117:青の剣
俺、前世はニッポン人、名前はロック!(転生者あいさつ)
『闇色の大剣』。
巨かん……訂正、敵対者がそれを振り回しただけで、拘束の鉄弦が弾け飛ぶ。
低級の魔物くらい簡単にヤっちゃう講師センセイの、頑丈な鉄弦が。
『鋼糸使い』の捕縛結界が。
前世ニッポンから理想だった『中二病』の権化が。
(── お前なんだコラそれマジふざけんなよテメー調子のりやがってこのクソ野郎がぁぁ~~!!)
同時に俺の理性も吹っ飛んだ!
魔法剣!
理想の魔法剣!
剣と魔法の融合な、超絶で豪華な必殺技ぁ!
異世界ファンタジーならではの、スペシャル視覚効果が満載!
(── なんでぇ!)
(── そんな物がぁ!)
(── 貴様の手の中にあるんじゃボケェ~~!)
改めて見たら、相手の何もかもが気に入らない。
当流派の剣帝より上背かもしれない、2m超の肉体!
全身から溢れかえる莫大な魔力!
獣のガイコツ被ってるとか、ワケありで意味深な格好!
そんな外見なのに、絶対ベタ惚れだろうと思われる美人の部下さん!
「コー・フォー!」とか『お前どこの黒鉄仮面だ』という話し方なのに、仲間からの抜群の信頼感!
── 才能! 素質! 能力! 異性! 人望!
── アラアラちょっとアナタねえぇ~っ
── ちょっと少し神様から恵まれすぎじゃありません事ぉ~?
(ディスル・スカンノ婦人[Disslu Omae Sukan Nou] 1940-不明)
「お前、死ねばいいのに……っ
……いや、絶対ブッコロそうっ」
妹弟子の最近の口癖『ブチコロ』ではない。
『ブチ転がす』という『活人剣』流派の精神ではない。
(── 『必ず殺す』という魂の決意!!
恵まれないナマクラ剣士さんは、大変にお怒りなのですよぉ!!)
ィィィィイイイ……ィン! と異音が鳴っている。
手元を見れば、真っ青に染まった魔導の術式<法輪>。
どうやら無意識のうちに、未完成奥義【仮称・嵐】を装填していたようだ。
そんな俺に、気安く声をかけてくる敗者の皆さんの、イラッ☆と言動。
俺が貨物車両の天井上に居るからって、今すぐ手が出せないからって調子乗るなよ、お前ら!
「ハハハ、自棄になったのかな? それとも、まだ解ってないだけかな?」
(お黙りおチビ様がぁ! ちょっと身長が近いからって親近感もった俺がバカだった!)
「今さら何をしても間に合いませんよ」
(うるせえんじゃボケ! 丁寧語でインテリアピールですか!? 頭脳明晰スゴイですね!)
「あら最後まで頑張る気なの? まあムダな抵抗だけどねぇ~」
(やっかましー! ちょっと美人でお胸がすてきだからって……うむ、腕組みの豊満アピールは素晴らしい!! Sっぽい切れ目お姉様もっとお願いします! 土下座でも何でもしますからっ)
激情が鼻から溢れそうな程に膨れ上がる中で、なんとか頭だけは冷静に……!
── ただ静かに、殺意を研ぐ。
▲ ▽ ▲ ▽
(まともに斬り合っても、俺の愛剣・ラセツ丸が粉砕されるだけ。
なら、どうする?)
あの紫色の魔力の濃縮 ── 『闇色の大剣』とカチあえば、剣身保護の魔法付与【断ち】も簡単に弾け飛ぶだろう。
(だったら、1枚がダメだったら、2枚、3枚なら、どうだ?)
【断ち】妹弟子方式の諸刃装填 ──
新方式の【断ち】Lv3、両面装填 ──
── そういう【断ち】2枚展開なら、今までやってきているんだ。
(3枚、4枚くらい……っ
── いや、8枚くらいっ)
そう、あの新必殺技のように。
いつの日にか『六本足トカゲ』を両断するための、あの広範囲破壊の必殺技。
【秘剣・三日月:四ノ太刀・八重裂】 ──
── 高難易度の回転鋸刃式魔法付与【裂き】を8個同時に! さらに20m以上のサイズで!
