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「俺の可愛い下僕たち。炎光のアレンデと遊んでやれ」
「はーいです、魔王さまー!」
「承知いたしましたわ、ラルシド様」
「やったぁ、大暴れーっ♪」
魔王は身体に絡みついていた彼女達を解放する。
三人娘はロリっ娘、お姉様、ギャルの順に魔王の頬へキスを落としていくと、ぴゅーんと宙を飛びそれぞれポーズを取った。
「雷の申し子プチラパ、ですっ。私の電撃に痺れちゃえ、ですっ!」
「清流のミザミ。わたくしの水に飲まれなさい」
「鎖使いラミチェーネ! アタシの鎖で縛ってあげちゃうっ!」
簡単な自己紹介。それぞれ得物を手に――または手のひらに出現させながら――してアレンデへと特攻する! ――――俺もそばにいるんだけどっ!?
「うわぁぁぁっ!?」
俺は猫のように素早くその場を飛び退いた(ていうか転がった)、その刹那に物凄い音。振り返り見れば、アレンデと手をびりびりさせているロリっ娘が向かい合い、お姉様は水で出来た球をいくつも宙に創り、ギャルは鎖をロープのようにブンブン回していた。さっき俺がいたところは大きく地面が抉れている……あ、今頃になってすごい汗が……。
「フハハハハッ! どこを見ている異界の豚ッ! さあ、俺様と遊べ!」
宙を舞ったままのラルシドは愉快げに言いながら俺の方へ炎を放つ。サッカーボールくらいの炎の球がゴォォッと俺に迫る。俺は大慌てで起き上がった!
「うわわわっ!」
「フハハッ! そぉれ、まだまだぁっ!」
「どぉわっ!?」
「もっとだ!」
「ぎゃあああっ!」
「フハハッ! 俺様の美技にひれ伏せ! 酔いしれろ! フハハハハハハハッ!!」
一秒の間も与えられず魔王の指先からボンボンと炎が撃ち放たれ、その度に俺は地面を転がったり飛び退いたり走ったりと忙しなく動き回る羽目に。そのせいであたりは火の海と化している。
ちょ、ちょっと……運動不足の身体には……き、キツイ。ぜぇはぁと息が上がり、途端に足が重くなってくる。
だがしかし、逃げ惑う俺の様子を見て愉んでいる魔王の性分はドSなんだろう。攻撃を止めない。
「なかなか遊び甲斐があるなぁ、異界の豚よ! 豚のクセに素早いではないか!」
「ぜっ…ハァ……ぶ、豚って、連呼すんなぁ……っ!」
右側に炎が飛んできて左に避けると今度は左側に撃ち込まれ後ろに飛び退く。
――――息が上がって、もう苦しい。
周囲を炎に囲まれていることもあり、この空間の気温はかなり暑く、動くと汗が噴き出しあっという間に体力を持っていかれる。加えて20キロ以上体重を増やしたこの巨体で長いこと素早い動作を続けるのは無理に等しかった。俺の足に限界が来て、後ろへ飛び退き足をついた瞬間力が抜けバランスを崩し俺は尻から地面に倒れ込んだ。
そのまま大の字になり荒い呼吸を繰り返す。
転がった時視界に入った異世界の空は暗雲としていて、俺が知る青い空なんてものは無かった。太陽も無い。ただ雨が降り出しそうな黒い空は俺が知るものと同じ。
呼吸を整えながら俺はそんな空を見上げていた。
「ぐっ…ぇ、は、ハァ……も、無理……しんど……」
「むぅ? なんだ、もう終いか?」
魔王はそんな俺を見て掌に纏っていた炎をポンッと消し、あからさまにがっかりした表情で俺を見下ろしてくる。
「“異界の救世主”にしては骨が無い奴だな。所詮豚は豚ということか」
「は、ハァ…………言い……がって」
「ん?」
「勝手に……俺を、呼び、出して……! 救、世主だとか、…ハァ……ッ好き勝手、言いやがって……! 俺はっ…普通の、人間だ……っ!」
雨が降り出す。ポツポツと雫が落ちて辺りを濡らすも、周囲にある熱が消える気配はない。
――――だって、雨が降り出したのは俺の心の中だから。
別に俺を召喚出したのはまあいいとして(そもそも呼び出されたというよりは落とされたという方がしっくりくるけど)、今がどんな状況で何かを手伝って欲しいとか一緒に平和を取り戻して欲しいとかさ、何か一言でも説明するべきだろ?
