表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界カクゲーSPIRIT'sサイキョー伝説[↓↘→+s] ~知ってる?異世界って格ゲー無いんだぜ(絶望)……ハッ!無いなら作ればいいんじゃね(閃き)~  作者: 宮間
Round 6:帝都ステージ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

135/236

135:不可触

俺、前世はニッポン人、名前はロック!(転生者あいさつ)




── 【悲報】妹ちゃんの文通相手(ペンパル)を助けたら、強敵(ヤバそう)な大男が出てきた件について【大ピンチ】



体格からして、さっきのザコ黒装束とは格が違う。

身長190cmで体重100kg以上の、逆三角の体型。


前世ニッポンで言うなら『アメコミ・ヒーローかよ!?』という感じの、ガッチリ筋肉男(マッチョ)


コイツも覆面(マスク)のせいか、声がくぐもって(・・・・・)聴き取りにくい。



『いやー、すまん。

 不意打ちして、悪かったな』



背後から襲撃してきた敵が、急に謝ってきた。


馴れ馴れしい声だが、ピリピリした空気感は緩んでいない。

むしろ、脳の中の危険信号が、さらに激しく鳴っている感じ。



『武人なら、まずは自己紹介すべきだよな?』



新手の黒装束黒覆面の大男は、しゃべりながら捕縛された仲間の頭を掴む。



『こういうもんだよ、俺は……っ』



笑う様な、ささやき。

途端に、ポーンッと黒覆面の頭が飛んだ。



「── ……はぁっ!?」



無造作な動きを見て、思わず変な声が出た。


新手の大男が、拘束された仲間を鉤爪で斬首(・・・・・)したのだ。



── ゴトン……ゴロゴロゴロ……ゴツン、近くをボーリングの玉のように転がっていく。

噴き出す血液の圧力で40~50センチ舞い上がった、生首が。



「………………」



さらに、ヒュ・ヒュ・ヒュ・ヒュ・ヒュンと、風切り音が5回連続した。

まるで、鎖付き棍棒(トンファー)でも振り回したような、軽快な音。


それで、シュポポポポンと、生首が5個増えて、計6個転がった。



「……いや、いやいやっ。

 ビール(びん)(せん)()き曲芸じゃ、ねーんだぞ……?」



あまりにバカバカしい光景過ぎて、思わず苦笑いすら出る。


敵の腕には、黄金色の三本爪(・・・)の武器。



あんな物(・・・・)で、人体が寸断できるのかよ……」



3枚刃の鉤爪となれば、同時に3本の剣で斬りつけているような物。


つまり、斬る時の抵抗も3倍。

必要な力も3倍。


さらに腕甲から(・・・・)生えた(・・・)鉤爪(・・)という形状からして、手首が(・・・)使えない(・・・・)のは明らか。


剣士は剣を、肩・肘・手首の3関節を使って加速させている。

それに対して、この大男は肩・肘の2関節だけで、同等以上の速度を出している事になる。


剛力(パワー)俊敏(スピード)も、並の魔剣士を数倍してお釣りがくる(・・・・・・)

さっきの<巴環許し(中級魔剣士)>くらい敵スパイ連中なんて、お話にも(・・・・)ならない(・・・・)


基礎能力からして、まったく別次元。



「なんだ、このバケモン……。

 ……本当に人間かよ?」



緊張と緊迫で、ゴクリとノドが鳴る。


まるで『平和な街中で魔物にカチ会った!?』、そんな風にさえ思えるほどの強敵だった。





▲ ▽ ▲ ▽



隣で息を呑む気配。

軍属スパイ少女(エルちゃん)には、相手の素性(すじょう)に予測がついたらしい。



「……<錬星金(オリハルコン)>の鉤爪(クロー)

 まさか、『番札(アルカナ)』の ──」


『── ああ、その通りっ

 “金貨の(コインズ)12番(・ナイト)”だ!』


「……っ!?」



エルちゃんが、肩を強ばらせる。



「お兄さん、気をつけるデース。

 コイツ、神王国の工作員(スパイ)切り札(エース)デース……」


「だろうな……」



おそらく身体強化魔法を使わない状態で、既に超人並みの身体能力(フィジカル)

そんな超人(バケモン)が特級で【身体強化(ブースト)】すると、魔物並になる(こういう風になる)んだろう。



── しかし、(さいわ)い、技量の方は『中の中』くらい。

コイツの場合体術になるんだろうが、剣術Lvに当てはめると40か45くらい?