(── そう、あの時に。
あの『魔物の大侵攻の首魁戦』に比べれば、あまりに簡単すぎる……っ!)
気がつけば、怒りも、嫉妬も、うらやみも、憤りも、全て収まっていた。
「── マモノ気取りの『人食いの怪物』とやら。
魔物退治に特化した『剣帝流』の成り損ないが到達した『極意』、受けてみろっ」
『ギャリィン!!』と、金属かガラスが強く擦られたような、異音。
即席改造の【仮称・嵐】を発動。
青い剣と黒い剣が、真っ向からぶつかった!
▲ ▽ ▲ ▽
【仮称・嵐】は、剣身を強制加速させる魔導術式。
妹弟子の『不可視の刺突』の開発過程でできた、未完成の超必殺技。
ロケット噴射でも付けたかのように、剣が勝手に動く。
いままで俺はそれを、速度特化として使ってきた。
今回の雑改造では、真逆の方にギアチェンジ。
つまりパワー特化。
例えるなら、ピンポン球とボウリング球の違い。
軽くて速いピンポン球は、その代わり威力が無くて簡単に弾かれる。
しかし、重くて遅いボウリング球は、ボウリングピンをまとめて吹っ飛ばす。
【剛力型】の特級魔剣士以上に『重撃極振り』という、まさにマモノじみた敵対者には、パワー特化で対抗。
これしかない。
(暗殺者がリアちゃんを狙ってくるなら、逃げても解決にならないからなっ)
── 真っ向から打ち負かす!
── 勝てないと思い知らせる!
── ムダだと諦めさせる!
(俺の可愛い妹弟子の幸せのために、今日ここで血裂ぇぇぇ!)
そんな気迫で、過負荷の青い魔力光の、<小剣>を振る!
▲ ▽ ▲ ▽
黒と青の鍔迫り合い!
「コォォォー……ッ、フォォォォー……ッ!」
「あああぁぁ!」
それは男と男の、意地の張り合いに似ていた。
剣術において、相手の思考を読むのは、基本だ。
対人戦闘において、だけではない。
対・魔物戦闘においても、そうだ。
相手は『魔法を使う人食いの怪物』。
知能が高いのは当然。
思考を、狙いを、戦略を、読み取れなければ、弱者である人間に勝利はない。
だから、鍔迫り合いの最中に、相手の思考が見える。
目線の動き、わずかな表情、声質の変化、そういった物を組み合わせた、読心術もどき。
なるほど。
コイツはとんでもないハンデと、痛みを抱えている。
常人ならとっくに挫けて、すぐに自害しそうな苦境を、笑いながら歩いて来た豪傑。
技も。
装備も。
この異様な魔力操作も。
全てが、逆境に打ち勝ってきた副産物。
そういった、愚直で退く事を知らない、輝かしい人間性が読み取れた。
闇の世界に身を堕としながらも、太陽の様にまぶしい生き様。
胸にストンと落ちる。
納得と、同情と、賞賛と、憧憬と、尊敬と。
── 端的に言えば『コイツはスゴイ男だっ』という感動!
── 敵すら魅了するカリスマ性!
── 存在に圧倒される、というのはこういう感覚か!?
あるいは、ここで敗北していたかもしれない。
もしも、俺が『剣帝流の一番弟子』でなければ。
自分の矮小さと、相手の偉大さに、打ちひしがれて。
だから、感情で理性を塗りつぶし、無道を通す!
「だ・が・なぁ!
キ~サ~マ~ら~はぁ~!
俺の大事な妹弟子に手を出したぁ!!!」
腹の底に溜めていた『憤怒』を爆発させる!
兄弟子の在り様を見失わないために!
「貴様が尊敬に値する人間性だろうが!
例え、将来世界を救う英雄だろうが!
百万の人間に愛される聖人だろうが!
── そんな事、知った事かぁぁぁ!!!」
元・師匠の教えに従い、『感情を正しく使った』。
── 感情は、道具だ。
── 主体は、人間にこそある。
── 主体である人間が、従属である感情に使われて、なんとする。
意図的に爆発させた憤怒が、最後のひと押し。
「── 押し斬るぅ!!」
気迫の声の通り、力づく。
超重量で大樹のような相手は、動かせない。
だが、相手の黒の剣は斜めに弾かれた!
