐらいの人員(スタッフ)に、細かく役割分担を言われる。

だが俺とか、新顔バイトなせいなのか、あんまり大した『役割』が振られない。

むしろ、超・かんたん『作業』。



(あぁ~ね、いわゆるひとつの『いつものヤツ』か。

 俺、最近1~2ヶ月くらい、週2か週3でそんな事やってるから、余裕ヨユー!)



個人的には、『え!そんな事でおカネもらっちゃっていいの!?』とさえ思うくらい。



(まあ、軍属スパイとか後ろ暗い業界らしいので、なかなか表社会の人(ふつうのひと)(やと)えないんだろうなぁ……

 いやむしろ、機密保持というか口止め料とか入っているなら、妥当な金額なのか?)



そんな感じで、20分くらいたっぷり時間をかけて打ち合わせ(ミーティング)が終わる。


すると、バイトリーダーが声をかけてくる。

打ち合わせの途中で、俺のあくびを(にら)み付けていたので、『やっべ!』と背筋を伸ばす。



「ところで、貴方……

 まさか、そのままの格好で行くつもりですか?」


「え、おかしい……?」



俺的には、いつもの格好。

白い式服を上着代わりに、下は剣術修行用のスエットパンツ。



「……いや、顔を見られて大丈夫ですか、と訊いているんですが?」


「あ、あぁ……そっちか」



ポケットをあさると、昼飯用にパンを買った時の紙袋が出てくる。

それにボスボスと(のぞ)き穴をあけて、パスゥ……ッと装着。



「── こんなんで、どうッスか?」



<帝都>の夜に紙袋仮面怪人(ファウ■トせんせい)再臨(さいりん)!!

そんな感じで、親指・人差し指・小指の3本立てた、ナゾ手つき(サイン)でキメてみる。


しかし、そんな格好いいポーズ(キメッ!)☆を台無しにするように、グゥ~~……ッとお腹が鳴っちゃう。

紙袋からプ~ンと小麦の良い香りがするから、仕方ないね!



「……あぁ……、もう……いいです。

 ……好きなように、やってください……」



女性バイトリーダーは、仮面をかぶった頭を押さえて、離れていった。





▲ ▽ ▲ ▽



「── というワケで、ドォ~~ン!」



口で言いながらも、身体強化(パワーアップ)のオリジナル魔法【(じょ)の二段目:()し】で、錆びた鉄扉を蹴り開ける。



「こんばんわ~~、()()りのお届けでぇ~~す!

 サインかハンコお願いしま~~す!!」


「なんだ、テメーはっ!」



そして、隠れ家(すあな)から飛び出てくる黒服(フナムシ)を、愛剣・模造剣(ラセツ丸)でバコーン!と殴り倒す。



「よっしゃ、まずは1匹!

 今日はいつもより気合い入れて清掃活動(ゴミそうじ)すっかなっ」



いつもの無償奉仕作業(ボランティア)と同じ『作業』で破格の報酬(バイト代)もらえるとか……っ

(ひか)え目に言って、最・高ッ(サイッコォ~)



(やっぱ、カミ様とかホトケ様ってのは、日頃の行いを見てるんだなっ

 うん、うん……っ

 南無三(サンキューブッダ)、いつもより多めにお祈りしときますね?)



そんなルンルンで裏組織(ヤクザもの)の隠れ家に、正面突入。

すると、後ろからシュバババ!とバイトリーダーが走って来て、紙袋仮面の上から耳とか引っ張られる。



「── あ・な・た! 正気ですかぁぁぁぁぁ!!?」



えぇ~、急に怒鳴ってくるじゃん……?



「え、だって、突入のタイミングはまかせるって……っ」


「言いましたよ、言いましたけどね!

 だからって! なんで街中で! しかも正面突入してるんですかぁぁぁぁ!!」



えぇ~、さっき好きなようにやって良いって言ったじゃん……?



