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異世界カクゲーSPIRIT'sサイキョー伝説[↓↘→+s] ~知ってる?異世界って格ゲー無いんだぜ(絶望)……ハッ!無いなら作ればいいんじゃね(閃き)~  作者: 宮間
Round 5:聖都ステージ

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104/236

104:vs凍てる狼

俺、前世はニッポン人、名前はロック!(転生者あいさつ)




投げナイフ狙撃の敵は、100m(・・・・)も離れた(・・・・)3階建ての上に居た。

身体強化魔法で超人になれる魔剣士でもなければ、絶対に届かない投げナイフの飛距離だ。


平屋根の建物は、役所とか大型商店とか、そんな感じの頑丈な構造。



「魔剣士ではない、と聞いていたが。

 フン、手配屋め、相変わらずいい加減な情報を……」



全身をフードで隠しているので、ギリギリ男とわかるシルエット。

背中に魔法陣が浮いているので、身体強化魔法は発動済み。


── つまり、コイツは魔剣士だ。


おそらくは講師リュート(仮名)センセイが盗み聞きした、昨夜の酒場の密談メンバーの1人。

『笑う狼群』(ラフィング・パック)とかいう腕利きの暗殺者チーム。



「あいにく俺は、魔剣士じゃねえんだよ。

 背中見て解らんのか、ボケ暗殺者がっ」


「フン、無謀なガキだ。

 暗殺者と解って ──」



言葉の途中で、突然ヒュン!と風切り音。



「── やってくるとはな」



何気なく会話を続けるように見せかけ、自然な身体の動きの中に、ナイフ投擲(スロー)の動作を混ぜてくる。


夕暮れの薄暗い中での、黒く塗った刃物を使い、巧妙な不意打ち。


回避が間に合わず、思わず愛剣・ラセツ丸を盾にした ──

── いや、違う! 盾に(・・)させられた(・・・・・)……っ!?



(── やべぇ……っ!?)



盾代わり(ラセツ丸)で弾いた投げナイフが跳ね上がり、一瞬だけ視覚を(さえぎる)る!



(最初から、この攻防を組み立てられていた!?)



── ゾッと寒気。

魔物に奇襲(きしゅう)を許したような、濃密な死の予感!



(格闘ゲームで言うところの、『飛ばせて落とす』戦法か!)



……格闘ゲームに詳しくないという残念な『若者(キミら)』のために、メジャースポーツ・野球に言い変えてあげると、『打たせて取る』って事。

つまりは、応手を読まれ、誘導された攻防だ。


10秒しか保たない【序の二段目:推し(スピードアップ)】の効果がギリギリ残ってなければ、それで死んでいた。


身を投げ出し、転がり避けて、立ち上がる。

元居た場所を見れば、20mの距離を2秒以下で侵略した、魔剣士(超人)の姿!



「まるで野生の獣……

 いや、もはや魔物並の反射神経と身体能力だな。

 ── 貴様、本当に人間か?」



レンガ壁を刺突(しとつ)(つらぬ)いた、<魔導鋼(マグサロイ)>の<中剣(ミドル)>をゆっくり引き抜く、暗殺者。



「敵を持ち上げんなよ。

 魔剣士のくせに、お前が惰弱(ザコ)なだけだろ?」



俺は、軽い挑発を吐きながら、ビリッとした痛みの元をチラ見。

左腕に小さな切り傷。


出血は大した事がない。

問題はそれより、骨が痺れるような、激しい痛みの方。



(そりゃまあ、<中剣(ミドル)>にも毒を仕込んでるよなぁ……)



慌てて、<治癒薬>(キュアポーション)を1本飲み干す。

魔法的な毒素を、普通の解毒薬がどれくらい中和してくれるか。


気休め程度というか、ないよりマシくらいの対処法だ。



「フン、なるほど……」



暗殺者は、こんな挑発には乗ってこない。

むしろ警戒を強めて、片手で持つ<中剣(ミドル)>を防御の構え ──

── つまり、威圧するようにこっちに突きつけてくる。



「魔導師の式服に、常人離れした体術。

 帝都に君臨する女暗殺者、かの『月下凄麗』(ルナティック・ティア)は無手術<東拳(とうけん)流>の使い手。

 激しい打撃の合間に、攻撃魔法を自力詠唱(キャスト)すると聞いたな。

 ── すると、貴様も暗殺者(どうるい)か……『月下凄麗』(ルナティック・)の妹分(ヤンガー)?」



暗殺者の、そんなおしゃべりの(・・・・・・)最中(・・)にも、投げナイフが飛んでくる。

『全身のバネを使った投擲(スロー)動作』だってのに、会話の呼吸一つ乱れない。

そんなタイミングの読みづらい攻撃が3回も。


俺はステップで最小限に動きながら、手首のスナップで模造剣(ラセツ丸)を素早く操る。

視界を塞がないように、そして体勢を崩さないように。

カンッ! カンッ! カンッ!と、3本のナイフは全て両脇に叩き飛ばした。



── 違いますぅー!

── 暗殺者とか汚れ仕事じゃありませーん!(3ヶ月ぶり、2回目)



「俺は、剣帝流の一番弟子、ロックだ!

