01 :か弱い男の娘(絶望)
俺、前世はニッポン人、名前はロック!(転生者あいさつ)
趣味は、格闘ゲームにマンガに、PC、ネットとか……。
まあ、秋葉原の電気街によく居る、標準的なインドア男子だった。
―― そして異世界へ転生した今は、か弱く可憐な『男ノ娘ぉッ』 ☆彡
見よ! この男子とは到底思えない、可憐なお顔ときゃしゃ体格!
キモオタ中年男が、美少女っぽい姿に(性別は♂のまま)☆大変身☆
(転生肉体なら、アニメやゲームの女装も全然イケちゃいそう!?
―― いやぁ~ん、幕張に行ったらカメラ小僧に囲まれちゃうかもぉ~~!?)
※ 注意:中身オッサンなので価値観が平成で止ってます。
そういうワケで、この異世界の街中を歩けばザワザワ噂される。
ほおを染めた野郎どもの視線を集める、転生後の俺(偽美少女)。
『か、かわいいっ』
『小柄で、可憐だ……』
『こんな田舎町に、あんな子いたっけ?』
『お、おいっ オマエあの子の名前聞いて来いよっ』
『絶対、良い匂いしそう』
『あの子に手を握ってもらえたら! 俺、死んでもいい……っ』
―― ダン……!と、握り拳で石床を打つ。
そんな不愉快な記憶を、イライラMAXで叩き潰す様に。
(ち~・が~・う~ッ! そうじゃないっ!)
俺、前世の性別は男!
今世の異世界でも、男子だぞ!
(なんで『カワイイ』とか小バカにされなきゃならんのだ!?
ニッポン男児に対するホメ言葉は、『カッコイイ』とか『強い』だろうが!!)
思わず奥歯が、ギリ……ッと鳴った。
俺、くやしすぎて超・涙目。
▲ ▽ ▲ ▽
―― さっきも言ったが、俺の前世は格闘ゲーム愛好家。
となればもちろん理想の姿は、主人公キャラか準主人公キャラみたいな『細マッチョな高身長イケメン』だ!
つまり、強くてカッコイイ男になるのが目標だ。
もし人生やり直すなら、一度くらいムキムキ筋肉男になってみたい。
男なら誰でも思う事だろう。
(しかし俺の転生肉体は、全くかけ離れた『ナヨナヨ貧弱チビ』という……)
今世の俺の身体はもう15才になるのに、いつまでも女子並みに小柄!
身体能力は見た目どおり、可憐(笑)できゃしゃ(呆)な男子。
さらに魔法アリアリな異世界なのに、魔力の量まで雑魚!(絶望)
(端的に言えば、物理も魔法も貧弱。
完全なザコキャラに転生したワケだ……っ)
現状が絶望的すぎて、フゥ……、ってため息まで出ちゃう。
(まだ『前世ニッポンのたるんだ中年身体の方がマシ』まであるわ。
前世の俺は、標準的オタク民でスポーツ苦手だったけど、身長と体重は標準的だったからな……)
スポーツも格闘技もデカいヤツが有利なのは、この異世界でも変わらない。
つまり、か弱い乙女な年頃娘みたいな体格の俺は、致命的な大ハンデである。
―― そもそも転生先は、致命的ファンタジーな異世界。
ヤベー魔物がいっぱい。
命のピンチもいっぱい。
生き延びる事だけでも、いっぱいいっぱい。
絶望的すぎて、思わず頭を抱えちゃう。
いや、思わず髪をかきむしって発狂しそう。
(注意:ハゲる ―― 訂正、頭皮や髪質を傷める怖れがあります。気をつけましょう)
これってどこにクレーム入れたら良い案件なの?
異世界の神様的な存在?
それとも仏教徒だからホトケ様?
(おぉい、どうなってんだよ!
異世界転生したのに何も良い事がないんだけど!!
―― 『神様から無敵サイキョー能力をプレゼント』は?
―― 『美女美少女にモテモテ』は?
―― 『社畜時代の知識と経験で大活躍』は?