「痛いっ、イタイっ、いたい!って!」



やめてヤメテ!

そんな力で耳ひっぱられた、本当に『耳なし法一(ほういち)』になっちゃうっ

平家の亡霊(あらくれモノ)にヒドイ事されたビワ法師みたいになっちゃううぅ!!



── 『官警(サツ)だ! 官警(サツ)の押し入りだ!』

── 『書類を燃やせ! 時間をかせげっ』

── 『“顧客(ゲスト)”を裏から逃がすっ、それまで食い止めろっ』



雑居ビルの中から、強面(ヤクザもの)のドスのきいたザワザワ声が聞こえてくる。

ああ、これ、勢いのまま一気に畳みかけるのに、失敗したパータンっすね。



(誰かさんが、急に邪魔するからさー……)



そんな目で見ると、逆に怒鳴られる。



「── ほらぁぁ!

 ああ、もう! せっかくの下準備がぁ!!」


「……いや、コレって、バイトリーダーが俺を捕まえて、大声を上げたからじゃない?」


「何ですかぁ! 何か言いましたかぁ!?」


「……もう、いいから、耳から手を離してよ?」


「ああ! もおおお!!」



理不尽(りふじん)に怒られ、トホホな気分。

ああぁ~、せっかくの労働意欲が(しぼ)んじゃうなぁ~……。



「もういいや……

 適当に終わらせて、さっさと帰ろう……」



人差し指の先に小さな<法輪(リング)>を作って、自力詠唱(『チリン!』)

何かと便利、【遠隔発動(ブレイク)】だ。


その途端、



── 『ギャァァ!』

── 『足が、足が、あしがぁぁ!』

── 『ヒィ、ヒィイイ!』

── 『何が刺さった、ガラスの破片か、いや違う!?』

── 『なんだ、何が起きたっ』

── 『クソぉ、官警(サツ)ども、魔導兵器かよ!?』

── 『街中でメチャクチャしやがるっ』



悲鳴と困惑の絶叫が、隠れ家である5階建て雑居ビルの中から響いてくる。



「な、な、何をしたの……?」



バイトリーダーの驚きの声に、面倒だと思いながらも、一応振り返って答える。



「ん~……、新技の練習?

 【秘剣・陰牢(かげろう)参ノ太刀(さんのたち)夕陰(ゆうかげ)】 ── って言っても解らないか……。

 脱出口になりそうな所に、オリジナル魔法で設置罠(トラップ)仕掛(しか)けて、一斉発動させただけ。

 ── ズド~ン!って」

(※格闘ゲームでいえば ↙タメ後↘↙↗+[K] 画面端から横殴りの雨的に飛んでくる感じ)



小ぶりなナイフくらいの『見えない刃(カゲロウ)』が30本、ズガガガガ……ッ!と斜め45度に降ってくる設置罠(トラップ)だ。

大きな窓とか裏口とか、8カ所くらい仕掛けていたのを、雑に発動(ブッパ)



(初の実戦使用だが、今のところ大きな不具合(ふぐあい)もなさそう。

 対人の制圧技としては、上々な性能かな?

 ……まあ威力が(・・・)弱すぎて(・・・・)、魔物退治には使えそうにない技だけどね……)



よほど当たり所が悪くない限り、千枚通し(アイスピック)で刺した程度の軽傷(キズ)

だから(・・・)、遠慮なく、容赦なく、魔法斬撃の【断ち】が使える。



(ここ1~2ヶ月ほど、『未強化(なまみ)』で一般人(魔剣士以外)裏社会(ヤクザもの)(ボコ)ってて気付いたんだが。

 どうも、剣帝流(ウチ)の『人殺しNG制限(リミッター)』って、殺す気がないなら発動しないみたいね?)