(もしも剣術Lv(ぎりょう)50越える(アゼリアなみ)なら、さっきの不意打ちで2人とも死んでたからな……)



ジリジリと、相手を刺激しない超スローな動きで、エルちゃんに近づく。

もちろん、退避のためだ。


こんな超人×魔剣士(バケモン)真剣勝負(やりあう)とか、冗談じゃねー。


そんな緊迫ビリビリしているコッチに対して、大男は余裕の笑い声。



『そっちのガキ、剣帝流の一番弟子に敬意を表して、あえて明かそう。

 我らは、“炎罪(ゲヘナ)の民”!

 かつて<聖都(センダード)>の薄汚い裏切りで故郷を滅ぼされ、咎人(とがびと)烙印(らくいん)を押された者達の末裔(すえ)

 その一つ“黄金(きん)炎罪(えんざい)”であると!』



敵スパイの大男が、金色爪刃を器用に避けて、黒覆面(マスク)を外す。

茶褐色(ダーク・ブラウン)(ほほ)に、燃え上がる金色の炎の入れ墨(タトゥー)


相手の話からすれば、民族的な身元証明みたいな物なんだろう。


それを何故か(・・・)、わざわざ俺に(・・)見せつけてくる。



「おいおい……、工作員(スパイ)が顔を見せて大丈夫か?」



黒装束の大男はニヤリと笑って、覆面(マスク)を戻す。

再び、くぐもった聞きづらい声で、余裕そうに言ってくる。



『構わんさ、死人はしゃべれない(・・・・・・)から、な?』



── 最後の『、な?』の所で、爆発的な加速!

さっきのスパイ達が使ってたのと同じ、立体の影がスススゥー……と動くような、音の無い特殊歩法!?


しかし、速度がさっきの連中とは段違い(ダンチ)



「── クソがっ!」



そのため、初手から『切り札』を切らされる。


親指の指輪に偽装した待機状態(スタンバイ)の魔法を解放(リリース)

魔法の術式<法輪(リング)>が、腕輪の大きさに広がって高速回転、『チリン!』と鳴る。



「【秘剣・陰牢(かげろう)】っ」



据え置き斬撃の柵 ── つまり見えない魔力刃の長剣が虚空から降り注ぎ、進路を妨害する。



『ヒュ、ハァッ、その魔法(ソイツ)はさっき見たなっ』



特殊な呼吸音で、急転回して、魔法の発動範囲を大きく回避!?

さらに、すぐに距離を詰めてくるっ


迫る巨大な黒影と、黄金の双爪!



「付き合ってられるかぁ!」



敵が回避に費やしたわずかな時間で、エルちゃんを抱えて、3階の屋上から飛び降り(ダイブ)



「── ひぃ、ぁ……っ ちょっとぉ……!?」



ビックリしたエルちゃんが、バタバタするが構ってられない。

最速の飛翔移動【秘剣・速翼(はやぶさ)四ノ太刀(しのたち)夜鳥(ぬえ)】を自力発動(『チリン!』)して高速離脱だ!


顔に若い乙女のオ●パイ押しつけられて、うっかり気が散りそうになりながらも、低空飛行で夜の建物の(かげ)に逃げ込む ──

── それを妨害する、ジャラン……ッという鉄の音!?


見れば、エルちゃんの片足に鎖が巻き付いている。



「いつの間に……っ!?」



俺が模造剣(ラセツ丸)硬体切断(ハードカッター)の【序の一段目:()き】を装填して、鎖をギャリンッと斬り捨てる!



『── ジャァ!』



同時に、巨大な黒影が差す!



(── 今の一瞬で、鎖の上を(・・・・)走って来た(・・・・・)!!?

 マジでガチの化け物(バケモン)か、コイツ!!)