―― 『貴族王族に生まれてエリート学園生活』は?)
アレ全部『まとめサイトのウソCM』みたいな罠広告かよぉ?!
そもそも、なんで俺、異世界に生まれ変わってんだよ!?
▲ ▽ ▲ ▽
そんな現実逃避から現実に引き戻す、目の前のジジイの声。
「おい、ロックよ。
いい加減に事情を説明せんか」
「……んぁ?」
ちょっと、何か変な声がでた。
前を見上げると、白髪ジジイの呆れ顔。
「『ん?』では、ないわ……
まったく、こやつは……ハァ」
「………………」
「むくれてないで、少しは反省せぬか、ロックよ……」
「反省? え、なんで?」
「ハァ……ッ まったく、困った奴よ……っ」
「…………」
腕組んで見下ろしてくるジジイと、座って見上げている少年。
つまり、お説教されている最中なワケだ。
しかも、石畳の上に正座という反省ポーズ。
そろそろ足がシビれてきたし、小石が刺さってメッチャ痛い。
見ての通り『体罰』という名の児童虐待である。
(―― ……あのさぁ~。
前世ニッポンじゃ法律違反だよ、体罰?
あ~ぁ……、これだから遅れてるクソ異世界はイヤなんだよ……っ)
そんな不満が顔に出たんだろう。きっと。
仁王立ちのジジイが、諦めた顔で『フン』と鼻息ひとつ。
ちなみに見た目は、白髪で長身な、剣の達人ジジイだ。
「まあ、お主が暴走する原因など、ひとつしか無いか。
で、『あの子』に何があった……?」
「── だってジジイお前!
アゼリアのピンチだぞ!!」
俺は、目を吊り上げて反論。
しかし、目の前の白髪ジジイは肩をすくめるだけ。
「ハァ……、やはりそれか、ロックよ。
お主が道場破りをして、この『魔剣士道場』を壊滅させた理由は……っ」
「……………………」
―― 【悲報】俺氏、絶世の美少女さんをクズどもから守護ったら超怒られてしまう【むしろ善行】
▲ ▽ ▲ ▽
白髪ジジイがしかめっ面で、ブツブツ言う。
「アゼリアの事となると、ひとりで魔剣士道場にも乗り込む、か……。
しかも、よりにもよって、領主家に縁故のある名門を『道場破り』するとは……。
―― こやつは、まったく……」
さらに『フッハァ~~~!!』というクソデカため息付き。
「―― まぁ……、こやつが全力で暴れて死人が出なかっただけ、不幸中の幸いか」
「………………」
ジジイが、この『道場』の中でくたばってるザコ連中を振り返ってから、また『ハァッ!』ってため息の追い撃ち。
あえて俺を見ないジジイから、
『ワシ激怒だから反省せえよ?』
という、無言の『圧』をバシバシ感じるワケだ。
「………………」
(……そういう、さぁ、ミスを責める空気って良くないと思うんだよね。
失敗ってニンゲン誰もがする物なんだからさ、それを怒るよりも、次に起きない対策を考える方が建設的っていうの?
―― あ、これ、前世ニッポンで社会人経験ある俺からの“助言”ね!)
いかにも遅れてる異世界の社会思想に、心中でため息つきながらダメ出し。
すると、ジジイが振り返ってくる。
怒っているというより、あきれ果てたとか、疲れたとか、そういう感じのジト目だ。
「── それで、ロック。
お主は、妹弟子がナンパされるたび、『魔剣士道場』を潰してまわる気か?」
「誰がナンパくらいで、『道場やぶり』するかよっ」
「しかし、アゼリアは『ナンパがケンカの発端』と言っておったし……」
「ち・が・う・わ・いっ
ジジイ、俺はなぁ ──」
俺とジジイが言い争っていると、少年の声が割り込んできた。
「── あ、あの……っ」
この赤毛少年は、恵体(恵まれた体)ってヤツ。
俺より一つ年上の16歳で、すでに体格が青年並だ。
この世界というか、この国というか、転生先は高身長ムキムキ男ばっかり。
おかげで、俺がいよいよチビで華奢に見られて、ナメられてしまう。
「お、俺が! 俺なんかが!