その隙に、俺の青の剣が、超重装甲の胴をギャリギャリと刻む!
「うおおおおぉぉ!」「コォォォー……ッ、フォォォォー……ッ!」
そして、目標を失った『闇色の大剣』が振り下ろされる。
地面に、足下に、貨物車両の天井に、さらに下に──
── 闇色の魔力が稲妻のように走り、乗っていた車体全体が破裂した!!
▲ ▽ ▲ ▽
── ズドドドォォン!と雷が数本まとめて炸裂したような、轟音。
闇色の魔力が大剣から解放されると、あらゆる物を木っ端微塵にした。
商人の中型貨物の荷台は、すべて吹っ飛ぶ。
<駒>が引く御者席だけが残り、それがドガンドガンと2転3転……、横倒し。
そんな車体のの残骸に、後続車両が突っ込んで、ガゴォゥン!
20~30mガリガリ押して、なんとか停車。
俺は、そんな様子を空中で観察しながら、周囲に目を向ける。
(── リアちゃんと講師センセイは?)
ちょっと心配したが、魔力センサー【序の四段目:風鈴眼】に反応があった。
どうやら、2人とも衝突寸前で貨物車両から脱出し、街道沿いの樹木の上に退避したみたい。
後続車両の上に乗ってで鋼糸を操ってたっぽい講師センセイが、妹弟子の脱出をサポートしてくれたんだろう。
貨物車両の後方にある積み込み扉が、片方開いている。
(後方支援で考えると『鋼糸使い』って、マジ万能だな……っ
俺も練習して、早く使えるようにならないと!)
ちょっとウキウキしながら、【秘剣・速翼】の飛翔魔法を緩めて、地面に降り立つ。
すると、角付き鉄兜の一団から、どよめきの声。
「── 何で生きてんのよぉ、このガキぃ!」
「うそだろぉっ、リーダーの『黒剣』をまともに食らったはずだろ!」
「……さっき一瞬、『黒剣』を受け流しているように見えましたが……。
どうやら、目の錯覚ではなかったようですね……」
どうやら、敵対者の仲間は車体が砕ける事を予想して、ちょっと先に街道に飛び出していたらしい。
あっちこち、泥や砂で汚れている。
さらに、角付きガイコツを被った異様な巨漢……訂正、敵対者ヤローも、平然と歩いてくる。
「チッ、やっぱり無事かよ……っ」
俺は思わず、舌打ち。
すぐさま【序の一段目:裂き】で、機械鋸式の魔力刃を魔法付与。
「コイツの厄介さが解った以上、もう手加減なしだっ」
さっき『青の剣』(【仮称・嵐】の雑改造な必殺技)で削った腹部装甲に目を向ける。
どうやら鎧の中でも胴体部分は、他の超重装甲に比べて、さらに厚くて頑強。
致命傷を与えるためには、魔力刃の機械鋸式で削りまくるしか無さそうだ。
すると敵対者は、仲間の青年に何か耳打ち。
「コォー……、フォォー…… ──」
「── 本気ですか、『#1』!」
副官っぽいヤツが、ギョッとした顔。
「コォー……」
「……いえ、すみません。
別に異を唱えるつもりはありません、貴方の判断に従います。
── 『#4』、『#6』、2人とも引きますよっ」
「……なんだ。
もしかして、今さら逃げる気か?」
俺が前のめりに構えると、敵対者の副官は、キッと睨み付けてくる。
「見逃しなさい、剣帝流!
それとも、どちらか一方が全員死に絶えるまで続けますか?
例え、お前達が勝ったとしても、タダではすみませんよっ」
「それは、確かに面倒だな……」
今まで、リーダーに任せっきりで、余裕の高みの見物だった連中だ。
それが全員、死に物狂いになると、さすがに捌ききれる自信が無い。
俺が迷っている間に、向こうも仲間内でもめる。
「ちょっと、本気なの! 『#2』!?」
「さっきのマグレだろ!? もう一回、リーダーが『黒剣』使えばっ」
「バカを言わないでくださいっ
まだ『剣帝の後継者』が、あのアゼリア=ミラーが出てきてない状況で、この劣勢ですよっ
少なくとも、『#3』と『#5』の魔法支援2人を欠いた現状では、かなり厳しい」
「なんだ、他にお仲間がいるのか……
やっぱり、手足の2~3本、いや、全員で5~6本もらっとくか?」
指輪偽装した<法輪>を解放しようとすると、副官が大慌ての大声。
「剣帝流! こちらは引くと言いましたよ!