勝手に呼び出しといて自分で考えなきゃだめってさ、なんか違うじゃん。
召喚するための術かなんかを実際にやったのはアレンデじゃないんだろうけど、心の準備や死ぬかもしれない覚悟もさせてくれず、救世主として役に立てと言ってポイっと放り出して。
……本当、理不尽だよ。どいつもこいつも。
ああ……脳裏に俺を嘲笑った奴らが映る。
――――就職が上手くいかないからって俺にハニートラップを仕掛けたり。変な噂も親友(だと思ってた)が流して、俺が否定しても皆信じてくれなかった。むしろあいつらと一緒になって嘲笑ってきやがった。
親だって、俺の気持ちを聞く前に親不孝者ってそればっかり。
元カノ、元親友、同級生たちや親の顔が並ぶそこに、アレンデの姿も加わる。俺の話を聞きもせず、道具のように俺を扱う凛々しい美女の姿だ。
たぶん魔王もアレンデと同じだろう。自分さえ良ければそれでいいんだ。今俺が涙で訴えかけても聞いてはくれないだろう。
……嫌になるな、もう。
一つ漏らせば思いはどんどん心の奥から溢れ出す。心の雨は水かさを増し、熱となって込み上げる。目頭が熱い。
「誇れるもの、何一つ持たない俺が……救世主、なわけ…ないだろ……っ!」
涙が滲んで、暗い空が絵の具をぐしゃぐしゃに塗ったような景色に変わる。周りにある炎の赤も混じって変な空色だ。
ああ……本物の雨も振り始めたみたいだ。炎の色を映した橙の粒がぼんやりと見える。
まあでも雨なんか降っても魔王が放った炎は消えたりしないだろう。魔法の力ってそんな簡単に消えなさそうだし魔王だし。
……なんて。頭はそんな呑気なことを考えつつも心はまだ嗚咽を漏らす。
涙に濡れ掠れた声を俺は絞り出した。
「せっかく……立ち上がろうと、思ったのに……! なんなんだよ……なんなんだよ皆して! ――そんなに……そんなに、俺の……ッ」
魔王は無言で俺の言葉を聞いている。涙目で彼がどんな表情をしているかは分からないけど大方想像通りだろう。興味なさげに俺を見下ろしているんだ、きっと。
……誰も俺の言葉なんか、聞き届けちゃくれないんだ。
そう思ったら涙腺は決壊し、ぶわりと熱いものが溢れ出す。
「俺のっ、邪魔がした――……ったぁ!?」
何かが俺の眉間にクリーンヒット。すこーんっといい感じに細くて固いものが当たって俺は泣いた。辛くて泣いたんじゃない。痛みに涙したんだ。
額を両手で押さえ悶ているところに、ついで軽いものがポコン、コロンと腹のあたりに。雨にしてはおかしな感触だ。
一番痛かったやつは顔の横に転がった。涙目でそっちを向けば、つい最近再会したばかりの懐かしいものが……
「……ラケット?」
赤色のラバーが貼られた方を上にして地面に横たわる卓球ラケット。柄やラバーの黒ずみ方、側面に書かれた俺の名前。青春時代を共にした相棒がそこにいる。……なんでここに?