お弟子さんと決闘なんて、大それた事をしたせいで……っ
こ、こんなっ、こんな大変な事になってしまって……!
―― 申し訳ありませんでしたっ」
赤毛のヤツ、スライディング土下座だ。
「俺、責任とって、道場をやめます!
ですから、どうかお許しを!」
赤毛少年が、涙ながら何度もペコペコ頭を下げる。
俺は、そのゴツい肩をつかんで止める。
「お前が、頭下げる必要なんて、ないだろうが!
問題は、お前じゃないっ」
「そうじゃのぉ。
問題は、全部ロック、お主じゃし」
「ちがうわ!
混ぜっ返すな、ジジイ!
── 問題の、トラブルの原因! 全部あの2人だからなっ!」
俺は、赤毛少年の先輩であるアホ2人を指差す。
道場の入口そばでくたばってる、悪党2人組だ。
「では、ロックよ……。
なぜ、その2人を倒して『手打ち』にしなかったんじゃ?」
「── はあぁ~~! 何いってんだジジイっ!?
男と男の決闘に、イチャモン付けてくる!
チビ・貧弱・落ちこぼれの俺に、多勢に無勢でかかってくる!
そんなヒキョー者だぞ、アイツら!」
「……貧弱……落ちこぼれ……。
ロックお主、自分の事を、そのように思っていたのか……?」
ジジイが、何か遠い目をしてる。
俺は構わず、事情説明を続ける。
「コイツら、次はもっと汚ねえ策を使ってくるだろ!
『か弱い女の子を人質』にしたり!
── うわあぁ……っ!?
ア、アゼリアがさらわれちゃったら、どうすんだよジジイ?!」
「あの、アゼリアが……さら、われる?」
俺がこうも熱心に訴えてるのに、ジジイは反応イマイチ。
「アゼリアは、なぁ!
か弱い女の子で、可憐なお嬢様なんだぞ!
もしも! クズでゲスな悪党に押さえ込まれて『ゲッヘッヘッ』とか ――
―― ……ぅぅわぁァッ!?!?」
「……か弱い?
押さえ込む……、あの特級のジャジャ馬娘を?
―― そんなマネができるのは、お主くらいじゃろうが……」
何かよく解らん反論をしてくる。
まったく何考えてんだ、このジジイ……っ
妹弟子・アゼリアは『才能のない俺にも負ける』くらい、か弱い女の子だぞ!
(── いや、違うよ?
ウチの妹弟子に、『魔剣士の才能』がないワケじゃないんだ!)
むしろ、トップクラスの天才だと思うよ!
きっと伝説とかなっちゃう超・天才児!
ただ、あの子は優しさがアダになっちゃうタイプ。
心が天使だから!(身内のひいき目)
きっと、怒りMAXか、闇堕ちか、そういう暴走状態しか本気の全力100%が発揮できないんだろう。
(……ウチの妹弟子、対人戦とかマジ苦手だからな。
剣の達人なジジイはともかく、『ナマクラ剣士な兄弟子(俺!)』にも勝ち越せないとか……)
お兄ちゃん、色々心配です。
── だからこそ!
── そんな子だからこそ!
── 魔力も才能もない俺が、カラダを張って血まみれになってでも!
「女の子はぁ! 男が守ってあげんと! いかんでしょう!?」
俺の血を吐くような絶叫。
「…………ハァ……」
だがジジイは、いよいよ白い目。
『もう、めんどくせえなコイツ』という表情だ。
「……あの子とて、人並み以上にしっかり鍛えておる。
降りかかる火の粉くらい、己で振り払えるじゃろ……」
「ジジイが、そんな放任主義すぎるからだろ!
だから俺がこんなに、妹ちゃんの心配しないといけないんじゃねえか!?