 いざ尋常(じんじょう)に、勝負!」





▲ ▽ ▲ ▽



「……暗殺者相手に、わざわざ名乗り、さらに『尋常(じんじょう)の勝負』?

 ハァ……、バカなのか貴様」


「バカはテメーだ!

 これは俺の『限定解除コード(リミッターはずし)』!」



そう、剣帝流は『魔物の被害お助け聖人(マン)』とかやってた、お人好しなジジイの流派。

幼少期から、繰り返し繰り返し『人間相手に剣を向けるな』と散々刷り込まれてきた。


そのため、『試合』だと認識しないと、無意識のブレーキがかかる。

逆の言い方をすれば、対人戦で本気100%を出すためには、試合形式の礼儀作法がいるのだ。


つまりは、<ラピス山地>の家(山小屋)の庭先で妹弟子(アゼリア)元師匠(ジジイ)と手合わせしている時と同じ、完全本気(・・・・)モード(・・・)



「もういい、死ねっ」



暗殺者の男は、吐き捨てる。


両手の十指にはさまれた、黒塗りの忍者武器(クナイ)のような投げナイフ。

それを頭上に投げ上げると、すぐ前にバランス良く直立させていた<中剣>を抜剣。

鞘を左手に、剣を右手に、二刀流で振り回す。



(── なにっ!?

 こんな方法で、撃剣(けん)で遠距離攻撃だとっ

 発想が(・・・)おかしいぞ(・・・・・)、コイツ……っ!)



まるで曲芸もいいところだ。

おかしな方向(・・・・・・)への努力が(・・・・・)異常で(・・・)、ちょっと呆れる。



(そこは普通、魔法を改造して『飛ぶ斬撃(・・・・)』を創り出すところだろ!?

 ()識的に()えて!)



ガガガガガァ……ン!と、空中のナイフ8本を(まるで球技みたいに!)『飛打(シュート)』してくる。



(いや、よく見れば鞘と剣の先端が鉤状(フック)になってる!?

 それに引っ掛けて、こちらに投げ(・・)飛ばしてる(・・・・・)のかっ!)



例えるなら、『長い釣り竿を使えば、疑似餌(ルアー)をより速く遠く飛ばせる』。

多分、そんな感じの原理なんだろう。


さっきの倍ほどのスピードで殺到する、投げナイフ8本!



「なめんなっ、【撃衝角(アタックラム)】!」



『チリン!』と、盾にもなる便利な下級攻撃魔法を自力詠唱(キャスト)

衝撃波で、投げナイフ8本を、まとめて吹っ飛ばす。



「こっちの番だ!」



身体強化なみのスピードで突進する俺。



「── フン……!

 なるほど、落ちこぼれ(・・・・・)の一番弟子とは聞いたが、さすがは『剣帝流』か。

 確かに常人 ── 『無環(むかん)』では最強だろう」



しかし暗殺者は、覆面の上からも解る、余裕の表情。

距離を取るように、バク転。


その瞬間、9本目(・・・)の投げナイフが、俺の胸(・・・)を貫く。

靴に仕込んでいたのか、あるいは足で蹴り上げたのか。



「だが、所詮(しょせん)は『未強化(なまみ)』。

 その程度(・・・・)で魔剣士に立ち向かう無謀(むぼう)の対価、命で支払えっ」



闇に紛れるような濃色のコートがひるがえり、俺の首(・・・)へと<中剣(ミドル)>が一閃(いっせん) ──


── その斬首の瞬間、幻像(・・)が薄紅の花びらに変わって散る。



「なっ ──」



驚く暗殺者だが、剣を大薙ぎ(スイング)している最中で、回避はできない。

至近距離で、下級の衝撃魔法【撃衝角(アタックラム)】が炸裂!


【秘剣・散華(ちりばな)弐ノ太刀(にのたち)徒花(あだばな)】 ──

── 移動する幻像魔法(デコイ)衝撃魔法(バクダン)を仕込む、いわば前世ニッポンの魚雷(ぎょらい)みたいな必殺技だ。


そして幻像魔法(ニセモノ)ではない、本当の俺(・・・・)は既に後方空中へ移動済み。

隠密&高速飛翔の必殺技【秘剣・速翼(はやぶさ)四ノ太刀(しのたち)夜鳥(ぬえ)】だ。


全体重をかけた<小剣>(ショート)の模造剣で、ゴン!と脳天から一撃。



「がぁ……っ」


「── 『無謀の対価、命で支払え』、だったか?

