第3.5話 <ザドキエル>
3話と4話の間のエピソードです。
零奈が超能力者になった瞬間を書きました。
零奈は…お兄ちゃんが心配だった。
零奈が早く帰って面倒見なきゃと思う。
主に朝起きないからねー
キーンコーンカーンコーン
「さて帰ろうかな…」
零奈には愛しの兄が待っている!
妹という漢字は女に末と書く。
つまり未来ある女性の始まりであり、やがては女性すべての末となる存在。
原始にして終末。
アルファにしてオメガ。
すべての女性の最終進化いやメガシンカまで遂げた頂点の存在とも言える。
なんならダイマックスとかしちゃう?
つまり妹最強。
自己満足な超究極妹理論〜妹の起源〜をさておき、湊川零奈は現在中学3年生で主人公(笑)の紅太郎とは2歳差である。
この後に自分と兄の運命を大きく変える出来事があるとも知らずに寵愛する兄のために愛の巣(自宅)へ向けて光の速さで帰宅部の部活動を励むのだった。
ただ帰宅するだけ。
零奈は中学校を出て、自宅へ続く道をはや歩きで進む。走ると息が切れそうになるのでそれはしない。距離的には兄の方が圧倒的に自宅から離れているので兄の方が先に家に着く事はほとんど無い。
「さてと♪今日の夕飯は何を作ろうかな♪」
「またエプロン姿で出迎えて…」
「お帰りなさい!お兄ちゃん!」
「なんてぇぇー♪」
妄想に浸りながら帰路を進む。
しかし妄想しながらでもいつもと違う雰囲気が辺りを漂っていた。
「?」
━━━━━
吹き荒れる風。
急に晴れる空。
パキ……
「え……」
空にビビが入った。
割れた。
空間が歪む。
空に大きな穴が空いた。
━━━━━━
「…!?」
突風が起き、零奈は吹き飛ばされた。
「きしゃゃゃゃ!」
それと同時に自分の頭上を何かが通った。少なくても人では無かった。
「今………のは………」
「ダークドラゴンよ」
その声は突然聞こえた。
見ると自分の目の前に20代くらいの女性が立っていた。その女性はブツブツと呪文を唱えるように口を動かすと、擦りむいた零奈の傷を癒やした。
「あっ……傷が…」
「あなたは一体…」
すると女性は零奈に近づき、目線を零奈に合わせた。
「私はこう見えて天使なの!」
「へ?」
ニコニコと笑顔を見せる女性に対して、零奈は漫画に出てくるようなアホな顔をしてしまった。
「今あなたの傷を一瞬で
直したから分かるよね」
ニコニコ笑う女性は零奈に圧をかけるように言った。いや、逆にその笑顔が怖いって。
何を強制しようとしてるのホント怖い。
仕方なく零奈は半信半疑ながらもその女性の話を聞くことにした。
「私の名前は…ザドキエルと名乗っておこう
かしら。本名は企業秘密だけど」
「え?天使に企業とかあんの?
株式ちゃんと持ってる?大丈夫?」
天使に企業とかはじめて聞いた。ランドセルとかでも売っているのかな。天使の羽。
「これを見てみて」
ザドキエルと名乗る女性は球体を零奈の前に差し出した。水晶のような半透明の藍色の玉だった。そこには零奈が思いもしない映像が流れていた。
「え?お兄ちゃん……!?」
自身の兄の紅太郎と横にいる花香がさっき頭上を通過したダークドラゴンとやらに追われていた。鼓動が止まらない。瞳を閉ざせない。信じるにも信じられない。
「幻覚とかじゃないよね……」
零奈は恐る恐る聞いた。
「事実よ。鏡のような物だから」
女性はそう言うと立ち上がった。
「お兄ちゃんを助けたい?」
手が震えている。だが、それと同時に闘争心も出てくる。更には球体を持っていた女性の手も震えていた。きっとこの人も同じ覚悟という物があるのだろう。零奈の答えは決まった。
「助けたい!」
「よく言ったわ。私と力を共有しましょ」
くれるわけじゃないのか…
すると女性は零奈の頭に手を当てた。
「<ザドキエル>!」
一瞬、寒気がした。
自身の体温が氷のように冷たくなる。
手を握ったら氷が出来る…………
「え?手に氷が……」
零奈が驚いていると女性は説明を始めた。
「私の力<ザドキエル>は氷を使う事が
出来るの」
「試しに放ってみたら?」
零奈は相変わらず半信半疑だが、言われるままに手を伸ばした。
「は!」
ドカーン!
手に出来ていた氷が一直線に飛んでいった。
「凄い…!」
「他にも空気を圧縮して撃つ…
アルティメットバーストやそれの上位互換
のマテリアルバーストもあるわ。
慣れたら使ってみてね」
零奈が関心してるところに、女性は他の技の説明もした。この他にもフリーズドライ等のいくつかの技を教えて貰った。
「じゃ大好きなお兄ちゃんの為に
行ってきな!」
「はい!ありがとうございます!
自称天使さん」
「これだけの事をやっても自称と言うのか」
女性は遠く離れていく零奈を見送り、手を振った。
「これで……良かったのかしら…………
命令と言えど……」
女性は静かに呟いた。
◇東京某所
「司令!大きな空間の歪みが
観測されました!」
1人の役員の声が基地の中に響く。
そして司令と呼ばれた男は肘を付き、指を組んで言った。
「5年前の再来か…」
「はい!今回の方が規模が大きく超能力者が
増えています!」
役員の男が司令の言葉に呼応する。
「これで恐らく紅太郎も零奈も…」
「どうかしましたか?」
役員の男は首を傾げる。
「何でも無い。誠太郎を呼べ。」
「はい!かしこまりました湊川司令」
4話につづく
最後まで見ていただきありがとうございます。
次話をお楽しみに。