つまり『手足を切り落とさない程度』の小さな(・・・)ケガ(・・)させるなら、【序の一段目:()ち】が使える事に気づいたワケだ。


これが、最近ちょこちょこ暗殺者とか工作員(スパイ)とかと斬り合ったせいで、精神的な『人殺しNG制限(リミッター)』が(ゆる)んでいるのか。

あるいは、元々そうだったのか。

どっちか、今ひとつ解らないんだけど。



── まあ、そんなワケで『非殺傷(・・・)で広範囲制圧な必殺技(・・・)』という『矛盾(むじゅん)(かたまり)』が、もうちょっとで完成しそうなワケだ。


でも、妹弟子との模擬戦(てあわせ)で使ったところで、多分引っかからないので、無駄な手札を増やした気もする。



(結局は、だ。

 初期(無印)【秘剣・陰牢】(設置型斬撃)が完成度高いから、発展型(別バージョン)(つく)りづらいんだよなぁ……)



そんな贅沢(ぜいたく)な悩みはさておき、脳内を術式開発から戦闘へ切り替える。



「脱出口に設置罠(トラップ)を仕掛けて、逃げ出す敵を一網打尽(いちもうだじん) ──

 ── そうやって楽する(・・・)作戦だったんだが……」



最初に考えてた手順とは、逆になってしまった。



(── まあ、仕方ない(しゃーない)、切り替えていけっ)



心の中で自分に気合いを入れ、現状にあわせて手順を組み直す。



「中の連中もビビって、しばらく脱出口に近寄らないだろうから、突入して殴り倒すか……っ」



── 結局は作戦の細かな事を伝え忘れた自分が悪い、というか。

── 報告(ホウ)連絡(レン)相談(ソウ)をサボったせいだな、と自分で反省。



(フゥ……、ちょっと浮かれると、いっつもこう(・・)なるよな、俺って……)



どうにも進歩が足りない自分自身に、呆れのため息が出た。



「……バ、バカげている……ぅっ」



バイトリーダー、仮面かぶってるから表情がわかんないけど。

確実に、呆れ果てられてた。





▲ ▽ ▲ ▽



さっき雑撃ち(ブッパ)した、新技(仮)【陰牢(かげろう)】の『参』(散弾攻撃)


なんか予想以上に裏社会(ヤクザもの)を負傷させたらしく、他の人員(スタッフ)が予定変更して回収中らしい。


で、俺の方は、商業区域の5階建て雑居ビルに乗り込み中。

愛剣・模造剣(ラセツ丸)を振り回し、出てくるヤツをボコスカ殴り倒す単純作業。



── 『なんだ、コイツはぁ~~!』

── 『白い魔導師の服に、素振り用の鉄剣!?』

── 『まさか例の、海港関所(シーゲート)の白い死神(しにがみ)ぃ!?』

── 『ひぃいっ、間違いねぇ、“毒蛇(マムシ)のダンカン”のケツ持ち(バック)だぁっ』

── 『黒蛇会も、青鮫会も、赤猫会も、白鷲会も、全部ツブした倉庫街の地上(じあ)げ屋!?』

── 『そんなバケモンに勝てるかよぉっ』

── 『こ、殺されるぅっ』



何かワーワー言ってるけど、基本的に聞き流し。

最近は、強面(ヤクザもの)の悲鳴や叫び声に慣れすぎて、耳に入っても内容が頭に残らない。



(……『ワ■ワニパニック』ならぬ、『黒服(フナムシ)パニック』よなぁー)



あまりに単純作業過ぎて、あくびまで出ちゃう。



「あ、貴方……っ

 東区の海港関所(シーゲート)で、いったい何をしでかした(・・・・・)んですか?」



俺がひとりズンズン進んでいると、後ろの方から呆れの声が飛んでくる。

後ろを着いてきながら、なんか色々指示出したりチョロチョロしているバイトリーダーから、『どういう事?』と問いただされたワケだ。



「いや、別に、特に何も……?」



頭脳(オツム)弱くて、クソいい加減な裏社会(ヤクザもの)の話なんて、マトモに聞かんでくれ。

俺とか、最近、別に『裏社会退治(ゴミそうじ)』くらいしか、した覚えがないし。


変なあだ名を付けられる覚えなんて、別に…… ──



(── ん、『シーゲート』『しでかす』?)