 その程度(・・・・)で言うセリフじゃねえなっ」



勝確(カチカク)!と調子に乗ってた相手のセリフを、イヤミっぽく言い返してやった。





▲ ▽ ▲ ▽



── さて、困った。



(完全に()る気だったのに、うっかり(・・・・)殺しそこねてしもた……

 俺って口だけでダサいな(ダッセー)……)



手応え的に、フードの下に、何か頭を守る金属フレーム的な防具でも仕込んでいたらしい。

そのお陰で、頭蓋が砕けず(・・・・・・)脳しんとう(・・・・・)で済んだ(・・・・)っぽい。



(完全本気モードの俺なんで、暗殺者=魔物と同類と見なし、ブッ殺すつもりだったんだが……

 つい(・・)模擬試合(てあわせ)のクセが出て、魔力刃エンチャント【序の一段目:()ち】を使ってない、非・殺傷モードでやっちゃったな……)



取りあえず、スチール缶を踏み潰す要領で、全体重をかけた下段の踵蹴り。



「うりゃっ」


「── ぐぅ……っ」



片方の足首を脱臼(だっきゅう)させ、逃走できないようにしておく。


さらに、本人が持ってた毒塗り<中剣(ミドル)>を拾って、左肩にグサリ。



「── あ゛ぁ……ッ! がぁ……ッ! ぅ……~~~ぁッ!」



おー、悶えてる悶えてる。

クソ()てぇもんな、この魔法的な毒素。


例えるなら、虫歯治療の麻酔無しドリルというか、骨を直接ヤスリでゴリゴリというか。


俺も、幼少(ガキ)の頃に<ラピス山地>でくらって、お漏らししたし。

(あ、もちろん、お漏らしは10歳前後の小さい頃だけだよ?)



「おい……。

 早く解毒しねーと、心臓とまるぞ?」



まったく、毒使いのくせに(トロ)いヤツだな。

何のために心臓に近い(・・・・・)左肩に刺した(・・・・・・)と思ってんだ。


脂汗かいてる暗殺者が、ブルブル震える右手で水薬(ポーション)系の小瓶(こびん)を取り出した。



「うりゃっ」



ベキッと下段の踵蹴りで、その右手首も脱臼(だっきゅう)させて、小瓶(こびん)を取り上げる。


魔力センサー【序の四段目:風鈴眼(ふうりんがん)】で確認。

普通の<治癒薬>(キュアポーション)より大量の魔力が込められている。

お目当ての通り、特殊な魔法薬だ。


そのまま飲み干そうとして、なんか、ちょっと不安になった。



「── あっ、あぁ~~……

 ……念には念を入れておくか?」



何せ、ヤベー毒を使う暗殺者だ。

どんな策略(トラップ)を仕掛けているか解らない。



「うりゃっ」



(あご)の関節を蹴り外して、むりやり『あ~ん』させる。

薬の容量1/3ほど飲ませてみて、本当に『魔法毒素専用の解毒剤』か、確かめたワケだ。


1分ほど様子をみて、大丈夫そうなので残りを飲み干す。



(まあ、俺ってお子様体型だから、薬の容量60%くらい飲んでおけばOKだろ……)



前世ニッポンの知識的に、薬の量は体重換算。

子どもは成人男性の半分くらいで充分だったはず。



「さて、どうするかな、コイツ……

 この町って小さいから、自警団しか居なさそうだし。

 騎士団の第三に引き渡すのもぉ……、内部に共犯がいたら無意味だし。

 ── もう、首をはねた(・・・)方が早いか?」


「それは、困るなぁ」



背後からささやかれた、ノンキな声。

それより一瞬だけ早く、雨粒を吹き飛ばすような(ごう)撃剣(けん)が落ちてくる!



「── カハハ!

 まさか渾身(コレ)を受け流すのか!」


「チィ、なんだよコイツ!

 こっちの毒使い(ザコ)とは段違い(ダンチ)じゃねえか!?」



たった一発で、特殊技【序の三段目:()め】での堅い防御が破られ(・・・)かけた(・・・)

一瞬の(かん)で、模造剣(ラセツ丸)で受け流す動きに変化していなければ、防御を押し切られてた。

自分の愛剣(ラセツ丸)で、頭を叩き割られるところだった。



「なんだよ付き人(コイツ)、『虚勢(ハッタリ)』どころか『本物(ゴチソウ)』じゃないか!

 <()てる(おおかみ)>を片手間で倒し、さらに俺の不意打ちまで(さば)くっ!?

 こんな気合いの入った『本物(ゴチソウ)』なんて、<聖都>(センダード)でも滅多と見ないくらいだよ!」



中肉中背の30手前の男で、風貌は平凡。

特徴らしい物といえば、鋭い目と、染めてるのか黒と赤が入り交じった髪だけ。



(── 剣術Lv45の魔剣士!?

 剣の腕だけなら、<天剣流>の天才児(ヒョロ)並か!

 しかも相当な場数(ばかず)を踏んでる雰囲気っ

 不意打ちの類いは効きそうにもないな、きっとっ)




── ででっでっでっでっ・でぇ~ん!

── ちょう(Here )せんし(Comes )ゃ  あ(A New )らわるっ(Challenger)!?




「いいなぁ、お前っ

 剣に人生どころか、魂まで捧げてる、そんな(にお)いだっ

 お前のお師匠様・『剣帝』に感謝しないとなっ

 『丹精(たんせい)込めて、こんな美味そうな相手(ガキ)を育ててくれて、アリガトウ』ってな!」



対人戦に限定すれば、おそらく『神童コンビ』以上!

そんな厄介な魔剣士が、魔力のほとばしる金色の宝剣を構えてた。


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