『剣帝流後継者の暗殺依頼』、それ自体から手を引くと言っているんですっ
ここは大人しく見逃しなさいっ」
「他人様を殺しかかってきて、そっちの都合が悪くなったら、見逃せってか?
知らん。 勝手な事ばかり言うな」
「ええ、勝手は承知です。
だから、一つ約束をしましょう。
今から3ヶ月間、あなた方の前に現れません。
そちらは<聖都>を経由して<帝都>に向かうのでしょ?
こちらは<黒炉領>を経由して南方へ、<副都>にしばらく身を隠します。
<聖都>裏社会の連中が、追っ手を寄越しても面倒ですからね」
「3ヶ月間か……まあ、悪くはない条件だな」
俺が構えを解くと、相手はホッとした表情。
▲ ▽ ▲ ▽
そこに、腰を押さえた化粧濃い女が口を挟んできた。
「ちょ、ちょっと何の話してんのよ!?
『人食いの怪物』、アンタ達まで裏切るつもり!」
「── 手配屋……。
何を考えて、こんな連中に手を出したんですか?
貴女のせいで厄介事に巻き込まれて、こっちは良い迷惑ですよっ」
「ハア! ただのメスガキ2匹でしょ!
いくら強い魔剣士ってイキがっても、魔物相手のイノシシ突進バカ流派!
からめ手を得意とする暗殺者なら、ワケないでしょ!」
おいおい、ことごとく刺客を返り討ちにされたヤツが、何か言ってるよ。
呆れてため息。
「バカですか!
剣帝流という魔剣士の正道中の正道を継ぐ、アゼリア=ミラー!
その補完として、邪道の剣を修め、さらに盤上勝負をひっくり返す『闇の技』にまで精通する、この一番弟子!
さらに、得体のしれない楽士姿の諜報役!
付け入る隙がどこにありますかっ」
「そ、それは……
だ、だけど、高位の権力者の依頼よ!
いまさら出来ないとか、そんな話はとても……っ」
「それは、貴方の事情! 貴方たち『姉妹の絆』の失態!」
敵対者一味で一番冷静そうな青年が、ブチギレの大声。
俺は、その会話を聞きながら、首を傾げる。
「……じゃあ。
その女をどうにかしないと、結局意味ないのか?」
「ああ、そうね。
じゃあ、こうしてあげる」
「え、ちょ、ちょっと!?」
敵対者一味の女性が、手配屋の女の背後に回り、後ろ手を捻り上げた。
切れ目の美人さんが、軽くウインク。
「この女、私達『人食いの怪物』が始末しておく。
指示役が居なくなれば、さすがに追っ手も減るんじゃない?」
「ちょっと、『人食いの怪物』ぁぁぁっ!!?」
「お、それは正直ありがたい」
手配屋の女とか、身のこなしからして、完全に素人。
無力すぎて危機感を感じないので、活人剣の『限定解除コード』ができそうにない。
となると、『アゼリア暗殺の黒幕』の1人なんだが、ちょっと殺すのが難しい。
だから、この悪党女を『処分』してくれるのは好都合。
「じゃ、決まりね」
「他人の命をぉ、勝手に決めるなぁ~~っ」
(── おいおいおい。
今日最大の『お前が言うな』案件だろ(独り笑い))
権力者との人脈のために妹弟子の命を狙ってた、暗殺者集団の元締めが。
まさに、『本人に返ってくる言葉』。
プラス実践空手道イコール風●拳! うおおおおおおお!!