俺は身体を起こしラケットを手に取る。お腹の上に乗っていたのはラケットのケースとピンポン球だった。俺が起きるとそれはケースは滑り落ち、ピンポン球が小気味よく異世界の大地を跳ねる。
そこでようやく今まで黙っていた魔王が口を開いた。
「ほう? 泣いていたかと思えば……そうか、お前は武器召喚が出来るのか。何やら見たことのない形状をしているようだが」
「…え、武器召……? あ、これは……」
俺の持つラケットに目を向け興味深そうな反応を示す魔王。口元はニヤニヤしながら観察してくる。
なんか武器とか言ってたけど、いやどう見ても武器には見えないでしょこれ……。
懐かしいものたちの再登場に気づけば涙は引っ込んでいた。俺は魔王にこれの正体を教えようとする。
「武器じゃなくてたっ」
「――――まあ、なんでもいいさ。この俺を泣き落とそうとした上で隙きを見て仕掛けようとしたのだろう? フハハ、小癪な真似をしてくれるなぁ、異界の豚よ!」
「きゅう……って、は? え?」
「喜べッ! 俺は最大級の力をもってお前を相手にすることを決めたぞッ! フハハハハハ!」
……しかし、なぜか魔王が一人で盛り上がり始めた。……なんでそんな解釈になるんだよ。隙をついて攻撃ィィィッとか、そんなこと俺ができるわけないだろっ!
「お、俺の話を聞けぇぇーーーー!」
「ハハハ……フハハハハハハハ……ッ!!」
「おーーーいっ!!」
赤いオーラを纏い出した魔王はやっぱり聞いちゃいない。
マズい、ものすごくマズい……気がする。赤いオーラを纏いだしてから魔王の雰囲気が途端に凶悪なものに変わったように感じた。
魔王は右手を顔に添え、左腕は自分を抱くようにして身を屈めくつくつと笑っている。その姿は如何にも自分の世界に入ってますって感じで怪しさMAX120パーセントだ。
魔王の身体に纏わりつく赤いオーラはマントのように広がり始めた。それとともに魔王から滲み出る雰囲気も凶悪さを増し、俺は恐怖から思わず後退った。
「フハッ、ハハハ……! 愉しい、愉しくなってきたぞ……!」
顔に添えられた右手の指の間から魔王の表情が見える。オーラと同じ赤色の鋭い眼差しが俺を射抜いて、背筋がヒヤリと冷たくなった。
この展開はゲームに例えると、ラスボスが二回目の戦闘形態を取るところに似ている。
――――つまり、この後魔王は変貌するんだ。
「フハハハハハハハッ! ――――昂ぶってきたぞぉ!!」
魔王が勢い良く身体を開くと、魔王が纏っていたオーラが飛散した。圧倒的なまでに膨れ上がった力の爆発だ、それが暴風となって俺に襲いかかる。
「うわ……っ!」
前よりも威力のあがったそれに俺はひっくり返った。俺の傍らにあったラケットのケースが飛んでいき、炎の壁にぶち当たり燃える。
(け、ケースが……!)
思い出の品が業火に焼かれた事に俺はショックを受けた。あっという間に燃えカスになっちゃったからな……無くなって困るものではないけど、青春を共にした道具なんだ。悲しい……。
ピンポン球は落ちた時にどこかへ転がっていってしまったし、無事でももうこの風に飛ばされて同じように燃えてしまっただろう。ラケットは俺が手に持ったままだったため無事だ。
「さあ! かかってこい、異界の豚よ! その武器で! この俺様を! もっと……愉しませてくれ!!」
愉悦に満ちた表情かつ狂気的な目で魔王が告げる。
完全に雰囲気が変わってしまった。売れないロックバンド風の男だったのが、魔王らしく凶悪なプレッシャーを放つ。そのせいでさっきから身体の震えが止まらない。俺の本能が警鐘を鳴らしている。――これは危険だと。
魔王の手に炎が出現する。さっきよりも明らかに熱量が高いやつだ。
(ど、どうする……? このままじゃ、お、俺……)
間違いなく殺される。魔王の敵として、魔王が放つ炎に身を焼かれ……灰になる。
ドラゴンの炎に焼かれて死んだアレンデの部下達と、これからの俺が重なる。真っ黒に焦げた人のようなもの……焼け爛れた赤黒い肌、身体の一部は骨に、もしくは黒炭となりその灰は風に流され……俺も、そんな風に?