何か、遠く薄れかかった記憶が、ちょっと引っかかる。



(……シー●ート社……外付けHDD(ハードディスク)……装置制御(ファームウエア)……会社の重要データ……読み取り不能……

 ……ウッ、アタマが……っ!?)



何か思い出してはイケない事が、脳裏(のうり)(よみがえ)りかける。

なので、ちょっと頭を振ってリセット。


そして、気分転換に思いっ切りバッティング!



「── どりゃぁ、()ねええ、クソ上司がぁぁ!!

 データのバックアップに問題が出たの、俺のせいじゃ無いって言ってんだろうがっ

 誰だよ、会社の備品に海外メーカーの無保証安価品(バルクひん)とか買ってきた、大バカ野郎は!?」



【序の三段目:(はら)い】で野球素振り風に吹っ飛ばした木製イスが、狭い廊下を跳ね回る。

そして、ちょっと先の曲がり角に待ち構えていたバカ2人を、死角から強襲。



「うぎゃっ」「なんだっ」



慌てて出てきた黒服(フナムシ)に、ゴスン!ゴスン!と脳天撃ち(コンバンワ)



「── な……っ、待ち伏せを、あっさり!?

 わたしが(・・・・)忠告する(・・・・)前に(・・)、既に察知していた?

 いくら武術の達人とはいえ、ここまで正確に壁の向こうの気配が読めるものなの……?」



(いや、コレって気配を読む、いわゆる『魔力感知(サードアイ)』じゃなくて。

 オリジナル魔法【序の四段目:風鈴眼(ふうりんがん)】の魔力センサーなんだよなぁ~)



いちいち説明する義理もないので、心の中にとどめておく。

術式の中核(コア)部分からすれば、剣帝流(ウチ)の秘伝的な身体強化魔法【五行剣:(かぜ)】だからね。

あまり、見せびらかすのも問題なのかな、と今さらながらに思っていたりする。



── 魔力操作オンチの赤毛少女(メグちゃん)とか、つい同情心(ナカマいしき)から1個お手製<魔導具>(マジック・アイテム)あげちゃったけどね。



(そういえば、『魔力感知(サードアイ)』って言えば、赤毛少女(メグちゃん)の魔力操作が、予想よりも上達が早いよな。

 さすがは、腐っても魔導の世界的名家<四彩(しさい)(かばね)>直系ってところか?

 そろそろ、次の訓練内容を考えてやらないとな……)



ここ2ヶ月くらい、朝一で魔法特訓に付き合っている落ちこぼれ仲間(メグちゃん)の事が、頭のすみにチラついた。



「── それこそ<翡翠領(グリンストン)>のような危険地帯で、凶悪な魔物と死闘を繰り返す……

 そんな桁外(けたはず)れの荒行(あらぎょう)練武(れんぶ)を積み上げれば、この(・・)妖精の魔眼(グラムサイト)()匹敵する(・・・・)第三の目(サードアイ)』が開眼する、とでも言うの……?」



後ろの方でバイトリーダーが、また小声でなんかブツブツ言っている。



「………………」



そろそろソレ、ホントにヤメて?


バイトリーダーって気配消すの上手いから、ジ~ィッと視線とボソボソ声が、ずっと背後に()いてくる感じだし。

なんかホントに『平家の亡霊が憑いてる(ストーキング)』みたいな感じがして、時々ゾクっとする。


!作者注釈!


2023/07/04 妄想覚醒技『タ・リキ・ホンガーン』のコマンドを変更

という誰にとってもどうでもいい修正


2023/07/07 次の話(145話)と構成の一部を変更。最後に2千文字くらい追加。


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