(注意:今月の『月1実績』の報酬はすでに獲得済みです)
「うるせー女だな、黙ってなよ!」
「ギャアァ!」
短気そうな子供が、鉄籠手で腹を殴ると、武術の素人な手配屋の女は、あっさり気絶。
それを、『#4』とか言う切れ目の美女が、雑に担ぎ上げる。
インテリ青年は、『これで文句はないだろ?』と会心の笑み。
「さて、これで交渉を締結としましょう。
『<聖都>裏社会の戦闘屋・人食いの怪物を退けて、剣帝流が最強を証明した』
『激戦でリーダー・骸骨被りは半死半生、他の連中は腰を抜かして逃げて行った』
── そんな感じで、お願いします」
「いいのか、そんな話で……」
裏社会のヤツとか、他の連中にナメられたら困りそうなんだが。
「ええ、裏切ったなんて知られて、追っ手を向けられても面倒ですし。
致命的に頭の悪いヤクザ者どもに、こんなはしたガネでコキ使われるのも、ウンザリしてきた所ですから。
思う存分、勇名を吹聴してください」
「逆にトラブルの種になりそうで、イヤなんだけど」
俺は口では文句を言いながらも、内心では感心。
(なるほど。
コイツら、敗北さえも『使う』のか……っ
根本的に負けるの大嫌いな、俺たち格闘ゲーム愛好家には、ちょっと出来ない発想だな)
ちょっと勉強にもなった。
だから、相手の提案通り見逃す事にした。
「いいよ、行きな。
ただ、本当に、その手配屋の女だけはどうにかしておいてくれ」
「では、信頼の握手を」
相手は左手を出してくる。
利き手で握手をする、『魔剣士としての無上の信頼の証』。
それを、契約文書の代わりにするらしい。
「俺、利き手は右手なんだけど?」
「そういう場合は両手同時に、交差させて握手するのですよ」
言われるとおり、副官と握手を交わした。
▲ ▽ ▲ ▽
「お兄様、よかったのですの?」
アゼリアが、街道沿いの大木から降りてきた。
何かあったら不意打ちする予定で、今まで隠れていたワケだ。
「ああ、仕方ない。
連発できる切り札じゃないだろうが、『闇色の大剣』使うヤツと最後のひとりまで殺し合いとか、冗談じゃねー」
「それに他に仲間がいるような言動。
そうなると、後で生き残りに復讐される可能性もあったはず。
我が生徒の判断は、無難にして最善と言えるのであ~る」
鋼糸の講師センセイも、やってきてウンウン肯いている。
あと、さすがに疲れたのか、いつものポロンポロン演奏をお休み。
「向こうの連中は?」
「みんな、やっつけましたのっ」
「都合良く、衝突事故の衝撃で全員気絶したので、拙がまとめて縛り上げたのであ~る」
2人とも処理が手早いな。
「それじゃあ、俺が乗ってた方の貨物車両の商人を回収して、そっちの車両で<聖都>まで行くか」
そんな感じの後始末になった。
▲ ▽ ▲ ▽
そして、その晩。
── ヒャーハハハハッ!
屋外からのバカ笑いが、かろうじて聞き取れる。
── 『魔剣士の頂点』んん!?
── <御三家>の秘蔵っ子ぉ~!?
── 伝説の『辺境の英雄』の弟子だぁ~~ぁ!?
<聖都>の夜を明かす様に、ゴウゴウと燃え上がる宿屋!
俺たちの泊まっている宿屋は、既に炎につつまれていた。
階段から炎が上がってきていて、既に1階フロアは炎の海。
── どれだけ剣の腕が立とうと!
── どれだけ魔法が凄かろうと!
── 英雄だろうが凡人だろうが、寝込みを襲えば一緒なんだよぉ~~~!!
どうやら深夜の寝静まった頃を見計らって、建物に放火したらしい。
この宿屋を丸ごと焼き尽くすつもりらしい。
ワザワザ、妹弟子1人の命を奪うため、他の宿泊客を全て巻き添えにしてまで。
ああ、ダメですね。
ダメダメだ。
もう最悪!
はい、もう終・了・!
これから、どうやってもお話になんね~なっ
やっぱクソだな、この異世界!
徳が低すぎ、『善悪値:極悪』で、人類すべて無法ルート!
ド外道なウンコカス野郎しか居ねえわ!
もう、みんな、まとめて死ねばいいのに!!




