第3話 ーー何となく家に入れて!!ーー
時刻は17時。
そろそろ太陽が引っこむ時間だ。
家時が街全体に響き渡り、子供達に撤退命令を下す。
まあ俺はもとより撤退している身だが。停滞でしたすみません。
〈Neet Love〉探しはアイちゃんに任せ、溜まっていたアニメを適当に視聴することにした。
見ていたアニメの中で、母親を巨人にモグモグされた主人公のセリフがちょっと気になった。
え、駆逐だけでいいの?駆逐って追い払うって意味なんだけど……。
ふつー復讐に目覚めて殺してやるとかいうところじゃないの?
なかなかやさ男な主人公だ。がんばれよ。ヘレン•ウェーガー。
何本かアニメを消費したところで、ふと目をやると外はもう殆どの光を失いかけていた。
「もう19時か」
晩飯の用意をはじめる。
母さんは仕事がある日は夜遅くまで帰ってこない。場合によっては泊まり込みまでする。
つまり一人だ。
当然、俺が料理など作れるはずもなく、素人でも用意できるような簡単な食事しか食べれない。
言うまでもなくレトルト食品やインスタントの類だ。
外食という選択肢もあるにはあるが進んで外に出たいとは思わない。一人でファミレスとか矛盾してるし。
「どーれにしよっかなー」
常備されている何種類ものカップラーメンを人差し指でトントンと指しながら考える。
朝はとんこつで昼は醤油だったからなー。じゃあ夜はシーフード!
言葉と同時にヒュバッ!と手を伸ばし、山の中から一つを取った。
あとは、野菜だ。
冷蔵庫の中をあさり回し、レタスを一玉取り出す。
別に好きではないのだが以前カップメンオンリーライフを送っていたら、割と本気で体調を崩してしまった。
案の定、栄養不足が原因だった。
これはいかんと思い、毎日皿一杯分のレタスをノルマとすることにしたのだ。
カップメンとレタス。最高のカッタスレタップコンビだぜ!(意味不)
「ん?」
不意にインターホンが鳴り響く。
「…………」
留守ですよー。
数秒後、また鳴り響いた。
「…………」
留守だってばー。
「…………」
二十秒経過。帰ったか?
ヒンポーン。
……鳴り響いた。
くっ、強情な輩だぜ。
仕方無く玄関のカメラの映像だけ覗いてやった。
「………」
こもるだった。
ジト目で数秒見ていたら何やらもう一度押しやがろうとしていた。
「やめろうるせぇ……」
止むを得ず出てしまった。
「あれ、にぃ?私だけど。珍しいね、にぃが出るなんて」
何故かもじもじと遠慮気味に喋るこもる。
「ただいま留守にしております。ピーと言う発信音の後にメッセージをどうぞ」
「いやいや電話じゃないから!それに留守でもないし!」
おやおや気づいてしまったかボーイ……女の子でしたー。
「今母さんいないんだよ。なんか用か?」
「い、いないの?よかった……」
「よかった?」
「あ、いやっ……こっちの話!」
何がしたいんだこいつ……。
「あの、入ってもいいかな?」
「なんで?」
「え……な、なんで?とぉ、言いますとぉ、えと……なんとなく?」
「モブ詐欺でももうちょいマシな嘘つくぞ。それになんで疑問形なんだよ……」
「いーじゃん別にー!私たち親友でしょ!?」
「たった今、親友らしからぬ発言が聞こえたんだが……」
親友ってこのセリフ言っちゃだめだと思うんだよね。
唐突に疑問に思ったけど、何で親友って親友って書くんだろう?親しい友達ってのは分かるけどさ。ニュアンス的に親友達にも聞こえちゃうよね。故に感じ外が生じる可能性があると思うんさ。だからこの場合は親友ではなく、真の友達って意味を込めて『真友』ってのが一番相応しいと思うんだがその件はついてどうお考えだろうか?というか何で『真友』って単語が存在しないんだろう。一番しっくりくると思うんだけど。
ちょっと携帯の辞書で調べてみる。
あ、あったわ『真友』。なんか『心友』ってのもあるんだけど……。あまりにも人生で聞かない言葉だから存在を疑っちゃったぜ。
「えと……にぃ?聞こえてる?」
聞こえてない。
『親友』仲の良い友達。
『真友』本当の友達。真の友。
『心友』心から通じ合っている友達。(辞書より)
果たしてこの三つの単語の違いって何なんだろう。そしてどう使い分ければいいんだろうか。殆ど意味一緒じゃね?特に『親友』と『真友』。とりあえずこもると心から通じ合ってるかと言われたら答えはノーなので『心友』という表現は適切ではないだろう。ならばこうやって使えばいいのかな?
「あのなこもる。俺はお前のことを親友だと思ったことはあるが、心友だと思った事はないんだぜ?(キリッ)」
完璧!
「えっと、……どっち?」
はい伝わってない。
まあ心友なんて言われても理解できんわな。
「で、理由はなんとなくですか……」
「え?う、うん……」
若干の間……。
「ダメ、かな……?」
……グサッ。
ハーイセンセー、「ダメかな」は反則だと思いまーす。
正直ちょっと堪える。
こもるはいつも横暴な態度だが、容姿はそれなりで顔立ちも整っている。
おそらく世間的には可愛いという部類には入るだろう。
俺の中ランキングではアイちゃんに次ぐ第二位の実力を持っている。(もともと知り合いの女の子なんてほとんどいないせいもあるが)
「わーったよ……」
まあこんだけ言ってんだし入れないのもそれはそれで可哀想だな……。
玄関へ向かい扉を開ける。
「どーぞ」
「あ、ありがと」
おどおどとゆっくり入ってくる。
とても遅い……
なんだよ。お前が入れろっつったんだろ……はようせい。
「アブナイ隔離施設の勧誘だったらお断りだぜ」
「え!?そ、そんなわけないじゃん!あと学校をアブナイ隔離施設とか言うな!」
「そっすか……じゃなんで来たんだ?」
黙りこくって遅いペースながらもリビングに向かって行くこもる。
え、なんか言ってよ……。
第3話でっすっ