――――嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!
そんな死に方、したくない!!
俺はラケットを握る手を強くした。瞬時に様々な思考が巡る。
……俺が今持っているのはこの卓球のラケットのみ。これで戦える? いや、燃やされるのがオチだ。じゃあ、一体どうすれば?
魔王は自分の世界に入りきってしまっているから全く話を聞いてくれない。どうにかして魔王の気を惹かなきゃ……!
――――でも、どうやって?
「ええいっ、隙ありっ!」
「……くっ! しまった!」
カキィンッ! と金属音がしてハッと我に返る。すると目の前にアレンデの持っていた波状の刀身を持つ剣が地面へ突き刺さった。
慌ててアレンデの方を見れば、彼女はギャルに背後からの攻撃を受け身体が鎖で縛られていた。
「――――っ! そんな!」
これには俺も愕然とした。あのデカイ炎の玉を打ち返し、ドラゴンも一刀両断したアレンデは強いと思っていた。だから最悪アレンデの協力を得て魔王の相手をすることも一瞬考えた。でもそのアレンデが武器を取られ、縛り上げられている。汗が一筋、額から流れ落ちた。
魔王もその様子を横目に捉え、愉悦に笑っていた顔が狂喜へと変える。
「フハハハハハハハッ! よくやった、ラミチェーネ、さすが俺様の可愛い下僕だ……! あとでお前には褒美を与えよう……俺様という褒美を、な!」
「エへへへ、やったぁ! ラルシド様、愛してるっ!」
「あらっ、ラミチェーネだけずるいわ。ラルシド様、わたくしの清き水流も見ていてくださいませ」
「ラルシド様、私もご褒美が欲しいな、ですっ!」
「ぐぅ……チッ、油断した……!」
魔王の言葉に三人娘が三様の声を上げる。ラミチェーネの鎖に縛られたアレンデは苦痛の表情を浮かべていた。両腕を巻き込む形で腰しから胸下あたりに掛けてを鎖でぐるぐる巻きにされている。それがラミチェーネの力で巻きつきを強くし彼女にダメージを与えていた。
「フハハッ! ミザミ! プチラパ! いいだろう、お前たちにも褒美をやる! その女――アレンデをもっと苦しませる事ができたらなぁ! だが、殺してくれるなよ? 最後は必ず俺様の手でその女を……!」
狂喜の瞳がアレンデに向けられる。ぺろりと舌なめずりをして、鎖で縛られた美女を見下ろす魔王。二人の間には何か因縁でもあるのだろうか? アレンデを見る目は狂喜よりも何かもっと別の感情が隠れている、なぜかそんな風に見えた。
けどそんなこと考えている場合じゃない! 変わった戦況……俺は窮地に立たされたんだ。
「さあ、異界よりやって来た救世主よ! この状況で、俺様にどう立ち向かう!」
魔王の持っていた炎の塊が形を変え、うねうねと伸び蛇のように変化する。鎌首を持ち上げ大きく口を開け威嚇する炎の大蛇だ。チロチロと細長い舌を出し、ぼうぼうと火を吐き出す。
「ど、どうって……」
ぎり、と奥歯を強く噛む。魔王に立ち向かう術なんて何も思いつかない。俺はそれ以上何も言えず俯く。
「フハハ……! お前の思考を読んでやろう。――――俺様の力の前に恐れ慄き、為す術も持たない。だから、俺様には勝てる気がしない……だろう!?」
「…………」
それはその通りなんだけど、そんなことは一目瞭然だし敢えて俺の思考を読むほどじゃない。ナルシスト然とする魔王には……まあ、大事なことなんだろうな。本当の事だから、俺は悔しかった。
「そう思うのも無理はなかろう! 何故なら! 俺様は! 最恐にして最強の魔王だからな!! フハハハハハハハッ!」
大蛇が空を滑り俺の周りを取り囲む。近づいた熱にチリチリと肌が焼ける感覚がする、――熱いッ!
