未来を変えられるとしたら、俺だけだ!
青空の中、妹 彩佳を保育園に迎えに来たと言うのに、俺と彩佳の未来を閉ざすかのように降り注ぐ大雨。
仕方ないので、保育園の園舎の軒で彩佳の手を取って雨宿りをする。
園庭に見る見る水が溜まっていく。もうじき、警報が出て、母親からメールが来るはず。
そんな思いを抱いていると、激しい雨で煙る中、こちら近づいてくる人影に気づいた。
傘でその顔は見えないが、きっと誰かのお母さん。そう考え、視線を逸らしていると、激しい雨音の中、俺の名を呼ぶ声がした。
「准くん」
近づいて来た人影が、傘を上げた。それは茉実だった。
「なんで?」
「准くんちに行こうとしたら、この雨の中、ここにいる准くんたちに気づいたから」
そう言って、茉実が差し出した手には、二本の傘が握られていた。
「ありがとう」
そう言って、手を差し出して傘を受け取りはしたものの、心の中は複雑だった。
茉実がここにいると言う事は茉実を守るチャンスができた訳だ。
だが、茉実は俺の家に行くところだったと言った。茉実はこのまま一緒に俺の家に行くつもりに違いない。とすれば、あの用水路の道を通る事になる。
となると……。
「でも、かなりの雨だから、茉実は家に帰った方がいいよ」
「ううん。話したいことがあるんだ」
「ここで聞くけど」
茉実が辺りを見渡した。
園舎には駆けまわる園児に、保育士さん。雨の中、迎えに来るお母さんの姿も見え始めた。
「やっぱ、准くんちがいいかな」
「お姉ちゃんも行こう」
彩佳が手を茉実に差し出した。
「うん。行こう」
茉実がにこりとした笑みを浮かべて彩佳に言った。
「いや、しかし」
「准くんちで話したいの」
もはや、俺の家に行くと言うのは覆せそうにない。
とにかく、俺がいるんだ。俺が守るしかない。
そう覚悟を決めたはずだと言うのに、膝ががくがく震えて止まらない。
ここで、未来の事を言って話すか?
なんて、逃げる方法を考え出したくなる。
が、1日をリセットする装置なんて、すぐに信じてくれる訳もない。
「だったら、雨が止むのを待つか」
そうだ。雨が止むまで待てばいいのだ。
「お姉ちゃんが傘持ってきてくれたのに?」
「准くん。空真っ暗だよ。
しばらく止まないんじゃないかな?」
彩佳も茉実も即否定してきた。
自分たちの命がかかっているんだぞ! と叫びそうになる。
「行こうか?」
茉実がそう言って、彩佳に手を差し出した。
俺の意思では止めれそうにない。
いや、自然さえ味方する時の流れだとしたら、二人の意思もこのイベントに操られているに違いない。この悲劇を止められるとしたら、これから何が起きるのかを知っている俺だけかも知れない。
未来を変えられるとしたら、俺だけだ!
そう思った瞬間、背筋が冷たくなって、ぶるっと震えた。




