第4話
最終話です!
結局撮影は続く事になりました。
三脚カメラから台所に続く廊下を少し進み実況をします。
『見て下さい。使われていた食器やテーブルがそのまま残されています。』
懐中電灯で辺りを照らし、ギシギシ軋む床をまるで綱渡りするかのように歩きました。
そして霊がよく現れるという和室にこれから入ることになりました。
『私、鈴木マイはこれより一人で霊がよく目撃されるという和室に潜入します』
震え声でそうカメラに向かい、私は足取り重くビデオカメラ片手に、襖に手をかけました。そのときなんとなくスタッフの空気が何かおかしい感じがしましたが、さっきの照明の不具合のこともあるし内心みんな怖いのだろうと思い過ごしました。
ひんやりとした空気が漂い始め、六畳間がカメラに映し出されました。
私はさっきの違和感をずっと考えないようにと自分に暗示をかけていましたが、ダメでした。
最初に玄関から家にあがる際に感じた違和感‥‥それは廊下の突き当たりの三脚カメラの後ろに白い人形のモヤモヤのようなものがものすごいスピードで床を這っていった姿を見たからです。
あれは見間違いだ。そう思っていたのに‥‥。私は自分の仕事を忘れ硬直してしまいました。
なんとその白いモヤモヤがその和室の隅にうずくまるようにしていたのです。
カメラを通してなのでそれを直に見ている訳ではありませんでしたが、足が何かに縛られているような感覚に陥り、頭の中が真っ白で‥‥
ザザッ 通信器具にノイズが入りました。
『鈴木さん、大丈夫ですか?!』スタッフの声が深刻に訴えて来たのと同時に、カメラを力尽きたように降ろした瞬間
目の前に真っ白で歪んだ悲しそうな顔をしたその白いモヤが迫ってきました。
それからどうなったのかは覚えていないのですが、スタッフ曰く私は気絶して倒れて病院に搬送されたそうです。
それからどういう訳か現場のカメラのほとんどが壊れ、唯一おさめたあの和室の写真だけは現像することができたらしいのですが、すぐにお祓い(供養)してもらうことになり寺院にあるそうです。
もちろんオンエアされることもなく、私はこれを機に鈴木カノンとしての芸能界を引退しました。
あの写真に一体なにが写っていたのか私が聞いても誰も答えてくれませんでした。
スタッフ間にて。
『あの顔、やっぱりあの鈴木マイだよな?』
『噂は本当だったんだな。撮影のとき自分のこと鈴木マイだなんて言うから冗談だと思ってたけど‥‥』
開きっぱなしの芸能雑誌には『自宅で自殺したタレント鈴木マイの幽霊騒動』と題してあの家の写真が載っていた。
同じ鈴木という苗字のタレント鈴木カノンが潜入した心霊スポットの一つだった。
ホラー番組いかがでしたでしょうか‥‥ちょっと意味不かな?
タレントとして活躍していた鈴木マイは自殺をしてしまった訳なのですが生前の芸能人としてのポリシーで同じ苗字の鈴木カノンに取り憑いて仕事をするという話です。(つまり自殺を理解していない)
途中出て来た白いモヤモヤや顔は鈴木マイの本当の姿(魂が彷徨ってる)を表現したかったんです。カノンにとってもマイにとっても最後の芸能人ということです。