両腕金爪(クロー)の2連撃。

ほとんど墜落するような急降下で、ギリギリ()ける。



「お兄さんっ

 ワタシを捨てて逃げるデ ──」


「── うるせえ、しゃべんなっ」



空中1回転半して、降りた先は、都合の(・・・)悪い事に(・・・・)人気(ひとけ)のない路地裏だった。





▲ ▽ ▲ ▽



人気(ひとけ)のない裏路地に、黒影が走る。

それも、縦横無尽に、高速に。



『ジャッ、ジャァッ!』



例の敵スパイの超高度技巧、音もなく滑るような歩法だ。

それを使って、時々壁面すら走りやがるっ



『ヒュァッ、フッ、ジャァ!!』



そして、シュパン!シュパン!と間断なく振るわれる、<錬星金(オリハルコン)>の3本爪が一対(2個)


その(たく)みな高速連撃に、避ける事すら間に合わない。

技量では剣術Lv(レベル)60の俺が勝ってるはずなのに、超人の身体能力を特級魔法で強化(ブースト)して、あっさり技能Lv20の格差を埋めてくる。


おかげで、模造剣(ラセツ丸)で受け流すのが精一杯。


キャ・キャ・ギュァン!と何度も火花が散る。



(── クソっ

 さすがに腕甲武器(ガントレッド)を相手にすれば、<小剣>(ショート)の取り柄の『小回りさ』でさえ、間に合わないかっ)



しかも、俺の剣身保護の魔法付与(エンチャント)【序の一段目:()ち】を、バリバリ破壊する<錬星金(オリハルコン)>の武器とか、もうね!

普通の錬金装備とか安物の<魔導鋼(マグサロイ)>なら、既にボロボロなってるところだぞ!



(急に、月面宙返り(ムーンサルト)気味に頭を狙ってくるとか、マジやめろっ

 お前、『未強化(なまみ)』の一般人(パンピー)を相手に、本気(マジ)になりすぎじゃない!?)



なんだこの連撃と、(すき)の無さ!

絶対、反撃とかムリだろ!



拳術(・・)Lv40とか、クソどヘタ(・・・・・)のクセに、なんでLv60(このオレ)を圧倒してくんだよっ

 コレってアレか、改造(チート)か?

 対戦マナー無視のクソ卑怯者(チーター)かぁ!?)



ゴリゴリの【剛力型(パワー)】のクセに、俊敏(スピード)も半端ないとか!

しかも超反応の反撃(カウンター)してくるしぃ!


実質コレ、ジェノ■イド■ッターじゃねえか!?

実質コイツ、ル■ールじゃねえか!?



(うっかり野良■ガールと遭遇戦とか!?

 帝都の夜って、危険(デンジャー)過ぎじゃない!?)



そんなバカな事を考えたせいか、受け流しを失敗して、はね飛ばされてしまう。

慌てて飛び起きるが、ラッキーな事にダウン追撃は飛んでこなかった。



(……いや、違う。

 手加減(・・・)された(・・・)……?)



それどころか、相手の黒覆面の奥に、何か(シラ)けた感情すら感じる。


俺が警戒して構えていると、相手は黄金色の三本爪をなでながら、独白を始めた。



『フンッ、こんな物か……。

 俺たち“炎罪(ゲヘナ)の民”が200年がかりで仕掛けた、<聖都>(センダード)崩壊の策略(さく)を台無しにしてくれたのは、帝国最強流派の弟子2人。

 そんな話を聞いたから、ずいぶんと期待したんだがなぁ……』





▲ ▽ ▲ ▽



敵の大男は、戦闘の最中というのに、構えを解いた。


さらに、赤くも黄色い、どこか禍々しい色の満月を見上げ始める。

完全に、俺から興味が失せた、という態度。



所詮(しょせん)は、老いぼれ(ロートル)剣帝の流派。

 所詮(しょせん)は、魔物退治の専門家。

 所詮(しょせん)は、落ちこぼれの一番弟子。

 ── つまり、そういう事か……?』



見限った、みたいな冷たい目線を感じる。

しかし、こっちとしては、何の文句もない。



(── ええ、そんな感じで結構です、早くお帰りください!

 俺、単に『帝都を美化(キレイに)する』という社会奉仕活動(ボランティア)してただけな、一般人(パンピー)だからっ)



何せ、こちとら『剣帝サマの後継者に()(そこ)なった魔剣士失格(ナマクラ剣士)』である。

未強化(なまみ)』な裏社会(ヤクザ)(ボコ)って、威勢(イキ)ってる程度のお子ちゃま(クソガキ)だ。


過分な評価はノーセンキュー。


今すぐ『んじゃ! お先に失礼しまーすっ』とお別れしたい。


なんで、ただ銭湯(フロ)帰りに、野良ル■ール(狂キャラ(レシオ5))と対人戦(ファイト)を強要されなきゃいかんのか。



(こっちは『紙キャラ(レシオ0)』ですよ!?

