4話 サマルダの森
マルベロス村からガルマンド街へ行くために必ず通るサマルダの森。
ここにはモンスターが徘徊していて、旅人がいれば食料として襲うこともある。
でもモンスターを驚異に思う人間は少ない。
何故なら王国の騎士やギルドに所属する魔法使いとかなら対処が出来る。
しかもモンスターはよほどの事がない限り人里に来ることがないため、人々の生活を脅かす事にはならない。
だけど商人や子供たちからしたら危険な生物のため村から出ることはない。
戦闘が出来ない人間が村から出る場合はギルドの魔道士に依頼を頼んで護衛をしてもらう。
そういう依頼が多いからギルドの経営が成り立っているといってもいいだろう。
お互いに利の叶った要求の上で出来る商売。勿論魔物退治だとか薬草採取だとか色々な仕事があるが一番頼まれるのはおそらく護衛だろう。
「ちょっと遠いけど暗くなるまでには到着するはずです」
「マリエラ。俺だって馬車代まで金を持ってないんだけど、どうするつもりだ」
二人はガルマンド村行きの馬車の中にいた。
乗客は二人を除いて6人ほどいる。
「大丈夫ですよ。私たちは馬車代は払いません、それどころか逆に収入を得ることが出来るのですから」
「収入を得るだと。もしかして護衛として馬車に乗車したのか」
「はいそうです。ギルドで依頼した方が急な用事が入ったとかで困っていたんですよ。だから話を付けて乗客させてもらいました」
普通はギルドで依頼書を発行して、それを持って依頼を執行するのが当然のこと。
それ以外の人間が依頼を代行することなんて出来ない。
もし依頼を受けた人間が来なければ依頼は破棄、馬車の運行は禁止になる。
だからこんな代理なんて絶対に出来ないはずなのにマリエラは交渉を成功させた。
一体どうやったのかアジベルは謎だった。
「どうやって護衛の任務を引き受けられたんだ」
「それは内緒です」
人差し指を口の前にたててウインクする彼女の仕草にドキッとするアジベル。
「お嬢さん方、護衛金はモンスターに遭遇し退治したらお支払しますが、もし遭遇しなければお金は出しませんし、護衛として仕事をしてもらえなければ倍のお代を請求しますからね」
「わかっています。任せてください」
遭遇すればお金を貰えるが、しなくてもタダで乗客出来る。普通に美味しい話だ。
でも1つアジベルにとって謎があった。
「なあ、マリエラ。もしモンスターに遭遇したらお前は戦えるのか」
小声で話しかけるアジベルにマリエラは首を横にふった。
「いえ、私は戦えませんわ」
「おい、マジかよ」
アジベルはマリエラの言葉に驚き固まってしまった。