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36:お茶会計画




「ルナマリア様を励ます会をやりますわよっ!!」


 サラヴィア様とお茶会をしたり、エル様と逆行前のシャリオット王国とポルタニア皇国について考察した翌日のこと。

 デーモンズ学園に登校すると、生徒玄関で待ち構えていたミスティア様が開口一番にそう言った。


 両手を腰に当ててふんぞり返る彼女の大きなお胸様がぶるるんと激しく揺れ、黒髪縦ロールも連動してドルルンと揺れる。その威力に平伏すように彼女の親衛隊達が背後に控えていた。

 そのお姿はTHE悪役令嬢。

 ミスティア様を悪役令嬢街道から道をそらせることは、もはや手遅れかもしれない。少なくともわたしには無理だとしみじみ思う。


「励ます会というのは、具体的におっしゃいますと……?」

「もちろんお茶会よ! 来週からルナマリア様が登校する予定ですから、それに合わせて放課後にパーッと大きなお茶会を開きましょう! 美味しいお菓子をたくさん用意して、皆で楽しいおしゃべりをしますのよ。不幸なことが立て続きに起きたのですもの、そういう明るい気晴らしが必要ですわ!」

「そうですわね。素晴らしいお考えですわ、ミスティア様」


 わたしもどんなに嫌なことがあっても、エル様のご尊顔を見れば元気になれるもの。そういった気晴らしは誰しにも必要よね。


「それで、ココレット様にも手伝っていただきたいことがありますの」

「はい。なんなりと」

「特進科や高位貴族サロンに所属されている方はわたくしがお呼びいたしますから、あなたには淑女科と経営科の方々をお呼びしてくださる?」


 ミスティア様がパチンと指を鳴らせば、親衛隊の一人がわたしに紙の束を差し出した。

 受け取って紙をパラパラと捲ると、それは淑女科と経営科の生徒名簿だった。


「お呼びする方に印をつけてちょうだい。我が家の方でお茶会の手紙をお出しするから、明日までにお願いしますわ」

「わかりました」


 わたしが了承すれば、ミスティア様は「さぁ忙しくなりますわ! 王都で今一番人気のパティスリーにお菓子を大量注文よっ!」と張り切った様子で去って行った。三人の親衛隊が騎士のように列を組み、彼女のあとについていく。


 ……ミスティア様はエル様の婚約者候補から下りたあと、あの三人の中から婚約者を選ぶつもりなのかなぁ。


 三人とも似たり寄ったりのオーク顔で違いがよくわからないから、覚えるのが大変だろうなと思ったこの日のわたしは、まだ知らない。

 ミスティア様が結局兄にくりそつの銀髪ドワーフと将来結婚するので、別に彼らの顔を覚えなくていいことをーーー……。





「お茶会ねぇ、お茶会……」


 空いた時間に生徒名簿を眺めながら、わたしはミスティア様主催の『ルナマリア様を励ます会』について考える。来週の放課後、学園内で一番広い庭園にて開催されるとのことだ。

 まず間違いなく、ピアちゃんが乱入してくるだろう。彼女宛の招待状を出さずとも。

 それを防ぐ方法はないわけではないけれど。エル様がおっしゃるとおり彼女がゴブリン野郎の手下なら、現実を見せるべきかもしれない。


 エル様は、ピアちゃんがなんらかの魔術か魔道具で、他者を操っているのではないかと話していた。そういう魔道具は伝説級の代物だけれど、ポルタニア皇国の第二皇子であるゴブリンなら手に入れやすい立場にあるのでは、とのことだ。

 もしかしたら聖女ツェツィーリアの『金のクロス』のように、国で保管されているかもしれないし。権力と財力のあるゴブリンなら隠れて暮らす魔術師を見つけ出して作らせることが出来たかもしれない、と。


『アボット嬢は周囲の者を操ってココの誹謗中傷を流し、ココをオークハルトの婚約者候補から下ろさせたいのかもしれない。とりあえずこちらで、アボット男爵家について調べてみるよ』


 エル様はそうおっしゃっていた。


 その理屈が通るのならば、ルナマリア様の事件も同じように考えることができるのでは? と、わたしは考えてしまう。

 ピアちゃんが人を操ってルナマリア様を攻撃し、彼女に消えない傷を残すことでオーク様の婚約者候補から下ろそうとしている可能性がないとは言い切れない。


 もしもこの推理が正しいのなら、わたしはゴブリンとピアちゃんの節穴に現実を突きつけてやるべきだ。


 エル様を除外するっておかしいでしょう!!? と。


 そもそもエル様が王太子で、わたしはエル様としか結婚しないんだから、この国を潰したいならまずはエル様とわたしを引き裂かなきゃおかしいでしょ!!

 どうせオーク様が王太子になるだろうって仮定で策略を巡らせているポルタニア皇国が腹立たしすぎるっ!! 情報収集って言葉を知らないのかしら!?

 オーク様とわたしなんて引き裂かなくても、最初から溝しかないんですけどぉぉぉ!!!

 見せつけてやる。ぜーったいに見せつけてやる。わたしとエル様のラブラブっぷりを、ポルタニア皇国に!!!


 わたしは気合いを入れて万年筆を手に取ると、招待客を選ぶ作業に取りかかることにした。


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