ジジイ、テメー、俺を育成途中で放り出してアゼリアを弟子にしたクセに、色々無責任だろうが!?」
「………………そうか。
まあ、お主がそうまで言うなら、本人にも訊いてみよう。
── これリア、こちらに来なさい」
ジジイは、遠くへと呼びかける。
▲ ▽ ▲ ▽
「なんですの、お師匠さま?」
道場入り口のベンチから立ち上がる、銀髪美少女さん。
―― あら、どこの高貴なご令嬢様かな?
―― もしや、どこかの国のお姫様かな?
まあ、なんて気品あふれる美少女っぷり!
小動物のようにポリポリとクッキーを召し上がるお姿も、口の周りのクッキーの欠片までもが、チャーミング!
これが俺の妹弟子、アゼリア・ミラー(15歳) ──
── 愛称リアちゃん(今日も可憐カワイイ)なワケだ。
「今の話、聞いておったか?
お主はどう思う?」
「うーん……リアは、そうですわね ──」
銀髪美少女・リアちゃんは、碧眼をちょっと細めた。
(うんっ、うんっ! そうだよねリアちゃん?)
可憐で心優しく繊細な、花もさかりの15歳。
ゲス野郎に純潔を狙われる(!?)なんて、乙女のピュアなハートが傷ついちゃうよね?
「── リアも!
お兄様といっしょに、『道場破り』をしたかったのですわ!」
妹弟子の、天真爛漫の笑顔。
「お兄さま直伝の『超必殺アルティメット奥義』で、ズバズバですわ!
ついでに、お師匠さまの『五行剣』で、ザクザクですわ!
リアも、悪い人みんなブッ殺しますわぁ~!」
銀髪お嬢様のニコニコ笑顔から、クソ物騒なセリフが吐き出される。
楽しげにウフフッと笑う彼女は、元気いっぱいに両手を挙げて続ける。
「気持ちよい汗をかくと、夕食のデザートがいっそう美味しいですのよぉっ!
わたくし、3日も修行がお休みで腕がなまりそうですわ!
試し斬りの相手が欲しいですの!」
「……リアや」
「……リアちゃん」
それを見て、師匠であるジジイの心と、兄弟子である俺の心が一つになった。
まさに以心伝心、声も重なる。
── 『そっちの的を借りて、気が済むまで打ち込み練習してなさいっ』
俺とジジイが指さしたのは、魔剣士道場の端にある『人型標的』。
丸太木に鉄兜と胴鎧をつけた、剣術の練習設備だ。
「わかりました!
思いっ切りブンブンですの!
── とりゃー!」
ガン!ゴン!ガン!ゴン!と、妹弟子が木剣で工事現場みたいな音を鳴らす。
だいぶん体力が有り余っていたみたいだ。
それを見て道場の主 ―― 初老魔剣士が、苦笑い。
「―― さ、さすが。
『剣帝』 さまの、お弟子さま方ですね……ハハハ」
「あの、お師匠さま。
俺は、いったいどうしたら……」
赤毛の年上少年は、道場主の袖をソッと引き、なかば涙目。
大失敗して身の置き場がない、という感じのオロオロ具合だ。
(元々コイツがからんできたのが騒動の原因だったし、自業自得よなぁ……)
赤毛少年の凹みっぷりを見ていると、俺もニンマリと口元が緩む。
── まあドンマイ、気にすんなよ!
『粗相して勤務先が吹っ飛びそう』とか、そういう案件って誰にでもあるさッ☆
(俺も前世ニッポンのサラリーマン生活で、ガチ土下座な案件とか2~3回あったしなぁ……っ(経験者の温かな眼差し))
いわゆる『類友』な友情の絆を感じて、心がホンワカ。
―― そんな懐かしい気分のせいか。
俺は、なんとなく過去の記憶にひたり始めた。
!作者注釈!
この作品にはオマージュ要素が含まれています
2023/01/21 タイトルと内容を少し変えました
2024/07/03 解りづらい部分を修正しました
2025/01/14 長くて冗長な部分削りました
2025/03/08 長くて冗長な部分削りました
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