第3話
第3話です。
家の中へ進みます。
ーガラッガラガラガラ
引き戸をスライドする音が静かなる家に響き渡りました。
『や〜、怖い〜。それでは皆さんっこれから空き家の中へ潜入していきたいと思います』自分でも普段より高い声で話しているのは分かっています。
照明さんが玄関を照らし、私は一歩前へ踏み出しました。
玄関の床はコンクリートのようです。上がるのに靴を脱がなければと一瞬思い下ばかり見ていましたが、靴のままで行くのだったとハッとして目線を廊下へ向けました。
廊下の突き当たりに、三脚カメラがセットされていたのですが私は言葉にならない違和感を感じました。
本当に一瞬だったので気のせいかもしれない。きっと最近仕事が増えてきたから疲れているのかもしれない‥‥。
そう自分に言い聞かせました。
その直後、カットが入りスタッフに『大丈夫ですか?』と聞かれました。
私は慌てて『す、すみませんちょっとボーっとしちゃって』と笑ってごまかしました。
両腕を組み、寒い時みたいにソワソワしました。
撮影が再び始まり、ゆっくりと奥へ進んでいきました。
壁紙はところどころ剥がれていて、床はホコリや虫の死骸‥‥廃れているのがよく
分かりました。
廊下の途中で2階に続く急な階段がありましたが、階段の損壊が酷く危険なため1階での撮影だけと打ち合わせで話していました。
階段を通り過ぎ、突き当たりの三脚カメラのところまで着くと
フッと辺りが暗くなりました。私は何が起きたのかと思い動揺しました。
スタッフの『え?照明どうした?』という声で照明が点きました。
『すみません、なんか調子悪いみたいです‥‥あ、でも直ったんで‥‥』
撮影陣の空気に波紋が広がりました。
中には女性のスタッフも居たのですが、喉の調子が悪いのか怖いのを紛らわすためか、咳払いをしています。
演出ではないというのが引っかかり、内心私はすぐにでも引き返してしまいたい気分でした。
読んで下さった方、ありがとうございます!
彼女は一体廊下の突き当たりで何を見てしまったのか‥‥。次に続きます。