「く、くそ……! あ、っち……!!」
下手に動けば大蛇に触れたところから燃やされてしまう。俺はすぐに焼けてしまいそうなラケットを胸に抱えて縮こまり、熱に堪えた。けど物凄い暑さに全身から汗が噴き出てくる。身体中がドロドロした感覚を纏い、ベタベタと服が肌に貼り付く。ぼたぼたと額から垂れ落ちて汗が目に入って痛い。
「フハハ、フハハハハハハハッ! 何故、俺様が最強なのか分かるかっ!? フハハハ、――――そう、俺様が無敗だからだ!!」
「ぅわっ……! …ぐ…っ!」
サウナ以上の空間を作り出した大蛇が俺の周りをぐるぐる回り、火の粉が舞う。それが俺へと降ってきて鼻頭を火傷し、服はあちこちが焼け焦げて一円玉ほどの穴を作った。
とぐろを巻いた大蛇の身体の隙間から目にした魔王は、これ以上ないほど狂喜に顔を歪め眼下の光景を見ている。魔王が纏うオーラも喜び狂って舞踊っているかのようにゆらゆらと揺れていた。
「――――何故、無敗かっ!? それはこの魔王ラルシドが、全ての戦いに勝ってきたからだ! 刃向かって来た者全てを俺様の火焔で焼き尽くし、頂点に立ったのだ!」
――――っ。
それを聞いた瞬間、脳に走った閃き。
(…………全ての戦いに?)
魔王が言った全ての中に、コレはあるのか……? ――いや、無い! 魔王はコレが何なのか知らなかった!
(そうか、あったじゃないか。魔王に立ち向かう手段はこの手の中に……!)
俺の話に耳を貸さない魔王。傾聴させるには、魔王の興味を引けばいい!
上手く行く保障は無い。けど、俺はやっと現れた希望で自信に満ち溢れていた。こんな気持ちはたぶん、中学校以来……。
俺は胸に抱いたラケットを強く握り、大きく息を吸った!
「俺様に敗北などという単語は無い……! 俺様にあるのは、勝利のみ――――」
「――――俺は! お前が知らない戦いを知っている!!」
「……何?」
俺の精一杯の叫びは思惑通り魔王の耳に入った。魔王が呟くと俺の周りをぐるぐる回っていた大蛇がぱっと離れる。魔王と俺が真っ向から見つめ合う。
……イケる! 確かな手応えに心の中でガッツポーズをする。
俺は魔王から目を逸らす事なく、更に言葉を吐き出す。
「お前、全ての戦いに勝ってきたって言ったよな!? 俺は知っててお前は知らない戦いがあるのに、それで全てに勝ったなんて言えるのか!? それで最強だって言えるのか!?」
「ぐ、ぬ……! なんだと貴様……!!」
魔王の顔色が変わる。狂喜に溢れていたのが、今は明らかに動揺を見せている。赤いオーラは萎みつつあり、俺が投げた撒き餌に意識を向けていた。
あともうひと押し……!
「俺が言う戦いに勝ってみせてから最強だって名乗るんだな!!」
「ぬぅぅ……っ! ――――いいだろう! その戦いとやらを俺様に言ってみせろ!」
そして魔王は完全に食らいついた。あとは竿を引き釣り上げるだけ……!
魔王の発言にこの場にいる皆が注目する。
鎖で縛られたアレンデも、その鎖を引っ張るラミチェーネも、水を纏うミザミに雷玉を作っているプチラパも皆動きを止めてこっちの様子を見守っていた。
俺は掌に馴染む感触を強く握り締め、それを魔王に見せるように掲げ、言う!
「――――魔王ラルシド! 世界の平和を賭けて……卓球で、勝負だ!!」
やっと物語が進んだ感。