カラクリ◎デイズ
工房「カラクリ」では慌ただしくサムライが動き回っていた。
「ほら、どきなさい。掃除機かけられないでしょ」
テレビを見ながらくつろぐ老人と孫娘はしぶしぶそこを動く。掃除機をかけ終わるとサムライは洗濯物を取り込みに行った。
「まさかサイトーが主夫だったとはなー」
孫娘メイクはしばらく、綺麗に片付けられた部屋を眺めていたが、再びテレビのギャング・スター特集に目を戻した。
サイトーが工房「カラクリ」の用心棒になってから一ヶ月が経つ。最初の三日間は静かに振る舞っていたものの、四日目に床に落ちていたブラウン管テレビに小指をぶつけてからサイトーは家の掃除を始め、今では全ての家事を担うようになっていた。
サイトーが料理を始めるとメイクが手伝いにやって来た。
「サムライって皆こんなに何でも出来るの?」
サイトーは野菜を切っていく。
「昔の主人に教え込まれたのでござる」
サイトーは野菜を鍋に入れると火をかけた。
一方で、工房の扉が開く。現れたのは警察署長のポリス氏である。
「修理を頼みたい」
署長はクラフト老人に時計を渡すとテレビを見た。
「お前もこんなけしからんのを見とるのか」
クラフト老人は時計を分解していく。
「しかし、あの男が街を守っているようなものじゃろ」
署長は椅子に腰掛けるとタバコを取り出す。
「奴め、我々の努力を横からかっさらって行きおる」
署長は苦々しげに煙を吐き出した。
スープが完成した。サイトーは火を止める。
「クラフト殿を呼んでくるから、先に食べてて良いでござるよ」
サイトーは工房へと入る。
中では依然としてクラフト老人と警察署長が話をしている。署長はエプロンをしているサイトーを見て吹き出した。
「クラフト。お前家政夫を雇ったか」
「用心棒じゃよ」
「用心棒がエプロンするか?」
「家事も出来る用心棒なのじゃ」
クラフト老人が時計を組み立てる。
「お前が用心棒を雇うとは、この街も物騒になったものだな」
「昔は良かったのお」
二人の会話にサイトーは首を傾げる。
「この街に平和な頃があったのでござるか」
今の世紀末ぶりからは想像もつかない。
「十年前はな。この街も普通の都市だったんだ。エチゴ製薬が暴走するまでは」
時計の針が遡る。
「十年前に街とエチゴ製薬とのあいだで抗争が起こった。そのダメージで今は身を潜めているが、奴らの作った違法薬物は今も出回ってやがる」
クラフト老人はサイトーを見た。
「わしの息子夫婦もそのゴタゴタの中で死んでしもうたよ」
湿っぽい空気が流れた。
そこへ、メイクが怒鳴りこむ。
「遅い!お腹空いた!早く!」
「あ、直った」
クラフト老人が時計の修理を終わらせた。署長は金を払うと扉を開ける。
「サムライ、あの二人を守ってやれよ」
サイトーにそう言い残すと署長は出ていった。
メイクは二人を引っ張っていく。
食卓に三人が座ってスープを同時に飲む。そして全員が言った。
「冷めてる…」