 一発くらったら死んじゃう『ひ弱ちゃん』ですよ!?

 もうちょっと、手加減してもらえませんかねっ)



そんな内心のグチが止まらない。



『さて、我ら不可触民(ふれてはならぬモノ)である“炎罪(ゲヘナ)の民”に触れた、罰を受けてもらおう。

 聖教どもへの報復を邪魔した、その罪の深さを思い知りなっ』



しかし、どうにも見逃してもらえそうにない。



「聖教どもへの、報復……?

 <聖都>(センダード)崩壊の策略(さく)……?

 “炎罪(ゲヘナ)の民”……?」



俺の背中からちょっと離れた位置で、褐色少女が何かブツブツ言っている。



「── まさか……。

 剣帝流の『聖都襲撃事件』とは……っ!

 <聖都>(センダード)の闇組織『兄弟の絆』(ブラザーシップ)『姉妹の絆』(シスターシップ)とは……っ!?」


『ハハ……ッ

 なんだ、お前達、騎士団の第四は、まだ気付いてなかったのか?

 <聖都>の裏組織(ヤクザもの)は、俺たち“炎罪(ゲヘナ)の民”の(かく)(みの)だった訳だ。

 お優しい(・・・・)僧侶(ぼうず)どもは、貧乏人の犯罪を厳しく取り締まれないからな、随分と資金を稼がせてもらったぜ。

 しかし、それがまさか、剣帝流なんて田舎剣術(・・・・)の連中(・・・)に察知され、神童コンビや聖騎士たちに一斉検挙されるとはなっ!』


「……なるほど、デース。

 それで剣帝一門への報復なのデースか、理解できマシタ」



エルちゃんと、敵の大男の会話を聞いて、ちょっとガンバって思い出す。



「………………」



(── 夜の<聖都>(センダード)でリアちゃんと一緒に大暴れ……

 帝都に来る途中、そんな事もあったな……)



イライラした分、大暴れ。

さらに、司法関係者に『あ~ん、そもそも暗殺者をはびこらせたオメーらが悪いんじゃね?』とかネチネチ言って、(なか)ば無罪放免みたいは『追放処分』で済んだから、完全に忘れてた。



(あ~、ね。

 なるほど……。

 裏組織アイツらの元締めで、面子(メンツ)潰されたから復讐ってワケね……?)



知らんがな、ボケ。

裏社会の糸引いてた工作員とか、後ろ暗さMAXのド悪人みたいなのが、『仲間のカタキぃ!』みたいな事、いまさら言い出すなよ。



『剣帝一門の兄弟子は、妹弟子の補完。

 正道の魔剣士になれなかった代わりに、闇の技能(ワザ)を仕込まれた ──

 ── そんな噂を聞いたせいで、随分と胸が高鳴ったよ』



黒装束の大男は、覆面(マスク)を再び外す。

そして、何か錠剤薬(タブレット)みたいな物を口に放り込んで、かみつぶし、また覆面(マスク)を戻す。



『俺が本気を出せる相手なんて、ほとんど残っていないからなっ

 思わず期待して(・・・・)しまった(・・・・)よ。

 フゥ……』



ため息を吐いて、失望の目を向けてくる。

しらんがな、興味が失せたなら、早くどっか行ってくれ。


こっちは野良■ガールと遊ぶほど、酔狂(すいきょう)じゃないんだよ!



『── この分じゃ、妹弟子の(・・・・)方も(・・)期待(・・)できない(・・・・)か?

 まあいい、真っ当な魔剣士なんて物の数じゃない。

 士官学校に()もっていようが、メスガキ(・・・・)1匹に(・・・)地獄を(・・・)見せる(・・・)なんて(・・・)簡単だ(・・・)……』


「── ………………あ?」



は?


今、


何って、


言った?




お  ま  え ──────


!作者注釈!


2023/07/04 中盤に説明台詞を追加

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