ある人外のはなし
『…き、みは…生きて?さい…ごま、で…ほら、泣くな…』
「…。ある…じ…さ、ま...?…また、また…私を…置いて、いくの…ですか?」
もう、何度目だろう…この場面を見るのは…
そこに至るまでの時も暮らしも違うけれど、終わりはいつも…いつも同じ。
最初に主様が私を拾ってくださった時から何度時代を巡っただろう。何度、主様を見送っただろう。何度…主様のことを待っただろう…
「きゅーん、きゅーん」
『ん?お前、怪我…してるのか?…おいで、ほら、治してやるから』
怪我をして動けない私を主様が助けてくれた。主様…主様…あの時から…私は…主様の役に立てているでしょうか?恩を返したくて、主様を探しながら悠久の時を生きている。
ある時は拾われ、ある時は買われ、またある時は雇われ…とにかく私は主様のお側にお仕えていたかった…
だって、主様はいつの時代も主様だったから。
「主様…不甲斐ない私をお許しください…次の時代こそ、きっと、きっと主様がその天命をまっとうできるよう…御守りいたします故…」
主様が先立たれてしまわぬように。主様に遅れぬように…
「主様…主様はズルいです。…どうして、私に守らせてくれぬのですか…主様…私は…」
主様と一緒に死にとうございます
これは助けてくれた人に惚れてしまった人外のはなし。
これは死にたくても死ねない人外のはなし。
これは惚れた人を守れない人外のはなし。
彼女はまた悠久の時を歩んで行く。
愛しい彼と巡り合うため。
愛しい彼を今度こそ守るため…