プロローグ
プロローグです。
東雲西中学校二年四組の富永社は「ラブコメ体質」だ。
そんなことは 中学校に居る誰もが知っているし、その実証ともいえる状況が目の前にある。
たとえ社本人がどう思っていようと、幼馴染みに従姉の先生、後輩に先輩、オマケに義理の妹なんかが周りに布陣していれば、傍目からはハーレムエンド確定の、垂涎シチュエーションなのだ。
当然と言うか何と言うか、社の靴箱には毎朝果たし状の束が突っ込まれているし、女子は面倒事を避けてか近づいてもくれない。
「毎日が楽しそうでいいね」とは、クラスメートの発言である。
そして「義理の妹だけでもいいから譲れよ」とは、悪友である峰隆志の発言である。
いやそれは無理だろうと社は思うし、この状況はちっとも面白くなんかない。
なぜなら、彼にとって幼馴染みとは自分の失敗や欠点などの歴史を知る証言者であり、
従姉とは溺愛するあまりに社をとことん甘やかすダメ教師であり、
後輩とは社を面倒事に巻き込むトラブルメーカーであり、
先輩とは思いつきで社を顎で使う生徒会長(君臨者)で、
義理の妹とはそれらの総まとめ的存在なのだから。
社は、とにかく普通の生活が送りたかった。
普通に学校に行って、普通に授業を受けて、友達とくだらない話で盛り上がって、
たまに女の子と話して、もしかしたらラブレターをもらったり、そんな嬉し恥ずかしの学園生活を送る。
ああ、なんとその想像中の世界の甘美なことか。
だが現実は、そうも甘くはないのである。
幼馴染みはパンツ丸見えの体育座りで煎餅をばりぼり齧るし、
従姉の先生は社が授業で何を答えても正解にしてしまうし、
後輩はさあ食べてみろと言わんばかりの勢いで産業廃棄物を箸で口元へと運ぶし、
先輩は一抱えもある生徒会のプリントを社一人に押し付けては私物のテレビを見て和んでいるし、
義理の妹はそんな社を指差し笑うのが日課なのだ。
社にとって一番耐え難いのは、そんな彼女達の外見が揃いも揃って美人である事だった。
そんな悶々とする日々に辛抱たまらず、社は隆志を前にひっそりと漏らしたことがある。
「どこかにいい女の子っていないのかな……」
そんな社の言葉に、一瞬の静寂が訪れる二年四組。
その時クラスメート達の頭の中では、ラジオ体操よろしく号令が響いていたという。
(さあみんな、腕を大きく前に振って)
クラスメート達が一斉に開いた手を、
「いいかげんにしろっ!!」
前に突き出した。
そう、これが世に言う「四組のユニゾンツッコミ事件」である。
いかがでしょうか?ラブコメ初挑戦なので、評価及びコメントをお願いします。面白ければどこが面白かったのかを、逆につまらなければどこがつまらないのかを書いて頂けると嬉しいです。評価・コメントは今後の参考にしたいと思います。
追加情報:マス空け・改行変更しました。(12/27)