だから一日だけリセットできるのかも知れない
今、俺は自分の部屋のベッドの上であの装置を手にして眺めている。
あの日、あれからの事は覚えていない。
気が付いたのは病院の中だった。
俺が目を覚ました事を嬉しそうに喜ぶ彩佳と茉実の顔。
今も俺は覚えている。
なかなか変わってくれないように見えた未来。
俺に過酷な選択を迫った時の流れ。
でも、変えられないものなんて、本当は無いのだ。
現に、彩佳も、茉実も、そして俺も無事な未来がやって来たんだから。
ただ、未来と言うものは小手先の細工では変わらなくて、本当に変えたいと言う強い思いと、全力で未来に抗う行動が必要らしい。
そりゃそうだ。
俺の未来ってのは、今の俺につながっているんだ。
今の俺が全力を出さなければ、俺の未来が変わるなんて訳がない。
それは俺だけじゃねぇ。
みんなそうだ。
俺はその事を今回の事で改めて知った。
俺にこれをくれたあいつは、そのことに気付かなかったんだろう。
安易に何度リセットしても、人生なんて変わらないんだ。
それどころか、心が傷つくばかりだ。
もしかすると、これを作った奴はそれを教えたかったのかも知れない。
一日一日の努力が重要なんだ。
それを気付かせるために、これは一日だけリセットできるのかもしれない。
あの日、ポケットに入れたまま水に飛び込んだ事で、この装置も壊れてしまったようだが、そんな事はもうどうでもいい。
俺は一日一日を全力で生きていく。
それが今を生きている俺のするべきことだ。
俺は起き上がると机に向かい、引出しの奥にあの装置をしまいこんだ。
「さてと」
俺は机に向かって、教科書を開いた。
-完-
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
完結できましたのも、拙い文章にもかかわらず、読んでくださった皆様のおかげです。
は! 恋の行方が書けていないですね。
当然、茉実ちゃんを選んだんだと。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。




