第5話 ーー引き篭もりを悩殺!!ーー
時間を忘れたかのように雲が流れていく。
ラザニアを平らげ、部屋のベッドでくつろぐ二人時間を忘れたかのように雲が流れていく。
ラザニアを平らげ、部屋のベッドでくつろぐ二人。一体この二人は何をしているのだろうか?
「ってほんとだよ!何しにきたんだよお前帰れよ!」
「えっ?もう?」
「もう?じゃねーよ。元々理由もなくきたんだろーが」
「理由なら、あるよ……」
「なんじゃい」
「え、と……恥ずかしいから言えない……」
「………」
「………』
ああッ!?
「じゃなんだよ!お前何しに来たんだよ!」
「ちょっと黙ってよ!」
うわ、逆ギレされた!
その時、何かを思い出したかのように丸々が胸ポケットからなにやらメモ帳らしきものを取り出した。
「なにそれ?」
「ちょっと黙ってよ!」
うわ、また逆ギレされた!
「ちょ、ちょっと後ろ向いてて……」
「今度はなんじゃ……」
「いいから、早く!」
あぁ、もうなんでもいいや……。
不本意ではあるが早く終わらせたいので仕方なく後ろを向いた。
「えっと……両手は腰より少し後ろあたりに付いて、なるべく左右対称になるように……左右対称ってなに?膝裏の角度が約四十五度……」
後ろのあたりからすげー馬鹿っぽい呪文が聞こえるんだがこれはなんなんでしょうか……。お前成績いいんじゃなかったっけ?てかほんとになにしてんの?
「あの、もういいっすか?」
「あ、うん!なるべく見ない様にお願いね……」
どっちだよ……
そう思いながらも振り向いて見る。
そこには……
「い、いやーん……」
「…………」
世界が止まった。この瞬間をロストジェネレーションとでも名付けようか。
「何してんだ、お前……」
そこには、ベッドについた両手に体を任せ、脚の膝と膝を少しずらし目にくっつけていたセーラー服姿の丸々の姿があったからだ。
俗に言うセクシーポーズとでも言うのだろうか……。
「え、なんか言ってよ……」
「言葉が出ません……」
「ふ、踏まれたい?」
そう言い足の裏をこちらに向け、指をくいくいと動かすこもる。
「…………」
「なんか言ってよ……」
「なにがしたいんだおまえはっ!」
「あれ、喜ばない?なんで!?」
「そういうので喜ぶのはごく一部の逸材だけだ!」
いや逸材じゃねぇよ!
「し、失敗!えーと、次は……」
アセアセとしながらメモ帳をペラペラとめくるこもる。
「ちょっとそれ貸せ!」
「あ、ちょっと!!」
いい加減色々とまずいと思ったので、取り上げてめくって見る。
「なになにぃ?デキルオンナについて。まずこの技術を扱うにおいて必要な環境を作り上げる。それはベッド。この秘技を駆使するのにベッドは必須である。うまく対象を誘導し、状況作りに掛かる」
「返して!返してぇ!!」
返さない。
「対象をベッドまで誘導したら、タイミングを図る必要がある。体位を作るところを見られるとマイナスなので、対象には後ろを向くように指示しておく」
「やめてぇ!読み上げないでぇ!」
やめない。
「対象が後ろを向いたのを確認したのち、秘技を発動する。発動が完了したら対象を呼び、こちらを向かせる。この時、なるべく余裕をもった顔を維持する事が大事。対象に焦りがあることを悟られては効果が激減してしまうためである。
この条件をクリアした状態で、対象がこちらに振り向き、決めゼリフを言い放てばゴールイン」
「お願い!お願いします!返してください!」
だが断る。
「もしも、失敗してしまった場合は対象がこの出来事を忘れるまで秘技を使うことはできない。一度見られた技は対策がしやすいからである。
なお、万が一にもこの秘技が通用しなかった場合のためにもう一つの秘技を使うと良い」
「ダメ!ダメダメダメ!!もうやめてぇえええ!!」
「それを発動するにはまず、対象に対して前かがみになり、両手を中央に寄せ、上目遣いを行う。この時、服の第一から第二のボタンは外しておくこと。それが出来れば完全勝利。出来なければ……完全敗北……。検討を祈る」
常軌を逸した内容だった……。
「完全敗北だな……」
「あ、あぁぁ……」
敗北宣言に項垂れるこもる。
いや、マジでおかしいぞこの内容。
なんでこんな具体的なの……?
「いや、なんと言うか……変わった趣味ですね……」
「あうぅっ!!」
さらに苦しむ丸々。あれ、フォローになってなかった?
「もう泣きたい……」
「そっすか……」
なんか気まずい。これって俺が悪いの?どっちにしろ慰めなきゃいけない雰囲気……。
「にしてもこれ誰が書いたんだよ。性癖が色々とヤバイぞ。お前が書いたわけじゃないんだろ?」
「うん、学校の友達……」
「これが悪い冗談じゃないんだったら、本気でそいつの性癖を疑った方がいいぞ?なんか、マジヤバイ……」
「そんなことないよ。ちゃんといい子してるよ?……うん?いい子してるかなぁ……?」
「いや、俺は会ったことないから知らんが……」
「とりあえず会うたびに弄ってくる」
「それはいい子してないんじゃないか?いや弄りの度合いがどの程度かわからんけども。どういうことしてくるんだ?」
「そりゃいつもにぃの……じゃなくてなんでもない!」
「え、なんで俺……?俺陰口言われてんの?」
入学式しか行ってないのに存在を認識されているとは意外だな。
「違う違う!陰口とかじゃなくて!」
「じゃあなによ?」
「なんでもないの!」
「………」
よし、もうお引き取り願おう。
「出口はあちらでございます」
「うん……ってまだ帰らないよ!」
「アイちゃん、お客様がお帰りです」
「ハイハーイ。出口はあちらでございます」
「だからまだ帰らないってば!」
いやいや帰っていただきまする。
俺はポケットから携帯を取り出す。
「よーしアイちゃん、今から読み上げるアドレスにウイルスを送ってくれ。えっとー、mojumaru4649@……」
「ってそれあたしのアドレスじゃん!」
「ウイルス送信中〜」
アイちゃんが可愛らしい意地悪めいた声をあげて言う。
「ちょっ、やめてっ!!」
「送信中〜」
「わかった、わかったわよ!用件言うからやめてッ!」
「冗談だ、アホ」
俺はそこまで鬼じゃない。
余程焦ったのか、ゼェゼェと肩で息を息をしているこもる。
「てかなんだよモジュマルって、キモ……」
「キモイとか言うな!」
「はいはい、じゃあ約束通り用件言ってちょーだい」
こもるは納得いかないのか、しばらくぶー垂れた顔をしていた。
第5話でっすよー