水を探すために移動します。
「俺の名前は蒼木 ユウト。ユウトと呼んでくれ。」
川を探すと言った人物が自己紹介をする。
「それでここにいるのが一緒に川を探すメンバーでいいのか?」
その言葉に皆が頷く。
大体20人ぐらいだろうか?
「予定としては浜辺の近くの森、そこを歩く。砂浜は歩きにくいからな。この中に戦闘経験のある人はいるか?」
ユウトの予想外の言葉に俺らはきょとんとする。
「天の声、邪神と呼ぶか。そいつは人は無人の世界と言った。それが事実だとするとこの世界は弱肉強食の世界の可能性が高い。そこで視界が悪い森側に護衛をつけようと思う。戦闘経験、もしくは狩りの経験がある奴はいるか?」
その言葉に数人が手を上げる。
「じゃあ、悪いけどその人たちはなるべく森側に陣取ってくれるか?何か他の生物を見つけたら教えてくれ。」
その言葉に挙手した者達が頷く。
「じゃあ、出発しよう。」
森の方は地面が土のおかげで歩きやすい。
隊列は先頭にユウト、森に接する側に戦闘経験のある人が、その隣に男性陣。浜辺側の安全そうな位置に女性陣がいる。
問題があるとすれば既に1時間は歩いているということだ。
「ちょっと!?川はまだ見つからないの!?」
3度目の休憩を取っている時、一人の女性がユウトの下に詰め寄る。
「俺は最初に行ったはずだぞ?責任は取らないって。それでもいいならついて来いと。」
「なによ!ファーンベルク家令嬢の私に口答えするつもりなの!?」
そんな彼女を見て彼はため息をつく。
「何か勘違いしてないか?」
「な、何よ?」
「この世界では身分や金は全く意味を持たない。なんせ、人がいないから、法なんてものはない。今、俺たちにとっての世界はこの集団で、法と呼べるものはより多くの共感を得られるかだ。」
そう言うとユウトは俺達を見渡す。
「俺が邪魔だとすればそう言えばいい。だが、この集団が崩れることになっても文句は言えないし、俺を追い出したつもりが自分が追い出されていたなんてこともあり得る。」
つまり、と彼は続ける。
「1人で生き残れないなら、協力するしかないということだ。」
その言葉を聞いた女性はしばし、悩んでから言う。
「わ、悪かったわ。」
「いや、俺も悪かった。予想と違って水源が見当たらないからな。」
互いに誤ったことで剣呑な雰囲気は無くなる。
「流石に歩き疲れただろうし、体力の残っている奴だけで先に見に行くか?」
ユウトがみんなに聞くと不安そうな表情を浮かべた者もいたが概ね賛成のようだ。
ユウトと数人は休憩を終えると急ぎ足で先に進む。
俺達も無理しない程度に進むことにした。