ユウトの要求
あれだけのことがあったのに死者は7人だった。
しかも、全員がジノの連れてきた者達。
この辺は、事態が発生した時にジノが何も言わずに逃げたことと、簡単とはいえ魔法を覚えていたことが結果を分けた。
さて、無事だった村人は中央の広場に集まる。
その中にはしばらく姿を見せなかったジェシカもいる。
髪がひどいことになっているが。
「あの、ユウトさんはこの村に戻ってきてくれるんですか?」
「それはこれからの話し合いで決まるんじゃないか?」
アンネの言葉にユウトがそっけなく言う。
「今回の件の報酬として、俺が要求するのはただ1つ。」
そう言うと、ユウトは俺を指さす。
「ミツルをこの村の代表、つまり村長にすること。」
その言葉に真っ先に反応したのはジェシカだった。
「任せたわ!」
今までで一番と言っても過言ではない笑顔で賛同する。
「って、待て待て。」
普通は、俺を村長にしろ、じゃないのか!?
「ミツルは今回の件で真っ先に正しい判断を下し、しかも非難が遅れた住民を助けに行った。それだけのことをしたんだからいいと思うぞ?」
その言葉にジノ以外は賛成する。
「待て、俺は認めないぞ。」
「じゃあ、出て行けば?」
そう言うと周囲を見渡して黙り込んだ。
ジノは知らなかったが、信仰のスキルには大きな問題がある。
恩の分だけ崇められるが、逆に言えばマイナスの恩、つまり負の感情を抱かれるとその分嫌われるのだ。
今回、ジノが真っ先に逃げ、そのせいで7人も犠牲を出した。
それは大きなマイナスで、取り巻きですら感情が反転している。
「異論がないので決定。それで村長は俺をどうしたい?」
その言葉に俺は理解する。
ここが正念場。
今まで通りとはいかないだろう。
どうすればここに引き留められる?
ユウトが文句を言われないような状況。
「ユウトに村の一部を譲渡。それと共に食料を渡すことで、有事の際戦力を借りるというのはどうだろうか?」
要は傭兵ポジション。
「まあ、いいだろう。細かな調整は必要だがな。」
そんな訳で村長初の大仕事は何とか終えることができた。




